AIの発達により人間に残る仕事はパフォーマンスである

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AI時代における、主体による構成・判断・表現

パフォーマンスは、一般に「実演」「遂行」「成果」「性能」などを意味する言葉である。舞台での演技、仕事の出来栄え、機械の処理能力など、使われる領域によって指すものが異なる。(メリヤムウェブスター)

本用語集では、AI時代における人間の役割を考えるために、この言葉を次のように定義する。

パフォーマンスとは、主体が目的・価値・全体像を自らのものとして定め、状況に応じて判断・選択し、それらを一つの表現や行動として外部に示し、その結果を引き受ける行為である。

中心にあるのは、目的、判断、表現をつなぐ主体の働きである。

文章を書く。人前で語る。企業の方向を決める。組織を設計する。作品をつくる。これらは外形的には異なる仕事である。しかし、何を目指すかを定め、全体を構成し、その場の条件に応じて選び、自らの行為として世界に差し出すという点で、共通した構造を持っている。

この共通構造を、ここでは「パフォーマンス」と呼ぶ。

この定義は、一般的な語義に加えて、本用語集が提示する概念である。その背景には、AIによる業務の自動化から、企業の変質、設計の目利き、意思決定、文章と講演へと進む、一連の問いがある。

1.出発点は、AIによって削減される仕事だった

議論の出発点は、顧客対応のAIエージェント化である。

ここでは、変化の構造を明確にするため、「従来100人で行っていた顧客対応を、AIエージェントと10人以下の人間で処理できる」という仮定を置く。数字は社会全体の雇用予測と区別し、思考実験として扱う。

一次受けはAIが担う。人間が担当するのは、エスカレーションされた案件と、仕組みの設計・運用・改善である。同じ仕事量とサービス水準を少人数で維持できるなら、その部門の労働需要は縮小する。

ここで「人間はより高度な仕事に移る」という説明には、人数の問題が生じる。100人全員が高度な対応やAI管理を学んだとしても、その業務に必要な人数が10人なら、残る90人の仕事は別に考える必要がある。

この問題に対して、仕事の分配、所得の分配、新しい雇用の創出という方向から考えることはできる。ただし、それらは主に、労働需要が減少した社会をどう維持するかという問いへの答えである。

もう一つ、異なる問いがある。

AIが大量の実務を担うようになったとき、人間の仕事を構成していた機能のうち、何が重要なものとして残るのか。

この問いを追うと、職種の一覧よりも、仕事を成立させる構造そのものに目を向けることになる。

2.作業の自動化から、組織の自動化へ

顧客対応の自動化を深く考えると、変わるのは窓口担当者の仕事だけではない。

一次受けの人数が減れば、それを前提としていたシフト管理、教育、進捗報告、案件の振り分け、管理階層にも変更が及ぶ。AIエージェントが業務を実行し、実行状況を記録し、条件に応じて処理を分岐するという仮定を広げれば、人間同士の連絡と調整を中心に組まれた組織も、再設計の対象になる。

ここから導かれるのが、**「会社から、人間組織のかなりの部分が抜ける」**という企業像である。

たとえば、少人数の出版社が、調査、制作、校正、販売分析、顧客対応をAIエージェント群に委ねる。その会社を支えるものは、大人数の部署構成から、出版方針、知的財産、顧客との関係、データ、業務上の権限、実行システムへと比重を移す。

この企業像を突き詰めると、「AIエージェント=法人」という発想が現れる。

ここでの等号は、機能上の比喩である。目的を持ち、資源を使い、取引し、判断と実行を継続する仕組みとして、AIエージェントと企業が接近する、という意味で用いている。法的人格をどのように扱うかは、別の論点である。

この段階で、人間の仕事として浮かび上がるのが、AIエージェントの設計である。

どの業務を担当させるか。どの情報にアクセスさせるか。どこまで決定権を与えるか。どの条件で停止するか。何を人間に引き渡すか。

つまり、人間は実務の担当者から、実務を成立させる仕組みの設計者へと位置を移す。

3.設計が自動化されても、設計の違いは残る

AIエージェントのワークフロー設計には、業務の順序を並べる以上の意味がある。

問い合わせへの対応を考えても、早く処理する設計、誤りを慎重に防ぐ設計、顧客との関係を深める設計では、情報の集め方も、判断の順序も、権限の与え方も変わる。ワークフローは、企業が何を重視しているかを、実際の動き方に変換したものなのである。

