英語のTextは、長さではなくまとまりで決まります

Text は Sentence が集まったもの。そう覚えている人は、建物の出口に掲げられた EXIT という一語の前で困ることになります。Sentence ですらない一語が、場所と目的を持って、誰が読んでも同じ行動を促す、完結した Text として働いているからです。この記事の主張は、英語の Text は長さや Sentence の数ではなく、まとまりで決まるということです。Sentence と Text の基本を確かめたうえで、まとまりの二つの面と、AIに英文を直させるときの頼み分けを考えます。

Sentence は、文法的に完結した最小の単位です

Sentence は、意味を成し、文法的に完結した最小の単位で、日本語の文にあたります。通常は主語と動詞を含み、一つのまとまった考えを表し、書き言葉ではピリオド、疑問符、感嘆符で終わります。The cat sat on the mat.(猫はマットの上に座った。)、Is it raining?(雨が降っていますか?)、Wow!(すごい!)は、どれも Sentence です。

Text は、日本語の文章にあたる言葉として、一つ以上の Sentence が組み合わさり、テーマや目的を持つ言語表現と説明されます。The sun is shining. The birds are singing. It's a beautiful day.(太陽が輝いている。鳥が歌っている。美しい日だ。)は、三つの Sentence が一つの美しい日を描く Text です。

SentenceとTextの違い

Text かどうかを決めるのは、長さではなくまとまりです

英語の言語学では、Text を長さで定義しない考え方が広く知られています。Halliday と Hasan は『Cohesion in English』(1976年)で、Text は大きさで決まる文法の単位ではなく、使われている言語のひとまとまりであり、ことわざ一つから戯曲一本まであり得る、という趣旨の説明をしました。EXIT の標識も、No smoking. の掲示も、置かれた場所と目的によって、それだけで Text になります。

では、まとまりとは何か。よく区別されるのが二つの面です。cohesion は、指示語、接続語、同じ語や言い換えのくり返しといった、表面に見える言葉のつながりです。coherence は、読み手が内容を一つの筋として理解できるかどうかという、意味と論理のつながりです。前者は文字の上に印があり、後者は読み手の頭の中で成り立ちます。

つなぎの言葉を足しても、筋は生まれません

英文がつながっていないと言われて、However、Therefore、Moreover を各 Sentence の頭に配った英文は、標識だらけで道のない地図に似ています。cohesion の印をいくら増やしても、Sentence どうしの論理の関係が通っていなければ、coherence は生まれないからです。むしろ、Therefore と書いたのに前の文が理由になっていないと、読み手は印と中身の食い違いに気づき、かえって混乱します。

逆に、接続語がほとんどなくても、coherence のある Text はあります。上の太陽と鳥の例には、つなぎの言葉が一つもありません。それでも一つの情景として読めるのは、読み手が、晴れた朝の情景、という共通の筋を補えるからです。

AIには、どちらのまとまりを直すのかを分けて頼みます

AIに、この英文の流れを良くして、とだけ頼むと、目に見える cohesion の手直し、つまり接続語の追加や言い換えで応えがちです。それがいちばん手軽で、直したことが見える直し方だからです。筋そのものに問題があるなら、そこは手付かずのまま、表面だけがなめらかになります。そこで、どちらを直してほしいのかを分けて書きます。

Check this text for coherence first. List any place where the logical link
between two sentences is unclear, and explain what link you assumed.
Do not rewrite yet.
Now revise only the cohesion: fix pronouns, repetition and connectives
so that they match the logical links we agreed on.
Show the original and the revised sentence side by side.

日本語で頼んでもかまいません。先に筋の点検、次に言葉のつなぎ、という順番にすると、AIが補った論理の関係を自分の目で確かめてから直せます。

ただし、coherence があるかどうかを最終的に決めるのは読み手で、客観的に測る物差しはありません。同じ Text でも、背景知識のある読み手には筋が通り、ない読み手には飛躍に見えます。AIが筋は通っていると判断しても、それはAIの持つ一般的な知識での判断にすぎず、あなたの読み手がどう読むかは、AIにも書き手にも正確には分かりません。

あなたが最近書いた英文で、接続語を全部消したら、どの Sentence のあいだの関係が分からなくなるでしょうか。その関係は、あなたの読み手にとっても当たり前のものですか。

この記事の背景にある考え方は、拙著『ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング』の6章1節「文章作成」に書きました。毎回形の変わる文章を書く前に、制約条件、読み手、テーマ、主張の基盤となる前提と伝えたい結論を先に決める、という手順の節で、「意図があいまいだと、文章は一貫性を欠き、まとまりのないものになります。」と書いています。まとまりは、接続語の数ではなく、何をどんな前提で言うかが決まっているかどうかから生まれる、という見方です。この節を読むと、英文でも和文でも、つなぎの言葉を足す前に、自分の文章の筋がどの前提に立っているのかを確かめられるようになります。

AIの答えが物足りないとき、疑うべきはAIか、自分の言葉か。

ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング 表紙

『ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング』

AIは言葉でしか動かない。プロンプトを暗記するのをやめ、構成要素に分解して、自分の言葉で意図を込める力を鍛える本です。

読み終えたとき、手元に残るもの

  • 必須、任意、形式の三つに分けたプロンプトの構造
  • 回答の質を変える、意図を込めた生きたプロンプト
  • 発注と検収は人が担う、AIとの役割分担
  • 章末の演習プロンプト26題

4刷重版。全国の大学図書館65館が所蔵しています(2026年10月時点)。

Amazonで見る

著者プロフィール・お問い合わせ