
序論:エグゼクティブ・サマリー
本レポートは、株式会社安川電機(以下、安川電機)の事業構造、財務状況、市場における競争優位性、および将来の成長課題について、多角的な視点から詳細な分析を提供するものである。安川電機は、ACサーボモータ、インバータ、産業用ロボットを三つの柱とする「メカトロニクス」のリーディングカンパニーとして、世界的な評価を確立している。その技術力は、製造業の自動化と効率化に不可欠な要素として、幅広い産業分野で採用されている。
しかし、同社は現在、重要な転換期に直面している。世界経済、特に主要市場である中国の景気減速と半導体市場の周期的な調整局面が、直近の業績に強い逆風となっている。2025年2月期決算では、売上収益および営業利益が減少し、先行きの不透明感が強まっている。
このような環境下で、安川電機は単なるコンポーネント供給者からの脱却を目指し、独自のソリューションコンセプト「i³-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を戦略の中核に据えている。これは、同社の強みである統合された製品群とデジタル技術を融合させ、顧客の製造プロセス全体に付加価値を提供する「コトづくり」への転換を意味する。
本レポートでは、まず同社の主力事業と、その根幹をなす技術的優位性を分析する。次に、直近3期の財務データを精査し、業績の変動要因と、特に為替変動が利益に与える影響の大きさを明らかにする。続いて、SWOT分析を通じて同社の戦略的立ち位置を評価し、ファナックやABBといったグローバルな競合他社との比較から、その独自の差別化ポイントを浮き彫りにする。最後に、これらの分析を統合し、同社が持続的な成長を達成するために乗り越えるべき市場の多様化やビジネスモデル変革といった課題を論じる。
I. 企業概要および主力事業
A. メカトロニクスの先駆者:安川電機の統合的アイデンティティ
安川電機は、自社を単なる部品メーカーとしてではなく、包括的なメカトロニクス・ソリューションプロバイダーとして位置づけている 1。このアイデンティティは、同社の中核となる製品ライン、すなわちACサーボモータ、インバータ、産業用ロボットの有機的な統合によって構築されている。同社の使命は、ものづくりの自動化・省力化を通じて、労働力不足や過酷な労働環境(3K)といった社会課題の解決に貢献することであり、その事業活動をより広範な社会的文脈の中に位置づけている 3。
B. 主要事業セグメントの分析
安川電機の事業は、主に「モーションコントロール」と「ロボット」という二つの技術的支柱を中心に構成され、「システムエンジニアリング」がこれを補完する構造となっている 4。
1. モーションコントロール:技術的基盤(ACサーボ&インバータ)
このセグメントは、同社の歴史的かつ技術的な基盤であり、ACサーボモータ・ドライブ(例:Σ-Xシリーズ)およびインバータを包含する 1。これらの製品は、その高い性能で知られ、特に半導体製造装置や一般的なファクトリーオートメーション(FA)機器など、多岐にわたる産業機械の重要部品として不可欠な存在である。
このセグメントの財務実績は、主要産業における設備投資サイクルに極めて敏感である。直近の2025年2月期では、売上収益が前期比11.4%減、営業利益が同41.0%減と大幅な落ち込みを記録した。これは主に、中国および欧州市場の低迷と、半導体関連需要の回復遅延が原因である 5。
2. ロボット:自動化の原動力(MOTOMAN)
安川電機は、「MOTOMAN(モートマン)」ブランドで知られる産業用ロボットの分野で世界的なリーダーの一角を占める 8。その製品ラインは、ハンドリング、溶接、塗装、組み立てといった多様な用途をカバーし、特に自動車産業において強力なプレゼンスを誇る 6。これまでに累計50万台以上のMOTOMANを出荷しており、市場への高い浸透度を示している 9。
市場全体の弱含みにもかかわらず、ロボット事業は比較的底堅さを見せている。2025年2月期には、受注済みの大規模システム案件や半導体向けのウェハ搬送ロボットの販売に支えられ、売上収益は前期比1.2%増となった。しかし、生産稼働率の低下や先行投資の影響で、営業利益は5.6%減少した 5。
3. システムエンジニアリングおよびその他事業
