アパレルとファブリックの産業的・技術的差異

エグゼクティブ・サマリー
「アパレル(Apparel)」と「ファブリック(Fabric)」の「異同(類似点と相違点)」は、単なる用語の使い分けの問題ではなく、グローバルな製造サプライチェーンにおける「最終製品」と「構成素材」という根本的な区別に起因する。本レポートは、この2つの用語の概念的、技術的、および産業的な差異を詳細に分析する。
アパレルは、衣服、靴、アクセサリーなど、人体に装着される広範な「完成品」を指す 1。対照的に、ファブリックは「生地」や「織物」と訳され、アパレルを製造するための「主原料」である 3。
両者の関係性を理解する鍵は、以下の4つの側面に存在する。
- 階層的差異:「ファブリック」は、繊維、糸、生地などを含む「テキスタイル(Textile)」という、より広範な産業分野の一製品である。「すべてのファブリックはテキスタイルだが、すべてのテキスタイルがファブリックではない」という原則が、この階層構造を示している 5。
- 技術的差異:「ファブリック」自体が均質な素材ではなく、その製造構造によって「織物(Woven)」「編物(Knitted)」「不織布(Non-woven)」に大別される。この構造の違いが、安定性や伸縮性といった物理的特性を決定づける 6。
- 構成的差異:「ファブリック」は(通常)均質な素材であるが、「アパレル」はファブリックという主原料に加え、ジッパーやボタンといった金属製・プラスチック製の「トリム(Trims:副資材)」を必要とする「複合組み立て品」である 9。
- 産業的差異:両者は、サプライチェーン上で異なるプレイヤーによって製造される。「ファブリック・ミル(Fabric Mill)」が資本集約的にファブリックを「製造」し、「アパレル・メーカー(Apparel Manufacturer)」が労働集約的にアパレルを「組み立てる」 4。
結論として、「アパレル」と「ファブリック」の区別は、サプライチェーン管理、原価計算、品質管理、そして製品設計において不可欠な、産業的かつ実務的な境界線そのものである。
1. 基本概念の定義:製品としてのアパレル、材料としてのファブリック
アパレルとファブリックの「異」は、両者の語源と、それが指し示す概念的な範囲に明確に表れている。アパレルは「装着する」という人間中心の概念であり、ファブリックは「構築された」という生産中心の概念である。
1.1. アパレル (Apparel):「装着」される完成品
アパレルの語源は、ラテン語の apparātus(準備、装備)を経由し、古フランス語の apareillier(準備する、整える、装備する)に由来する 13。この「準備」や「装備」という語源的ニュアンスは、アパレルが単なる「布」ではなく、特定の活動(例えば、戦闘、航海、あるいは日常生活)のために人体を「準備」するための「装備一式」を意味していたことを示唆している。初期の英語では「装備、備品(furnishings, equipment)」14 や「戦闘装備、鎧、武器 (appareil)」15 という意味も含まれていた。
この語源的背景は、現代におけるアパレルの広範な定義範囲の論理的根拠となる。アパレルは一般に「衣類」や「服飾品」を指す包括的な用語であるが 1、その範囲は布製の衣服(Clothing)に留まらない。アパレルは、靴、バッグ、アクセサリー(帽子、ベルト、ジュエリー)、場合によっては装着可能なガジェットまでをも含む「人体に装着できるすべてのもの」を指す「傘用語(Umbrella Term)」として機能する 1。したがって、現代の広範な定義は語義の「拡大」ではなく、むしろ「装備一式」という語源的な意味への「回帰」であると解釈できる。
文脈上、アパレルは「ファッション(Fashion)」とも区別される。アパレルは、実用的な商品として流通・販売される「衣料品」に焦点を当てる 1。対照的に、ファッションは流行、トレンド、自己表現、文化的意味合いが強く、衣服をアイデンティティの表現手段として捉える 1。アパレルは機能性や需要に基づき比較的安定した変化を遂げるが、ファッションは非常に動的である 1。
1.2. ファブリック (Fabric):「構築」された素材
アパレルが「装着する」という人間中心の概念であるのに対し、ファブリックは「作られたモノ」という生産中心の概念である。その語源は、ラテン語の fabrica(熟練した取引、芸術、作業場)に由来し、「構築物」や「作られたもの」という概念を中核に持つ 3。
ファブリックは、日本語の「生地」または「織物」に相当する 3。しかし、その範囲は伝統的な「織物(Woven)」のみを指すわけではない。現代の産業用語において、ファブリックは、編み物(Knitted)、繊維を接着した不織布(Non-woven)、レース、フェルトなど、布全般を指す広範な素材の総称として用いられる 3。
