メディア横断的アプローチによる概念の解体と再構築

序論:『物語』と『設計図』の弁証法
「ストーリー」と「シナリオ」は、日常の会話においてしばしば同義語として、あるいは曖昧な区別の下で用いられる。例えば、「感動的なシナリオ」と「感動的なストーリー」という表現は、多くの場合、交換可能に使用されている。しかし、この混同は、特に映画、演劇、ゲームといったクリエイティブ産業の制作現場において、重大な誤解を招く危険性を孕んでいる。
制作の現場において、この二つの用語の区別は、単なる言葉の定義の問題ではなく、制作プロセス、品質管理、そして明確な役割分担の基盤となる、極めて機能的な問いである。例えば、映画制作においてストーリー開発とシナリオ執筆の役割を混同することは、作品の商業的戦略と技術的実行の間に齟齬を生じさせる 1。また、ゲームデザインにおいて、インタラクティブな分岐構造を持つ「シナリオ」の特異性を理解しないまま、リニア(線形的)な「ストーリー」の概念を適用することは、そのメディアの可能性を根本的に損なうことになる 3。
本レポートの目的は、「ストーリーとシナリオの異同」という問いに対し、単なる辞書的定義の比較に留まらず、両者の語源的な本質から出発することにある。そして、映画、文学、演劇、マンガ、ゲームという異なるメディアの技術的特異性の中で、両概念が歴史的・機能的にいかに分化し、あるいは(ゲームのように)いかに融合・拡張してきたかを、比較メディア論の視座から徹底的に解明することである。
第1部:基本的定義と語源的考察
両用語の異同を分析するにあたり、まずその語源と辞書的定義に基づき、最も本質的な概念の対立軸を設定する。それは、「何が起こったか(WHAT)」を指す『ストーリー』と、「いかに見せるか(HOW)」を規定する『シナリオ』という根源的な対比である。
1.1 『ストーリー』の語源と本質:『歴史(Historia)』から『物語』へ
『ストーリー(story)』の語源は、ラテン語の『historia』、すなわち「歴史」あるいは「物語」に由来する 4。この語源が示すように、『ストーリー』の本質とは、「何が起こったか」という出来事の記録であり、時間軸に沿って展開された出来事を振り返る*回顧的(retrospective)*な性質を持つ。
日本語の辞書的定義においても、「ストーリー」は「物語。話」や「小説・演劇・映画などの筋。筋書き」と説明される 5。これは、登場人物、彼らに起こった出来事、そしてその因果関係の連なり(=筋)という、作品の*内容(The WHAT)*そのものを指す概念である。
この『ストーリー』の核となるのは、その情報がどの媒体(メディア)で表現されるかに依存しない、抽象的な「出来事の連なり」そのものである。ある専門家が指摘するように、同一のストーリー(魂)は、小説、マンガ、演劇、映画といった異なる「スタイル(身体)」へと言語や形式を超えて変換可能である 10。したがって、『ストーリー』は、具体的な表現形式(HOW)から切り離された、抽象的な「何が起こったか(WHAT)」という情報そのものであると定義できる。
1.2 『シナリオ』の語源と本質:『舞台(Scena)』から『設計図』へ
対照的に、『シナリオ(scenario)』の語源はイタリア語の『scenario』であり、これはさらにラテン語の『scena』、すなわち「舞台」に由来する 11。この語源は、『シナリオ』が本質的に「舞台(=見せる場所)」に関連した用語であり、視覚的かつ上演的な性質を持つことを示唆している。
辞書的定義では、「シナリオ」は「(映画や演劇の)脚本」「台本」を意味する 12。これは、抽象的な物語を、特定の場所(舞台やスクリーン)で実行・上演するために必要な、具体的な手順と指示を記した計画書を指す。
この「未来に実行されるべき手順」という中核的意味は、ビジネス用語としての「シナリオ」とも共通している。例えば、「楽観的シナリオ」「悲観的シナリオ」といった用法は、未来に想定される複数の筋書き(実行計画)を指す 12。すなわち『シナリオ』とは、その語源 11 が示す通り、「何を語るか(WHAT)」という内容そのものではなく、「いかに実行・上演するか(HOW)」を具体的に規定する、媒体依存の*技術的文書(指示書)*である。
1.3 概念的対比:『魂』としてのストーリー、『受肉』としてのシナリオ
