条件か制約かは、破られた答えを捨てるかどうかで決まる

プロンプトの解説では、条件は柔らかい指定、制約条件は厳しい指定、と説明されることがよくあります。言葉の強さで分けるかぎり、この区別は役に立ちません。「必ず」「絶対に」と書けば制約になるのなら、締め切り前の担当者が書いた指示書は、すべて制約条件でできていることになります。強調の言葉は書き手の焦りを伝えるだけで、守られなかったときにどうするかを何も伝えないからです。この記事では、条件と制約条件を、破られた答えを受け取ったときの処置で見分ける方法を示します。

強い言葉で書いても、制約にはなりません

制約条件(constraints)は、出力が必ず守るべきルールや限界を示す要素です。量の制限(回答は200文字以内)、禁止事項(攻撃的な表現は使わない)、形式の指定(です・ます調で4段落)、根拠の提示(参考文献を1つ以上挙げる)などがあります。

ただし、明記すれば必ず守られるという保証はありません。AIは制約と書かれた指定も、ほかの指定との兼ね合いで緩めることがあります。だから、制約かどうかを決めるのは、プロンプトの書きぶりではなく、出てきた答えを人間がどう扱うかです。

破られたら捨てるものが、制約です

判定の問いは一つです。この指定が破られた答えを、あなたは捨てますか。

入力欄の上限が200字のフォームに貼る文章なら、230字の答えは使えません。捨てて作り直させます。これは制約です。社内メモで、200字程度あれば読みやすい、という意味で書いたのなら、230字でも中身がよければ使うでしょう。これは制約ではなく、程度を見て判断する評価基準です。同じ「200字以内」という文字列が、使い道によって制約にも評価基準にもなります。

全部を制約条件にしたプロンプトは、全項目に必須と書いた要件定義書と同じ運命をたどります。すべてが必須なら、どれを落とせば間に合うかを誰も判断できないからです。AIも、両立しない必須を前にすると、どれかを黙って緩めます。どれを緩めたかは、答えを読むまで分かりません。

条件と制約条件の違い

条件は、場面を決めて振る舞いを分けるものです

条件(conditions)は、前提となる状況や役割を伝え、場合に応じた振る舞いを指定する要素です。あなたは映画評論家として批評記事を書いています、という役割や場面の設定。技術的な詳細を尋ねられたら専門用語も含めて詳しく、そうでなければ一般の方向けに、という場合分け。条件があると、AIはどの前提に立ち、どの場合に何を優先するかをつかみやすくなります。

条件がうまく働かなかったとき、私たちは答えを捨てるより、場面の読み違いとして設定を直します。高級レストランのシェフとして受け答えをする、という設定で、安全性を聞かれたかどうかの判断がずれたなら、分岐の書き方を直せばよいのです。

境界の事例もあります。使えるデータは2019年以前のものだけ、という指定は、一見すると場面の設定です。けれども、2021年のデータを使った答えを受け取ったら、たいていの人は捨てるでしょう。そうであれば、これは条件の形をした制約です。

判定の問いで、指定を仕分けます

指定破られたとき種類
回答は200字以内(入力欄の上限が200字)捨てる制約
回答は200字程度(社内メモ)長さを見て使う評価基準
技術的な質問には詳しく答える場面の読み違いとして直す条件
レシピには触れない捨てる制約

仕分けたら、制約は少数に絞って冒頭にまとめ、評価基準は優先順位をつけて書き、条件で役割と場面を設定します。最後に、三者が矛盾していないかを読み直します。レシピを詳しく紹介するシェフ、という条件と、レシピに触れない、という制約は両立しません。条件同士や制約同士がぶつかる場面の扱いは、AIへの制約条件が矛盾したら 必須・希望・停止条件に分けて依頼するで詳しく扱っています。

この判定には限界もあります。出力を一件ずつ人が見られない仕組み、たとえば大量の文章を自動で流す場合には、捨てるという処置そのものを機械に任せる必要があり、機械で判定できない制約は意味を失います。また、制約と書いた指定をAIがどの程度優先するかはモデルや言い回しで変わり、外から確かめる方法は試すことしかありません。攻撃的な表現は使わないでください、という制約は、守られたかどうかを誰がどう判定するかが決まっていないかぎり、お守りの札と同じです。貼ってあるだけで、効いたかどうかは誰にも分かりません。判定できる言葉に言い換えるか、人が読む評価基準として扱うかを選びます。

あなたが最近書いたプロンプトの制約条件のうち、破られた答えを実際に捨てたものはどれでしょうか。捨てなかった指定は、本当は何と呼ぶべきものだったでしょうか。

この記事の背景にある考え方は、拙著『GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書』の4章2節「定義・対象・目的・制約を言語化する」に書きました。本書は制約と評価基準の見分け方として、「この条件を満たさない案は即座に除外するか?」と自問するよう勧めています。意思決定の前提の話ですが、この問いを自分の指示文に当てはめて読むと、どの指定を少数の制約として残し、どれを重みのある評価基準へ移すかを、自分で仕分けられるようになります。

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