その意味で、Agent Workflowは、業務手順書、組織設計、権限規程を組み合わせたものに近い。さらに上位には、事業目的、経営方針、守るべき原則などがある。

ただし、ワークフローを作る作業自体も自動化の対象となる。実際にAFlowの研究では、ワークフローをコードで表現された探索空間として扱い、実行結果を使って構成を修正・改善する方法が示されている。評価は定められたベンチマークで行われており、企業経営全体の自動化とは射程が異なるが、設計作業の一部をAIに委ねる具体例にはなる。(arXiv)

ここで、次の二つを区別する必要がある。

設計案を作れることと、複数の設計案のどれを採用するかが決まることは、別の問題である。

設計の自動化が進むほど、この違いが重要になる。

4.建築の比喩が示す、目利きの役割

この違いは、建築を考えると理解しやすい。

同じ土地、同じ予算、同じ床面積という条件を置いても、開放感を重視する家、静けさを重視する家、家族の交流を重視する家、将来の変更を容易にする家など、異なる設計が成立する。

それぞれが異なる暮らし方を実現するため、単一の尺度で順位をつけるには、先に価値の重み付けを決める必要がある。

建築技術の高度化によって、構造の安全性や設備の効率を詳しく評価できるようになったとしても、「どのような暮らしを実現するか」という問いは残る。

企業設計も同様である。

顧客対応を徹底的に自動化する企業。少数の専門家による対応を事業の中心に据える企業。外部の専門家とのネットワークで案件ごとに編成を変える企業。複数の事業仮説を並行して試す企業。

これらは、それぞれ異なる将来像を持つ設計である。

しかも企業の場合、設計後にも市場、顧客、競合、技術が変化する。自社が新しいサービスを提供することで、顧客の期待そのものが変わる場合も想定できる。

そのため、設計案の評価には、現在の効率だけでなく、その設計が将来の選択肢をどう広げ、どう制約するかという視点が必要になる。

ここでいう目利きとは、好みの案を選ぶこと以上の働きである。

目利きは、設計の背後にある前提を読み、その設計が何を実現し、何を犠牲にし、どのような変化に対応できるかを見定める。そして、現在の状況に照らして、一つの設計を採択する。

案の美しさだけを評価するのではなく、その案を採ることで、どのような会社になっていくかを読むことである。

ただし、設計に多様性があるという事実から、選ぶ役割を人間だけが担えるという結論までは導けない。AIに比較や選定を委ねる場合も考えられる。ここで確認できるのは、設計案の生成が自動化されても、評価と採択という機能は引き続き必要だということである。

5.不確実性の中で、判断を行動につなげる

設計の採択には、不確実性が伴う。

ある設計が現在の条件で優れていても、その条件が将来も続くかは別に考える必要がある。いま見えている選択肢の外から、新しい競合や市場が現れる可能性もある。

そこで意思決定は、情報を集めて比較表を完成させることから、もう一歩先へ進む。

どの前提を採るか。どの程度の不確実性を受け入れるか。どの案に資源を投入するか。何を観察して継続や撤退を判断するか。

意思決定とは、判断を、現実の資源配分と行動へつなぐことである。

予測と意思決定の違いもここにある。

予測は、何が起きそうかを扱う。意思決定は、その見通しを踏まえて何をするかを扱う。同じ予測を共有していても、保有する資源、重視する価値、許容できる損失によって、採る行動は変わり得る。

