国際統合報告評議会(IIRC)

概念からグローバル・ベースラインへ—フレームワークとその永続的レガシーに関する徹底的分析

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第1部:統合報告の誕生

1.1. 新たな報告パラダイムの必要性:「サイロ化」した報告書

国際統合報告評議会(IIRC)の設立以前、企業報告は著しく二分化していました。一方では、伝統的な財務報告が「製造資本」や「財務資本」といった有形資産に焦点を当てていましたが、これらは企業が直面する価値創造の機会を説明するにはますます不十分になっていました 1。他方では、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)などが先駆となったサステナビリティ報告が発展し、環境や社会に対する組織の過去の「影響」を「測定」することにおいては進歩を遂げていました 2

しかし、ここに深刻な問題が横たわっていました。報告実務は「断片的でサイロ化された報告の難問」3に陥り、公表される報告書は「ばらばらで静的」4なものになりつつありました。決定的なことに、GRIの活動は、サステナビリティへの配慮が「『企業にとっての価値』やステークホルダーにとっての価値」にどのようにつながるかを投資家や企業が考慮することを、必ずしも奨励するものではありませんでした 2。市場には、GRIが測定する「影響(インパクト)」と、投資家が資本配分のために必要とする「価値(バリュー)」との間に、明確なギャップが存在していたのです。

この分析から導かれるのは、IIRCがGRIやサステナビリティ報告に取って代わるために設立されたのではないということです。むしろ、GRIの活動が明らかにした特定の「資本市場の空白」を埋めるために設立されました。当時の市場の不備は、サステナビリティに関する「データ」の欠如ではなく、そのデータを中核的なビジネスモデルや長期的な財務価値に結びつける「統合」の欠如でした。したがって、IIRCの使命は、より多くのデータを生み出すことではなく、「連結の論理」を創造することでした。それは、サステナビリティのような非財務情報を、企業価値と資本配分の言語に翻訳するための物語的・概念的な枠組みを提供することであり、企業報告の「次なる進化のステップ」5と位置づけられました。

1.2. IIRCの設立と使命(2010年)

この必要性に応えるため、IIRCは2010年に設立されました 7。その設立は、英国チャールズ皇太子(当時)の「Accounting for Sustainability(A4S)」プロジェクトとGRIによって発表されました 8。IIRCは、規制当局、投資家、企業、基準設定団体、会計専門家、NGOといった多様なセクターのリーダーたちが集う「グローバルな連合体」として結成されました 5

IIRCの公式な使命は、「統合報告と統合思考を、官民両セクターにおける主流なビジネス慣行として確立すること」5でした。その目標は、財務、環境、社会、ガバナンス(ESG)の情報を、「明確、簡潔、比較可能」な形式で統合する、「世界的に受け入れられる統合報告フレームワーク」を構築することにありました 7

IIRCの「連合体」としての構造は、それ自体が戦略的な選択でした。これは、報告における「サイロ化」の問題を、組織の設計思想によって克服しようとする試みでした。投資家、会計士、NGOといった、時には利害が対立するステークホルダーを同じテーブルに着かせることで 5、IIRCはそのフレームワークが「単なる会計基準」や「単なるサステナビリティ・イニシアチブ」として片付けられることのないよう、市場全体の合意を内部から構築するように設計されました。この予備的な合意形成のプロセスは、特に「財務資本の提供者」9という最も重要なターゲット層による主流での採用に必要な「正当性」を、その誕生と同時に確保することを意図していました。

1.3. ビジョン:「統合思考」のサイクル

IIRCが掲げたビジョンは、「資本配分と企業行動を、金融の安定と持続可能な開発という広範な目標に合致させること」6でした。このビジョンを達成するためのメカニズムが、「統合報告と思考のサイクル」6と呼ばれるプロセスです。最終的な目標は、「新たに出現しつつある、より持続可能なグローバル経済モデルのニーズに応えるため、組織の総合的なパフォーマンスに関する、過去(retrospective)だけでなく将来(prospective)を見据えた、より包括的で理解しやすい情報」8を提供することでした。

ここで注目すべきは、IIRCの真の「成果物」は報告書そのものではなく、その報告プロセスが組織内部に強いる「思考」の変化であったという点です。「統合報告書」は単なる外部への静的な成果物(アーティファクト)に過ぎません。IIRCが真に目指したのは、「統合思考」5という、組織の文化的・経営的な変革でした。

このビジョンは、企業の「開示」を変えるだけでなく、「企業行動」そのものを変えることを目指していました 6。$$フレームワークが要求するように、戦略、財務、サステナビリティを「連結」した報告書を作成するためには、CFOがCSO(最高サステナビリティ責任者)と対話し、取締役会がこれらのつながりを統治するなど、企業の内部プロセス自体が連結されなければなりません。この意味で、$$フレームワークは「トロイの木馬」として設計されたと言えます。外部に「統合報告書」を作成するという義務が、内部の経営、意思決定、そして「統合思考」13の変革を強制する。この内部変革こそが、IIRCのビジョンがターゲットとした「企業行動」の変化だったのです。