このセグメントは、安川電機の中核技術を大規模プロジェクトに応用するもので、鉄鋼プラントシステムや港湾クレーン制御などが含まれる。また、太陽光発電用パワーコンディショナといった環境・エネルギー関連製品も手掛けている 1。
事業のプロジェクトベースの性質上、業績は変動しやすい。2025年2月期は、大型風力発電関連の子会社売却の影響で減収となったが、事業構造改革が進展した結果、利益率は改善している 4。
C. 「i³-Mechatronics」ドクトリン:戦略的転換
「i³-Mechatronics」(integrated: 統合的, intelligent: 知能的, innovative: 革新的)は、安川電機の中核的な戦略コンセプトであり、世界トップクラスのメカトロニクス製品群とデジタルデータ管理を融合させ、スマートファクトリーの実現を目指すものである 2。これは単なるマーケティング用語ではなく、具体的なソリューション群によって支えられている。
- YASKAWA Cockpit: 生産データを可視化・分析するためのデータマネジメントソフトウェア 14。
- YRMコントローラ: 個別の機器だけでなく、生産セル全体を同期・統合制御するコントローラ 14。
- YASKAWA Cell Simulator: 仮想環境での設計や立ち上げを可能にし、セットアップ時間を短縮するとともに、デジタルツイン機能を実現するツール 14。
この戦略の最終的な目標は、単なる「モノ(製品)」の販売から、顧客のプロセス改善という「コト」の提供へとビジネスモデルを転換することにある。これにより、予知保全、柔軟な生産体制、品質管理の高度化といった付加価値を創出する 3。この「i³-Mechatronics」は、ハードウェアのコモディティ化が進む市場において、同社が持続的な競争優位性を確保するための極めて重要な戦略的転換点である。ハードウェアの性能競争だけでは差別化が困難になる中、データ活用によるインテリジェンスを提供することで、新たな価値領域を切り開こうとしている。これは、同社の差別化戦略の根幹であると同時に、その実現は長期的な成長に向けた最大の挑戦でもある。
II. 財務実績と業績推移の分析(2023年2月期~2025年2月期)
A. 連結業績レビュー:売上と利益の動向
安川電機の直近3カ年の連結業績は、好調な時期を経て、足元では市場環境の悪化を反映した調整局面に移行していることを示している。以下の表は、その推移をまとめたものである。
| 会計年度(2月期) | 売上収益 | 営業利益 | 親会社の所有者に帰属する当期利益 | |
| 2023年 | 5,559億5,500万円 | 683億100万円 | 517億8,300万円 | |
| 2024年 | 5,756億5,800万円 | 662億2,500万円 | 506億8,700万円 | |
| 2025年 | 5,376億8,200万円 | 501億5,600万円 | 569億8,700万円 | |
| 出典: 4 |
2023年2月期は過去最高の業績を記録し、2024年2月期も高水準を維持したが、2025年2月期には売上収益、営業利益ともに明確な減少に転じている。
B. 業績変動の要因と逆風
- 2023年~2024年の好業績: この期間の力強い業績は、コロナ禍からの経済回復に伴う旺盛な設備投資需要と、円安という追い風によってもたらされた 19。特に為替の影響は大きく、利益を押し上げる主要因として機能した。
- 2025年2月期の業績悪化: 減収減益に転じた背景には、複数の深刻な市場の逆風が存在する。
- 中国経済の減速: 同社にとって最重要市場である中国での需要低迷と投資意欲の減退が、業績に直接的な打撃を与えた 5。
- 半導体サイクルの下降: 高精度なモーションコントロール製品の主要な需要先である半導体・電子部品市場が、周期的な下降局面に入り、回復が遅れていることが響いた 5。
- 欧州市場の低迷: 欧州においても、製造業全般の設備投資が低調に推移した 5。
- 2025年2月期 純利益の特異性: 売上収益と営業利益が減少する一方で、親会社株主に帰属する当期利益が大幅に増加している点は、詳細な分析を要する。これは、事業構造改革の一環として行われた大型風力発電関連の子会社株式売却益という一時的な要因によるものであり、本業の収益力の低下を覆い隠す形となっている 4。この一時的利益を除けば、実質的な収益力は悪化していると評価できる。
