文章スタイルの種類

1. 文体分類の大まかな枠組み

文章スタイルを分類する方法は複数あります。たとえば、文芸理論や言語学などでは次のような大きな分類がよく使われます。

  • 機能に着目した分類
    物語る(Narrative)/描写する(Descriptive)/説明・解説する(Expository)/説得する(Persuasive) など。
  • 利用場面・メディアに着目した分類
    学術論文、ビジネス文書、新聞記事、SNS投稿、小説、戯曲、詩など。
  • 文体・レトリック要素に着目した分類
    硬い/柔らかい、フォーマル/カジュアル、主観的/客観的 など。

これらは相互に重なる部分があるため、「どの観点で分類するか」によって細分化の仕方が異なります。本稿では、できるだけ実例を交えながら、日常的にも学術的にも使用頻度の高いスタイルを網羅的に紹介していきます。


2. 代表的なスタイルの種類と特徴

2.1. 叙述的スタイル (Narrative Style)

概要
物語や出来事を、時間の流れに沿って叙述(ストーリーテリング)するスタイルです。小説やノンフィクションのルポルタージュ、個人の体験談など、主に「起こったこと・起こっていること」を順番に語ることで読者を引き込む表現に向いています。

特徴

  • 時系列で進行することが多い。
  • 登場人物や出来事に焦点が当たり、読者がストーリーを追体験するように書かれる。
  • 感情移入やドラマ性が重要になる。

実例

例1(小説的):
「陽が沈みかけた川辺の小道を、少年は泥だらけの運動靴を鳴らしながら走っていた。彼の頭には、さっきまでクラスメートと交わしていた言い争いがこびりついて離れない。街灯がともる頃には、彼はある決心を胸に秘めていた。」

例2(ノンフィクション・ルポ):
「2020年春、私はイタリア北部の町を訪れ、現地住民の生の声を取材した。最初に案内されたのは、自宅の庭先でトマトを育てる小さな農家だった。そこでは…」

これらのスタイルは、ストーリーを追う読者が“次に何が起こるのか”を期待するため、スムーズな時系列の運びや場面転換の巧みさが重要です。


2.2. 描写的スタイル (Descriptive Style)

概要
対象となる人・場所・物・情景などを詳細に描写するスタイルです。五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)に訴えるような表現をふんだんに使うことにより、読者の頭の中に鮮明なイメージを喚起させます。

特徴

  • 比喩や修飾語の活用が多い。
  • 情景描写、心理描写が豊富で、感覚的なイメージを重視する。
  • 文章がやや長くなる傾向があるが、濃密な空気感を伝える。

実例

例1(自然描写):
「満開の桜がはらはらと舞い落ちる昼下がり、柔らかなピンクの花びらは風に乗って宙をさすらい、地面に落ちた瞬間には淡い光を反射して輝きを放っていた。」

例2(人物描写):
「彼女は艶やかな黒髪を肩下までゆるく垂らし、その瞳はまるで深い湖のように穏やかな光を帯びている。声は小鳥のさえずりのように優しく、聞く者の心を和ませる。」

描写的スタイルは、文章を読むだけで風景や人物像が頭に浮かぶように、言葉選びを丁寧に行うのがポイントです。


2.3. 解説・論説的スタイル (Expository Style)

概要
何らかの事柄や概念・知識を、読者が理解しやすいように整理して提示することに特化したスタイルです。事実やデータに基づき、客観的かつ論理的に進めるケースが多いです。

特徴

  • 論理的な構成が重視され、「序論-本論-結論」の明確さが求められることが多い。
  • 専門用語は必要に応じて定義し、読者にわかりやすく提示。
  • 感情的アピールよりも、正確さ・客観性が優先される。

実例

例1(図書館利用マニュアルの一部):
「図書館の蔵書検索システムは、タイトル・著者・キーワードによって検索が可能です。まず最初に利用カードを作成する必要があります。利用カードを作成する際には、身分証明書をご提示ください。手続き完了後は…」

例2(経済学の概念解説):
「GDP(国内総生産)とは、ある国や地域で一定期間内に生産された財やサービスの総額を指す。これには消費、投資、政府支出、純輸出(輸出−輸入)の合計が含まれる。GDPは経済規模を測る指標として…」

解説・論説的スタイルは、学術文章やレポート、説明書、テキスト教材、ウェブ上のチュートリアルなどに広く用いられます。


2.4. 説得的スタイル (Persuasive / Argumentative Style)