第2部:$$フレームワークの技術的解体

2.1. 哲学:価値創造の新たな定義

$$フレームワークは、厳格な規則主義ではなく、原則主義(principles-based)を採用しています 14。その「第一の目的は、組織が時間をかけてどのように価値を創造するかを財務資本の提供者に説明すること」15にあります。このフレームワークは、3つの不可分の基本概念に基づいています:1)価値創造、2)資本、3)価値創造プロセス 14

$$フレームワークにおける「価値」の定義は広範です。それは「組織にとっての価値創造と他者にとっての価値創造」14の両方を含みます。そして、「企業が他者のために価値を創造すれば、長期的にはそれが企業の価値創造につながる」16という中心的な前提に立っています。価値は、静的なものではなく、短期、中期、長期にわたって創造、維持、または毀損されるものとしてダイナミックに捉えられます 13

この「二重の価値」概念(「組織のため」と「他者のため」16)こそが、$$フレームワークの中核的な哲学的革新でした。これは、当時しばしば対立するものとして語られた「株主至上主義」と「ステークホルダー資本主義」の世界を、「啓発された自己利益(enlightened self-interest)」というモデルによって見事に橋渡しするものでした。

「組織のための価値」16は、伝統的な投資家中心の財務報告の言語です。対照的に、「他者のための価値」16は、ステークホルダー中心のサステナビリティ報告(社会的・環境的インパクト)の言語です。$$フレームワークの決定的な前提は、「企業が他者のために価値を創造すれば、長期的にはそれが企業の価値創造につながる」という両者の「連関」16にあります。この論理は、ステークホルダーや環境の問題(他者のための価値)を、長期的な企業価値(組織のための価値)の「先行指標(pre-financial indicators)」として再定義します。この「橋渡し」が、フレームワークを投資家(長期的な企業価値に焦点を当てる)とNGO/市民社会(ステークホルダーの価値を認める)の双方にとって、同時に受け入れ可能なものにしたのです。

2.2. 構成要素:価値創造の「6つの資本」

$$フレームワークは、組織が価値創造の基盤として依存し、影響を与えるリソースとして、「広範な資本基盤に対する説明責任とスチュワードシップ」10を要求します。これらは「価値のストック」18と呼ばれ、以下の6つに分類されます:

  1. 財務資本 (Financial Capital): 財やサービスの生産に使用可能な資金のプール。負債、資本、助成金、または事業や投資から生み出される 19
  2. 製造資本 (Manufactured Capital): 組織が事業遂行のために依存する、有形の人工物。建物、設備、インフラなど 19
  3. 知的資本 (Intellectual Capital): 無形の知識ベースの資産。特許、著作権、ソフトウェアなどの知的財産に加え、暗黙知、システム、手続きといった組織資本を含む 20
  4. 人的資本 (Human Capital): 組織の労働力の強さ。人々の能力、コンピテンシー、経験、そして革新への意欲を含む 20
  5. 社会・関係資本 (Social and Relationship Capital): コミュニティ、ステークホルダーグループ、その他のネットワークとの間に構築された関係性。ブランド評価や「社会的な事業継続ライセンス(social license to operate)」を含む 20
  6. 自然資本 (Natural Capital): 組織の過去、現在、未来の繁栄を支える、再生可能および再生不可能なすべての環境資源とプロセス。空気、水、土地、鉱物、生物多様性、生態系の健全性など 20

この「6つの資本」モデルは、単なる報告のための分類リストに見えますが、本質的には経営および戦略上の革命です。これは単なる分類法(taxonomy)ではなく、「新たな、拡張された貸借対照表」を管理せよという経営者への行動喚起(call to action)です。

伝統的な貸借対照表は、財務資本、製造資本、そして一部の(購入した)知的資本しか認識しません。対照的に、人的資本、社会・関係資本、自然資本は「オフバランス」であり、しばしば無料のインプット(自然資本)または単なる費用(人的資本)として扱われます。しかし、$$フレームワークは、これらすべてを「資本」または「資産」18として再概念化します。

この意味論的な転換は、経営上、重大な示唆をもたらします。例えば、「費用」(従業員研修)は最小化すべきコストです。しかし、「人的資本への投資」は、リターンを得るために最適化すべき戦略的配分となります。あるいは、「コスト」(汚染)は外部化されますが、「自然資本の枯渇」20は、管理・緩和・報告すべき内部的な負債として認識されます。

この6つの資本モデルこそが、統合思考を駆動する「エンジン」です。それは、CFOやCEOが、長期的な価値の真の駆動要因である「伝統的に見過ごされ、過小評価されてきた資源や資産」21を管理するための「言語」22と「論理」を提供するのです。

2.3. ガイドラインと構造:指導原則と内容要素

$$フレームワークの実務的な「ハウツー」は、報告書の作成方法を規定する「指導原則」と、報告書に含めるべき項目を規定する「内容要素」という、2つの主要なリストによって構成されています。

表1:$$フレームワークの概要

(本表は、14で概説されている$$フレームワークの3つの主要な構成要素、すなわち6つの資本、7つの指導原則、8つの内容要素を一覧にしたものです。)