また、その用途はアパレル製造に限定されない。ファブリックは、カーテン、クッション、ラグといった布製のインテリア製品に対しても一般的に使用される用語である 3。
2. 産業用語の精密な解剖:「テキスタイル」と「ファブリック」の階層関係
「ファブリック」の産業的な位置づけを正確に理解するためには、まず「テキスタイル(Textile)」という、より広範な用語との階層関係を明確化する必要がある。
2.1. 「テキスタイル (Textile)」の包括的定義
テキスタイルは、ラテン語の taxere(織る)に由来する用語である 5。アパレル産業において、テキスタイルはあらゆる繊維ベースの素材を指す、最も広範な「傘用語」である 18。
テキスタイルがカバーする範囲は、製造プロセスの初期段階から最終段階にまで及ぶ。具体的には、以下のすべてが「テキスタイル」に含まれる 5。
- 繊維 (Fibers):綿花、羊毛、ポリエステル短繊維などの原料。
- 糸 (Yarns):繊維を紡いで作られた糸。
- フィラメント (Filaments):ポリエステルの長繊維など。
- ファブリック (Fabrics):糸から作られた生地(織物、編物など)。
テキスタイルは、ロープやネットのように、アパレルとは異なる最終製品も含む 17。また、ファブリックのように特定の用途のために完成された素材だけでなく、糸の束のような「未完成品」であってもテキスタイルと呼ばれる 5。
2.2. 「ファブリック (Fabric)」の産業的定義
ファブリックは、テキスタイルという大きなカテゴリの一部である 19。ファブリックは、テキスタイル素材(主に糸)を、織る、編む、接着するなどのプロセスを経て製造された、「完成品」の素材を指す 5。
重要なのは、ファブリックがアパレル製造やインテリア製造といった「特定のプロジェクト」ですぐに使用できる状態(=完成した生地)を指す点である 5。
2.3. 核心的関係:「All fabrics are textiles, but not all textiles are fabrics」
両者の関係性は、「すべてのファブリックはテキスタイルであるが、すべてのテキスタイルがファブリックではない」という業界の原則によって端的に示される 5。
この用語の階層構造は、単なる学術的な分類ではなく、サプライチェーンの産業構造そのものを反映している。サプライチェーン分析において、「テキスタイル産業(Textile Industry)」とは、Tier 4の原材料(繊維)からTier 3の糸生産、そしてTier 2/3のファブリック生産までをカバーする広範な製造分野を指す 4。
一方で、「ファブリック」は、この「テキスタイル産業」が生み出す主要な「中間製品」であり、後続の「アパレル産業(Apparel Industry)」への「受け渡し品(Handoff Point)」を指す。したがって、この用語の区別は、産業構造を定義する実務的な区分である。
3. ファブリックの技術的分類:構造と特性の差異
「ファブリック」という素材は均一ではない。アパレル製品の性能とデザインは、ファブリックの「構造」によって根本的に決定される。ファブリックは、その製造方法と構造に基づき、主に「織物」「編物」「不織布」の3つに大別される 7。
3.1. 織物 (Woven Fabric)
- 構造:経糸(Warp、タテ糸)と緯糸(Weft、ヨコ糸)と呼ばれる2組の糸を、織機(Loom)上で直角に「交錯(Interlacing)」させて構成される 6。
- 特性:糸が緊張状態で固定されているため、構造が「安定(Stable)」しており、「予測可能(predictable)」で「柔軟性がない(inflexible)」7。形状保持性に優れ、高い耐久性を持つ。デニムのように高密度に織られたものは防風性も備える 7。
- アパレル用途:構造と形状保持が求められるアパレルに不可欠である。例として、シャツ、スーツ、コート、トラウザー、デニムが挙げられる 6。
3.2. 編物 (Knitted Fabric)
- 構造:1本または複数の糸を「ループ(Loop)状」(編目)にし、そのループを連続させて構成される 8。ループを水平(横方向)に連ねる「横編(Weft Knitting)」と、垂直(縦方向)に連ねる「縦編(Warp Knitting)」の主要なタイプがある 24。
- 特性:ループ構造自体がバネのように機能するため、顕著な「伸縮性(Stretch)」と「通気性(Breathability)」に優れる 24。織物よりも柔軟で、身体の動きに対応しやすい。
