調査基準日:2026年9月7日
対象:日本の代表的な補助金、許認可、届出、登記その他の行政手続
主要情報源:デジタル庁、各府省庁、国税庁、法務省・法務局、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、中小企業庁、中小企業基盤整備機構、警視庁、自治体、e-Gov、e-Tax、Jグランツ、JCIP等の公式情報
調査の要点
本レポートは、日本の行政手続で申請者が提出する情報を、紙・電子ファイル・フォームの三方式に分け、全国統計と27の事例から実務上の違いを整理する。
① 紙
申請書・届出書そのものを紙として作成し、窓口、郵送等で提出する方式。
② 電子ファイル
Word、Excel、PDF等で申請書・提案書を作成し、それ自体を電子メール等で行政機関に送る方式。
③ フォーム
e-Gov、e-Tax、Jグランツ、JCIP、eMLIT、マイナポータル等の行政システムに、申請情報を構造化された項目として入力・送信する方式。PDFやExcelを添付する場合も、申請本体がシステム上のデータであれば③とする。
日本の行政手続を「紙から電子へ」という二分法だけで捉えると、現在の実態を正確に把握できない。高頻度・全国規模の主要手続は③フォーム/専用システム型へ移行している一方、低頻度の手続では②電子ファイル型が広く使われ、自治体実務や本人出頭を要する手続には①紙型も存在する。
最新のデジタル庁「令和7年度 行政手続等の棚卸調査」は2026年8月26日に公表され、76,275種類の法令上の手続のうち40,932種類、53.7%がオンライン化実施済みである。前年調査から2,195種類増えた。もっとも、この全国統計の調査基準日は2025年11月1日であり、年間件数は原則として2024年4月1日から2025年3月31日までの実績である。したがって、本レポートでは全国統計についてこのタイムラグを明記した上で、各個別手続の提出経路は2026年9月7日時点の公式ページを別途確認した。 [1] [2]
さらに重要なのは件数である。年間100万回以上行われる手続は184種類、全76,275種類のわずか0.2%だが、把握できた年間手続件数の95.1%を占める。この高頻度層は83.7%がオンライン対応し、オンライン対応手続の実利用率も83.5%に達している。つまり、「手続の種類を数える」と紙・電子が混在して見える一方、実際に何回行政手続が行われているかを見ると、高頻度領域ほどデジタル側に大きく偏る。 [2]
ただし国と自治体には大きな差がある。住民・企業から国への申請ではオンライン化率73.9%、オンライン利用率78.5%。地方自治体への申請ではオンライン化率48.2%、オンライン利用率28.9%である。地方については、オンライン対応手続のうち、年間件数を把握できた集計対象では71.1%が非オンラインである。もっとも、デジタル庁の「非オンライン」は本レポートの①「紙」と完全には一致しないため、71.1%をそのまま「紙の割合」と表現するのは正確ではない。 [2]
オンライン化済みの「民間→行政」の申請18,075種類だけを見ると、行政機関が用意したシステム等によるものが56.8%、電子メールが42.9%、無回答0.3%である。したがってオンライン行政の内部でも、③フォーム型が②電子ファイル型を上回る。しかし電子メール型は現在も4割強存在しており、決して例外的な方式ではない。 [2]
その42.9%の意味にも注意が必要である。年間100万件以上あるオンライン申請87種類のうち、行政システム型は85種類、メール型は2種類にすぎない。10万~100万件の192種類でも188種類がシステム型、1万~10万件の377種類でも356種類がシステム型である。一方、件数が少なくなるにつれてメール型の構成比が急増する。つまり②電子ファイルは、高頻度の主流チャネルというより、低頻度の専門手続や個別公募で使われる方式と解釈するのが妥当である。 [2]
| 観点 | 現在の実態 |
|---|---|
| 国への高頻度な申告・届出 | ③フォーム/専用システムが中心 |
| 国の主要な中小企業向け補助金 | ③フォームが中心 |
| 農水省等の専門的・単発的な補助事業公募 | ②電子ファイルが複数の公募で使われる |
| 地方自治体の実利用 | 集計対象のオンライン利用率は28.9% |
| 帰化・戸籍等、一部の本人性・原本性の強い手続 | ①紙・対面型が残る |
| 将来方向 | ③構造化データ+必要最小限の添付へ |
事業者向け補助金については政府方針も明瞭である。デジタル庁は「2025年度以降、全ての事業者向け補助金の電子申請への対応を原則」とする方針を掲げ、Jグランツ等の利用拡大を進めている。Jグランツ自体も府省庁・自治体の補助金・助成金をオンライン申請するウェブサービスとして位置付けられている。したがって、主要補助金では今後さらに③への集約が進むと見るのが合理的である。 [3] [4]