6つの資本 (The Capitals)7つの指導原則 (Guiding Principles)8つの内容要素 (Content Elements)
1. 財務資本 (Financial)1. 戦略的焦点と将来志向1. 組織概要と外部環境
2. 製造資本 (Manufactured)2. 情報の結合性2. ガバナンス
3. 知的資本 (Intellectual)3. ステークホルダーとの関係3. ビジネスモデル
4. 人的資本 (Human)4. マテリアリティ4. リスクと機会
5. 社会・関係資本 (Social and Relationship)5. 簡潔性5. 戦略と資源配分
6. 自然資本 (Natural)6. 信頼性と完全性6. 実績(パフォーマンス)
7. 比較可能性と首尾一貫性7. 見通し(アウトルック)
8. 作成と表示の基礎

7つの指導原則 (Guiding Principles):

これらは、統合報告書の「作成」プロセス全体を導く原則です 14。

  1. 戦略的焦点と将来志向: 組織の戦略と、それが短・中・長期の価値創造能力にどう関連するかについての洞察を提供する 17
  2. 情報の結合性: 組織の価値創造能力に影響を与える要因間の「相互関連性と依存関係」について、全体像(ホリスティックな姿)を示す 17
  3. ステークホルダーとの関係: 組織と主要なステークホルダーとの関係の性質と質についての洞察を提供する 17
  4. マテリアリティ: 組織が短・中・長期にわたり価値を創造する能力に「実質的な影響を与える」事項を開示する 17
  5. 簡潔性: 20
  6. 信頼性と完全性: 肯定的(ポジティブ)および否定的(ネガティブ)な両側面を含め、すべての重要な事項を偏りなく含める 16
  7. 比較可能性と首尾一貫性: 報告される情報は、時間を通じて一貫性を持ち、他組織と比較可能であるべきである 16

8つの内容要素 (Content Elements):

これらは、統合報告書に含めるべき「必須のセクション(構成要素)」です 20。

  1. 組織概要と外部環境
  2. ガバナンス
  3. ビジネスモデル
  4. リスクと機会
  5. 戦略と資源配分
  6. 実績(パフォーマンス)
  7. 見通し(アウトルック)
  8. 作成と表示の基礎

これらの指導原則(「どのように」)と内容要素(「何を」)は、2つの別個のリストではなく、相互に作用する「マトリックス(行列)」として機能します。統合報告書における真の「統合」は、指導原則(特に「情報の結合性」)を、内容要素の「全体」にわたって適用することから生まれます。

伝統的な年次報告書にも、ガバナンス(要素2)、リスク(要素4)、実績(要素6)に関するセクションは個別に存在していました。IIRCの革新は、まさに「情報の結合性」の原則 17にあります。この原則は、企業がこれらの要素を個別のサイロとして報告することを禁じます。企業は、自社のビジネスモデル(要素3)がリスクと機会(要素4)にどのように連関し、それが戦略と資源配分(要素5)をどのように駆動し、そのプロセスがガバナンス(要素2)によってどのように監督され、実績(要素6)によってどのように測定されるかを、常に6つの資本(基本概念)を考慮しながら説明することが求められます。

この「マトリックス」構造こそが、統合報告書を、単なる「抱き合わせ報告書」とは一線を画す、強力な分析的物語(ナラティブ)たらしめているのです。

第3部:IFRSへの大統合:IIRCからIFRSへ

3.1. 統合の論理的根拠:「アルファベット・スープ」

IIRCが$$フレームワークを推進していた間、非財務報告の領域では他の多くのイニシアチブが並立し、混乱した状況が生まれていました。IIRC、SASB(サステナビリティ会計基準審議会)、GRI、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、CDSB(気候変動開示基準委員会)などが乱立し、報告基準の「アルファベット・スープ」25と呼ばれる状態に陥っていました。

この状況は、報告企業にとっては「混乱」26と高い報告負担 27を生み出し、投資家にとっては「断片的でサイロ化された報告の難問」3をもたらしました。その結果、市場、特に投資家からは、「より包括的で一貫性のある企業報告システム」28と、「単一の、投資家中心のグローバル・ベースライン」26を求める声が急速に高まりました。IIRC自身も、最終的には「(報告基準を)調和させようとする圧力に屈した」29のです。

皮肉なことに、IIRCがスタンドアロンの組織としての運命を終えたのは、統合報告の「概念実証」に成功し、それに対する市場の「需要創出」に成功したこと自体が原因でした。IIRCは、グローバルな義務的基準の「必要性」を証明しましたが、自主的な「連合体」5であったIIRCには、その基準「そのもの」になる力と権威が欠けていました。

IIRCは新しい報告の領域を発見した「偵察隊」であり、IFRS財団(国際財務報告基準財団)は、その領域を統治し、グローバルな基準を確立するために必要な「常備軍」でした。IFRS財団は、すでに140以上の法域で会計基準として採用されている30という圧倒的なグローバルな正当性を持っており、アルファベット・スープを整理統合できる唯一の機関でした。

3.2. 第1フェーズ:IIRCとSASBの合併(Value Reporting Foundation)

この「大統合」に向けた最初の重要な動きは、2020年11月にIIRCとSASBが合併の意向を発表したことでした 28。両者は2021年6月に正式に合併し、Value Reporting Foundation(VRF)を設立しました 31