また、不確実性があること自体は、人間による判断の優位を証明するものではない。ここでも、判断を自動化する可能性と、判断という機能が必要であることを分けて考える。

そのうえで、人間の行為に注目すると、重要なのは「正解を知っていること」だけに限られない。

どの前提に立ったかを理解し、その前提の下で選び、行動し、現実からの応答を受けて判断を改める。この一連の過程を担うことが、人間の仕事の一つの核になる。

この段階まで来ると、設計、目利き、意思決定は、それぞれ独立した能力というよりも、一つの行為を構成する働きとして見えてくる。

6.トップダウンとは、全体から部分の意味を決めること

この一連の働きを捉えるうえで重要なのが、トップダウンの構成である。

ここでいうトップダウンとは、目的や全体像を置き、そこから個々の部分の役割を決めることを指す。

文章であれば、「読者に何を理解してもらうか」を軸に、論点、事例、順序、言葉を選ぶ。

講演であれば、「聴衆にどのような認識の変化を起こすか」を軸に、説明、問いかけ、実演、間の取り方を組み立てる。

企業であれば、「どのような価値を、誰に届けるか」を軸に、事業、組織、権限、業務を構成する。

重要なのは、個々の部分が、それ自体として優れているかだけではない。

その部分が、全体の中で何を担っているかによって、採用や修正を判断する。

よくできた説明でも、文章の主張から読者を遠ざけるなら省く。効率的な業務でも、顧客との関係を損なうなら設計を変える。優れた機能でも、事業の方向に合わなければ実装を見送る。

この「全体に照らして部分を扱う働き」が、ここでいうトップダウンである。

もちろん、最初に完成形を固定する必要はない。書いている途中で主張が明確になることもあれば、実行して初めて目的の置き方を見直すこともある。全体から部分を構成し、部分から得た発見で全体を更新する。その往復を含めて考える。

技術面では、一点を修正しておく必要がある。先の議論にあった「AIはボトムアップしかできない」という断定は、AIの機能を限定しすぎている。トークンを順番に生成する仕組みと、全体計画を立てて下位の課題を構成する機能は、異なる説明の階層にある。Plan-and-Solveの研究では、先に計画を作り、その計画に沿って部分課題を解く方法が示されている。(ACL Anthology)

また、Tree of Thoughtsでは、複数の推論経路を比較し、先を見通し、必要に応じて戻ることで、全体的な選択を行う仕組みが研究されている。これらは、人間の執筆や経営と同じ能力が保証されるという意味ではなく、AIの能力を「部分の積み上げだけ」と表現することには修正が必要だという根拠になる。(arXiv)

したがって、本稿のパフォーマンス概念は、AIの永久的な能力限界を前提にするよりも、目的、全体の構成、状況に即した判断、表現、結果への応答が、主体の行為としてどうつながるかに焦点を置く。

7.なぜ「パフォーマンス」と呼ぶのか

ここまでの議論を「意思決定」だけでまとめると、決めた後の表現と実行が見えにくくなる。

「設計」だけでまとめると、実際の状況に応じて構成を変える働きが捉えにくい。

「創造性」だけでまとめると、新奇なものを作ることに関心が偏る。

パフォーマンスという言葉を用いるのは、考えること、選ぶこと、構成すること、実際に行うことを、一続きの行為として捉えるためである。

その構造には、五つの側面がある。

第一に、主体がいることである。その表現や行動が、誰の判断によるものとして成立しているかが意味を持つ。ここでの主体性には、他者から与えられた役割や目的を理解し、自らの行為として引き受ける場合も含まれる。

