プロジェクトはなぜ“大きくなるほど失敗する”のか?逆相関という必然

プロジェクトの世界には、静かだが残酷な法則がある。
「規模と成功率には逆相関がある」という、誰もが薄々感じているのに、なぜか公式には語られない現実だ。

規模が大きくなると、成果物も予算も立派になる分、成功率も比例して上がってほしい。
しかし実際は、その逆。
大きなプロジェクトを始めた瞬間、時計の針は、ゆっくり、しかし着実に「失敗」の方へ向かって動き始める。

なぜか。


複雑性は“静かに”増えるが、破壊力は指数的だ

プロジェクトの規模が大きくなると、
関わる人数が増え、タスクが増え、依存関係が増える。

この「増える」は直線ではない。
たとえば 20人のプロジェクトでは、理論上 190通り のコミュニケーションが発生する。
100人なら、その数は 4,950通り に跳ね上がる。

人が増えるだけで、空中に見えない複雑性の網が張り巡らされる。
その網が絡まるほど、計画の遅延や手戻りは“必然”になる。


計画は楽観的なまま、現実だけが重たくなる

大きなプロジェクトほど、始まる前の会議室では未来が明るく見える。

  • 「この体制ならいけるはずだ」
  • 「このスケジュールは現場と合意済みだ」
  • 「ここは想定外が少ない領域だ」

しかし現場に落ちると、
仕様変更、誤解、確認漏れ、優先順位の揺れ──
小さな“想定外”が、複利で効いてくる。

成功率は下がり続け、
「なぜかうまくいかない」という感覚だけが蓄積される。

これがまさに、規模と成功率の逆相関が生まれる核心だ。


“大きいこと”は目的ではない

本来、プロジェクトの目的は成果を出すことであり、スケールそのものではない。
ところが組織は時に、「大きくまとめたほうが効率が良い」と誤解する。

しかし実務の手触りで言えば、

  • 大きい企画
  • 盛りだくさんの要件
  • 包括的なスコープ

これらはほぼ例外なく、成功率を削っていく。

むしろ成功率を高めるのは、

  • 小さな単位に分割する
  • 完了のサイクルを短くする
  • 共通理解を頻繁に再確認する

という、当たり前のようだが、徹底しなければ決してできない地味な工夫だ。


逆相関を知ると、プロジェクトの景色が変わる

逆相関を前提にプロジェクトを見ると、判断の基準が変わる。

  • 「これは大きすぎないか?」
  • 「分割できる部分はどこか?」
  • 「今の規模で、成功率はどこまで落ちているか?」

という“構造への問い”が自然と立ち上がる。

逆相関を理解することは、悲観ではない。
むしろ、成功に近づくためのもっとも合理的な視点である。


大きなプロジェクトが成功するとき

大きなプロジェクトが成功するとき、それは奇跡ではない。
実は共通点がある。

それは、

「大きなプロジェクトに見えて、実際は“連続する小さなプロジェクトの集合”になっている」

という設計だ。

つまり、成功した大型案件の多くは、
“小さくする工夫”を内部で密かに行っている

表側は壮大でも、背骨はミニマル。
これが逆相関を乗り越えるための、最も現実的な処方箋だ。


結論:プロジェクトは“小ささ”のなかに成功が宿る

大きなプロジェクトが悪いわけではない。
ただ、規模が大きくなるほど成功率が下がるという“逆相関”の現実を受け止め、
構造を再設計し、小さな単位に切り、早いフィードバックで回し、成功率を高めていく。

成功は偶然ではなく、設計でつくるものだ。

逆相関の法則は、それを教えてくれる。