調査設計と分類基準
本レポートでは、「申請書がPDFかどうか」ではなく、行政側が申請本体をどの形式で受け取るかを分類軸に置いた。
たとえば、Jグランツで企業名、法人番号、補助対象経費、事業内容等を画面上に入力し、その後に決算書PDFをアップロードする場合、これは③フォームに分類する。申請本体が構造化されたシステムデータだからである。
逆に、農林水産省の公募でExcelの課題提案書と決算書PDFをメールに添付して送る場合、行政が受け取る申請本体そのものがファイルであるため②とする。2026年度食品アクセス確保対策事業は、実際に「原則として電子メール」により「電子ファイルで提出」と明記している。 [5]
申請本体をシステムの項目データとして送信する。PDF等の添付があっても③。
Word・Excel・PDF等の申請書そのものを、メール等で電子送信する。
申請本体を印刷・記入した書面として、窓口や郵送で提出する。
本レポートの分類。複数経路がある場合は公式の「のみ」「原則」を確認し、指定がなければ併用とする。オンライン経路の存在は、実利用の多数派を意味しない。
分類基準は次のとおりとする。
| 判定 | 本レポートでの意味 | 典型例 |
|---|---|---|
| ① 紙 | 申請本体が物理書面。窓口、郵送、本人出頭等 | 帰化許可申請、婚姻届 |
| ② 電子ファイル | 申請本体がWord、Excel、PDF等で、メール等を通じて送信 | 農水省の一部補助金公募 |
| ③ フォーム | 行政システムに項目入力・申請データ送信。ファイル添付の有無を問わない | e-Gov、e-Tax、Jグランツ、JCIP、eMLIT、マイナポータル |
| 併用型の扱い | 紙とオンライン等が併存する場合、「のみ」「原則」があればその経路を主分類。優先指定がなければ正式なオンライン経路を示し、実際の多数派は「未特定」と記載 | 宅建業免許、食品営業許可等 |
ここで「③フォーム」という名称には、一般的なブラウザ上のWebフォームだけでなく、e-Govのように専用アプリケーションを利用して構造化された申請データを送る方式も含めている。e-Govは2026年8月31日時点でも電子申請サービスを提供しており、アカウント、ブラウザ設定、アプリケーション等を利用する仕組みである。 [6] [7]
また、この分類とデジタル庁の公式統計分類は完全には一致しない。デジタル庁は主として「オンライン化実施済/未実施/その他」、オンライン申請について「行政機関が準備したシステム等/電子メール」と分類している。本レポートの②と③は後者にかなり近いが、①「紙」を全国統計から独立して切り出す公式集計は確認できなかった。したがって、「日本全国で①紙○%、②ファイル○%、③フォーム○%」という三分割の全国比率を公式統計として提示することはできない。 [2]
「オンラインでない=すべて紙」「メール=すべてPDF」という単純な置換は、公式統計が示している範囲を超える。
主要な申請システムの公式入口を以下に示す。
| システム | 位置付け | 現行公式URL |
|---|---|---|
| e-Gov電子申請 | 労働・社会保険等を含む府省横断電子申請 | 公式資料を確認 [6] |
| e-Tax | 国税の申告・申請・届出 | 公式資料を確認 [8] |
| Jグランツ | 国・自治体の補助金・助成金のオンライン申請 | 公式資料を確認 [4] |
| JCIP | 建設業許可・経営事項審査 | 公式資料を確認 [9] |
| eMAFF | 農林水産省共通申請サービス | 公式資料を確認 [10] |
| 食品衛生申請等システム | 営業許可・営業届出等 | 公式資料を確認 [11] |
全国統計から見える提出方法の構造
デジタル庁の最新調査は、法令上の手続を横断して把握するための一次資料である。調査対象は26府省庁等が所管する法令上の全手続で、調査時点は2025年11月1日、結果公表日は2026年8月26日である。年間手続回数については原則として2024年度実績で、回答された数値のみを集計し、自治体窓口手続等については推定値も含む。 [1] [2]
公式PDF:
公式資料を確認
公表資料では、総数76,275種類に対し、実施済40,932種類(53.7%)、未実施22,943種類(30.1%)、その他12,372種類(16.2%)と記載されている。内訳の合計は76,247種類で、総数と28種類の差がある。本レポートでは原資料の数値を保持し、この不整合を明記する。 [2]