この合併は、戦略的に見て極めて論理的なものでした。両者は高い補完関係にあったからです:

  • IIRC ($<$IR$>$フレームワーク): 報告書の構成方法や、財務情報と非財務情報を「どのよう」に連結するかという、ハイレベルな「原則主義」の「フレームワーク」を提供した 28
  • SASB (SASBスタンダード): 「何」を具体的に開示すべきかという、産業別、詳細、かつ再現可能な「スタンダード(基準)」を提供した 28

両者が一体となることで、「長期的な価値創造のより完全な全体像」28を提供できる、包括的なソリューションが誕生しました。

このVRFへの合併は、IFRS財団による「買収」を見据えた、極めて巧妙な戦略的動きでした。それは、IFRS財団にとっての「ターンキー(即利用可能な)ソリューション」を創り出すものでした。IFRS財団は、投資家中心の「哲学」(IIRC)と、投資家中心の「具体的指標」(SASB)を別々に交渉・買収する必要がなくなり、VRFという単一の、包括的で論理的に完成された「プラグアンドプレイ」のソリューション28を獲得することが可能になったのです。この合併が、次のIFRS財団への統合を事実上、必然的なものとしました。

3.3. 第2フェーズ:IFRS財団への統合(ISSB)

決定的な動きは、2021年11月にスコットランドで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)の場で訪れました。IFRS財団の評議員会は、以下の2つの措置を同時に発表しました。

  1. グローバルなサステナビリティ開示基準を策定するため、新しい**国際サステナビリティ基準理事会(ISSB)**を設立すること 30
  2. そのISSBの活動の基盤とするため、VRF(IIRCとSASB)およびCDSBをIFRS財団に統合すること 34

CDSBの統合は2022年1月に、そしてVRFの統合は2022年8月1日に完了しました 35

ISSBの明確な目標は、$$フレームワーク、SASBスタンダード、TCFD提言、CDSBフレームワークといった、これまで市場を牽引してきたイニシアチブの活動25の上に直接構築し、「サステナビリティ関連の財務開示に関する真のグローバル・ベースライン」30を提供することです。

表2:企業報告の統合タイムライン(2010年~2022年)

(本表は、7の各情報源に基づき、IIRCの設立からIFRS財団への統合に至るまでの複雑な組織再編の歴史を時系列で示します。)

年月出来事
2010年国際統合報告評議会(IIRC)が設立される 7
2011年サステナビリティ会計基準委員会(SASB)が設立される 33
2013年IIRCが国際$$フレームワークを公表する 14
2020年11月IIRCとSASBが合併意向を発表する 28
2021年6月IIRCとSASBが正式に合併し、Value Reporting Foundation(VRF)が設立される 31
2021年11月(COP26) IFRS財団がISSBの設立と、VRFおよびCDSBの統合計画を発表する 34
2022年8月VRFのIFRS財団への統合が完了する 35

3.4. 現在のガバナンス:フレームワークの共同管理

VRFがIFRS財団に統合された結果、$$フレームワークは非常にユニークなガバナンス体制の下に置かれることになりました。$$フレームワークの責任は、IFRS財団の既存の**国際会計基準審議会(IASB)と、新設の国際サステナビリティ基準理事会(ISSB)**が、「共同で」引き継ぐことになったのです 10。また、IIRCの主要な諮問機関であった統合報告評議会は、IFRS財団評議員会および両理事会(IASBとISSB)への諮問機関として存続することになりました 40

$$フレームワークがIASB(財務基準の策定主体)とISSB(サステナビリティ基準の策定主体)の「両方」によって「共同統治」されるという事実は、この一連の統合における最も重要かつ巧妙な構造的成果です。これにより、IIRCがその設立以来、哲学的に推進することしかできなかった「財務と非財務の結合性」が、IFRS財団というグローバルな基準設定機関の内部に「制度的」に組み込まれたのです。

IFRS財団は、IASBとISSBという2つの独立した基準設定理事会を創設しました 30。しかしこの構造は、IIRCがまさに解決しようとした「財務」と「サステナビリティ」の間の「新たなサイロ」を生み出すリスクを本質的に孕んでいました。

この2つの「独立した」理事会の成果物(会計基準とサステナビリティ基準)が、将来にわたって「連結」され続けることを、いかにして保証するのか?

その答えが、両者を「連結」するために設計された唯一のフレームワークである$$フレームワークについて、「共同で責任を負わせる」39ことでした。

この決定により、$$フレームワークは、もはや単なる企業向けの報告ガイドラインではなく、IFRS財団自体のための「制度的な内部の橋渡し役」へと昇華しました。それは、IASBとISSBが「協働」し 40、それぞれの基準が「共に効果的に使用できる」30ことを保証せざるを得ない、共有された必須の概念的基盤となったのです。

第4部:$$フレームワーク:グローバル・サステナビリティ基準のDNA

4.1. $<$IR$>$フレームワークの今日の役割:「オンランプ」と「伝達手段」

IFRS財団への統合後、$$フレームワークは、IFRS財団が「積極的に奨励する」40、ハイレベルな「自主的リソース」40として公式に位置づけられています。その主要な役割は、「財務諸表とサステナビリティ関連の財務開示を連結すること」10であると定義されています。