C. 将来展望:足元の業績と2026年2月期の見通し
- 受注高の減少傾向: 将来の売上を示す先行指標である受注高が減少傾向にあり、短期的な事業環境の厳しさが継続することを示唆している 19。
- 2026年2月期 第1四半期の実績: 新年度の滑り出しも厳しいものとなり、第1四半期は前年同期比で減収減益となった 20。
- 業績予想の下方修正: 当初は成長を見込んでいた2026年2月期の通期業績予想を、需要の不透明感や米国の関税政策の影響などを理由に下方修正した 20。これは、市場の回復が想定よりも遅れている、あるいは根深い問題であることを示している。
この財務分析から浮かび上がるのは、安川電機の収益性が外部環境、特に市況サイクルと為替レートに大きく依存しているという構造的な脆弱性である。過去の好業績を分析すると、利益成長のかなりの部分が円安効果によってもたらされていたことがわかる 19。例えば、ある期では18億円の営業増益のうち為替影響が21億円を占め、為替の追い風がなければ実質的には減益であったことが示されている 19。これは、コスト上昇圧力が続く中で、為替というコントロール不能な要因がなければ、収益性が圧迫されやすい体質であることを物語っている。この事実は、前述の「i³-Mechatronics」による高付加価値なソリューションビジネスへの転換が、単なる成長戦略ではなく、収益構造の安定化と強靭化を図るための喫緊の課題であることを強く裏付けている。
III. 戦略的評価:統合的SWOT分析
以下のSWOT分析は、安川電機の現在の戦略的立ち位置を、内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)の両側面から評価するものである。
A. 強み (Strengths):技術的優位性と統合ポートフォリオ
- 世界トップクラスの中核技術: 高性能ACサーボモータとインバータにおいて世界首位の座を確立しており、これが精密オートメーションの技術的基盤となっている 3。
- 強力なロボット事業: 産業用ロボットの世界4大メーカー(「ビッグ4」)の一角を占め、「MOTOMAN」という強力なブランドと膨大な納入実績を持つ 9。
- 統合された製品エコシステム: サーボ、インバータ、ロボット、コントローラといった主要コンポーネントをすべて自社開発し、完全に統合されたメカトロニクス・パッケージとして提供できる唯一無二の能力。これが「i³-Mechatronics」戦略の根幹であり、他社に対する明確な差別化要因となっている 3。
- 品質と信頼性: 経営理念にも掲げられている品質重視の文化が、製品の高い信頼性につながっている 3。
B. 弱み (Weaknesses):周期的脆弱性と収益性の課題
- 市況サイクルへの高い感度: 半導体や自動車といった特定の業界の設備投資サイクルに業績が大きく左右される構造的な脆弱性を持つ 4。
- 地理的集中リスク: 中国市場への依存度が高く、同国の景気後退や地政学的リスクに対して脆弱である 7。
- 為替依存の収益性: 前述の通り、本業の利益成長が円安という外部要因に大きく依存しており、為替が逆風に転じた際の収益基盤が盤石とは言えない 19。
- ビジネスモデル変革の遅れ: 高収益が期待されるソリューションビジネスへの移行は道半ばであり、依然として収益の大半を利益率の低いハードウェア販売に依存している 3。
C. 機会 (Opportunities):自動化とデジタル化という構造的追い風
- 世界的な労働力不足: 先進国・新興国を問わず、高齢化や人件費高騰を背景とした自動化・ロボット化への需要は、強力かつ長期的な追い風となる 4。
- スマートファクトリー(インダストリー4.0)の進展: 「i³-Mechatronics」戦略は、データ駆動型で接続されたインテリジェントな製造業への世界的な潮流と完全に合致している 12。
- 新市場・新用途への展開: 自動車や電機以外の分野、例えば食品、医薬品、物流といった成長領域や、インドなどの新興国市場には大きな成長ポテンシャルが存在する 3。
- グリーン転換と省エネ需要: データセンターの冷却需要や、社会全体の省エネルギー化への要請を背景に、インバータや高効率モータへの需要が高まっている 11。