出典:デジタル庁「行政手続等の調査結果概要」3ページ(2026年8月26日公表)。手続種類数ベース。調査時点は2025年11月1日。原資料の総数76,275種類と内訳合計には28種類の差があるため、構成割合は原資料の表示値を使用。
この53.7%だけを見ると、「行政手続はようやく半分程度オンライン化した」と読める。しかし件数ベースでは印象が大きく変わる。
年間100万回以上処理される手続は184種類しかないにもかかわらず、把握された年間手続件数334,264万回、すなわち約33.43億回のうち317,808万回、95.1%を占める。この高頻度184種類では83.7%がオンライン対応し、そのオンライン利用率は83.5%である。 [2]
| 年間手続件数帯 | 手続種類数 | オンライン化率 | オンライン利用率 |
|---|---|---|---|
| 100万回以上 | 184 | 83.7% | 83.5% |
| 10万~100万回未満 | 401 | 70.1% | 62.5% |
| 1万~10万回未満 | 909 | 61.8% | 54.8% |
| 1,000~1万回未満 | 1,638 | 58.5% | 50.2% |
| 100~1,000回未満 | 2,713 | 61.8% | 56.8% |
| 10~100回未満 | 4,570 | 65.3% | 65.0% |
| 1~10回未満 | 7,514 | 72.0% | 69.3% |
| 0回 | 31,108 | 57.3% | — |
| 不明 | 27,238 | 40.7% | — |
| 全体 | 76,275 | 53.7% | 集計対象では86.0% |
出典:デジタル庁「行政手続等の調査結果概要」。オンライン利用率はオンライン・非オンライン件数が把握できる手続を対象とするため、オンライン化率とは母集団が異なる。 [2]
さらに、住民・企業から「国」と「地方」への申請を分けると、行政DXの二層構造がはっきりする。
国向けでは20,751種類のうち15,331種類がオンライン化され、オンライン化率73.9%。利用率を計算できる年間約13.546億回のうち約10.630億回がオンライン処理され、オンライン利用率78.5%である。地方向けでは5,696種類のうち2,744種類がオンライン化され、オンライン化率48.2%。利用率対象の年間約2.780億回のうちオンラインは約0.803億回で、利用率28.9%である。 [2]
図3では、オンライン化率とオンライン利用率を別々に示す。オンライン化率は手続種類数、利用率はオンライン対応手続の把握できた年間件数を分母とする。
A オンライン化率(手続種類数ベース)
B オンライン利用率(年間件数ベース)
出典:デジタル庁「行政手続等の調査結果概要」6ページ(2026年8月26日公表)。AとBは分母が異なる。Bはオンライン対応手続のうち件数を把握できた集計対象。年間件数は原則2024年度。非オンラインを紙と同一視しない。
地方向け申請のオンライン利用率は、集計対象となった件数では28.9%である。ただし、オンライン化率48.2%とは分母が異なるため、単純な差分を未利用率とは解釈できない。デジタル庁は、地方向けでは電子メールによるオンライン化が多く、年間件数の把握が難しい点も指摘している。 出典:概要6ページ
次に、今回の②と③に最も近い統計を見る。
オンライン化済みの「民間→行政」の申請18,075種類について、行政機関が準備したシステム等が56.8%、電子メールが42.9%、無回答0.3%である。 [2]
出典:デジタル庁「行政手続等の調査結果概要」7ページ(2026年8月26日公表)。オンライン化済みの「民間→行政」の申請18,075種類が対象。処理件数の割合でも、本レポートの三方式の全国比率でもない。無回答0.3%も数値で表示。
オンライン化済み申請のうち年間1件以上あるものについて、行政システム型の構成比を計算すると次のようになる。 [2]
| 年間件数帯 | システム型 | メール型 | システム型比率 |
|---|---|---|---|
| 100万件以上 | 85 | 2 | 97.7% |
| 10万~100万件未満 | 188 | 4 | 97.9% |
| 1万~10万件未満 | 356 | 21 | 94.4% |
| 1,000~1万件未満 | 550 | 84 | 86.8% |
| 100~1,000件未満 | 804 | 286 | 73.8% |
| 10~100件未満 | 960 | 704 | 57.7% |
| 1~10件未満 | 1,154 | 1,081 | 51.6% |