概要
読者をある意見に賛同させる、あるいは行動を促すことを目的としたスタイルです。論理的な主張に加え、感情に訴える手法や、権威づけ・具体例などの活用が大きな役割を果たします。

特徴

  • 主張 (Thesis) を冒頭や結論で明確に打ち出す。
  • 反論を先回りして取り上げ、それに対して根拠を示して再反論する(反駁の手法)。
  • 修辞技法(比喩、反復、対比など)を使い、説得力を高める。
  • 説得相手(読者)の背景や価値観を想定して文章を組み立てる。

実例

例1(社説・オピニオン記事風):
「公共交通機関の利用拡大は、環境保護のみならず地域活性化にも大きな利益をもたらす。実際、車中心の社会インフラを見直すことで、年間数百億円のコスト削減が見込まれている。だからこそ、私たちは今こそ鉄道網の整備とバス運賃の引き下げに投資を集中させるべきなのである。」

例2(広告コピー風):
「このサプリメントを試すだけで、毎朝の目覚めが劇的に変わります。実際に、使用者の8割が2週間以内に疲れの軽減を実感したというデータもあるのです。あなたも健康的な生活を取り戻してみませんか?」

説得的スタイルは、スピーチや政治演説、広告・マーケティング文章、社説・コラムなどで顕著にみられます。


2.5. 学術的スタイル (Academic Style)

概要
研究論文や学術雑誌、学会発表などで用いられるスタイルです。客観性と正確性を何よりも重んじ、既存研究との比較や引用、データ分析などを通じて学問分野の知識を体系的に構築します。

特徴

  • 文献引用や参考文献一覧が必須。
  • 専門用語・学術用語を正確に使用する。
  • 「です・ます」調ではなく「である」調を使うことが多い(日本語の場合)。
  • 長文や複文が多用される傾向がある。
  • 客観的・中立的なトーンを保ち、筆者の主観が過度に混じらないよう注意する。

実例

例1(研究論文の一節):
「本研究では、サンプル数100のデータセットを用いて、回帰分析を行った。その結果、説明変数X1と従属変数Yとの間にp<0.05水準で有意な正の相関が認められた。本稿の結果はSmith (2010) の議論を部分的に支持するものであるが…」

例2(学会発表スライド解説文):
「図1に示すとおり、我々の提案手法は従来の手法と比較して平均3%の精度向上を達成している。さらに、訓練データ量を削減しても性能の著しい低下は見られなかった。この点から…」

学術的スタイルは、論理性と根拠の明示が何より重要である点が最大の特徴です。


2.6. 技術的スタイル (Technical / Scientific Style)

概要
マニュアルや取扱説明書、プログラムのドキュメント、科学技術分野のレポートなど、「操作方法」「仕組み」「実験手順」「プロトコル」などを正確に伝えるためのスタイルです。学術的スタイルに近いですが、より実務寄り、具体的な手順説明が多い形を指す場合が多いです。

特徴

  • 箇条書きやステップ形式で情報を整理。
  • 図表やイラストを多用し、テキストだけでなく視覚的サポートを重視する。
  • 一語一語の意味が正確であることが求められ、あいまい表現を避ける。
  • 読み手(使用者)が迅速に理解・実行できる構成が重要。

実例

例1(ソフトウェアドキュメント):

  1. setup.exe をダブルクリックしてインストールを開始します。
  2. ライセンス条項を確認し、同意ボタンをクリックします。
  3. インストール先のフォルダを指定して、Next をクリックします。
  4. インストール完了画面が表示されたら Finish を選択します。」

例2(機器の取扱説明書):
「本機を使用する前に、まず電源ケーブルをコンセントに正しく差し込み、安全カバーがしっかり装着されていることを確認してください。操作パネルの電源ボタンを押すと、自動的に初期起動プログラムが開始され…」


2.7. ジャーナリスティック・報道的スタイル (Journalistic Style)

概要
新聞記事やニュースサイトなど、報道・ジャーナリズムの場で使われるスタイルです。事実を正確かつ分かりやすく伝えることが優先され、逆三角形型(重要度の高い情報を冒頭に配置)などの文章構成が多用されます。

特徴

  • 見出し(Headline)とリード(Lead)が情報の要約として機能する。
  • 事実関係を淡々と伝える客観性重視型から、解説・論説を交える形まで幅広い。
  • 短い段落と平易な文章で、読者が素早く読める工夫をする。
  • “5W1H” (誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように)を明確にする。