- アパレル用途:快適性と動きやすさが求められるアパレルに多用される。例として、Tシャツ、セーター、靴下、スポーツウェアが挙げられる 24。
3.3. 不織布 (Non-woven Fabric)
- 構造:織物や編物とは根本的に異なり、「糸(Yarn)」ではなく、より短い「繊維(Fiber)」を直接的なシート状にしたものである 8。繊維同士を、機械的に「絡ませる(Mechanical bonding / Entanglement)」、化学的に「接着する(Chemical bonding)」、または熱で「融着させる(Thermal bonding)」ことによって製造される 23。
- 特性:織り目や編み目が存在しない 25。織物や編物よりも製造工程が少ないという利点がある 23。一般に、アパレル用途の織物・編物と比較して安定性が低く、引き裂き強度が劣る場合がある 8。
- アパレル用途:アパレル製品の本体(ボディ)として使われることは稀であるが、襟やカフスなどの形状を保持するための「芯地(Interlining)」として不可欠な役割を果たす 10。
アパレル・デザイナーにとって、「ファブリックの選択」とは、色や柄の選択である以前に、この3つの「構造」の選択である。アパレル製品に求められる機能要件が、使用すべきファブリックの構造を工学的に決定する。例えば、スーツに求められる厳格な「形状保持性」は、織物(Woven)の「安定した構造」によってのみ満たされる 6。逆に、Tシャツに求められる「着脱の容易さ(頭部を通すための伸縮性)」は、編物(Knit)の「ループ構造」によってのみ満たされる 24。ファブリックの構造は、アパレル製品の用途と機能を直接的に決定づける、最も根源的な設計上の制約となる。
3.4. ファブリック主要3分類の技術的比較
本セクションで分析したファブリックの3大分類の技術的差異を、以下の表1に要約する。
表1:ファブリック主要3分類の技術的比較
| 分類 (Classification) | 基本構成単位 (Basic Unit) | 製造方法 (Structural Method) | 主な物理特性 (Key Properties) | 主なアパレル用途 (Common Apparel Use) |
| 織物 (Woven) | 糸 (Yarn) | 経糸と緯糸の直角交錯 (Perpendicular Interlacing) 6 | 高い安定性、非伸縮性、耐久性 (Stable, Inflexible, Durable) 7 | スーツ、シャツ、デニム、コート (Suits, Shirts, Denim, Coats) 6 |
| 編物 (Knitted) | 糸 (Yarn) | ループの連続 (Interlooping) 8 | 高い伸縮性、通気性、柔軟性 (Stretch, Breathable, Flexible) 24 | Tシャツ、セーター、スポーツウェア、靴下 (T-shirts, Sweaters, Sportswear) 24 |
| 不織布 (Non-woven) | 繊維 (Fiber) | 繊維の直接結合(熱、化学、機械)(Direct Fiber Bonding) 8 | 織目・編目なし、多様な機能(例:吸水性、フィルター性)(No grain, Variable) | 芯地、衛生用品、産業資材 (Interlinings, Wipes, Industrial) 8 |
4. サプライチェーンにおける連関:ファブリックからアパレルへの転換
アパレルとファブリックの最も明確な「異」は、両者がテキスタイル・アパレル産業のバリューチェーンにおいて占める「位置」の違いである。ファブリックはアパレル製造工程への「インプット(主原料)」であり、アパレルはその工程からの「アウトプット(最終製品)」である。
4.1. バリューチェーンの概観:「Fiber to Closet」
テキスタイル・アパレル産業のサプライチェーンは、しばしば「Fiber to Closet(繊維からクローゼットまで)」と表現され、以下の直線的な変換プロセスとして記述される 4。
- Tier 4: 原材料調達 (Raw Material Sourcing):綿花、羊毛、亜麻などの天然繊維、または石油由来の合成繊維の調達 20。
- Tier 3: 糸生産 (Yarn Production):繊維を紡績(Spinning)して糸(Yarn)にする 4。
- Tier 3/2: ファブリック生産 (Fabric Production):糸を織る(Weaving)または編む(Knitting)ことで、「ファブリック」が完成する。染色、プリント、仕上げ加工もこの段階で行われる 4。