出典:デジタル庁「行政手続等の調査結果概要」14ページ(2026年8月26日公表)。オンライン化済み「民間→行政」の申請のうち年間1件以上・無回答を除く。比率=システム型種類数÷(システム型+メール型種類数)。直前の表の元数値から算出し、小数第1位に四捨五入。
③フォーム型は「手続種類数で少し多い」だけではなく、高頻度手続になるほど高い比率を占める。②電子ファイル型は、年間数件から数百件程度の専門手続・個別公募で存在感を増す。
デジタル庁によれば、添付書類を求める電子メール型手続の約60.0%が「その他の添付書類」を求めており(複数回答)、図面、地図、写真等のように行政機関間のデータ連携だけでは省略しづらい資料も多い。この点からも、電子メール方式が個別性の高い案件で残りやすい構造が読み取れる。 [2]
代表的行政手続の提出方法一覧
以下は、2026年9月7日時点の公式情報を基に分類した代表例である。この表は提出方式の違いを示すために選んだ事例集であり、無作為標本ではない。したがって、この27件の①②③の構成比を日本全体の比率として使用することはできない。
また「③フォーム」とした手続でも紙の代替経路が残っていることがある。その場合は備考に明記した。実際にどちらが多数利用されているかについて公式な個別利用統計が確認できなければ「未特定」とした。
| 手続名 | 分野 | 分類 | 根拠URL | 実務上の判定・備考 |
|---|---|---|---|---|
| ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第23次 | 国・補助金 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [12] | 電子申請。GビズIDプライムを利用。申請本体は電子申請システム側。 |
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 国・補助金 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [13] | 「申請マイページ」で代表者情報等を入力し、必要書類を添付。典型的な「構造化入力+ファイル添付」。 |
| 中小企業省力化投資補助金・一般型 | 国・補助金 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [14] | 公式に「申請は電子申請システムのみ」と明記。応募・交付申請ともシステム。 |
| 事業承継・M&A補助金 第15次 | 国・補助金 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [15] | Jグランツによる電子申請、GビズIDを利用する制度。 |
| 小規模事業者持続化補助金・一般型通常枠 | 国・補助金 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [16] | 電子申請システムに経営計画・補助事業計画を入力し、加点等の書類を添付。9月7日時点では第20回情報が公表済みで、受付開始は11月5日予定。 |
| 中小企業新事業進出補助金 第4回 | 国・補助金 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [17] | 専用の「補助金申請システム」で応募。公募回ごとの受付状況は公式案内を参照。提出方法は電子申請。 |
| 令和8年度食品アクセス確保対策事業 | 国・補助金 | ② 電子ファイル | 公式資料を確認 [5] | 課題提案書はExcel。原則電子メールで電子ファイル提出。やむを得ない場合は郵送・宅配便・持参。 |
| 令和8年度農業分野のJ-クレジット創出推進支援事業 | 国・補助金 | ② 電子ファイル | 公式資料を確認 [18] | 原則電子メール。Word/PDF等を添付。1メール7MB以下等の実務条件あり。 |
| 令和8年度スマート農業技術活用促進総合対策費補助金・ロボット技術安全性確保策検討 | 国・補助金 | ② 電子ファイル | 公式資料を確認 [19] | 申請書類を電子メールで指定アドレスに提出。Excel様式あり。 |
| 野菜種子安定供給緊急対策事業・種子防除技術の維持・確立事業 | 国・補助金 | ② 電子ファイル | 公式資料を確認 [20] | Wordの課題提案書、Excel経費内訳書等をメール送信。2026年9月7日17時が提出期限。 |
| 帰化許可申請 | 国・許可 | ① 紙 | 公式資料を確認 [21] | 15歳以上は本人が法務局・地方法務局に出頭し「書面によって」申請。書面・本人出頭を要する例。 |