ある制作者は、「ストーリーそのものと、シナリオは、厳密には違うものだ」と断言している 10。この関係性を理解するために、以下のような比喩が用いられる。
- ストーリー: 「具体的な形を持たない。魂のような、目に見えないもの」 10。
- シナリオ: その目に見えないストーリーを、特定の表現形式(例:映画スタイル)に変換し、「受肉」させたもの。「(正確には映画スタイルの設計図)」 10。
この比喩は、「ストーリー」と「シナリオ」が「抽象(魂)」と「具体(身体)」の弁証法的な関係にあることを示している。「ストーリーを純度100%表現出来る表現形式は、この世にはない」 10 という記述は、プラトン的なイデア(=ストーリー)と、その不完全な現実世界への投影像(=シナリオ、小説、映画)の関係性を想起させる。
目に見えない「ストーリー(魂)」を他者に伝達可能にするため、まず「ログライン(一行程度の要約)」や「プロット(1000文字程度のあらすじ)」といった形で文章として「受肉」させる試みが行われる 10。そして『シナリオ』とは、数ある「受肉」の形態(小説スタイル、漫画スタイル等)のうち、特定のメディア(主に映画や演劇)における上演・撮影に特化した、最も技術的かつ詳細な「設計図」なのである。それは「ストーリーそのもの」ではなく、ストーリーを特定の媒体で再現するための指示書に他ならない。
表1:『ストーリー』と『シナリオ』の語源・定義・概念的対比
| 項目 | ストーリー (Story) | シナリオ (Scenario) |
| 語源 | ラテン語『historia』(歴史、物語) 4 | ラテン語『scena』(舞台) 11 |
| 中核的意味 | 何が起こったか (The WHAT) | いかに見せるか (HOW) |
| 辞書的定義 | 物語、筋(すじ) [5] | 脚本、台本 12 |
| 性質 | 回顧的、抽象的 | 展望的、具体的、実行計画的 |
| メタファー | 魂、目に見えないもの 10 | 設計図、受肉したもの 10 |
| メディア依存性 | 媒体非依存(変換可能) 10 | 媒体依存(特定の形式) 10 |
第2部:メディア別に見る『ストーリー』と『シナリオ』の機能的分化
第1部で確立した「抽象的なWHAT(ストーリー)」と「具体的なHOW(シナリオ)」という対立軸が、実際の制作現場において、各メディアの技術的・産業的要請(=作り方)によって、どのように異なる機能と役割(=分業)に分化しているかを解明する。
2.1 映画・映像制作における分業:『開発(Development)』と『分解(Breakdown)』
映画制作の現場では、「ストーリー」と「シナリオ」は、明確な分業体制を示す用語として機能している 1。
- ストーリー(開発): 「ストーリーはディベロップメントするもの」と定義される 1。これは主に「プロデューサーの仕事」であり、「作品をマーケットに近い形で開発」すること、すなわち「テーマ、ジャンル、キャラクターをどのように生み出し、観客へアプローチできるか」を考える、戦略的・商業的な工程を指す 1。
- シナリオ(分解): 一方、「シナリオはストーリーをブレイクダウンしていく作業」と定義される 1。これは「脚本家(ライター)の領域」であり、プロデューサーによって開発された「ストーリー」という資産を、撮影可能な具体的なシーン(場面)に分解し、技術的な「脚本」形式に落とし込む実務的・技術的な工程である 1。
ここから導かれるのは、映画産業において、「ストーリー」は商業的アセット(資産)として、「シナリオ」は工業的ブループリント(設計図)として機能しているという実態である。この両者の明確な分離は、単なる概念論ではなく、特にハリウッドに代表される映画製作の産業化(Industrialization)と分業化の歴史的帰結である。プロデューサー(資本側)が「WHAT(=商品企画)」を決定し、ライター(技術側)が「HOW(=製造仕様書)」を作成するという明確な役割分担が、この二つの用語の使い分けに直結している。
2.2 文学(小説)との比較:『地の文』の不在と『台詞』の優位性
「シナリオ(脚本)」が「小説」といかに異なるかは、その記述形式の制約に最も顕著に現れる 14。