第二に、目的と全体像があることである。何を目指し、何を重視し、どのような意味を実現するかが、個々の選択を方向づける。

第三に、状況に応じた判断があることである。相手、時機、環境、手持ちの資源などを踏まえ、具体的な行動を選ぶ。

第四に、外部への表現や実行があることである。文章、発話、作品、設計、資源配分などを通じて、判断が現実の形を取る。

第五に、結果への応答があることである。批判、質問、反応、失敗、新しい情報を受け取り、自らの判断や行動との関係で扱う。

ここでいう「結果を引き受ける」とは、単に責任者の名前を置くこと以上の意味を持つ。

なぜその判断をしたかを説明できる。誤りが見えれば修正する。相手の反応から、自分の構成がどう働いたかを学ぶ。そうした応答まで含めて、一つの行為として捉える。

この意味でパフォーマンスは、舞台上の華やかな実演から、静かに書かれた文章、会議での一つの判断、日々の組織運営までを横断する。

8.文章を書くことは、認識を構成するパフォーマンスである

文章を書く仕事を、文字列を生み出す作業として捉えると、その評価は、文法の正確さ、読みやすさ、情報量などに向かう。

一方、論考としての文章には、別の評価軸がある。

何を問題として取り出したか。その問題を、どの角度から捉えたか。どの前提を置いたか。どの論点をつなぎ、何を省いたか。読者を、どの認識からどの認識へ導いたか。

たとえば、「AIによって仕事が減る」という主題に対して、関連する論点を幅広く紹介する文章を作ることはできる。

そこから、「仕事が減るのは、人間を束ねる組織の必要性が変わるからではないか」と問いを立て直せば、文章の構造そのものが変わる。

個々の職業の代替可能性よりも、企業が何のために存在するかが中心になる。さらに、AIエージェントを束ねる仕組みを誰が設計するか、複数の設計思想をどう選ぶか、誰の判断として実行するか、という論点へ進める。

ここで書き手が行っているのは、情報の追加だけではない。

何を一つの問題として見せるかを決め、読者が世界を捉える枠組みを構成している。

この働きが、文章におけるパフォーマンスである。

書き手の価値は、自分で一文字ずつ入力したという事実だけに置かれない。資料の探索や表現の調整をAIに委ねた場合も、何を主張し、どの論証を採用し、どの表現を自分のものとして世に出すかという構成には、書き手の関与があり得る。

その関与の実質を問うことが重要である。

生成された文章に名前を付けることと、前提を吟味し、論旨を再構成し、反論に応答できる文章として公表することでは、主体が担っている働きが異なる。

また、文章は結論の容器であると同時に、結論を作り直す場にもなる。言葉にしたことで前提の弱さが見え、段落を並べ替えたことで因果関係の取り違えに気づく。表現する過程で判断が変わる。

書くことは、判断の結果を示す行為であり、判断そのものを形成する行為でもある。

9.人前で話すことは、その場を構成するパフォーマンスである

講演についても、原稿の内容を音声として届ける側面と、その場の人々との関係を構成する側面を分けて考えられる。

たとえば、AIエージェントの操作方法を説明する講座を想定する。

受講者から、「この仕組みが誤って発注したとき、誰が止めるのか」という質問が出たとする。

その質問を単なる操作上の補足として処理するか。受講者の関心が、便利さから権限と責任へ移ったと捉えるか。あるいは、講座全体の前提が共有されていなかったと判断するか。

どのように受け取るかによって、その後の講義は変わる。

講師は、予定していた実演を続けることもできる。いったん操作説明を止め、権限の範囲や停止条件を説明することもできる。受講者自身の業務に置き換えた対話へ進むこともできる。

ここにあるのは、用意した情報を届ける作業に加えて、現在の場を解釈し、その場で何を成立させるかを選ぶ行為である。

話す順序、具体例、問いかけ、声の調子、沈黙、話題の切り替え。それぞれが、講義全体の目的との関係で意味を持つ。

さらに、人前で話すことには、相手からの応答が同じ場に返ってくるという特徴がある。質問によって説明の前提が試され、戸惑いによって言葉の届き方が見え、反論によって自分の立場が問い直される。

講師は、その応答を受けながら、自らの構成を維持し、あるいは更新する。

だから、人前で話すことのパフォーマンスは、滑らかに話す技術だけで測られない。

その場で何が起きているかを読み、目的に照らして言葉を選び、相手との間に理解や判断の変化を生み出すことに、その中核がある。

10.経営とAgent Workflow設計も、パフォーマンスとして捉えられる

経営においても、同じ構造を見ることができる。

事業の目的を置く。顧客と市場を解釈する。複数の可能性から方向を選ぶ。その選択を、商品、価格、権限、組織、投資として具体化する。結果を受け取り、必要に応じて変える。

経営は、その一連の過程を継続する行為である。

この視点から見ると、Agent Workflowは、経営上の判断を実行可能な形にしたものになる。

たとえば、「顧客の離脱をできるだけ減らす」という目的と、「顧客が自分に合う選択をできるようにする」という目的では、解約対応のワークフローが変わり得る。

解約理由を詳しく聞くのか。代替案をどの段階で提示するのか。どこで手続きを完了させるのか。どの情報を顧客に示すのか。

そうした細部に、企業の設計思想が表れる。

したがって、ワークフローの設計者が提供する価値を「ノードをつなぐ技能」だけで評価すると、重要な働きを取り落とす。

目的を業務に翻訳すること。顧客にどのような体験が生じるかを読むこと。例外時の権限と介入条件を決めること。実行結果から、手順だけでなく目的の置き方も検討すること。

これらまで含めて、設計のパフォーマンスと捉えることができる。

ただし、その価値は役職名や自己評価だけでは確定しない。

「人間の目利きを加えたことで何が変わったか」が問われる。想定外の問題を発見したのか。顧客の理解が深まったのか。将来の変更が容易になったのか。設計の前提を早く修正できたのか。

