担当者が、AIでプレゼン資料を作るGammaに原稿を貼った。役員会に出す資料だった。
返ってきたスライドには、写真と挿絵が並んでいた。表紙にも、見出しの横にも。
原稿の中に、写真を頼んだ行はゼロだった。
AIのお節介に見える。実際には違う。
では、頼んでいない写真は、どこから来たのか。
画像を入れないスイッチは、なぜ見当たらないのか
まず思いつくのは、画像を入れない設定を探すことだ。
2025年2月時点で、画像の挿入を一括で止める直接の設定は、見当たらなかった。公開の情報で確かめた範囲の話だ。
当時の手順は二段だった。
一段目。テキストを貼り付けて作る機能に、文字だけの原稿を入れる。
二段目。生成した結果に画像が入っていたら、手で消して整える。
役員会の資料なら、表紙から最後の一枚まで、入った写真を一枚ずつ消すことになる。作り直すたびに、同じ手間がまたかかる。
2025年2月より後の更新で、設定が加わった可能性もある。使う前に、ヘルプセンターや公式の情報で、最新の状態を確かめる。
ただ、設定を探す前に見るべき場所がある。写真の出どころは、渡した原稿の側にあった。
原稿の空白の正体は、一枚に何を載せるかの決め残しである
カラクリは単純だ。原稿で決めずに残した部分を、AIがいちばん無難な見本で埋めた。
注文票の欄を空けて出せば、店の見本どおりの料理が届く。
AIに渡す原稿では、一枚に何を載せるかを決めずに残した部分を、原稿の空白と呼ぶ。
文字が並んでいても、言いたいことが空いた一枚は、空白に数える。
生成AIは、原稿で空いた部分を、手持ちの見本で埋める。プレゼン資料の見本の多くには、表紙の写真や見出しの横の挿絵がある。
空いた場所には、見本どおりの画像が入る。写真を頼む行がゼロでも、空白があれば写真は来る。
原稿の出来は、一枚ごとの一文で差がつく
空白が原因なら、原稿で空白を埋めればよい。原稿には、三つを書く。
- 一枚ごとに見出しを立てて、言いたいことを一文で書く
- 一枚の文字量をそろえて、箇条書きにしたい部分は最初から箇条書きで書く
- 文字だけで作る理由を、原稿の冒頭に書く
三つ目を足す理由は、方針に理由が付くと、AIの出力全体の向きを変えやすいからだ。
画像の禁止を命令する代わりに、資料の目的を書く。
かっこの中を、自分の資料に書き換えて、原稿の冒頭に置ける。
この資料は、(例:役員会で、新工場への投資を決める材料)です。
読む人:(例:役員8名。会議の前日に、手元で読みます)
作り方:(例:文字と数字だけで作ります。一枚ごとに見出しと、一文の主張を置きます)
1枚目:(例:見出し 投資の結論 主張 第2工場に30億円を投じます)
画像以外の飾りも、一緒に減ることが期待できる。減り方は、ツールの仕様で変わる。
それでも、入った画像を消す作業は、手順に残す。
最後の空白を埋めるのは、冒頭の「読む人」の欄である
原稿の中で見落としやすい空白が、もう一つある。誰が読むかだ。
役員8名が会議の前日に手元で読む。そう書いた原稿では、AIが見本で埋める場所が減る。
読む人の欄には、誰が、どの場面で読むかを一行で書く。
会議の前に読んでもらう資料なら、文章の形のほうが、論理の筋を追いやすい場合がある。
聞き手の前で話しながら見せる資料なら、スライドの形と、後から入れる自社の図版が生きる。
役員の手元に、写真が並んだ理由
役員8名が前日に手元で読む資料に、表紙から写真が並んでいた。
あの写真は、AIの好みではない。原稿が空けたままにした場所に、AIが置いた見本だった。
この記事の考え方は、拙著『ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング』の2章1節の「明確化と具体化」の項に書きました。この項を読むと、AIに渡す原稿のどこに空白があり、それがどんな出力になって返るかを予測できるようになります。
AIの答えが物足りないとき、疑うべきはAIか、自分の言葉か。
『ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング』
AIは言葉でしか動かない。プロンプトを暗記するのをやめ、構成要素に分解して、自分の言葉で意図を込める力を鍛える本です。
読み終えたとき、手元に残るもの
- 必須、任意、形式の三つに分けたプロンプトの構造
- 回答の質を変える、意図を込めた生きたプロンプト
- 発注と検収は人が担う、AIとの役割分担
- 章末の演習プロンプト26題
4刷重版。全国の大学図書館65館が所蔵しています(2026年10月時点)。