| 建設業許可申請 | 国・都道府県・許可 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [9] | JCIPで電子申請。紙経路の扱いは許可行政庁により確認が必要。実利用比率は未特定。 |
| 宅地建物取引業免許申請・国土交通大臣免許 | 国・許可 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [22] | eMLITでオンライン申請。紙郵送も受理される。知事免許は都道府県ごとに対応状況が異なるため全国一律の実利用多数派は未特定。 |
| 飲食店等の営業許可申請 | 国制度・自治体実施 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [11] | 食品衛生申請等システムでオンライン申請可能。紙による保健所窓口申請も引き続き可能。実利用多数派は自治体別で未特定。 |
| 古物商・古物市場主の許可申請(東京都) | 地方・許可 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [23] | 2026年7月21日更新の警視庁オンライン対象手続に許可申請自体が追加済み。一方、通常ページには警察署を申請場所とする案内も存在。東京都以外は未特定。 |
| 法人設立届出書 | 国税・届出 | ③ フォーム | 公式資料を確認/公式資料を確認 [8] | e-Taxで申請・届出データを送信可能。電子データが本体のため③。 |
| 個人事業の開業・廃業等届出 | 国税・届出 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [24] | e-Taxソフトで作成・提出。書面を持参・送付する方法も公式に残る。実利用比率は未特定。 |
| 所得税の青色申告承認申請 | 国税・申請 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [25] | e-Taxソフトで作成・提出可能。書面の持参・送付にも対応。 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 国・届出 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [7] | e-Gov電子申請対象。電子証明書又は条件によりGビズIDを利用。 |
| 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 国・届出 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [7] | e-Govの「事業(所)の新規適用」から電子申請可能。 |
| 転出届 | 地方自治体・届出 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [26] | マイナンバーカードで電子署名し、マイナポータルから転出元市区町村へ送信。転入時は原則来庁が残る。 |
| 婚姻届(横浜市の実務例) | 地方・戸籍届出 | ① 紙 | 公式資料を確認 [27] | 婚姻届に署名し、区役所戸籍課又は夜間・休日窓口等へ提出。様式をオンライン取得できることと電子申請は別概念。全国自治体の将来対応状況は未特定。 |
| 児童扶養手当の認定請求・届出(横浜市) | 地方・申請 | ① 紙 | 公式資料を確認 [28] | 横浜市公式一覧で窓口または郵送受付。自治体ごとの差があるため全国の提出方式は未特定。 |
| 認可外保育施設の設置・変更・運営状況報告・休止・廃止(横浜市) | 地方・届出 | ① 紙 | 公式資料を確認 [28] | 横浜市では窓口または郵送受付と案内。全国自治体の方式は未特定。 |
| 株式会社設立登記 | 国・商業登記 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [29] | オンライン登記申請に対応。電子署名により一部添付書類を省略可能。書面申請経路も存在する。 |
| 不動産登記申請一般 | 国・不動産登記 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [30] | 法務局は「書面申請、オンライン申請の2つ」があると明記。表ではオンライン経路のデータ構造から③としたが、実利用多数派はこの資料だけでは未特定。 |
| 不動産所有者の住所変更登記 | 国・不動産登記 | ③ フォーム | 公式資料を確認 [31] | 住民票コードで住所移転の経緯を確認できる場合は添付情報を省略できる。確認できない場合は住民票等の原本を別途提出する必要がある。 |
