「資料の範囲外です」と返すAIを、役立たずと思ってはいけない:競合の価格を聞いた担当者は、短い返事に首をかしげた

企画会議の前に、担当者が新商品の資料三本をNotebookLMに入れた。

担当者は、競合の価格を聞いた。

返事は一行。「資料の範囲外です」。

担当者は、短い返事に首をかしげた。

範囲外という返事は、役立たずの印なのか。

何でも答えるAIなら、会議に何が出ていたか

一般的なチャットAIは、学習した知識で空白を埋めて答える。

同じ質問をすれば、競合の価格も、もっともらしい一般論で埋まっただろう。

返ってくる答えには、資料と一般論が混ざる。

どの一文が資料から来て、どの一文が一般論なのか。見た目では区別がつかない。

担当者は、混ざった答えを企画会議に持ち込むところだった。

範囲外の返事の正体は、資料に閉じた作りだ

NotebookLMは、利用者が渡した資料(ソース)に基づいて答える。資料に該当する記述がゼロなら、資料の範囲外だと返す。

答える範囲を、利用者の資料の中に限る作りである。

Googleは2023年の発表で、言語モデルが利用者のメモや資料を根拠に答える作りだと説明している。

答えには、資料のどこから来たかを示す引用が付く。利用者は、引用から元の箇所をたどれる。

資料の外の質問に、何でも答えるAIは学習した知識で空白を埋め、NotebookLMは資料の範囲外と返します。答える範囲が資料に閉じているから、答えた部分を確かめられます

範囲外という返事は、確かめられる範囲の境目を示す印だ。

決め手は、名前の前半のNotebookにある

後半のLMは、Language Model(言語モデル)の頭文字である。中核に、GoogleのGeminiという言語モデルを載せている。

言語モデルを載せたAIは、ほかにも数多い。LMは、どのAIにも共通する部分にすぎない。

ほかのAIと分ける語は、前半のNotebook(ノート)だ。

コンピュータが登場する前、人はノートの上でアイデアを並べた。他人の著作から得た着想も、ノートにまとめた。

NotebookLMは、入れた資料から要約、説明、回答を作る。書き留める道具だったノートに、読み解く役が加わった。

GoogleはNotebookLMを、2023年5月の開発者会議で、Project Tailwindという名前で発表した。

同じ年の7月、NotebookLMという新しい名前で提供を始めた。

2026年7月には、Gemini Notebookへ名前が変わった。新しい名前も、自分の資料をもとにAIが考える中身を引き継いでいる。

NotebookLMはNotebookとLanguage Modelを組み合わせた名前で、旧称はProject Tailwind、現在はGemini Notebookへ改称されている

初めての分野で一般的な知識を広く集める場面には、何でも答えるAIが向く。資料に基づく答えが要る場面には、NotebookLMが向く。

入れた資料が古ければ、答えも古いまま返る

資料に閉じた作りでは、入れた資料の質が、答えの質になる。

AIは、古い資料も出どころの不確かな話も根拠にして、もっともらしく答える。

範囲外とは返さない。資料の中に、答えの材料があるからだ。

資料の誤りを正すのは、資料を選ぶ人の仕事である。

関連しそうな資料を全部入れる使い方は、冷蔵庫の中身を全部鍋に入れる料理に似ている。

料理の大半は、使う素材を選ぶ作業だ。

関連しそうな資料を全部入れると、古い資料や出どころの不確かな話も答えの根拠になります。何を確かめたいかを先に決め、根拠として信じてよい資料を選んで入れます

資料を選ぶ三つの手順

冒頭の担当者が競合の価格の載った資料を入れていれば、返事は変わっていた。

手順は三つある。

一つ目に、問いで確かめたいことを一文で書く。二つ目に、根拠として信じてよい資料を選ぶ。

三つ目に、選んだ資料だけをノートに入れる。

確かめたいことと信じる資料は、問う人の前提である。資料を選ぶ作業は、前提を言葉にしてAIに渡す作業だ。

質問の文面にも、前提を書き添える。次の文面のかっこの中を、自分の問いに書き換えて使える。

確かめたいこと:(例:新商品の価格が、社内の価格表の基準に合っているか)
根拠にする資料:(例:2026年度の価格表と、新商品の企画書)
お願い:入れた資料だけを根拠に答えてください。答えの一文ずつに、引用元の箇所を添えてください。資料の範囲外の点は、範囲外と書いてください。

首をかしげた担当者に、足りなかったもの

範囲外の一行は、AIが黙って一般論で埋めなかった証拠である。

首をかしげた担当者に足りなかったのは、AIの賢さではない。競合の価格が載った資料だった。

拙著『GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書』の2章1節に、資料をすべて入れずに選び、真偽と鮮度の責任は人に残るという話を書きました。読むと、ノートに入れる前の資料を、自分の目でどこまで選び分けるかを決められるようになります。

同じ資料を見ているのに、なぜ結論が割れるのか。

GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書 表紙

『GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書』

前提が結論を決める。意思決定を根拠、前提、結論の三層に分け、前提を対象、目的、制約、評価基準の四つで言葉にする本です。

読み終えたとき、手元に残るもの

  • 意思決定の設計図になる前提リスト
  • 資料を事実、意見、噂、ゴミに仕分けるFORT
  • 同じ物差しで比べる選択肢表と採点表
  • 始める条件と止める条件を書いた決定書

NotebookLMは2026年7月にGemini Notebookへ名称が変わりました。本の手法は、使うAIの種類を問いません。

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