Instagramはメディアかチャネルか、を議論する前に。施策は動詞で定義する

Instagramはメディアですか、それともチャネルですか。この問いに会議の30分を使ったなら、その30分で決まったのは言葉の置き場所だけです。この記事では、メディアとチャネルを名詞で分類する作業がデジタルの施策ではほとんど役に立たないこと、役に立つのはその施策がどの行動を変えるつもりかという定義であることを示します。

教科書の区別は、伝える媒体と届ける経路です

メディアは、情報を伝える手段や媒体です。テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、ウェブサイト、SNS、動画プラットフォーム、ポッドキャスト、駅や車両の屋外広告(OOH)などがあります。チャネルは、製品やサービスが顧客に届くまでの経路、または顧客と企業がやり取りする接点です。ECサイト、実店舗、代理店、流通業者、直販営業、コールセンター、チャットボット、アプリなどです。

一言でいえば、メディアは伝えることが主な目的で、チャネルは、買う、使う、問い合わせる、という顧客の行動が起きる場所です。成果の指標も、メディアならインプレッション、リーチ、CTR、チャネルなら売上、問い合わせ件数、顧客満足度と、分けて考えられてきました。

デジタルでは、一つの場所が両方を同時に務めます

この区別は、テレビCMを見て店で買う時代にはよく働きました。伝える場所と買う場所が物理的に離れていたからです。いまは違います。Facebookは広告を配信する場であり、企業が顧客とメッセージをやり取りする場であり、ショップ機能で物を売る場でもあります。Amazonも、商品ページのスポンサー広告では伝える場として働き、同じ画面で販売の場として働きます。

同じSNSでも働きで分ける

同じInstagramでも、投稿や広告で知ってもらう場面はメディアの働き、その場で購入まで進む場面はチャネルの働きです。分ける基準は場所ではなく、その場面で果たしている働きです。ここまでは、比較的よく言われることです。

問題はその先です。働きで分けるなら、場所の名前でメディアかチャネルかを決める作業そのものが要らなくなります。SNSはメディアかチャネルか、という問いは、包丁は料理道具か凶器か、と問うのに似ています。答えは包丁の側ではなく、使う人が何をしようとしているかの側にあります。

言葉の論争に見えるものは、評価基準の食い違いです

同じSNS施策という言葉で、ある人は認知を、別の人は売上を思い浮かべていたとします。前者はインプレッションが伸びたから成功と言い、後者は売上が動かないから失敗と言います。見ている数字は同じでも、何を成功と呼ぶかの前提が違うので、結論は真逆になります。この会議で足りないのは、メディアとチャネルの正しい定義ではなく、この施策で何を変えたいのかという一文です。

メディアとチャネルを分けずに考えると、二種類の失敗が起きる、とよく言われます。広告で30%引きをうたったのに店舗では使えない、という食い違い。チャネルの整備ばかりに力を入れて、そもそも人が流れてこない失敗。どちらも、言葉を取り違えたから起きたのではありません。施策ごとに、どの行動を変え、何で測るかが書かれていなかったから起きたのです。

施策ごとに、動詞と指標を一行で書きます

代わりに勧めたいのは、施策を名詞ではなく動詞で書くことです。たとえば次のように一行ずつ書きます。

  • Instagramの広告:大学生に新商品を知ってもらう。指標はリーチと保存数
  • Instagramのショップ:投稿を見た人にその場で買ってもらう。指標は購入数と購入率
  • メールマガジン:購入した人に2回目を買ってもらう。指標は再購入率

こう書けば、メディアかチャネルかを議論しなくても、施策どうしがつながっているかを確かめられます。知ってもらう施策で集めた人が、買ってもらう施策のどこで止まっているのかを、通しで見られるからです。

ただし、言葉の区別が要らないと言いたいわけではありません。広告代理店と販売代理店のように、担当する会社や部署、予算の枠がメディアとチャネルで分かれている組織では、言葉の区別がそのまま責任の区別になっています。そうした場合は、区別を残したうえで、施策ごとの一行を両方の担当が共有するのがよいでしょう。どちらが自社に合うかは、組織の分かれ方によって変わります。

あなたの会社でいま走っているSNS施策は、何を変えるためのものだと一行で書けるでしょうか。その一行は、施策に関わる全員の間で同じでしょうか。

この記事の背景にある考え方は、拙著『GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書』の1章1節「意思決定の構造と前提の要素」に書きました。赤字の新規事業をめぐって経理部長と事業部長の結論が割れる例を挙げ、本書は「前提が違えば、同じデータからでも結論は真逆になってしまいます。」と書いています。この節を読むと、施策の評価で意見が割れたとき、割れているのが数字の読み方なのか、口にしていない前提なのかを、自分で見分けられるようになります。

同じ資料を見ているのに、なぜ結論が割れるのか。

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『GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書』

前提が結論を決める。意思決定を根拠、前提、結論の三層に分け、前提を対象、目的、制約、評価基準の四つで言葉にする本です。

読み終えたとき、手元に残るもの

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