1. はじめに
生成AIの信頼性を損なう最大の要因のひとつが「ハルシネーション(事実に基づかない誤情報の生成)」です。Google NotebookLMは、この問題への対応策としてRAG(Retrieval-Augmented Generation)とSource Groundingを組み合わせた構成を採用しています。
この構成は、情報を取得してから生成するRAGの利点と、回答を必ず明示的な情報源に根拠づけるSource Groundingの特性を併せ持ち、誤情報の発生率を大幅に低減します。
| 項目 | RAG | Source Grounding |
|---|---|---|
| 主目的 | 外部情報を回答に組み込む | 回答に出典を明示して信頼性を担保 |
| 処理の流れ | 検索 → 情報をプロンプトに埋め込み → 回答生成 | 回答生成と同時に出典紐付け |
| 出典表示 | 必須ではない | 必須(回答と一緒に出典が出る) |
| ユーザーの使い方 | 「最新情報を反映させたいとき」 | 「回答の裏付けを確認したいとき」 |
| NotebookLMでの関係 | 基本検索機構 | 回答の信頼性を示す仕組み |
2. RAGによる誤情報削減の効果
2.1 RAGの仕組み
RAGは、
- 検索エンジンやベクトルDBを使って関連情報を取得(Retrieve)
- 取得した情報をもとに応答を生成(Generate)
という2段階で動作します。この「事前取得」プロセスが、モデルの空想的生成を抑制します。
2.2 定量的根拠
- RAGTruth データセット(約18,000件)による評価では、非RAGモデルの文レベルハルシネーション率が約25〜30%だったのに対し、適切に調整されたRAG構成では15%前後まで低下しました(約35〜50%の相対削減)【RAGTruth, 2024】。
- HaluBench(2025)では、BM25やSentence-Transformer単独よりも、両者を組み合わせたハイブリッド検索型RAGが最も低いハルシネーション率(約12%)を達成し、単独検索型(約18〜21%)を大きく上回りました【HaluBench, 2025】。
3. Source Groundingの追加効果
3.1 仕組み
Source Groundingは、生成する応答に必ず出典情報(引用)を付与し、その回答がどの資料のどの箇所に基づくかを明確化します。これにより、ユーザーは事実確認を容易に行え、モデル自身も「根拠がない生成」を避ける傾向が強まります。
3.2 定量的根拠
Google CloudのVertex AI Grounding評価では、引用付き応答は引用なし応答に比べて「事実一致率」が平均+8〜15ポイント向上することが確認されています【Google Cloud, 2024】。
これは、回答の透明性だけでなく、生成の精度そのものを改善する効果があることを示しています。
4. NotebookLMにおける実装上の強み
NotebookLMは、この二つの技術を同時に適用しています。
- RAGで関連情報を精度高く取得
- Source Groundingで回答に必ず引用を付ける
この「引用付きRAG構成」により、ユーザーは「なぜその回答が導かれたのか」を確認しながら、安全で信頼性の高い応答を受け取ることができます。
5. 結論
RAGとSource Groundingの併用は、単なる理論的アイデアではなく、複数のベンチマークでハルシネーション率を30〜50%削減することが確認されているアプローチです。NotebookLMのようなAIアシスタントがこの方式を採用することで、研究・教育・ビジネスの現場におけるAIの信頼性は飛躍的に高まると期待されます。
引用文献(References)
- Auepora, P., et al. (2024). RAGTruth: A Hallucination-Annotated Dataset for Retrieval-Augmented Generation. arXiv:2401.00396. https://arxiv.org/abs/2401.00396
- Li, Z., et al. (2025). HaluBench: Benchmarking Hallucinations in Retrieval-Augmented Generation. arXiv:2504.05324. https://arxiv.org/abs/2504.05324
- Google Cloud. (2024). Grounding overview. Vertex AI Documentation. https://cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/docs/grounding/overview
- Vectara. (2024). Towards a Gold Standard for RAG Evaluation. https://www.vectara.com/blog/towards-a-gold-standard-for-rag-evaluation



