ストーリーテリングにおける「プレミス(Premise)」について、専門的視点から徹底的に深掘りして解説します。今回は、プレミスの定義からその重要性、歴史、構造、作成のプロセス、具体的な例、成功するプレミスの条件、さらには創作活動における応用法までご案内します。
1. プレミスの基本的な定義
ストーリーテリングにおけるプレミスとは、物語全体を支える「核心的なアイデア」や「概念」を指します。これはストーリーの根底に流れるテーマやメッセージを簡潔にまとめたものであり、以下のような役割を果たします。
- 物語の方向性を決定づける「道しるべ」
- 創作過程で一貫性を保つための「土台」
- 物語全体を貫く「問い」や「メッセージ」
1.1 プレミスのシンプルな構造
プレミスは通常、以下のような要素で構成されます。
- キャラクター(主人公や主要な登場人物):
主に物語の中心となる人物。 - 状況(コンフリクトや挑戦):
主人公が直面する課題や状況。 - 結果(テーマや結論):
主人公がどう変化し、物語がどのように終わるのかを示唆する要素。
例:
「自己犠牲は真の愛を証明する」
ここでは、愛がテーマ、自己犠牲が主人公の行動、そしてその行動が真の愛を示す結果として表れています。
2. プレミスの歴史と進化
ストーリーテリングにおけるプレミスの概念は、古代ギリシャの哲学と演劇にそのルーツを持ちます。
2.1 アリストテレスの『詩学』
アリストテレスは、演劇や物語の効果を論じた『詩学』で、物語の核心となる「目的」や「テーマ」を強調しました。彼は次のように述べています。
- 物語の全体は「単一のアイデア」または「アクション」に基づくべきである。
- そのアイデアが、観客に対して「カタルシス(浄化)」をもたらすべきである。
アリストテレスの考え方は、プレミスという概念の初期形態と見なすことができます。
2.2 シェイクスピアとテーマの一貫性
シェイクスピアの戯曲では、明確なプレミスが物語の核となり、テーマや登場人物の行動を支えています。
- 例: 『ハムレット』
プレミス: 「復讐の追求は自己破壊を招く。」
2.3 現代のプレミスの進化
映画や小説が発展する中で、プレミスは物語の「売り込み」の核としても重要になりました。映画業界では、「ハイコンセプト(High Concept)」として知られるプレミスが、観客を惹きつけるための鍵となっています。
3. プレミスの重要性
物語においてプレミスは単なるアイデア以上の役割を果たします。それは、ストーリー全体の基盤であり、作者の意図を明確にするためのツールです。
3.1 創作過程でのガイドライン
プレミスは、物語を進める中で一貫性を保つための指針となります。たとえば、登場人物の行動や結末がプレミスと矛盾していると、物語の整合性が損なわれます。
3.2 観客や読者とのコミュニケーション
プレミスは、物語を通じて観客や読者に伝えたいメッセージの核心を表します。たとえば、「真実は必ず明らかになる」というプレミスは、読者に普遍的な希望を与えることができます。
3.3 営業的・マーケティング的価値
映画や小説を売り込む際、プレミスが明確で魅力的であることは非常に重要です。たった一文で「この物語は何を伝えたいのか」を理解させることで、プロデューサーや出版社を惹きつけることができます。
4. プレミスの構造と作成プロセス
4.1 プレミスの構造
効果的なプレミスは、以下のような3つの要素を組み合わせて構築されます。
- 主体(主人公や主要キャラクター)
- 誰がこの物語を牽引するのか?
- 例: 勇敢な若者、不正を暴く記者、愛に傷ついた女性
- 葛藤(主要な問題や課題)
- 主人公が直面する最大の障害は何か?
- 例: 運命に抗う、敵に復讐する、真実を追求する
- 結果(メッセージや結論)
- 最終的に何を伝えたいのか?
- 例: 「愛はすべてを超越する」「権力は必ず腐敗する」
4.2 プレミス作成のプロセス
以下は、効果的なプレミスを作成するためのプロセスです。
- テーマを明確にする
- 自分が伝えたいメッセージや問いを明確にします。
- 例: 「自由意志と運命の関係について考察したい」
- 物語の核心となる行動や出来事を特定する
- 物語全体を要約する行動を一文で表現します。
- 例: 「若い男女が敵対する家族の間で愛を育む」
- 主人公の変化を考える
- 物語の冒頭と結末で主人公がどのように変化するのかを考えます。
- 例: 「自己中心的な主人公が他者を思いやる人間になる」
- プレミスを簡潔な一文にまとめる
- 最終的に「誰が」「何をすることで」「どのような結果に至るか」を一文で表現します。
- 例: 「自己中心的な青年が家族を救うために自らを犠牲にし、真の愛を見つける。」
5. 成功するプレミスの条件
優れたプレミスには以下の特徴があります。
- 普遍性
- 読者や観客が共感できるテーマを扱っている。
- シンプルさ
- 短く簡潔に、しかし深い意味を含んでいる。
- 葛藤と解決
- 強力なコンフリクトと、それに対する明確な結論がある。
- 独自性
- 他の作品とは異なる視点や切り口を提供している。
6. 具体例で学ぶプレミス
6.1 映画の例
- 『タイタニック』
プレミス: 「真の愛は階級や運命を超越する。」 - 『スター・ウォーズ』
プレミス: 「善悪の選択は個人の意思による。」
6.2 小説の例
- 『老人と海』
プレミス: 「人間の尊厳は失敗や敗北を超えて存在する。」 - 『1984年』
プレミス: 「全体主義は人間性を抑圧し破壊する。」