この役割を具体化するため、IFRS財団は「統合報告への移行:入門ガイド(Transition to integrated reporting: a guide to getting started)」41と題する手引きを公表しています。このガイドは、企業がISSBの新しい基準であるIFRS S1(一般要求事項)およびIFRS S2(気候関連開示)を導入するための「経路(pathway)」として、$$フレームワークを採用する「段階的アプローチ」を明示的に提供しています 41

  • 新規報告企業向け: IFRS S1およびS2の導入方法を学ぶため、「1、2、または3つの報告サイクル」42をかけて、まず$$フレームワークの原則と概念を採用することを提案しています。
  • 経験豊富な報告企業向け: 既存の統合報告書に、「IFRS S1およびS2の開示を(どのように)組み込むか」42を理解するのに役立つとされています。

さらに、IFRS S1基準の本文は、「統合報告書を、サステナビリティ関連財務開示のための可能な場所(すなわち伝達手段)の一つとしてリストアップして」41おり、統合報告書がS1/S2開示の「受け皿」として公式に認められていることを示しています。

$$フレームワークの「自主的リソース」[40]という位置づけは、その重要性を見誤らせる可能性があります。実態として、$$フレームワークは、単なる「競合するフレームワーク」から、IFRS財団が推奨する公式の「オペレーティング・システム(OS)」および「導入ツール」へと格上げされたのです。

IFRS財団は、IFRS S1およびS2という2つの新しい複雑な基準を、グローバル市場に迅速に採用させるという課題に直面しています 26。「入門ガイド」41はそのための主要なツールであり、その核心的な指示は「IFRS S1を読め」ではなく、「$$フレームワークに規定された原則と概念を採用せよ」[42]となっています。この戦略は、すでに75カ国以上に広がるIIRCの既存の採用企業ネットワーク[10]を見事に活用するものです。IFRS財団は$$フレームワークを、新規ユーザーのための主要な「オンランプ(導入路)」42として、またS1/S2の新しいデータ開示を収容する物語的な「伝達手段(ビークル)」41として、戦略的に利用しているのです。

4.2. IFRS S1「一般要求事項」への直接的影響

$$フレームワークがISSBの新基準、特にIFRS S1「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する一般要求事項」に与えた影響は、間接的なものではなく、直接的かつ根本的なものです。IFRS S1は「$$フレームワークの概念を統合して」43策定されました。実際、IFRS S1の元となったプロトタイプ(試作版)は、VRF(IIRC/SASB)の代表者を含む技術準備作業部会(TRWG)によって開発されており 44、その設計思想が引き継がれています。

特に重要な統合概念は以下の通りです:

  • 資本 (The Capitals): IFRS S1は、「企業が価値を創造、維持、または毀損するために『依存または影響を与える』資源と関係性(すなわち『資本』)43という、$$フレームワークの核となる定義に基づいています。「6つの資本」の概念は「IFRS S1に組み込まれて」22おり、組織がサステナビリティ関連のリスクと機会を特定する上で極めて重要な思考の枠組みを提供します 45。IFRS S1では「6つの資本」という特定の「用語」の使用は義務付けられていませんが 43、企業が依存する「資本」を特定するという「概念」は、基準の中核に組み込まれています。
  • 結合性 (Connectivity): IFRS S1は、$$フレームワークの「連結された情報の重要性への焦点」43に直接基づいています。

この概念の系譜は、$$フレームワークがISSB基準の「DNA」として機能していることを明確に示しています。以下の表は、IIRCの主要概念がIFRS S1の要件としてどのように結実したかを示しています。

表3:$$概念とIFRS S1の対応関係

(本表は、9の各情報源に基づき、$$フレームワークの主要概念がIFRS S1の特定の要件にどのように直接的に組み込まれたかを示します。)

$$フレームワークの概念IFRS S1 における同等の要件・概念
対象読者: 「財務資本の提供者」 9対象読者: 「一般目的財務報告書のプライマリー・ユーザー」(すなわち投資家、貸し手)43
基本概念: 「資本」(価値の源泉である6つのストック)14中核概念: 企業が「依存または影響を与える」**資源と関係性(資本)**に関する開示 43
指導原則: 「情報の結合性」 17中核要件: 「連結された情報」の提供 43。情報は「一般目的財務報告書の一部として」提供されなければならない 46
指導原則: 「信頼性と完全性」(偏りのない、肯定的/否定的情報)16中核要件: 情報は「意思決定に有用」で「比較可能」かつ「信頼できる」ものでなければならない 25

4.3. 「結合性」の実現:原則から法的要件へ

IIRCが企業報告の世界にもたらした最も重要かつ永続的な遺産は、「結合性(Connectivity)」という概念です。$$フレームワークは、「財務諸表とサステナビリティ関連の財務開示を連結するために使用される」10究極のツールです。IFRS財団も、IASBとISSBの両議長46が主導し、この「結合性」の概念を組織全体の中核に据えています。

