
1. 調査概要
本ドキュメントは、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が2025年5月30日に公開した「デジタルトランスフォーメーション調査2025」の分析結果をまとめたものです。
- 調査名称: デジタルトランスフォーメーション調査2025(略称: DX調査2025)
- 調査対象: 東京証券取引所の国内上場会社 約3,800社(プライム、スタンダード、グロース)
- 調査実施期間: 2024年12月2日(月)〜 2024年12月23日(月)18時
- 回答企業数: 311社
- 調査方法: WEB受付(調査項目に回答し、DX推進ポータルより提出)
2. 調査のまとめ
2.1. 全体的な傾向
DX銘柄企業、DX注目企業、DX認定企業は、「デジタルガバナンス・コード3.0〜DX経営による企業価値向上に向けて〜」に沿った取り組みが進んでいます。
2.2. 企業種別間の差異
- DX銘柄企業とDX認定未取得企業の間では、特に以下の項目で大きな差が見られます。
- 「企業間連携」
- 「DX推進・新たな挑戦を支援する仕組み」
- 「データ連携・データガバナンス」
- 一方で、DX銘柄企業においても、以下の項目では最も良い選択肢を回答した割合が小さくなっています。
- 「DX推進部署の責任者」
- 「DX推進を支える人材」
2.3. 財務指標との関連
- ROE(自己資本利益率)5%以上の企業について、以下の傾向が見られました。
- DX銘柄企業: 9割
- DX注目企業: 約8割
- その他の企業: 7割以下
このことから、DX推進と財務成果の間に一定の相関があることが示唆されます。 - PBR(株価純資産倍率)1倍以上の企業について、以下の傾向が見られました。
- DX銘柄・注目企業: 7割
- その他の企業: 5割
3. 設問カテゴリ別分析
本調査は、以下の7つの主要カテゴリにわたる設問で構成されています。
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定: DX推進に向けた経営ビジョンやビジネスモデルの策定状況。
- DX戦略の策定: 経営ビジョンを実現するための具体的なDX戦略の構築状況。
- 組織づくり: DX推進のための組織体制、外部リソース活用、予算確保、組織カルチャー変革への取り組み。
- デジタル人材の育成・確保: DX推進に必要な人材の育成・確保に関する取り組み。
- ITシステム・サイバーセキュリティ: ITシステムの現状分析、技術的負債対策、サイバーセキュリティリスク管理。
- 成果指標の設定・DX戦略の見直し: DX戦略の達成度評価、KPI/KGI連携、戦略の見直し状況。
- ステークホルダーとの対話: DXに関する情報発信、ステークホルダーとの対話状況。
3.1. 各カテゴリの回答傾向(抜粋)
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定:
- 全てのDX銘柄・注目企業が、デジタル技術の進化を考慮したDX推進に向けた経営ビジョンを策定し、その実現に向けたビジネスモデルを設計しています。
- 多くのDX銘柄・注目企業が「企業間連携」を行い、革新的な価値を創造しています。
- DX戦略の策定:
- 全てのDX銘柄・注目企業が具体的なDX戦略の策定を行っており、データを重要な資産として認識し、全社的に活用しています。
- 組織づくり:
- 全てのDX銘柄・注目企業は、DX推進のための組織が明確に位置付けられており、全社を巻き込んだ推進を行っています。また、外部リソースの活用も積極的に実施しています。
- DX推進のための予算枠が確保され、中長期的な視点での挑戦を促す文化が醸成されています。
- デジタル人材の育成・確保:
- 全てのDX銘柄・注目企業がデジタルスキル標準を参照して社員のスキル可視化を行っており、全社的に人材育成を推進しています。
- 一方で、「DX推進を支える人材」の確保については、DX銘柄企業でも8割にとどまるなど、課題も指摘されています。
- ITシステム・サイバーセキュリティ:
- DX銘柄・注目企業は、定期的に情報資産全体の課題を分析・評価し、必要な対策を講じています。
- サイバーセキュリティリスクを特定し、対策計画を策定するとともに、防御のための仕組み・体制を構築しています。
- 成果指標の設定・DX戦略の見直し:
- DX銘柄・注目企業は、DX戦略の進捗や成果把握を即座に行うことができています。
- 全てのDX銘柄・注目企業は、経営者がデジタル技術動向やITシステムの課題を把握・分析し、DX戦略の見直しに活用しています。
- ステークホルダーとの対話:
- 全てのDX銘柄・注目企業は、経営者が経営ビジョンやDX実現のメッセージを社内外に発信し、投資家をはじめとした複数のステークホルダーに対してDX戦略に関する発信・対話を行っています。
- 経営陣のスキルマトリックス等を公表し、デジタル人材育成・確保に関するアピールも効果的に行っています。
4. 結論
本調査結果から、DX銘柄企業やDX注目企業は、デジタルガバナンス・コードに沿ったDX推進を体系的に行い、その取り組みが財務成果にも結びついていることが示唆されます。一方で、DX推進を支える人材の確保など、一部の領域では更なる強化が求められる課題も存在します。