- 小説: 小説家は、「地の文(じのぶん)」と呼ばれる三人称の記述(あるいは一人称の独白)を用いて、「細かい背景や心中を文章内で表すことができる」 14。例えば、「駅前の人が少ない今にもつぶれそうなコンビニ」といった詳細な描写が可能であり、これが読者の想像力を直接的に喚起する 14。
- シナリオ(脚本): 脚本家が書くシナリオには、基本的にこの「地の文」による詳細な描写や心理描写の要素が「ありません」 14。物語は、「台詞(セリフ)」と「ト書き(とがき)」という、極めて制約された形式のみで構成される 15。その結果、「その分、視聴者に響く『セリフ』が重要になってき」14、背景や心中は役者の演技や映像演出によって間接的に表現されることが前提となる。
「シナリオ」が意図的に「地の文」を排除するのは、その「読者」が根本的に異なるためである。小説の読者は、作品の最終的な受け手である一般読者である。一方、シナリオの読者は、監督、俳優、美術、照明といった*他の制作専門家(スタッフ)*である。
したがって、シナリオは、小説のように「すべてを語る」文書ではなく、他の専門家が「語るべき空間」を残す(あるいは、その空間を埋めるよう指示する)文書である。14の例で言えば、シナリオが「駅前のコンビニ」とだけ書くのは、そのコンビニを「今にもつぶれそう」にデザインする美術スタッフへの指示であり、「ト書き」に「(悲しげに)」と書くのは、俳優への指示である。シナリオとは、分業を前提とした、極めて効率的な専門家間のコミュニケーションツールなのである。
2.3 演劇における類義語:『脚本』『台本』そして『戯曲』
演劇の分野では、「シナリオ」という外来語よりも、「脚本」「台本」「戯曲」といった用語が伝統的に用いられてきた。これらの用語の使い分けは、作品の目的による区別を示唆している。
- 脚本・台本: これらは「演劇・映画・放送などで、演出のもととなる、せりふやト書きなどを書いた本」 16 と定義される。機能的には「直接上演を目ざした舞台に直結した作品」 17 であり、第1部・第2部で分析した「シナリオ」(設計図)とほぼ同義である 18。
- 戯曲: 一方、「戯曲」は「脚本、台本とほぼ同じ意味で使われる」ものの、特に「作者の思想性を重視し、文学作品としても鑑賞できるような芸術性をもった作品をさしていう場合が多い」 17 とされる。また、「そのかたちで執筆された文学作品」 18 としても定義される。
この使い分けは、「脚本」や「台本」が「シナリオ」と同様に「HOW(上演方法)」を記述する機能的文書(道具・設計図)の系譜に属するのに対し、「戯曲」はそれ自体が鑑賞対象(芸術・文学)としての価値を持つことを要求される、という伝統的な価値観を反映している。
Wikipedia 18 において「『シナリオ』は戯曲か?」という問いが立てられていること自体が、映画の「シナリオ」は歴史的に「戯曲」よりも非文学的・道具的なものと見なされてきたことを示している(ただし、18は筒井康隆の言説を引き、その境界が現代において曖昧になっていることも指摘している)。
2.4 マンガ制作における『設計図』としての機能
マンガ制作の文脈においても、特に原作者と作画担当者が分業する場合、「シナリオ」の機能は明確である。マンガ用語における「脚本(きゃくほん)」は、「台本、シナリオとも言う」 15 とされており、映画や演劇の文脈と共通している。
その定義は「ストーリーをテキストにしたもの」であり、その構成要素は「台詞、ト書きだけで構成された設計図」である 15。これは、映画(2.1)や演劇(2.3)と全く同じ機能、すなわち*ビジュアル担当者(=マンガ家)に対する、台詞と行動(コマ割り)の指示書(設計図)*としての役割を果たしていることを示している。
第3部:ゲームデザインにおける『シナリオ』の特異性と拡張
従来のリニア(線形)な物語メディア(映画、小説、演劇)とは根本的に異なる、インタラクティブ(双方向)なメディアであるゲームにおいて、「シナリオ」という概念は、その定義と役割を劇的に変容させ、拡張した。ここでは「ストーリー」と「シナリオ」の境界が最も流動的かつ複雑になる。
3.1 『ゲームシナリオライター』の包括的役割:世界観構築からテキストデータまで
ゲームシナリオライターの仕事は、映画の脚本家(ライター)のイメージを遥かに超えて広範かつ包括的である 19。