D. 脅威 (Threats):激しい競争環境と地政学的変動
- 熾烈な競争: ファナック、ABB、KUKAといったグローバルな巨人や、三菱電機のような国内の強力なライバルとの間で、激しい競争が繰り広げられている 23。
- 地政学・貿易リスク: 米中間の貿易摩擦、関税、サプライチェーンの分断といった地政学的リスクは、グローバルな事業運営にとって重大な脅威である 21。
- 技術革新の速さ: AI、機械学習、新たな制御システムといった技術が急速に進化しており、競争優位を維持するためには継続的な高額の研究開発投資が不可欠である。
- 顧客の交渉力: 自動車やエレクトロニクス業界の大口顧客は、強い価格交渉力を持つ。
IV. 競争環境と戦略的差別化
安川電機の競争上の立ち位置を理解するためには、主要な競合他社との比較分析が不可欠である。以下の表は、主要な競合企業の戦略的ポジショニングをまとめたものである。
| 企業名 | 主力事業 | 主な差別化要因・強み | 戦略的アプローチ | |
| 安川電機 | 統合メカトロニクス(サーボ、インバータ、ロボット) | 高性能なメカトロニクス製品の完全な統合パッケージ | 「i³-Mechatronics」によるソリューション販売 | |
| ファナック | CNCシステム、ロボット、ロボマシン | 圧倒的なCNC市場シェア、高度に統合されたクローズドなエコシステム | 「one FANUC」エコシステム、「壊れない」信頼性、生涯保守 | |
| ABB | エレクトリフィケーション、オートメーション(ロボット含む) | 巨大な事業規模、エネルギー・自動化分野での多角的なポートフォリオ | 広範な電化・自動化分野での技術リーダーシップ、サステナビリティ重視 | |
| KUKA | ロボットおよび自動生産システム | 自動車産業(特に欧州)における深い専門性 | 特定産業に特化したアプリケーションノウハウ | |
| 三菱電機 | 総合FA(PLC、サーボ、HMI、ロボット) | 幅広いFA製品群、強力な国内基盤 | FAコンポーネントの「ワンストップショップ」 | |
| 出典: 10 |
A. 安川電機の独自の価値提案:統合メカトロニクスの力
安川電機の最大の差別化要因は、自社で開発した世界トップクラスのモーションコントロール製品とロボットを、緊密に統合された高性能ソリューションとして提供できる点にある 3。これは、特定分野に特化するファナックや、より広範に事業を多角化しているABBとは一線を画す特徴である。この統合能力こそが、「i³-Mechatronics」というソリューション戦略の土台となっている。
B. 直接対決:世界のロボット「ビッグ4」との比較
1. vs. ファナック(TYO: 6954):CNCの巨人が築く要塞
ファナックの強みは、世界のCNC(コンピューター数値制御装置)市場における独占的な地位にあり、これをテコに自社のロボットやロボマシンを拡販している 25。「one FANUC」戦略は、強力であると同時にクローズドなエコシステムを形成している 28。これに対し、安川電機はよりオープンで柔軟性の高いアプローチをとり、CNCが中心とならない一般産業の自動化アプリケーションをターゲットとすることで競争している。安川電機の「メカトロニクス」という思想は、本質的に汎用的な自動化に適応しやすい。
2. vs. ABB(SWX: ABBN):多角化された欧州の巨人
ABBは、電化やプロセスオートメーションに深いルーツを持つ、はるかに規模が大きく多角化された企業である 29。同社のロボット事業は、その広大なポートフォリオの一部に過ぎない 30。安川電機の優位性は、その特化された専門知識にある。ABBがより広範な産業にサービスを提供する一方で、安川電機は高速・高精度なメカトロニクスの領域において、より深く専門的な知見を主張できる。
3. vs. KUKA(美的集団傘下):自動車のスペシャリスト
KUKAは歴史的に欧州の自動車産業、特にドイツの自動車メーカーとの関係が非常に強い 9。中国の美的集団による買収は、その戦略的背景を変化させた。安川電機も自動車産業で強い存在感を持つが、一般産業分野にもバランスの取れたポートフォリオを有しており、これが一定の事業分散効果をもたらしている 9。