- Tier 2/1: アパレル製造 (Garment Manufacturing):完成した「ファブリック」を裁断・縫製し、「アパレル」が完成する 4。
このプロセスにおいて、ファブリックはアパレル製造段階の「主原料」として機能する 27。
4.2. 役割の分担(1):ファブリック・ミル (Fabric Mill)
ファブリックを生産する事業体は「ファブリック・ミル(Fabric Mill)」または「テキスタイル・ミル(Textile Mill)」と呼ばれる 11。
- 所属産業:「テキスタイル産業 (Textile Industry)」に分類される 4。
- インプット:糸(Yarn)12。
- プロセス:織機(Loom)や編機(Knitting Machine)といった大規模な機械設備を使用し、糸を生地(ファブリック)に変換する 4。
- アウトプット:ロール状の完成したファブリック 12。
- ビジネスモデル:大規模な設備投資を必要とする「資本集約型(Capital-intensive)」のビジネスである 4。
4.3. 役割の分担(2):アパレル・メーカー (Apparel Manufacturer)
ファブリックからアパレルを製造する事業体は「アパレル・メーカー(Apparel Manufacturer)」または「衣料品メーカー(Clothing Manufacturer)」と呼ばれる 11。
- 所属産業:「アパレル産業 (Apparel Industry / Clothing Industry)」に分類される 11。
- インプット:ファブリック(生地)12。
- プロセス:ブランドから提供されるデザイン仕様書(テックパック)に基づき 29、ファブリックを「裁断(Cut)」「縫製(Make)」「仕上げ(Trim / Finish)」する 28。このため、しばしば「CMT(Cut, Make, Trim)工場」と呼ばれる 12。
- アウトプット:消費者が着用する完成したアパレル製品(衣服)28。
- ビジネスモデル:裁断と縫製に多くの人手を要する「労働集約型(Labor-intensive)」のビジネスである 4。
この「ファブリック・ミル」と「アパレル・メーカー」の分業体制は、現代のサプライチェーンにおける「リスク移転点」として機能している。アパレル・サプライチェーンは非常に「断片的(fragmented)」であり 27、アパレル・メーカー(CMT工場)は、ブランドからの「確定発注」を受け取る「前」に、ブランドの「予測(Forecast)」に基づいて行動しなければならない 12。具体的には、アパレル・メーカーが自らの財務リスクで、主要コスト要因である「ファブリック」をファブリック・ミルから購入・確保する必要がある 12。
したがって、「ファブリック」と「アパレル」の違いは、物理的な違いに留まらない。「ファブリック」は、アパレル・メーカーが負うべき主要な「在庫リスク」および「財務リスク」の象徴であり、「アパレル」は、そのリスク(ファブリック)に労働力という付加価値を加えて転売する「最終資産」である。このリスク所在地の違いこそが、両者の産業的・経済的な本質的差異である。
5. アパレル構成の全体像:ファブリック + トリム(副資材)
アパレルとファブリックの最後の決定的な「異」は、製品の「構成要素」にある。アパレル製品は、ファブリック100%で構成されているわけではない。
5.1. アパレルの構成:複合組み立て品として
アパレル製品は、主素材である「ファブリック」と、機能性や装飾性を担う「副資材(Trims / Hardware)」を組み合わせた、工学的な「複合組み立て品」である 9。
5.2. 主素材としてのファブリック (Primary Material: Fabric)
ファブリックは、衣服の「ボディ(本体)」を形成する主要素材である。これには綿、ポリエステル、ウールなどの伝統的な繊維素材 9 から、近年ではアップルレザー(りんごの廃棄物から作られる素材)のような代替素材 33 まで、多様な種類が含まれる。
5.3. 副資材としてのトリムとハードウェア (Secondary Materials: Trims & Hardware)
アパレル製造(CMT)の「T」が示す「トリム(Trim)」28 は、ファブリック以外で、衣服の開閉、固定、補強、装飾のために取り付けられる部品の総称である 10。
これらのトリムの多くは、ファブリック(繊維ベース)とは異なり、主に「金属(Metal)」や「プラスチック(Plastic)」、あるいは木材や皮革で作られる 9。
以下に、アパレルを構成する主要なトリムとハードウェアの具体例と、その素材および役割を示す 10。
- 開閉・固定(Fastenings)38:
- ジッパー (Zippers):金属製、プラスチック製、ナイロン製。ジャケットやパンツの開閉機能 34。