この「結合性」は、ISSB基準の導入により、単なる理念から具体的な要件へと進化しました。IFRS財団はこれを「成果物における結合性(Connectivity in product)46と呼んでいます。IFRS S1およびS2は、企業に対して「結合性」を担保するために、以下の3点を具体的に要求しています:

  1. サステナビリティ開示を、財務諸表と「共に」、一般目的財務報告書の一部として提供すること 46
  2. サステナビリティ関連リスク(気候関連リスクなど)が、「財務諸表にどのように反映されているか」を説明すること 46
  3. サステナビリティ開示を作成する際、該当する場合は「財務諸表と一致した仮定」を用いること 46

これは、IIRCが$$フレームワークの指導原則 17として提唱した「結合性」が変容したことを意味します。それはもはや、報告書作成者に対する「哲学的な推奨事項」ではなく、新しいグローバル基準における「ハードコードされた義務的要件」46となったのです。企業はもはや、財務報告書とは無関係に、別のサイロでサステナビリティ報告書を作成することはできません。ISSB基準は、サステナビリティ情報がIASBの財務諸表と連結されることを「法的に」要求します。

IIRCが提唱した「結合組織」10としての$$フレームワークの理念は、今やIFRS財団という強大な機関を通じて、グローバルな金融規制の構造そのものに織り込まれたのです。

第5部:$$フレームワーク適用のグローバル分析

5.1. グローバルな普及と適用パターン

$$フレームワークは、その理念の普遍性により、75カ国以上で使用される10など、広範な地理的広がりを見せました。しかし、その採用は「世界的に基本的に自主的な慣行」47であったため、その普及は「遅い」47ものにとどまりました。

特に、そのグローバルなビジョンとは裏腹に、IIRCは「米国と中国という主要なグローバル市場での勢いとエンゲージメントを見出すのに苦労した」29という重大な限界に直面しました。ある2018年の調査では、統合報告書を作成した米国企業はわずか28社であったと指摘されています 48

一方で、$$フレームワークの採用は、法規制の執行力が強い国々[49]や、特定の国々で強力に推進されました。その「顕著な例外」が、**南アフリカ**と**日本**です [29, 50]。南アフリカでは、キングIVコーポレートガバナンス・ガイドライン(IoDSA, 2016)に$$が組み込まれ、制度化されています 50

$$フレームワークの普及パターンが示すのは、自主的な原則主義フレームワークが持つ「限界」です。世界最大の2つの資本市場(米国と中国)[29]への浸透に失敗したことは、自主的な「連合体」としてのIIRCの構造的弱点を露呈しました。これは、IIRCがIFRS財団に統合されなければならなかった「必要性」を裏付けています。IFRS財団は、証券監督者国際機構(IOSCO)[51]などを通じたグローバルな規制当局との強固な関係を活用し、IIRCが単独では浸透できなかった市場(米国、中国など)に対しても、$$の「概念」(IFRS S1に組み込まれた)を実質的に普及させていく力を持っています。

5.2. 比較分析と「日本の矛盾」

$$の採用状況をめぐる分析において、日本は興味深い「矛盾」を提示しています。

一方では、10カ国50社(各国5社)を対象とした2019年の比較分析(2017年発行の報告書が対象)48が存在します。この分析では、開示の質に基づき各国が3つのカテゴリーに分類されました:

  • 高品質: ドイツ、オランダ、南アフリカ
  • 中品質: フランス、イタリア、韓国、英国
  • 低品質: ブラジル、日本、米国

この分析において、日本は米国やブラジルと並び「低品質」カテゴリーに分類されました 48

しかし他方では、より最近の学術的・市場的分析が存在し、それらは日本を「世界有数の採用国」50であり、南アフリカと並んで$$が「すでに主流」29となっている「顕著な例外」であると評価しています 53

この真っ向から対立するように見える2つの評価は、エラーではなく、日本における$$の受容プロセスを理解するための鍵となります。2019年の「低品質」スコア[52]は、恐らくグローバル基準の画一的なチェックリストを機械的に適用した結果でしょう。それに対して2023年の研究[29]が示す現実は、日本が$$を単に「採用(adopt)」したのではなく、それを「ローカルな解決策」へと「適応(adapt)」させたというものです。

日本の統合報告書は、グローバルなチェックリストの観点からは「低品質」と評価されるかもしれませんが、それはまさに、日本固有のビジネス文化やガバナンス上の課題29という「ローカル」な問題を解決するために$$の「曖昧なグローバル・アイデア」を「変革」させた結果である可能性があります。このことは、日本が単純な「コンプライアンス(遵守)」ではなく、「合理化(rationalisation)」という、より高度な受容の段階を経たことを示唆しています。