ゲームシナリオライターの具体的な業務内容には、単なる台詞やト書きの執筆に留まらず、「ゲーム全体の筋立てを考え」(ストーリー構築)、「ゲームの世界観やキャラクターの設定」(世界観設定)、「物語の分岐やふく線の綿密な構成」(構造設計)、さらには「アイテムの説明文」(フレーバーテキスト)に至るまで、ゲームに必要なほぼ全てのテキストデータが含まれる 19。ある資料では、これは「ゲームの世界観につながる全ての設定」が業務範囲であるとさえ述べられている 20。
これは、ゲーム業界において「シナリオ」という言葉が、従来の「脚本(script)」という意味 13 から逸脱し、「ナラティブ・デザイン(Narrative Design)」全体を包含する用語へと意味が拡張されていることを示す。
映画ではプロデューサーが担う「ストーリー開発(ディベロップメント)」2 や、小説家が担う「詳細な世界観描写」(地の文)14 さえも、ゲームでは「シナリオライター」の職務 19 に含まれる。第1部で定義した「ストーリー(魂)」と「シナリオ(設計図)」の区別はここで崩壊し、ゲームシナリオライターがその両方を管轄するという、他のメディアには見られない特異な状況が生まれている。
3.2 インタラクティブ性への応答:『分岐』と『フラグ管理』の複雑性
ゲームシナリオの最大の特異性は、プレイヤーの選択と行動に応答する*非線形性(non-linearity)*にある。
ゲームでは「物語の展開や結末が一つではない」 20 ことが前提となる。「プレイヤーの選択肢によってハッピーエンドやバッドエンドなど物語の流れはひとつではないため、あらゆる展開を想定し結末を考えなければなりません」 20。
この複雑な非線形性を技術的に管理するため、ゲームシナリオライターには特有のスキルが求められる。それは、「フローチャートやフラグなどを作成してストーリーの中で、矛盾や漏れが生じないように丁寧にシナリオを作成すること」 3 である。
ここから明らかになるのは、ゲームシナリオが、文学的「テキスト」であると同時に、工学的「システム」であるという側面である。従来のシナリオがA→B→Cという線形(リニア)な「設計図」であったのに対し、ゲームシナリオは、無数の「if(もしも)」の条件分岐を内包する*「アルゴリズム」あるいは「状態遷移図」*に近い。「フラグ管理」 3 という用語は、シナリオライティングという行為が、もはや文学 14 や演劇 17 の領域を離れ、ロジック(論理)とデータベース管理の領域にまで踏み込んでいることを示している。
3.3 比較:ゲームシナリオ、小説、脚本の『読者』と『構造』の違い
小説、脚本(シナリオ)、ゲームシナリオといったメディア間の「構造の違い」 21 は、突き詰めれば、そのテキストが「誰に読まれるか(=読者)」 21 の違いによって規定されている。
- 小説の読者: エンドユーザー(一般読者)。
- 構造: 読者が直接読むため、それ自体で完結している。「地の文」が豊富で、詳細な背景や内面描写を含む 14。
- 脚本(映画・演劇)の読者: 制作スタッフ(監督、俳優、美術など)。
- 構造: スタッフへの指示書であるため、「地の文」がなく、「台詞」と「ト書き」のみで構成される 14。
- ゲームシナリオの読者: (A)制作スタッフ(プログラマー、デザイナー) AND (B)エンドユーザー(プレイヤー)。
- 構造: この*二重の読者(Dual Audience)*に対応するため、ゲームシナリオは極めてハイブリッドな構造を取る。
- (A)スタッフ(特にプログラマー)向けには、「フラグ管理表」や「フローチャート」といったシステム仕様書としての側面を持つ 3。
- (B)プレイヤー(エンドユーザー)向けには、彼らがゲーム内で直接読む「台詞」や「アイテム説明文」といった文学的テキストとしての側面を持つ 19。
ゲームシナリオライターは、文学者(対プレイヤー)とシステムエンジニア(対スタッフ)という二つの顔を持つ必要があり、これがゲームシナリオの構造の特異性を生み出している。
第4部:総合的考察と結論
本レポートの分析を統合し、「ストーリー」と「シナリオ」の異同について、メディアの構造に根差した最終的な定義を提示する。
