居住地の都道府県という列は、表の上では1列ですが、機械学習のモデルの中では47の次元になることがあります。うちのデータは10項目だから単純です、という見積もりは、列を数えて次元を数えたつもりになっている時点で外れています。この記事では、次元、パラメータ、属性、カラム、特徴の五つの関係を整理し、四つが同じ列の別名でありながら一対一には対応しない場面と、表をAIに渡すときに何を言葉にすればよいかを示します。
四つの言葉は、多くの場合、同じ列を別の立場から呼んだ名前です
顧客の表に年齢という列があるとします。表計算やデータベースの画面で見れば、それはカラム(列)です。データベースの設計から見れば、顧客という対象が持つ属性です。機械学習のモデルに入れるなら特徴と呼ばれます。列が年齢、年収、購入回数の三つなら、顧客は三次元の空間に並ぶ点とみなせ、それぞれの列が次元になります。
カラムは表、属性は設計、特徴はモデル、次元は空間の立場の言葉です。混乱の多くは、同じものを違う立場から呼んでいることに気づかないところから生まれます。
列の数と次元の数は、一致しないことがあります
都道府県のように、数ではなく種類を表す列をモデルに渡すときは、都道府県ごとに「該当すれば1、しなければ0」の列を立てる方法がよく使われます(ワンホット表現と呼ばれます)。表の1列が、モデルの中では47の次元になります。文章が入った列なら、数値の組に変えた時点で、1列が数百から数千の次元になることも珍しくありません。データの手ごわさを見積もるときは、列の総数より先に、種類の列と文章の列がいくつあるかを数えます。
特徴は、列から作られることもあります
特徴は列そのものとは限りません。購入回数を利用年数で割った値のように、複数の列から計算した値を特徴にすることがあります。この特徴は元の表のどの列にもなく、どの列をどう組み合わせたかは人の判断です。
パラメータだけは、データの側にありません
パラメータは、モデルや関数の側にある値です。機械学習では、学習によって決まるモデル内部の値(重み)をパラメータと呼び、学習率のように学習の前に人が決める設定はハイパーパラメータと呼んで区別するのが一般的です。関数の引数をパラメータと呼ぶ場面もあるので、文脈で見分けます。
| 言葉 | どこにあるか | 注意する点 |
| カラム | 表 | 1列が1次元とは限らない |
| 属性 | 対象の設計 | いちばん意味が広い |
| 特徴 | モデルの入力 | 列から計算して作ることがある |
| 次元 | データの空間 | 種類の列や文章の列で数が増える |
| パラメータ | モデルや関数の側 | 人が決める設定はハイパーパラメータ |
もっとも、すべての列が数値で、平均や相関を見るだけの分析なら、列と次元と特徴はほぼ一対一に対応し、この区別にこだわる必要はあまりありません。ずれが効いてくるのは、種類の列や文章の列を含むときと、AIやモデルに値を作らせるときです。
AIに表を渡すときは、列の扱い方まで言葉にします
データ活用の最初の会議で、まず用語集を作りましょう、と決まることがあります。そして用語集が完成するころには、分析するはずだったデータのほうが古くなっています。五つの言葉はどれも分野ごとに揺れのある言葉なので、全部を厳密に定義しようとすると議論が終わらないからです。要るのは辞書ではなく、今回の依頼で使う言葉を一行で固定することです。
ChatGPTのような生成AIに表を渡すときも同じです。同じ列を項目、カラム、属性とばらばらに呼ぶと、AIは別のものを指していると受け取ることがあります。さらに、種類の列を数として扱うのか、計算した特徴を足してよいのかを伝えなければ、AIは手持ちのやり方で空白を埋め、自分で作った値を断りなく使うことがあります。
「添付の表は、1行が顧客1人です。列のことは列と呼び、列名は見出しのとおりに書いてください。居住地は種類を表す列として扱い、数値として計算しないでください。新しい値を計算して使う場合は、どの列からどう計算したかを先に書いてください。」
あなたがAIに渡そうとしている表で、数字が入っていても実は種類を表している列(店舗番号、郵便番号、商品コードなど)はどれでしょうか。AIはそれを数として足したり平均したりしないでしょうか。
この記事の背景にある考え方は、拙著『ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング』の7章1節「データ分析」に書きました。何を解明したいかという意図を先に決め、表をアップロードしたら、欠損値の補完や重複の削除といった前処理を言葉で指示してから分析に進み、AIが出した考察は現場の知見と照らし合わせる、という手順です。そこには「その結果を盲信せず、人間が内容をチェックすることが重要です。」とあります。この節を読むと、自分の表をAIに渡す前に、どの列をどう扱ってほしいのかという前提のうち、まだ言葉にしていないものを自分で洗い出せるようになります。
AIの答えが物足りないとき、疑うべきはAIか、自分の言葉か。
『ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング』
AIは言葉でしか動かない。プロンプトを暗記するのをやめ、構成要素に分解して、自分の言葉で意図を込める力を鍛える本です。
読み終えたとき、手元に残るもの
- 必須、任意、形式の三つに分けたプロンプトの構造
- 回答の質を変える、意図を込めた生きたプロンプト
- 発注と検収は人が担う、AIとの役割分担
- 章末の演習プロンプト26題
4刷重版。全国の大学図書館65館が所蔵しています(2026年10月時点)。