主体が関与することと、その関与が優れた価値を生むことも、分けて評価する必要がある。

パフォーマンスには、良いものも、未熟なものもある。自ら選んだという事実は、その選択を検討する出発点になる。

11.「人間に残るのはパフォーマンスである」という命題の射程

ここまでの議論を踏まえると、「AI時代に人間に残るのはパフォーマンスである」という命題は、次のように理解できる。

人間の役割を、処理した作業量から捉えるだけでなく、目的・判断・表現を一つの行為として成立させる働きから捉え直す。

これは、文章、講演、経営、設計などを横断して、人間の関与を検討するための見方である。

同時に、この命題を、人間の雇用が将来にわたって保証されるという予測へ、そのまま置き換えることには慎重さが必要になる。

ここには、三つの異なる問いがある。

一つは、その機能が必要かという問いである。目的の採択、設計の評価、不確実な状況での判断、結果への応答は、事業や表現活動の中で必要になる。

もう一つは、その機能を人間が担う理由は何かという問いである。能力、信頼、経験、当事者性、相手の希望など、具体的な理由を検討する必要がある。

さらに、その人間の関与に、どれほどの需要と対価が生じるかという問いがある。ある役割が重要であることと、多数の人を雇用する規模の仕事になることは、別の問題である。

したがって、最初に置いた「100人の仕事が10人以下で可能になる」という仮定に対して、パフォーマンスという概念だけで残る90人の雇用問題が解決するわけではない。

ここで得られるのは、雇用量への保証よりも、人間の仕事を、どの機能に注目して再設計し、評価するかという視点である。

また、定義の中に「人間だけに可能」と書き込めば、人間の固有性を言葉の上で確保することはできる。しかし、それでは技術や現実を検討する余地が狭くなる。

本稿では、主体による構成、判断、表現、応答という働きを定義し、それが具体的な仕事の中で誰によって、どのように担われているかを問う。

そのほうが、人間の価値を実質に即して捉えられる。

12.パフォーマンスは、選択を世界の中で成立させる行為である

ここまでを振り返ると、議論は一つの線でつながっている。

顧客対応の自動化を考えると、必要な人員の減少が見えてくる。人員の減少を考えると、人間を束ねる組織の変化が見えてくる。組織の変化を考えると、AIエージェントをどう設計するかが問題になる。

設計の自動化を考えると、複数の設計思想をどう評価し、採択するかが残る。そこには目利きと意思決定がある。そして、その判断を文章、発話、事業、組織として現実に成立させる行為に、パフォーマンスという共通構造が見えてくる。

この意味で、パフォーマンスは、最後に人前へ出る段階だけを指す言葉ではない。

何を問題とするかを選ぶことから始まり、全体を構成し、具体的な表現や行動に変え、現実からの応答を受け取るところまでを含む。

文章を書く人は、言葉によって認識を構成する。講師は、対話と表現によって学びの場を構成する。設計者は、仕組みに価値判断を組み込む。経営者は、資源と権限を配分して事業の方向を具体化する。

それぞれの仕事で問われるのは、何をどれだけ処理したかに加えて、どのような全体を、自らの判断によって成立させたかである。

そこで、定義に立ち戻る。

パフォーマンスとは、主体が目的・価値・全体像を自らのものとして定め、状況に応じて判断・選択し、それらを一つの表現や行動として外部に示し、その結果を引き受ける行為である。

さらに凝縮すれば、主体が、自らの判断を、世界の中で一つの行為として成立させることである。

AI時代に人間の役割を考える際、この視点は「どの作業を担当するか」という問いを、「何を自らの判断として構成し、実現するか」という問いへと広げる。

その転換を捉えるための概念が、ここでいうパフォーマンスである。

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