4.1 異同の再定義:『ストーリー』は『素材』、『シナリオ』は『指示書』
分析の結果、「ストーリー」と「シナリオ」の最大の異同は、以下の点に集約される。
- ストーリー: 「WHAT(何が起こったか)」という抽象的かつ媒体非依存の「魂」 10 であり、あらゆるメディアに変換可能な『素材』である。これは映画産業では「商業的アセット(商品)」 2 として開発され、ゲームでは「世界観の核」 19 として構築される。
- シナリオ: 「HOW(いかに見せるか/実行するか)」という具体的かつ媒体依存の「設計図」 10 であり、特定のメディアでその『素材(ストーリー)』を『実装』するための具体的な『指示書』である。
そして、この『指示書』としての「シナリオ」の性質を最も明確に分化させる要因は、その*宛先(=読者)*の違いである 21。
- 映画・演劇・マンガのシナリオ:
- 読者 = 制作スタッフ(監督、俳優、作画家など)。
- 指示書の内容 = 「台詞」と「ト書き」 14。
- ゲームのシナリオ:
- 読者 = 制作スタッフ + エンドユーザー(プレイヤー)。
- 指示書の内容 = 「台詞」「ト書き」に加え、「世界観設定」「分岐フラグ管理」「アイテム説明文」など、ナラティブ・システム全体 3。
表2:主要メディア別『ストーリー』と『シナリオ』の機能比較
| メディア | ストーリー (WHAT) | シナリオ (HOW) |
| 映画 | 商業的アセット(商品企画)。 プロデューサーが「開発」する 2。 | 映像化のための技術的設計図。 ライターが「分解」する 1。 構成要素:「台詞」「ト書き」 14。 |
| 文学 (小説) | 作品の「筋(すじ)」。 | 該当概念なし。 ※小説自体が、「ストーリー」と「シナリオ」の機能(地の文による詳細な描写)を統合した最終産物であるため 14。 |
| 演劇 | 作品の「筋」。 | 上演のための指示書(「脚本」「台本」)16。 ※「戯曲」は、それ自体が文学的価値(鑑賞対象)も含む 17。 |
| ゲーム | 世界観、筋立て、キャラクター設定。 (シナリオライター自身が構築する)19。 | ナラティブ・システム全体。 構成要素:「台詞」「ト書き」から「世界観設定」「分岐フラグ管理」「アイテム説明文」まで全て [3, 19, 20]。 |
4.2 現代における境界の流動性:ゲームシナリオの『ストーリー』への回帰
本分析が明らかにしたのは、興味深いパラダイムシフトである。歴史的に、特に映画産業の工業化において、「ストーリー(魂)」と「シナリオ(設計図)」は、専門分化(プロデューサーとライター)の道を辿ってきた 1。
しかし、ゲームというインタラクティブ・メディアの登場により、「シナリオ」は再び「ストーリー」を吸収・統合するという逆方向の現象が起きている。
ゲームにおいて、「HOW(いかに分岐させるか)」3 という「シナリオ」のシステム設計は、「WHAT(どんな物語か)」19 という「ストーリー」そのものと不可分である。なぜなら、プレイヤーの選択(HOW)が、プレイヤー固有の物語(WHAT)を動的に決定するため、両者は矛盾なく同時に設計されねばならないからである。
したがって、「ゲームシナリオライター」19 という職種は、もはや映画の「シナリオライター(脚本家)」1 や「小説家」14 とも異なる、新しい形態のナラティブ・デザイナーであると言える。彼らは「魂(ストーリー)」10 を創造し、その魂が宿る「身体(ゲームシステム)」の設計図を描き、さらにその「身体」がプレイヤーの刺激(インタラクション)に対してどう反応するかという神経系(アルゴリズム)3 までをも設計する。
この「ストーリー」と「シナリオ」の再融合と複雑化こそが、現代の物語創作における最も重要な地殻変動であり、「ストーリーとシナリオの異同」という問いに対する、最も本質的な回答である。
引用文献
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- 未経験からシナリオライターになるには?求められるスキルも紹介, https://career.levtech.jp/guide/knowhow/article/186/
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