この一覧からも、「補助金だからフォーム」「許認可だから紙」といった単純な分類が成立しないことが分かる。
中小企業庁・中小機構系の主要な事業者向け補助金では、ものづくり補助金、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金、事業承継・M&A補助金、新事業進出補助金など、③フォーム型が中心になっている。 [12] [14] [17] [13] [15]
その一方、農林水産省の2026年の公募には、食品アクセス確保対策事業、農業分野J-クレジット創出推進支援事業、スマート農業のロボット安全性事業、野菜種子安定供給緊急対策事業など、課題提案書等をWord・Excelで作成しメール送信する②型が現実に存在する。 [18] [19] [20] [5]
大規模・共通化しやすい制度 → ③
専門性が高く公募頻度や応募者数が限定される制度 → ②
分野別に見る実務的な意味
補助金のフォーム申請でも、事業計画や証明書などの添付資料が必要になる。
③フォーム型になっても、事業計画、財務資料、見積書、決算書、各種証明書等の添付ファイルは依然として必要である。デジタル化・AI導入補助金2026でも、申請マイページに申請者基本情報を入力した上で、必要情報と書類を添付し、IT導入支援事業者がITツール情報・事業計画値を入力し、最終確認・宣誓後に提出する構造である。 [13]
フォーム型では、申請本体を項目データとして提出し、証拠・補足資料を添付する。
この傾向はデジタル庁の全国調査にも表れている。事業者向け手続で法令上要求される添付書類として、商業登記事項証明書2,791種類、定款2,535種類、決算書1,627種類などが多数存在する。一方、登記事項証明書等については行政機関間の情報連携による省略も進んでいる。 [2]
許認可では、制度上のオンライン化と、現場で完全にデジタル完結することを区別する必要がある。
飲食店営業許可は食品衛生申請等システムからオンライン申請できるが、食品営業という性質上、施設の確認・保健所との調整等まで単純なフォーム送信だけで完結するとは限らない。厚生労働省はオンライン申請を提供すると同時に、従来どおり紙で保健所窓口に申請することも可能としている。 [11]
宅地建物取引業免許についても、大臣免許はeMLITでオンライン化されているが、紙による郵送申請も残る。知事免許は都道府県ごとにオンライン受付状況を確認するよう国土交通省自身が案内している。したがって「宅建業免許は全国一律でフォーム化済み」という説明は精度を欠く。 [22]
古物商許可はさらに現在進行形である。東京都では警視庁が2026年7月21日更新のオンライン対象一覧に「古物商・古物市場主の許可申請」を掲載しているため、以前の「古物商許可は警察署へ紙申請」という説明だけでは2026年9月時点の東京都の状況を正しく表さない。一方、通常の許可案内ページには主たる営業所所在地を管轄する警察署を申請場所とする案内も残っている。つまり現在は移行・併用フェーズと見るのが正確である。 [23]
届出分野では、国税・社会保険・労働保険のように大量反復される事業者手続が③に集約されやすい。
e-Govでは雇用保険被保険者資格取得届、健康保険・厚生年金保険新規適用届等を電子申請できる。e-Govは2026年8月31日時点の申請可能手続情報を公開しており、GビズID等の認証も利用される。 [7] [6]
国税でも、個人事業の開廃業届は国税庁がe-Taxによる作成・提出方法を正式に案内する一方、書面の持参・送付も認めている。この種の手続では「電子申請できる」と「電子申請しかできない」を明確に区別する必要がある。 [24]
地方手続では状況が一様ではない。転出届はマイナポータルから全国的にオンライン送信でき、転出元市区町村への来庁は原則不要となっている。一方、転入時には転入先自治体に来庁してマイナンバーカードを提示する工程が残る。 [26]
婚姻届は、少なくとも今回確認した横浜市では、届書を作成して区役所等に提出する①型である。ここには重要な区別がある。行政サイトからPDF様式をダウンロードできることは、「電子申請」と同義ではない。 PDFを印刷し、署名して物理的に提出するなら、提出方法としては①紙である。横浜市は区役所戸籍課および夜間・休日受付で婚姻届を受け付けている。 [27]
登記にもオンライン申請経路がある。株式会社設立登記はオンライン申請に対応し、不動産登記にも書面・オンライン双方の申請方法が存在する。所有者住所変更登記では、住民票コードで住所移転の経緯を確認できる場合に、添付情報を省略してオンラインで完結できる。 [29] [30] [31]
ここまでを「行政が受け取るデータ」という観点で整理すると、行政手続の変化は次の四段階として理解できる。
