はじめに
GoogleのAIツール「NotebookLM」は、アップロードした資料(ソース)に忠実な回答を生成してくれる強力なツールです。ハルシネーション(AIの嘘)を防ぐ点では非常に優秀ですが、ビジネスの戦略立案や問題解決において「全体を網羅(MECE)した選択肢を洗い出したい」と思ったとき、少し困った壁にぶつかります。
それは、「ソースに書かれていない選択肢は提案してくれない」というNotebookLMの基本仕様です。
今回は、NotebookLMの特性を活かしながら「ソースにない選択肢も論理的に補完してMECEな状態を作る」ためのプロンプトの工夫や実践的なアプローチをご紹介します。
1. NotebookLMの基本仕様と「ソース外」の壁
NotebookLMは、アップロードされたドキュメントのみを情報源(グラウンディング)として回答を生成するRAG(検索拡張生成)という仕組みを採用しています。公式説明でも「アップロードしたソースの情報に基づいて回答するように設計されている」と明言されており、情報がない場合は「情報がソースにありません」と返してきます。
これはハルシネーションを防ぐための優れた仕様ですが、例えば「2023年のデータから2025年を予測して」といった未来予測のような、ソースにない情報を新たに”創作”させる指示はNGとされています。一方で、ソースにある数値に基づいた「計算」や「推論」は、根拠を明示すれば許容される傾向にあります。
2. MECE(モレなくダブりなく)のジレンマ
戦略の選択肢を出すときには、要素をMECEに分解して考えることが重要です。
例えば、「事業の方向性」について「継続強化」「縮小統合」「段階撤退」という3つの案が議事録(ソース)に書かれていたとします。これらを横軸にし、縦軸に「スピード(即時/段階的)」を掛け合わせてマトリクスを作った場合、「即時撤退」や「現状維持」といった、論理的には存在するけれどもソースには直接書かれていない「空白のマス(空白の枝)」が生まれます。
普通にNotebookLMに「MECEに選択肢を出して」と依頼すると、ソースにない部分を出力してくれなかったり、回答を拒否(エラー)したりする可能性があります。では、どうすればこの空白の枝を埋められるのでしょうか。
3. 実践!NotebookLMでMECEな選択肢をひねり出すプロンプト術
これを解決するには「無根拠の創作」と「論理的な補完」を明確に区別させることが鍵になります。具体的な方針とプロンプトのコツは以下の通りです。
① 各選択肢に「ソースの有無」属性を付与する
生成される選択肢のそれぞれに「ソースに該当あり」か「ソースに該当なし」のラベルを明記させる方針をとります。これにより、情報源の所在を透明にしつつAIに補完を許容させます。
② プロンプトの工夫
AIへの指示(プロンプト)には、次のような要点を含めます。
【プロンプトの例】
- 情報源の軸を組み合わせてMECEのツリーを作成した際、空白の枝があれば論理的に補完して埋めてください。
- 各選択肢には必ず「ソース内の有無」属性(「ソースに該当あり」または「ソースに該当なし」)を明記してください。
- 補完対象の選択肢は「軸に基づく論理補完」に基づくものであるとし、情報源からの引用は不要とします。
このように指示することで、「勝手な創作」ではなく「与えられた論理パターンの穴埋め」としてNotebookLMに認識させやすくなります。また、前提条件や評価基準をまとめた「前提リスト」を自作してソースとしてアップロードしておくことで、補完の精度を高めることも可能です。
③ 段階的なアプローチ(2段階プロンプト)
NotebookLMのバージョンや仕様によっては、上記でも「ソース外」であることを理由に補完を拒否される場合があります。その時は、焦らず2段階に分けて指示を出してみましょう。
- 「まずはソース内に存在する選択肢だけを抽出してください。」と指示。
- その後続けて、「上記の軸でMECEを完成させるため、漏れている選択肢を補完してください。補完分は『軸に基づく論理補完』とし、ソースの引用は不要とします。」と追加で指示します。
4. 別の手段を併用する:一般チャットAIの活用
ソース外のMECE補完をより柔軟かつ厳密に行いたい場合、ツールを使い分けるのも有効な手です。
具体的には、NotebookLMでソースからの要素抽出までを行い、その結果と軸をChatGPTやClaude等の別のAIに渡して「MECE補完だけを依頼する」という方法です。
NotebookLMを主軸にしつつも、適材適所で他のツールを組み合わせることで、より精度の高いアウトプットを生み出せます。
おわりに
結論として、NotebookLMは原則としてソース内の情報に回答が限定されますが、プロンプトで「何がソース内の情報で、何が論理的補完なのか」を定義してあげれば、MECEな選択肢の洗い出しも一定範囲で可能です。
AIツールの強みである「根拠の正確性」と「論理的思考力」をうまく引き出すプロンプト技術を活用し、日々の業務や思考の整理に役立ててみてください!