5.3. 詳細分析:日本独自の合理化

日本における$$の「適応」プロセスは、グローバルな概念がローカルな文脈でどのように受容されるかを示す好例です。

  • ローカルな問題(背景): 歴史的に銀行融資(間接金融)に依存してきた日本企業は、資本市場(直接金融)との間に「断絶」がありました 54。特に、欧米の投資家から見れば非効率と映る可能性のある「系列」29のような、長期的な関係性に基づくビジネス慣行を、資本市場に対して説明し、正当化する必要がありました。
  • $$による解決策: $$フレームワーク、特に「6つの資本」の概念は、この課題に対する「共通言語」54を提供しました。例えば、系列のような「疑わしい関係」を、価値ある「社会・関係資本」として再フレーミングすることが可能になり、それらを「より肯定的な価値創造ストーリー」29へと転換する論理的支柱となりました。
  • 経済産業省(METI)の役割: このプロセスにおける主要なアクターは、経済産業省(METI)でした。2014年に公表された「伊藤レビュー」55は、日本企業の「持続的な低収益性」55という根本的な課題を解決するために開始されました。
  • METIの「価値協創ガイダンス」: 「伊藤レビュー」の議論に基づき、METIは「価値協創ガイダンス」(「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」)55を策定しました。これは、$「報告書」という静的な成果物を、「エンゲージメントのプロセス」57へと昇華させた、日本独自の適応と言えます。
  • 市場における推進: このMETIの主導力と市場のニーズが合致し、日本は「統合報告書の利用拡大を主導」53する国となりました。WICIジャパン(世界知的資本・資産イニシアティブ)が主催する「統合報告優秀企業賞」58は、中外製薬 58や三井化学 59といった先進的な取り組みを行う企業を表彰し、ベストプラクティスを市場に広める役割を果たしています。
  • KPMGジャパンの調査: KPMGジャパンによる年次調査60もこの動向を定点観測しています。2020年の調査では、統合報告書の発行企業数が305社と過去最高を記録した一方で、多くの企業がマテリアリティ(重要課題)の特定プロセスや取締役会の関与について十分な説明を行っておらず、独自の「価値創造ストーリー」を語りきれていないという、質的な課題も指摘されています 63
  • 将来: $$とMETIのガイダンスによって「財務情報と非財務情報の統合」64という素地がすでに醸成されている日本は、現在、ISSB基準の採用(またはそれと整合的な国内基準の策定)に向けて準備を進めています 64

5.4. 産業セクター別採用分析

$$フレームワークの採用は、特定の産業セクターに偏るのではなく、広範なセクターにわたって確認されています。IFRS財団が提供する統合報告事例データベース 66やその他の分析 48によると、特に以下のセクターでの採用が顕著です:

  • 金融 (Financials):
  • 銀行・金融サービス: ABN AMRO(オランダ)、National Australia Bank(オーストラリア)、DGB Financial Group(韓国)、七十七銀行(日本)48
  • 保険: Aegon(オランダ)48
  • インフラ (Infrastructure):
  • 電力・公益事業: A2A SpA(イタリア)、Adani Power(インド)66
  • 建設・不動産: Acciona(スペイン)、イオンモール(日本)66
  • 採掘・鉱物処理 (Extractives & Minerals Processing):
  • 石油・ガス: HELLENIQ ENERGY(ギリシャ)66
  • 鉱業・金属: Hindalco Industries(インド)、Gold Fields(南アフリカ)、Sasol(南アフリカ)48
  • 資源転換 (Resource Transformation):
  • 化学: BASF(ドイツ)、AECI(南アフリカ)48

この採用パターンは、$$フレームワークの採用が均一ではなく、特定の論理に基づいていることを示唆しています。すなわち、$$の採用は、そのビジネスモデルが「既に」複数の資本(特に金融・製造資本以外)間の目に見える長期的な相互作用に依存しており、かつ、非財務リスクが明らかに「財務的に重要」33であると認識されているセクターに集中しているのです。

この論理はセクター別に明確です:

  1. 金融・銀行業: このセクターのビジネスモデルは、中核である「財務資本」の管理と、同時に「社会・関係資本」(顧客や規制当局からの「信用」「評判」)の維持に決定的に依存しています。このセクターにとって、$$の採用は「より質の高い報告の証」47となり、機関投資家や「銀行融資へのアクセス条件を改善する」47インセンティブとなります。
  2. エネルギー・採掘業: これらのセクター 68は、その存続自体が6つの資本の複雑な相互作用によって定義されます。彼らは巨額の「製造資本」(プラント、掘削リグ)を運用し、有限の「自然資本」(資源、排出枠)を消費し、事業を継続するために「社会・関係資本」(地域コミュニティや政府からの「社会的な事業継続ライセンス」)を必要とします。エネルギー企業にとって 70、$$は、その巨大な有形資産、深刻な環境への影響、そして長期的な価値提案を、投資家に対して「全体論的」70な単一のストーリーとして語ることを可能にする、唯一のフレームワークなのです。

結論として、$$フレームワークは、「見過ごされてきた」資本(人的、社会的、自然的)が「既に」明白かつ長期的な、マテリアリティのあるビジネスリスク・機会として顕在化しているセクターにおいて、その価値が最も早く認識され、採用が進行したと言えます。

付録A:産業セクター別 $$フレームワーク採用企業事例

以下の表は、IFRS財団の統合報告事例データベース66およびその他の分析48に基づき、$$フレームワークを採用している企業(または$$の原則に基づき価値創造モデルや資本について報告している企業)の事例を、SASB(サステナビリティ会計基準審議会)の産業セクター分類別に整理したものです。