実例

例(新聞記事リード):
「東京都内で5日未明、大規模な停電が発生した。原因は変電所のトラブルとみられ、数十万世帯が一時的に電気の供給を断たれた。復旧作業は現在も続いており、都は市民に節電と不要不急の外出自粛を呼びかけている。」

ジャーナリスティックスタイルでは、ファクトチェックが厳重になされ、表現の中立性や公平性が重要視されます。


2.8. ビジネス文書スタイル (Business Style)

概要
社内外のビジネスコミュニケーションで使われるスタイルです。メールや議事録、企画書、提案書、報告書などが典型例として挙げられます。読み手に必要な情報を簡潔・明確に伝え、素早い意思決定をサポートすることが目的です。

特徴

  • 件名やタイトルで要旨を簡潔に伝える。
  • 結論を先に書き、その後に根拠や詳細を述べる “結論先行型” が多い。
  • 丁寧かつ誠実なトーンを保ちつつ、不要な修飾は省く。
  • 敬語(尊敬語、謙譲語など)とビジネス敬語の適切な使用が求められる(日本語の場合)。

実例

例(社内メール):
「お疲れ様です。営業部の佐藤です。表題の件につきまして、以下のとおりご報告いたします。

  1. 昨日の商談結果:A社と契約締結が決定しました。
  2. 次回ステップ:契約書類の取り交わしと納期調整
    ご不明点ございましたら、ご連絡ください。よろしくお願いいたします。」

例(提案書の冒頭):
「【企画案】新商品プロモーション施策について

  1. 目的:若年層への認知拡大と購買意欲の向上
  2. 背景:既存製品の市場シェア停滞に伴うブランド力強化の必要性
    以下、具体施策とスケジュールを示します…」

2.9. エッセイ・随筆スタイル (Essayistic Style)

概要
個人的な思考や体験を、自由な形式で綴る文章スタイルです。文学的随筆から個人ブログまで幅が広く、著者の主観や人間性が強く表出しやすいのが特徴です。

特徴

  • 一人称視点が多く、筆者の感情や思考がメインになる。
  • テーマが明確ではなくても、筆者の言葉の流れに読者が引き込まれる。
  • 修辞技法よりも、親近感や筆者の“声”を感じられる書き方が重視される。
  • 物語・散文詩・評論などとの境界が曖昧な場合もある。

実例

例1(随筆風):
「私は雨の日が嫌いだった。しかし、あるときふと、雨音が心に染み入るような心地よさをもたらす瞬間があることに気がついた。コーヒーを片手に窓辺で静かに耳を澄ませば、まるで小さな世界がそこに広がっているようで…」

例2(個人ブログ風):
「先週末、久しぶりにキャンプに行ってきました。焚き火の揺らめきを眺めながら、仕事の忙しさで忘れていた大切なことを思い出せた気がします。やっぱり自然はいいですね、心が洗われます。」


2.10. レター(手紙)スタイル (Epistolary Style)

概要
古くからの通信手段である「手紙」で用いられるスタイルを指します。近年では電子メールやチャットも普及しましたが、伝統的な手紙文の形式を踏襲した文章も多く、文学分野でも「書簡形式の小説(Epistolary Novel)」があります。

特徴

  • 挨拶文や結びの言葉など特有の定型表現がある。
  • 書き手と受け手が明確で、相手へ直接呼びかける形が多い。
  • プライベートな内容から公的な公文書まで幅広い。
  • 親書や公的文書の場合、厳格な書式が求められることもある。

実例

例1(親しい友人への手紙):
「久しぶりだね。元気にしてる? こちらは先週から新しい仕事を始めて、毎日があっという間に過ぎていくよ。そっちも忙しいだろうけど、身体には気をつけて。また会える日を楽しみにしています。」

例2(書簡形式の小説冒頭):
「拝啓 親愛なる兄へ。
都会へ出て早くも半年が過ぎましたが、お元気でいらっしゃいますか。こちらは日に日に寒さが増し、朝晩は霧が濃くなってきました。先日の件について詳しくお知らせしたく、この手紙をしたためています…」


2.11. 詩的スタイル (Poetic Style)