本レポートによる概念整理。すべての手続がこの順序で移行するという実績や予測を示す図ではない。
行政DXを検討する際は、媒体の電子化に加えて、項目データの構造化と行政機関間の情報連携に着目する必要がある。
政府の政策もこの方向に整合する。デジタル庁は事業者向け補助金について2025年度以降の電子申請対応を原則とし、GビズID、e-Gov、Jグランツ等を活用する方針を掲げている。また最新の行政手続調査でも、同一書類の繰り返し提出を減らすため、Gビズポータルの電子ロッカー等による情報再利用を将来方向として挙げている。 [3] [2]
AI対応の優先順位と設計上の含意
全国規模で高頻度の手続を支援する製品では、③フォームを優先し、②電子ファイルと①紙の出力にも対応する設計が考えられる。これは本レポートの提案であり、統計から一意に決まる順位ではない。対象顧客の手続件数、開発費用、本人確認や代理申請の条件によって優先順位は変わる。
評価軸は、対象業務の件数、情報の再利用性、実装費用、利用規約、申請権限とする。
| 優先度 | 提出方式 | AI・ソフトウェアで必要な能力 | 優先する理由 |
|---|---|---|---|
| 最優先 | ③ フォーム | 申請項目スキーマ化、企業・個人情報の自動マッピング、フォーム入力支援、API/ブラウザ操作、添付ファイル生成、入力整合性検証 | 高頻度手続ほどシステム型が多い。全国共通基盤への横展開性が高い |
| 第二優先 | ② 電子ファイル | Word/Excel/PDFテンプレート生成、表計算、様式維持、添付ファイル組成、メール提出パッケージ生成 | 手続種類ベースでは4割強を占め、専門補助金・低頻度手続で現役 |
| 第三優先 | ① 紙 | 帳票生成、記入欄配置、印刷用PDF、必要書類チェック、署名・押印・本人確認案内 | 地方・戸籍・本人出頭型では依然重要。ただし最終提出の物理工程が残る |
最優先を③とする最大の統計的根拠は、高頻度オンライン申請である。年間100万件以上のオンライン申請では87種類中85種類、97.7%が行政システム型であり、10万~100万件層でも97.9%、1万~10万件層でも94.4%である。 [2]
さらにe-Gov、e-Tax、NACCS等は大量の年間処理件数を担う。デジタル庁の調査では、オンライン化実施済・予定を含むシステム別手続種類数としてe-Gov 2,421種類、e-Tax 1,295種類等が示され、オンライン実績件数もe-Gov約1.985億回、e-Tax約1.404億回、NACCS約3.882億回など大規模である。ただしこの表の「手続種類数」には実施予定も含まれる一方、年間件数は実施済のみという集計条件がある。 [2]
技術的には、③への対応を「ブラウザに文字を打ち込むAI」とだけ考えるのは不十分である。
利用者の情報を共通データとして整理し、各手続の入力項目に対応付け、必要な証憑・文書を生成する。
共通データの例は、法人名、法人番号、本店所在地、代表者、従業員数、資本金、決算数値、事業内容、振込口座、許認可情報である。
法人名・法人番号・所在地・代表者・決算数値など
提出先・期限・様式・認証・申請権限を確認
③ フォームの項目データと添付
② Word・Excel・PDFの申請書と添付
① 印刷用帳票と必要書類
必要な署名・宣誓・本人確認を行い、指定の経路で提出
本レポートの設計提案。すべての方式で最終確認を行う。自動送信や代理申請の可否は各制度の規則に従う。
図7のように、情報の管理と提出方式ごとの出力を分けると、三方式で共通部分を再利用できる。
ただしAIによる行政申請自動化には、最終提出権限と本人確認を別レイヤーとして設計する必要がある。
たとえば中小企業省力化投資補助金は、電子申請システムのみで受け付ける一方、「入力情報について、必ず申請者自身がその内容を理解、確認の上、申請者自身が申請」するよう公式に求めている。デジタル化・AI導入補助金でも、申請マイページ上で最終確認をし、申請に対する宣誓を行って事務局に提出する工程がある。 [14] [13]
AIが申請を準備する → AIが不整合を検証する → 人間が内容を確認・宣誓する → 正式なID・電子署名で送信する
申請支援では、以下の作業を支援対象として切り分ける。
「どの手続が必要かを特定する」「どの情報が不足しているかを判断する」「既存情報を各フォームに正しく対応付ける」「添付資料を適切な形式で作る」「申請者が最終確認できる形にする」
②電子ファイルについても対応価値は高い。オンライン申請18,075種類の42.9%がメール方式であり、低頻度手続ほどその比率が高くなる。農水省の公募を見れば、Word、Excel、決算書、パンフレット等を組み合わせ、件名、ファイルサイズ、ファイル分割方法まで規定する例がある。AIで様式への転記や添付資料の整理を支援し、提出要領との整合性は確認する必要がある。 [2] [18] [5]