- ボタン (Buttons):樹脂、木製、金属製、シェル(貝殻)製。衣服の固定機能 10。
- バックル (Buckles):金属製、プラスチック製。ベルトやストラップの調整・固定 34。
- スナップボタン (Snap button):金属製、プラスチック製。ボタンの代替となるはめ込み式の留め具 37。
- 補強・構造 (Reinforcement):
- アイレット / グロメット (Eyelets / Grommets):金属製、プラスチック製。紐を通す穴の補強 34。
- リベット (Rivet):金属製。デニムのポケット角など、特に力のかかる部分の補強 10。
- 芯地 (Interlining):襟やカフスの形状を保持するための構造材。多くの場合、不織布(Non-woven fabric)が使用される 10。
- 組み立て (Assembly):
- 縫製糸 (Sewing Threads):ファブリック同士を物理的に縫い合わせるために不可欠な要素 10。
この分析は、アパレルとファブリックの物理的な差異を明確にする。ファブリックは「木材(Lumber)」に例えられ、アパレルは「椅子(Chair)」に例えられる。ファブリックは、織物、編物、不織布といった構造を持つ(比較的)均質な「素材」である。対照的に、アパレルは、その「素材(ファブリック)」を機能させるために、ネジ、釘、接着剤(=トリム)を必要とする「最終組み立て品」である。ジャケットがアパレルとして機能するためには、ファブリックだけでなく、ジッパー、ボタン、縫製糸といった異種素材(金属、プラスチック)が不可欠である。この「均質素材」対「異種素材を含む工学的な複合組み立て品」という対比が、両者の構成的な差異を決定づけている。
6. 総論:アパレルとファブリックの異同の体系的整理
本分析を通じて、「アパレル」と「ファブリック」の「異同」は、概念、階層、構成、産業プロセスの4つの側面から体系的に整理することができる。
6.1. 「同」:類似点 (Similarities)
両者の「同(類似点)」は、その密接な産業的連関にある。
- 産業的連関:両者は「テキスタイル・アパレル産業」という単一の巨大なバリューチェーン 11 における、連続した構成要素である。ファブリックなくしてアパレルは存在しない。
- 起源の共有:両者の最終的な起源は、綿花、石油、動物繊維などの「原材料(Raw Material)」26 を共有している。
- 品質の連動:ファブリックの品質(例:織物の密度、編物の伸縮性、染色の堅牢度)は、アパレル製品の最終的な品質、性能、外観、耐久性を直接的に決定する 7。
6.2. 「異」:相違点 (Differences)
両者の「異(相違点)」は、その定義と産業上の役割において多層的かつ根本的である。
- 概念と語源の違い:
- アパレル:apareillier(準備する)14。人体に「装着する装備一式」という「人間中心的」な概念(完成品)。
- ファブリック:fabrica(作業場)5。「構築されたモノ」という「生産中心的」な概念(素材)。
- 範囲と階層の違い:
- アパレル:衣服、靴、バッグ、アクセサリーなど、装着品全般を指す広範な「製品カテゴリ」1。
- ファブリック:「テキスタイル(繊維産業の総称)」18 の一部であり、アパレル産業に供給される特定の「中間素材」5。
- 構成要素の違い:
- アパレル:ファブリック(主原料)と、金属・プラスチック製のトリム(副資材)を組み合わせた「複合組み立て品(Assembly)」9。
- ファブリック:織物、編物、不織布のいずれかの構造を持つ、単一の「均質素材(Material)」22。
- 産業プロセスとリスクの違い:
- アパレル:アパレル・メーカー(CMT)29 が担う「労働集約型」の「組み立て(Assembly)」プロセス 4。
- ファブリック:ファブリック・ミル 11 が担う「資本集約型」の「製造(Manufacturing)」プロセス 4。アパレル・メーカーにとっての主要な「財務リスク(Financial Risk)」を象徴する 12。
6.3. 最終結論
「アパレル」と「ファブリック」の「異同」を理解することは、単なる辞書的な知識の確認に留まらない。それは、グローバル・サプライチェーンの複雑な構造 27、製造におけるリスク管理の所在 12、ファブリックの最小発注数量(MOQ)31 を考慮した正確な原価計算、そしてアパレル製品の機能性を決定づける工学的な製品設計 38 を遂行する上で不可欠な、産業的かつ実務的な境界線の認識そのものである。
引用文献
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