概要
韻律やリズム、象徴的なイメージの配置など、詩歌ならではの表現手法を用いたスタイルです。俳句や短歌、現代詩、英詩などジャンルが多岐にわたります。散文詩やポエム風エッセイなど、他ジャンルと融合した形態も存在します。

特徴

  • 行分け・改行、リズムや韻(英語など)、音数律(日本語の場合)など形式が重視される。
  • 語感・イメージを優先し、意味が抽象的・暗示的になることが多い。
  • 比喩やアナロジー、シンボル(象徴)を多用し、読者の想像力に訴える。

実例

例1(短歌):
「流れゆく 雲の向こうに 君を見て
 時の河原で 砂を噛む午後」

例2(英語の自由詩,例文):
“A sudden hush in the sunlight,
Whispering leaves trace your silhouette,
Memories float in the fading gleam—
Time stands still, yet I move on.”

詩的スタイルの文章は、形式が規定されているもの(定型詩)から自由形式(自由詩)まで幅広く、個々の感性が強く反映されます。


2.12. ドラマティックスタイル (Dramatic Style)

概要
演劇や脚本、シナリオ、台本などで使われるスタイルを指します。対話(ダイアログ)が中心で、場面転換や演出効果を意識しながら文章を構成します。

特徴

  • セリフ(会話文)の割合が圧倒的に多い。
  • ト書き(状況説明や動作の指示)が挟まる。
  • 視覚的・聴覚的演出を文章で示すための記号や段落分けがある。
  • 読むだけで舞台の動きや声色がイメージできるよう書かれる。

実例

例(舞台脚本・台本風):
「【暗転。舞台中央にスポットライト。主人公Aがゆっくりと入場する】
A「ここは一体…? 誰もいないのに、こんなにも静かだ。」
【後方からBが登場、そっとAの肩に手を置く】
B「ようこそ、運命の分かれ道へ。あなたはどちらを選ぶ?」」


2.13. 皮肉的/ユーモア的スタイル (Satirical / Humorous Style)

概要
社会問題を批判したり、物事の滑稽さを浮き彫りにする目的で、皮肉や風刺を含んだユーモアを用いるスタイルです。コラムやエッセイ、時事風刺漫画のキャプションなど、幅広いメディアで使われます。

特徴

  • 誇張やパロディ、逆説を多用する。
  • 一見笑えるような文面でありながら、背後には社会批判や深い洞察が潜んでいる。
  • 読者をクスッとさせる一方で、現状に対する問題提起を促す効果がある。

実例

例1(風刺エッセイ):
「我が国の国会は、今日も定刻通りに“休憩”が始まったようだ。議員諸氏は打ち合わせと称して、優雅にコーヒータイムを満喫しているらしい。いやはや、彼らのリラックス能力には敬服するばかりだ。」

例2(皮肉混じりのコラム):
「新型ダイエット法がまた流行しているらしい。食べるだけで痩せる魔法のチョコレートとか。どうやら食べる人間だけが痩せるらしいが、製造元の財布は肥えていく一方とか。」


2.14. レトリック・修辞強調スタイル (Rhetorical Style)

概要
比喩や反復、対比などの修辞技法を積極的に活用し、文章全体を“美しく”あるいは“説得力豊か”に仕立て上げるスタイルです。スピーチ、演説文、散文詩的な文、文学的エッセイなどに多く見られます。

特徴

  • 誇張、反復、頭韻、体言止めなどのレトリックが目立つ。
  • 音の響き・リズムが美しい文章を意図する。
  • 単なる説明や叙述ではなく、読む(聞く)体験そのものを魅力的にすることを重視。

実例

例(レトリカルな散文):
「光が射す。その一筋の光が、闇の深淵を切り裂く。心は震え、瞳は見開かれ、全身の血が熱を帯びる。私は今、まさに生きている。生かされている。生きなければならない。そう、叫ぶように。」

このスタイルは古代ギリシア・ローマ時代からの弁論術(レトリック)の流れを汲んでおり、言葉の巧みな操り方に特徴があります。


2.15. SNS・インターネット時代のスタイル (Digital / Online Style)

概要
ツイートやブログ、インスタグラムのキャプション、TikTokやYouTubeのコメント欄など、インターネット上で使われる短文・略語・絵文字などを活用したスタイルをまとめて指します。近年では情報伝達の主要な手段となりつつあり、その多様性は非常に広いです。

