Markdownを唯一の元にする成果物づくり

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この記事の内容を、図解と音声で解説します。

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音声:VOICEVOX:玄野武宏(CV:ガロ)

同じ内容を、Wordの資料にも、PowerPointにも、動く図解にも、動画にもしたい。生成AIを仕事で使う人なら、一度はこう考えるはずです。答えは、元をMarkdownファイル1つに決め、そこから各形式へ変換する仕組みを持つことです。

この記事では、その仕組みの原理と、変換に使う道具(ライブラリ)の名前を、1枚の地図にまとめて紹介します。

Markdownを唯一の元にした変換の地図
Markdownを唯一の元にした変換の地図(クリックで拡大)。青の太線は筆者が実際に使った経路、灰の細線はほかの選択肢、橙の破線は今後の動画への経路

原理は5つ

  1. 内容を持つのはMarkdownだけです。人が書き、人が承認するのは、このファイルに限ります。
  2. 道具は内容を持ちません。Pandoc、ライブラリ、PythonやNode.jsのスクリプトは、Markdownを読んで形を変えるだけです。道具が出発点になることは、原理としてありえません。
  3. 様式も、元の外に置きません。Wordの体裁や色、絵柄は、Markdownの先頭の設定(front matter)からテンプレートを指します。
  4. HTML、SVG、PNGは中間表現です。受け渡しのための形で、元ではありません。
  5. 出力は片道です。Word、PowerPoint、GIF、MP4から元には戻れません。直しは必ずMarkdownで行い、出力を作り直します。

7段の流れ

地図は、上から下へ7段で読みます。

段 中身 主な道具
①元 Markdownファイル1つ 人が書く
②解析 構文木にして、ブロックの種類で振り分ける Pandoc、markdown-it、remark
③ブロック 文章、図の定義、データ、台本、字コンテ Markdownの見出し、表、コードブロック
④変換 ブロックごとに形を変える docx(npm)、python-docx、Pandoc、Marp、python-pptx、PptxGenJS、Mermaid CLI、Graphviz、D2、matplotlib、Plotly、D3.js、音声合成、画像生成AI
⑤中間表現 受け渡し用の形 HTML、SVG、音声ファイル、ネーム画像
⑥描画・加工 画像にする、つなぐ、合成する Chromium(Playwright、Puppeteer)、Pillow、gifski、ImageMagick、FFmpeg、MoviePy、Remotion、動画生成AI
⑦出力 できあがり Word、PowerPoint、PDF、Webページ、アニメーションGIF、MP4動画

要になるのは、③のブロックです。図も、データも、ナレーションの台本も、漫画の字コンテ(ページとコマを文字で書いた表)も、すべてMarkdownの中のブロックとして書きます。たとえば図は、次のようなコードブロックで定義します。

figure: 制作工程
nodes:
  - {id: scenario, label: シナリオ}
  - {id: draft, label: AIが下書き}
  - {id: approve, label: 人が承認}
edges:
  - [scenario, draft]
  - [draft, approve]
steps:
  - {show: [scenario], caption: 素材を用意する}
  - {show: [draft], caption: AIが下書きする}
  - {show: [approve], caption: 人が直して承認する}

要素、つながり、見せる順番(steps)が元の側にあるので、同じブロックから静止画のSVGも、順番に点灯するアニメーションGIFも、PowerPointのアニメーションも、動画も作れます。出力の形式を変えても、見せる順番は変わりません。

よくある誤り

一番起きやすい誤りは、図の定義をMarkdownに置かず、変換用のスクリプトの中に直接書いてしまうことです。筆者自身も、Wordに動く図解を埋め込む作業でこれをやりました。出来上がりは同じに見えますが、図を直すたびにスクリプトを開くことになり、内容と道具の区別が崩れます。原理の1つ目に反する形です。

もう一つは、HTMLを元だと考えることです。HTMLはブラウザに描かせるための入れ物で、HTMLからWordやPowerPointへ変換すると、体裁が崩れやすくなります。WordとPowerPointは、Markdownから直接作るのが確実です。

出したい形式ごとの注意

出力 道具 注意
Word Pandoc、docx(npm)、python-docx 動画は埋め込めません。アニメーションGIFなら文書の中で動きます
PowerPoint Marp、Pandoc、python-pptx、PptxGenJS プログラムからアニメーションを付ける標準の機能がありません
PDF Chromiumの印刷、Pandoc、WeasyPrint 日本語の組版はChromium経由が手堅い
アニメーションGIF Chromiumで撮影し、Pillowやgifskiでつなぐ 256色まで。写真やグラデーションには向きません
MP4動画 FFmpeg、MoviePy、Remotion、動画生成AI 次の節を参照

動画への4つの道

  1. 図の定義ブロックと台本ブロックから作る。図のコマを撮影し、台本を音声合成(OpenAI TTS、ElevenLabs、VOICEVOXなど)で読み上げ、FFmpegやMoviePyで合成します。研修や解説の動画に向く、最も手堅い道です。
  2. 文章ブロックからHTMLを作り、CSSやSVGで動きを付けて録画する。Playwrightでの録画や、Reactのコードで動画を組み立てるRemotionが使えます。動きの自由度が最も高い道です。
  3. PowerPointに書き出し、人が手で動きを付けて、PowerPoint本体の機能で動画にする。
  4. 字コンテブロックから画像生成AIで絵を作り、動画生成AIで動かす。2026年時点では、Veo 3.1、Kling 3.0、Runway Gen-4.5、Seedanceなどが主な選択肢です。1本は数秒から30秒程度で、人物の見た目を保つことがまだ課題です。

人が判断するのは、元だけ

この仕組みで人が判断するのは、Markdownの中身だけです。何を書くか、図で何をどの順に見せるか、どこを山場にするか。そこが決まれば、出力の形式はAIと道具に任せられます。

道具は毎年入れ替わります。動画生成AIの顔ぶれは、この1年でも大きく変わりました。それでも、元をMarkdownに置き、道具を交換できる部品として扱う限り、積み上げた内容は失われません。生成AIの時代に人が持つべきなのは、出力の技術よりも、元を書く力です。

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