「オントロジー」という言葉は、生成AIやナレッジグラフ、RAGなどの文脈で使われる機会が増えています。
オントロジーとは、簡単に言えば、「ある世界に何が存在し、それらがどのような関係にあるのかを体系的に定義したもの」です。
もともとは哲学の用語で、日本語では「存在論」と訳されます。情報科学では、この考え方を、知識を構造化するために利用します。
たとえば「会社」という世界には、社員、部署、顧客、商品、契約などが存在します。そして、「社員は部署に所属する」「顧客は商品を購入する」「契約は顧客とサービスを結びつける」といった関係があります。
オントロジーは、このような「何があるか」と「どう関係するか」を定義します。単なる分類表ではなく、世界の構造を表す設計図と考えると分かりやすいでしょう。
オントロジーは命題として表現できる
オントロジーの知識は、命題の形で表現できます。
たとえば「田中さんはA社に所属している」という情報は、「田中さん ― 所属する → A社」という形にできます。RDFでは、これを「主語・述語・目的語」の三つ組、Tripleとして表現します。
さらに、「管理職は社員の一種である」「社員は人の一種である」といった一般的な関係も定義できます。その意味では、オントロジーは、世界について成立する命題や公理を体系化したものともいえます。
世界観との違い
オントロジーに近い言葉に「世界観」があります。両者の違いは、扱う範囲です。
オントロジーが扱うのは、主として世界の構成要素と関係です。一方、世界観は、「その世界全体をどのような構造や原理として捉えているか」という、より包括的な理解を指します。
たとえば「人間が存在する」「AIが存在する」「人間はAIを利用する」という記述はオントロジー的です。一方、「AIの普及によって、知的労働は人間とAIの協働を中心に再編されていく」となると、世界がどう動くと考えているかまで含まれるため、世界観に近くなります。
オントロジーは「世界の構造」、世界観は「その世界全体をどう捉えるか」という違いです。
オントロジーは未来を予測しない
オントロジーそのものは、通常、未来予測を行いません。定義するのは、「何が存在しうるか」「何と何が関係するか」「どのような属性や制約を持つか」といった世界の構造です。
たとえば「社員」「退職」「部署」という概念や、「社員は部署に所属する」という関係は定義できます。しかし、「この社員は3か月以内に退職する可能性が高い」という判断は予測モデルの仕事です。
したがって、オントロジーは「何があり得る世界なのか」を定義し、予測モデルは「その世界が次にどうなるか」を推定すると整理できます。オントロジーを世界の「静的な骨格」と考えると分かりやすいでしょう。
生成AI時代のオントロジー
生成AIは自然言語を柔軟に扱えます。しかし、企業や組織でAIを利用する場合、「顧客とは何か」「案件とは何か」「契約と顧客はどう結びつくか」といった概念の定義が重要になります。
つまり、AIに大量の情報を与えるだけでなく、その情報が存在する世界の構造をどう定義するかが重要になるのです。
生成AI時代のオントロジーは、単なるデータ形式ではありません。AIが理解し、検索し、推論するための「世界の設計図」と捉えると、その意味が見えてきます。