セクター産業企業名
金融 (Financials)商業銀行ABN AMRO Bank NVオランダ
商業銀行National Australia Bank Ltdオーストラリア
商業銀行77 Bank Ltd/The (七十七銀行)日本
商業銀行Absa Group Ltd南アフリカ
資産運用・管理4Sight Holdings Ltd南アフリカ
保険Aegon NVオランダ
保険Sanlam Ltd南アフリカ
保険Adamjee Insurance Co Ltdパキスタン
消費者金融AEON Financial Service Co Ltd (イオンフィナンシャルサービス)日本
インフラ (Infrastructure)電力・発電A2A SpAイタリア
電力・発電Adani Power Ltdインド
電力・発電Genesis Energy Ltdニュージーランド
ガス事業Adani Total Gas Ltdインド
水道事業Aguas Andinas SAチリ
不動産Aeon Mall Co Ltd (イオンモール)日本
不動産Gecina SAフランス
エンジニアリング・建設Acciona SAスペイン
エンジニアリング・建設Gamuda Bhdマレーシア
採掘・鉱物処理 (Extractives & Minerals Processing)石油・ガス(精製・販売)HELLENIQ ENERGY HOLDINGS S.A.ギリシャ
石油・ガス(探査・生産)Sasol Ltd南アフリカ
石油・ガス(探査・生産)Galp Energia SGPS SAポルトガル
金属・鉱業Hindalco Industries Ltdインド
金属・鉱業African Rainbow Minerals Ltd南アフリカ
金属・鉱業Gold Fields南アフリカ
建設資材AGC Inc日本
鉄鋼Aichi Steel Corp (愛知製鋼)日本
資源転換 (Resource Transformation)化学BASFドイツ
化学AECI Ltd南アフリカ
化学Aica Kogyo Co Ltd (アイカ工業)日本
電気・電子機器ABB Ltdスイス
電気・電子機器Fuji Electric Co Ltd (富士電機)日本
産業機械Nabtesco Corp (ナブテスコ)日本
容器・包装Nampak Ltd南アフリカ
食品・飲料 (Food & Beverage)加工食品Acomo NVオランダ
アルコール飲料Sapporo Holdings Ltd (サッポロホールディングス)日本
農業製品Adecoagro SAアルゼンチン
食品小売Aeon Co M Bhdマレーシア
消費財 (Consumer Goods)アパレルAdastria Co Ltd (アダストリア)日本
家電Fukushima Galilei Co Ltd (フクシマガリレイ)日本
家庭・パーソナル用品Natura & Co Holding SAブラジル
運輸 (Transportation)自動車部品Aisin Corp (アイシン)日本
鉄道Nagoya Railroad Co Ltd (名古屋鉄道)日本
航空貨物・物流Santova Ltd南アフリカ
テクノロジー・通信 (Technology & Communications)ハードウェアFUJIFILM Holdings Corp日本
半導体Advantest Corp (アドバンテスト)日本
ソフトウェア・ITサービスSAP SEドイツ
ソフトウェア・ITサービスSCSK Corp日本
インターネットメディアNaspers Ltd南アフリカ
ヘルスケア (Health Care)バイオテクノロジー・医薬品Sanofi SAフランス
医薬品小売Ain Holdings Inc (アインホールディングス)日本
サービス (Services)教育Advtech Ltd南アフリカ
専門・商業サービスSecom Co Ltd (セコム)日本
専門・商業サービスAdani Ports & Special Economic Zone Ltdインド
ホテル・宿泊Aitken Spence Hotel Holdings PLCスリランカ

第6部:結論分析:統合思考の未来

国際統合報告評議会(IIRC)の歴史は、一つの概念がどのようにしてグローバルな規範へと進化していくかを示す、類稀なケーススタディです。

IIRCの究極の遺産は、「スタンドアロンの基準設定団体」としてのものではありません。実際、その点においては、市場の統合圧力の前に存続を断念しました。IIRCの真の功績は、21世紀の企業報告モデルにおける「概念的設計者」として、その役割を完璧に果たしたことにあります。IIRCは、企業価値の「DNA」とも言える「6つの資本」と「情報の結合性」という中核概念を開発し、パイロットプログラムを通じてテストし、そして75カ国以上にわたるグローバルなネットワークを通じて主流化することに成功しました 22

このIIRCが実証した「概念」こそが、IFRS財団が新しいグローバル・ベースライン30を創設するために採用・制度化した、まさにそのものでした。

$$フレームワークの未来は、それがIFRS財団に「統合された」からこそ、かつてないほど安泰であると言えます。もはや、アルファベット・スープの中の一つの「競合相手」ではありません。それは、IFRSの報告エコシステム全体(IASBとISSB)を分断の危機から守り、両者を束ねる「結合性」10を達成するための、IFRS財団「公式」の推奨メカニズムとなったのです。

IFRS財団の「入門ガイド」41が明確に示すように、$$フレームワークの新しい役割は、IFRS S1およびS2という新しいグローバル基準への世界的な「オンランプ(導入路)」として機能することです。IIRCが目指した「統合思考」は、今やIFRS財団という強力な推進力を得て、今後数十年にわたり「企業報告の規範」11となることが確実な軌道に乗ったのです。

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