特徴

  • 極端に短い文(140文字や280文字の制限など)で要点を伝える。
  • 絵文字やスタンプ、ミーム、ハッシュタグ、略語などで感情や意図を補足。
  • 口語的かつカジュアルな表現が多い。
  • 写真や動画と組み合わせ、テキスト単独でない総合的コミュニケーションが多い。

実例

例1(Twitter風):
「新作映画見てきた!めっちゃ面白かったし泣いた…(^o^)/ #映画 #感動 #涙腺崩壊」

例2(Instagramキャプション風):
「#週末カフェ巡り ☕️\nついに念願の〇〇カフェに行ってきたよ~!
店内がめちゃおしゃれで写真も映えまくり。
詳しくはストーリー見てね(^_^)/」

オンラインスタイルは、時代やプラットフォームの流行に応じて瞬く間に変化するので、常に新鮮である一方、読み手を選ぶ部分(理解のギャップ)もあります。


3. その他のスタイル分類例

上記で取り上げたのは代表的なスタイルですが、このほかにも、多文化環境や多言語使用者が多い現代ではさらに多様なスタイルが混在しています。例えば:

  • “コードスイッチング” スタイル
    文章中に突然英語や中国語など別言語を挟む。例:「この前、めっちゃbusyだったから、もう本当にテンパってた(笑)」
  • “オフィシャル+カジュアル” ミックススタイル
    ビジネス文書でありながら、アイスブレイク的に軽い表現を盛り込む。例:「皆様、お疲れ様です。チームの士気をあげるために、少しだけ雑談失礼しますね(^_^)」
  • “口語+方言” スタイル
    ダイアログ的な表現の中で方言を駆使する。例:「今日はだいぶあったかくなってきたけん、桜も咲いとるたい。」

こういった複合スタイルは、一種のユーモアや親近感、独自性を生む場合も多く、クリエイティブな文章表現には欠かせない要素となってきました。


4. まとめ

ここまで「文章におけるスタイルの種類」を豊富な例文とともに紹介してきました。スタイルは文章の「形式」にとどまらず、どのような目的で、どのような読者に、どのような印象を与えたいかという「意図」や「機能」、「背景文化」を強く反映するものです。実例を見るとおわかりいただけるように、同じ内容を伝える場合でも、スタイル次第で受け手の感じ方はガラリと変わってきます。

  • 叙述的スタイル:物語や体験談を時系列で語りたいとき
  • 描写的スタイル:五感に訴えるような詳細描写を行いたいとき
  • 解説・論説的スタイル:知識や情報を整理・説明して伝えたいとき
  • 説得的スタイル:読者の考えや行動を変えたいとき
  • 学術的・技術的スタイル:研究成果や手順を正確・客観的に提示するとき
  • ジャーナリスティック・ビジネス文書スタイル:社会への情報発信やビジネスの意思疎通を円滑に行いたいとき
  • エッセイ・手紙スタイル:主観や個人的思いを自由に表現したいとき
  • 詩的・ドラマティック・修辞強調スタイル:言葉の芸術性や演出力を高めたいとき
  • SNS・オンラインスタイル:短文や視覚メディアを交え、素早く・カジュアルにコミュニケーションしたいとき

文章を書くうえでは、これらのスタイルを単独で用いるだけでなく、必要に応じて複数のスタイルを組み合わせることで、より独創的かつ効果的な表現が可能になります。自分が書きたいテーマ、想定する読者、狙いたい効果などを改めて考えてみると、それに最適なスタイルが見えてくるはずです。

「スタイル」を意識して文章を読んだり書いたりすることで、表現の幅が格段に広がります。ぜひ、さまざまなスタイルを試しながら、自分に合った“声”を探究してみてください。それこそが文章を書く醍醐味であり、同時に読み手との新たなコミュニケーションの扉を開く鍵になるでしょう。


参考資料・関連文献

  • 書籍(日本語)
    • 山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(PHP研究所)
    • 野村竜太郎『日本語レトリック入門』(研究社)
    • 近藤勝重『文章読本「書く」の壁を破る』(朝日新聞出版)
  • 書籍(英語)
    • Williams, J. M., & Bizup, J. (2016). Style: Lessons in Clarity and Grace. Pearson.
    • Zinsser, W. (2006). On Writing Well: The Classic Guide to Writing Nonfiction. Harper Perennial.
  • オンライン参考
    • Purdue Online Writing Lab (OWL) (英語)
    • 各種新聞社・出版社のガイドラインや文体ハンドブック