C. 国内のライバル:三菱電機(TYO: 6503)との競合
三菱電機は、PLC、サーボ、ロボットを含む包括的なFA製品群を提供する手ごわい国内競合である 25。日本の産業顧客に対して、安川電機と同様に「ワンストップショップ」として競争している。安川電機は、中核となるメカトロニクス製品群における優れた性能と統合性を差別化の源泉とする一方、三菱電機の強みはそのFAポートフォリオ全体の幅広さにある。
この競争環境を俯瞰すると、競争の主戦場が個々の製品スペック(例:ロボットの速度、モータのトルク)から、統合された「ソリューション」の質と完成度へと移行していることが明確になる。顧客はもはや単体のロボットを求めているのではなく、導入が容易で、管理しやすく、工場のデータ基盤に接続できる自動化セルを求めている。安川電機の「i³-Mechatronics」は、ファナックの「one FANUC」やABB、三菱電機の包括的な提案に対する直接的な回答である。安川電機の成功は、同社独自の統合パッケージ(サーボ+インバータ+ロボット+コントローラ)が、クローズドなエコシステムや、複数メーカーの製品を組み合わせるアプローチよりも、優れた性能と低い総所有コストを実現できると市場を説得できるかどうかにかかっている。これこそが、同社の競争戦略の核心である。
V. 将来の成長に向けた課題と戦略的要請
A. 事業リスクの低減:中国・半導体依存からの多様化
課題: 直近の業績悪化は、中国市場と半導体産業のサイクルへの過度な依存という構造的リスクを浮き彫りにした 7。この集中は、是正すべき構造的弱点である。
進むべき道: 戦略的な取り組みは、以下の二つの多様化に焦点を当てる必要がある。
- 地理的多様化: 他地域での成長を積極的に追求する。特にインドは、重要なターゲット市場として明確に言及されている 11。
- 用途の多様化: 従来の自動車や電機といった牙城を超え、食品、農業、ライフサイエンスといった景気変動の影響を受けにくい高成長分野への展開を加速させる 3。
B. ソリューションプロバイダーへの変革:「i³-Mechatronics」の収益化という挑戦
課題: 「ソリューションプロバイダー」になるという戦略を宣言することと、それを実行し収益化することは全く異なる。これには、製品中心から顧客の課題解決中心へと、企業文化と事業運営を根本的に転換する必要がある。ソフトウェア、データ分析、コンサルティングといった新たな能力の構築が求められる。
進むべき道: 同社はこの変革を加速させる必要がある(「ソリューションビジネスへの移行加速」11)。これには、必要な人材への投資、YASKAWA Cockpitのようなスケーラブルなソフトウェアプラットフォームの開発、そして安川電機のプラットフォームを活用できるシステムインテグレータとのパートナーエコシステムの構築が含まれる 14。
C. イノベーションの責務:次世代技術競争での勝利
課題: オートメーションにおける技術革新のペースは絶え間ない。競合他社は、AI駆動のロボット、より直感的なユーザーインターフェース、次世代制御システムに多額の投資を行っている。安川電機がこの競争で後れを取ることは許されない。
進むべき道: 継続的な研究開発が最重要である。言及されている重点分野には、より高度な知能と柔軟性を組み込んだ「MOTOMAN NEXT」シリーズのロボットや、パートナー企業が安川電機のハードウェア上で高度なアプリケーションを構築できるオープンなプラットフォームの開発が含まれる 11。
D. 景気後退期の舵取り:短期的な圧力と長期的投資の均衡
課題: 受注と利益が減少する中で 19、コスト削減への圧力は大きい。しかし、多様化、ソリューション化、イノベーションといった長期的な戦略的要請は、すべて多額の先行投資を必要とする。
進むべき道: 経営陣にとっての最大の挑戦は、将来の成長に不可欠な投資を犠牲にすることなく、財務規律を維持することである。これは、「2025年ビジョン」などで示された長期ビジョンに対する経営陣のコミットメントが試される、極めて繊細なバランス感覚を要する舵取りとなる 3。
VI. 総括的分析と結論