①紙も切り捨てるべき領域ではない。地方向け申請のオンライン実利用率は28.9%にとどまり、帰化申請のように本人出頭・書面申請が制度上組み込まれている手続もある。紙提出では送信そのものの自動化余地は限られる一方、帳票作成、必要書類収集、記載矛盾チェック、印刷、提出先・期限・本人確認事項の案内には十分なAI活用余地がある。 [2] [21]
結論と利用上の留意点
日本の行政手続では、紙・電子ファイル・フォームが併存している。全国統計は、高頻度のオンライン申請でシステム型の比率が高く、少数件の手続では電子メールの比率が高くなる傾向を示す。個別事例では、フォームへの入力と添付書類の提出、オンラインと紙の受付が組み合わされている。
申請支援では、申請者の情報を共通データとして整理し、各手続の項目・電子ファイル・紙帳票に変換する設計が有用である。対応の優先順位は、対象顧客の業務量と実装条件に基づいて決める。
- 「オンライン化率」は手続の種類数、「オンライン利用率」は集計対象の年間件数を分母とする。
- 非オンラインをすべて紙、電子メールをすべてPDFと読み替えない。
- 27事例は提出方法を示す事例集であり、全国の構成比を推計する標本ではない。
- フォーム対応は、紙の廃止や、審査・本人確認までのオンライン完結を意味しない。
- 公募回・受付期間・自治体によって条件が変わるため、申請時にはリンク先の最新要領を確認する。
出典
全国統計:調査時点2025年11月1日、年間件数は原則2024年度、公表日2026年8月26日。個別制度の参照基準日:2026年9月7日。
- www.digital.go.jpの公式資料(www.digital.go.jp)
- www.digital.go.jp:行政手続等の調査結果概要(PDF)
- www.digital.go.jpの公式資料(www.digital.go.jp)
- Jグランツ(services.digital.go.jp)
- 令和8年度食品アクセス確保対策事業(www.maff.go.jp)
- e-Gov電子申請(shinsei.e-gov.go.jp)
- 雇用保険被保険者資格取得届(shinsei.e-gov.go.jp)
- 法人設立届出書(www.nta.go.jp)
- 建設業許可申請(www.mlit.go.jp)
- eMAFF(e.maff.go.jp)
- 飲食店等の営業許可申請(www.mhlw.go.jp)
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第23次(www.chusho.meti.go.jp)
- デジタル化・AI導入補助金2026(it-shien.smrj.go.jp)
- 中小企業省力化投資補助金・一般型(shoryokuka.smrj.go.jp)
- 事業承継・M&A補助金 第15次(www.chusho.meti.go.jp)
- 小規模事業者持続化補助金・一般型通常枠(official.jizokukanb.com)
- 中小企業新事業進出補助金 第4回(shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp)
- 令和8年度農業分野のJ-クレジット創出推進支援事業(www.maff.go.jp)
- 令和8年度スマート農業技術活用促進総合対策費補助金・ロボット技術安全性確保策検討(www.maff.go.jp)
- 野菜種子安定供給緊急対策事業・種子防除技術の維持・確立事業(www.maff.go.jp)
- 帰化許可申請(www.moj.go.jp)
- 宅地建物取引業免許申請・国土交通大臣免許(www.mlit.go.jp)
- 古物商・古物市場主の許可申請(東京都)(www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
- 個人事業の開業・廃業等届出(www.nta.go.jp)
- 所得税の青色申告承認申請(www.nta.go.jp)
- 転出届(www.digital.go.jp)
- 婚姻届(横浜市の実務例)(www.city.yokohama.lg.jp)
- 児童扶養手当の認定請求・届出(横浜市)(www.city.yokohama.lg.jp)
- 株式会社設立登記(houmukyoku.moj.go.jp)
- 不動産登記申請一般(houmukyoku.moj.go.jp)
- 不動産所有者の住所変更登記(houmukyoku.moj.go.jp)




