分析の答えは事実、解析の答えは前提つきの見立て、報告書で混ぜると見立てが事実の顔をする

売上低下の要因を解析しました、という報告書の中身を分けてみると、半分は区分ごとに数えただけの分析で、残りの半分は根拠の書かれていない見立て、ということがあります。数えた結果と見立てが同じ調子の文で並ぶと、読む側には区別がつかないからです。分析と解析は言葉の違いとして語られがちですが、判断の場で効く違いは、出てくる答えの性格にあります。分析の答えは事実、解析の答えは前提つきの見立てです。この記事では、二つの意味を確かめたうえで、混ぜると何が起きるかを考えます。

分析は分けて中身を明らかにし、解析は仕組みを解き明かします

分析は、物事を細かく分けて、成分や構成要素を理解することです。統計で言えば統計分析で、データを集めて整理し、平均や割合を出し、項目ごとに集計します。何がどれだけあるのか、どこに偏りがあるのかに答えます。

解析は、理論や数学の手法を使って、全体がどう動くのかを解き明かすことです。統計で言えば統計解析で、統計モデルを使って要素どうしの関係やこれからの傾向を明らかにします。なぜそうなるのか、この先どうなるのかに答えます。

分析と解析の違い

現場では、統計分析は集計や基本的な統計量、統計解析はより複雑なモデル化や予測を含むことが多い、という使い分けになります。ただし分野によって言葉の使い方は揺れるので、名前より、何に答えているかで見分けるほうが確かです。

答えの性格が違います

商品別、地域別、月別に売上を集計し、前年より落ちた区分を並べる。これは分析で、出てくるのは数え直せば誰でも同じになる事実です。

落ちた区分について、価格、来店数、天候のどれと関係が強いかを調べ、来月の見通しを出す。これは解析で、出てくるのは、どの変数を選び、どのモデルを当て、過去の関係が続くと置いたかに依存する見立てです。前提を変えれば、同じデータから別の見立てが出ます。

回帰分析の係数が決裁書に載った瞬間、それは仮説から社内の常識に昇格することがあります。決裁書という書式が、中の数字をすべて確定した事実に見せるからです。そして、常識になった仮説の前提は、もう誰にも確かめられません。

報告の中で、事実と見立てと前提を分けて書きます

資料を事実、意見、噂、ゴミに仕分けるなら、分析の結果は事実の棚に、解析の結果は前提つきの意見の棚に入ります。報告書でも、数えた結果、そこから立てた見立て、見立てが置いた前提を、別々の段に書くと、読む側が自分で確かめられます。

AIにデータを渡して調べさせるときも、依頼を二段に分けると、答えの性格が混ざりません。

分析の依頼: この売上データを商品別、地域別、月別に集計し、前年より落ちた区分を一覧にしてください。

解析の依頼: 一覧にした区分について、価格、来店数、天候のどれと関係が強いかを調べ、来月の見通しを、置いた前提とあわせて示してください。

ただし、解析の見立てのうちどれが正しいかは、その場では決着しないことがほとんどです。関係が強いことは原因であることを意味せず、原因かどうかは、データだけからは確かめきれない場合が多いからです。見立ては、外れたときにどの前提が崩れたのかを後から確かめられる形で残すことまでしかできません。

あなたが最近読んだ、または書いた報告書の中で、数えた事実と見立てが同じ文の中に入っている箇所はどこでしょうか。その見立ては、どんな前提が崩れたら外れるでしょうか。

この記事の背景にある考え方は、拙著『GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書』の4章のコラム「結論の裏にある前提を逆算する」に書きました。結論から、それが成り立つにはどんな前提が要るかを逆にたどり、外れていたら結論がひっくり返る前提を見つける話で、その前提について「それが結論の急所です。」と書きました。このコラムを読むと、報告書の見立てを受け取ったとき、それがどの前提に支えられ、どの前提が崩れたら外れるのかを、自分でたどれるようになります。

同じ資料を見ているのに、なぜ結論が割れるのか。

GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書 表紙

『GoogleのAI NotebookLM 意思決定の強化書』

前提が結論を決める。意思決定を根拠、前提、結論の三層に分け、前提を対象、目的、制約、評価基準の四つで言葉にする本です。

読み終えたとき、手元に残るもの

  • 意思決定の設計図になる前提リスト
  • 資料を事実、意見、噂、ゴミに仕分けるFORT
  • 同じ物差しで比べる選択肢表と採点表
  • 始める条件と止める条件を書いた決定書

NotebookLMは2026年7月にGemini Notebookへ名称が変わりました。本の手法は、使うAIの種類を問いません。

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