安川電機は、世界トップクラスの技術力を誇る企業でありながら、現在、重大な岐路に立たされている。同社の将来の成功は、もはや個々の製品の品質(それは既に世界水準にある)に依存するのではなく、真のソリューションプロバイダーへの困難な戦略的変革をいかに実行できるかにかかっている。
本分析から導き出される結論として、同社は以下の三つの戦略的要請に集中的に取り組むべきである。
第一に、「i³-Mechatronics」を基盤としたビジネスモデルへの転換を断固として加速させること。これは単なる製品のバンドル販売ではなく、顧客の生産性向上や課題解決に直接貢献し、その対価として高い利益率を確保する収益モデルの確立を意味する。
第二に、市場の多様化を積極的に推進し、事業リスクを低減すること。中国市場と半導体サイクルへの過度な依存から脱却し、インドをはじめとする新興国市場や、食品・医薬品といった非周期的で成長性の高い産業分野への進出を最優先課題とすべきである。
第三に、現在の市場低迷期においても、規律を保ちつつ未来への投資を継続すること。短期的な業績圧力に屈して研究開発や人材への投資を削減すれば、長期的な競争力を損なうことになる。厳しい環境下でこそ、将来の成長の種を蒔くという長期的視点に立った経営判断が求められる。
安川電機がこれらの課題を乗り越え、その卓越した技術力をソリューションという形で市場に提供することに成功すれば、現在の逆風を乗り越え、より強靭で収益性の高い企業として、持続的な成長軌道に復帰することが可能となるであろう。
引用文献
- 安川電機 https://www.yaskawa.co.jp/
- Yaskawa global site https://www.yaskawa-global.com/
- YASKAWA レポート 2024 – 安川電機 https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2024/10/2024J_A4.pdf
- 2024年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) – 安川電機 https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2024/04/20240405.pdf
- 2025年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) – 安川電機 https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2025/04/20250404.pdf
- HOME | 安川電機の製品・技術情報サイト https://www.e-mechatronics.com/
- 安川電機、2025年2月期第2四半期決算 回復途上の半導体・電子部品、中国の低調を受けて減収減益 – オートメーション新聞 https://www.automation-news.jp/2024/10/85741/
- 製品情報 – HOME | 安川電機の製品・技術情報サイト https://www.e-mechatronics.com/product/
- 産業用ロボットの種類と世界シェア4強メーカーランキング|中小製造企業の課題解決メリットとは https://www.nikken-totalsourcing.jp/business/tsunagu/column/1178/
- 産業用ロボットメーカーのランキング TOP5を紹介 | 【製造業にAIを】図面バンク https://zumen-bank.com/column/4813
- 安川電機、2025年2月期決算 売上高は5476億円で減収増益 25年度は市場環境回復で増収の見込み – オートメーション新聞 https://www.automation-news.jp/2025/04/91064/
- i³-Mechatronicsとは?未来の工場のためのインテリジェントオートメーション | YASKAWA ELECTRIC (THAILAND) CO., LTD. https://prime.nc-net.com/89958/ja/product_others/detail_goods/25345
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