第1章:プロンプトエンジニアリングの基本原則
1.1 効果的なプロンプトの5つの核心要素
🎯 1. 役割設定(Role Definition)
AIに具体的な役割と専門性を与える
【基本形】
あなたは○○市の{部署名}担当職員です
【詳細版】
あなたは人口5万人の地方都市で20年の経験を持つ市民課窓口担当職員です。
住民の立場に立った親切で正確な対応を心がけています。
📋 2. 文脈提供(Context Setting)
業務背景と制約条件を明確化
【自治体情報】
- 自治体規模:人口○万人、面積○㎢
- 地域特性:中山間地域/都市部/観光地
- 予算制約:年間○万円以内
- 対象者:65歳以上/子育て世帯/事業者
【業務制約】
- 法的根拠:○○法第○条に基づく
- 実施期間:○年○月から○年間
- 関連部署:○○課、○○課との連携必須
📝 3. 具体的指示(Specific Instructions)
曖昧さを排除した明確な指示
❌ 悪い例「良い案内文を作って」
✅ 良い例「高齢者向けマイナンバーカード申請案内を以下の条件で作成してください」
📊 4. 出力形式指定(Output Format)
求める成果物の形式を明示
【出力形式例】
- 文字数:800字以内
- 構成:見出し+本文+注意事項
- トーン:丁寧で親しみやすく
- 形式:箇条書き/段落形式/表形式
✅ 5. 検証・制約条件(Verification & Constraints)
品質保証のための条件設定
【制約条件】
- 法的正確性の確保
- 個人情報保護への配慮
- 政治的中立性の保持
- 専門用語の平易化
1.2 自治体業務特化型プロンプト構造(SMART-G Framework)
S – Situation(状況設定)
現在、○○市では{課題・状況}について検討しています。
【現状】{具体的な現状説明}
【課題】{解決すべき問題}
M – Mission(使命・目的)
【目的】住民サービス向上/業務効率化/政策立案支援
【対象】○○世代/○○地域/○○業種
【期待効果】{定量的・定性的な効果}
A – Authority(権限・根拠)
【法的根拠】○○法第○条、○○規則第○条
【予算】{予算規模と制約}
【期間】{実施期間と重要日程}
R – Requirements(要求仕様)
【必須要件】{絶対に満たすべき条件}
【推奨要件】{できれば満たしたい条件}
【除外要件】{含めてはいけない内容}
T – Timeline(時系列・手順)
【段階1】{第1段階の作業内容}
【段階2】{第2段階の作業内容}
【最終段階】{最終成果物の要件}
G – Guidelines(ガイドライン)
【品質基準】{品質管理の基準}
【確認事項】{最終確認すべきポイント}
【注意事項】{特に気をつけるべき点}
第2章:業務分野別プロンプトテンプレート集
2.1 住民対応・窓口業務
【テンプレート1】住民案内文書作成
あなたは○○市の市民課職員として、以下の条件で住民向け案内文書を作成してください。
【案内対象】
- サービス名:{具体的なサービス名}
- 対象者:{年齢層、世帯構成等}
- 利用想定数:年間○件程度
【作成条件】
- 文字数:A4用紙1枚(800字以内)
- 語調:丁寧で親しみやすく
- 構成:目的→手続き→必要書類→注意事項
- 避ける内容:専門用語、カタカナ語の多用
【必須記載事項】
- 申請方法:{窓口/郵送/オンライン}
- 必要書類:{具体的な書類名}
- 受付時間:平日9:00-17:00(土曜日は○○まで)
- 問い合わせ先:○○課(TEL:000-000-0000)
【最終確認】
作成後、高齢者でも理解しやすい内容になっているか確認してください。
【テンプレート2】FAQ作成支援
○○市の{担当業務}について、住民からよく寄せられる質問のFAQを作成してください。
【FAQ条件】
- 質問数:10-15個
- 1回答:100-150字程度
- 難易度:中学生でも理解できるレベル
【カテゴリ】
1. 手続きに関する質問
2. 必要書類に関する質問
3. 費用・期間に関する質問
4. トラブル対応に関する質問
【出力形式】
## Q1. {質問文}
**A.** {回答文}
※{補足情報があれば記載}
【確認ポイント】
- 法的根拠の正確性
- 最新情報への更新状況
- 類似サービスとの混同回避
2.2 政策立案・企画業務
【テンプレート3】政策提案書作成
○○市の企画課職員として、{具体的な政策課題}に関する政策提案書を作成してください。
【市の基本情報】
- 人口:○万人(高齢化率○%)
- 主要産業:{農業/製造業/観光業等}
- 地域特性:{中山間地域/都市部/沿岸部等}
- 財政状況:{健全/厳しい等}
【政策課題】
- 現状の問題:{具体的な問題点}
- 目標設定:{3年後の目指す状態}
- 予算制約:年間○万円以内
- 関係部署:{連携が必要な部署}
【提案書構成】
1. 現状分析と課題整理
2. 他自治体の成功事例(3事例以上)
3. 具体的な実施方策
4. 予算計画と人員配置
5. 評価指標とスケジュール
6. リスク分析と対策
【評価基準】
- 実現可能性(予算・人員・技術)
- 住民ニーズとの適合性
- 他事業との整合性
- 継続可能性
【テンプレート4】事業評価・見直し支援
○○市の{事業名}について、事業評価と見直し案を検討してください。
【事業概要】
- 事業開始:{開始年度}
- 年間予算:{予算規模}
- 利用実績:{利用者数、実施回数等}
- 当初目標:{設定された目標}
【評価視点】
1. 有効性:目標達成度
2. 効率性:コストパフォーマンス
3. 必要性:住民ニーズとの適合
4. 公平性:受益と負担の適正さ
【見直し方向性】
- 継続(現状維持)
- 改善(内容・手法の見直し)
- 統合(類似事業との統合)
- 廃止(事業終了)
【提案要件】
- 根拠となるデータの提示
- 住民への影響分析
- 代替案の検討
- 段階的実施スケジュール
2.3 議会対応・資料作成
【テンプレート5】議会答弁資料作成
○○市議会{定例会/臨時会}での一般質問への答弁資料を作成してください。
【質問内容】
"{議員からの具体的な質問文}"
【答弁者】
{市長/副市長/部長/課長}として答弁
【答弁構成】
1. 質問への基本認識
2. 現状報告(データ・実績)
3. 課題分析
4. 今後の対応方針
5. 具体的な取り組み予定
【制約条件】
- 答弁時間:{3分/5分}以内
- 使用データ:最新の公式統計
- 政治的判断事項:選択肢を提示
- 継続審議事項:進捗状況を報告
【準備事項】
- 想定される追加質問への対応
- 関連資料の準備
- 他部署との調整事項
- 過去の議会答弁との整合性確認
【注意点】
最終的な政治判断や政策決定については、担当部署や首長判断が必要な旨を明記してください。
2.4 広報・情報発信
【テンプレート6】プレスリリース作成
○○市の{事業・イベント・施策}に関するプレスリリースを作成してください。
【基本情報】
- 発表日:{年月日}
- 発表者:○○市長/○○部長
- 件名:{30字以内の簡潔なタイトル}
【5W1H】
- When:{実施日時・期間}
- Where:{実施場所・対象地域}
- Who:{対象者・参加者}
- What:{具体的な内容}
- Why:{実施理由・背景}
- How:{実施方法・申込方法}
【構成】
1. 見出し(インパクトのある表現)
2. リード文(要点を30-50字で)
3. 本文(詳細な内容説明)
4. 市長等のコメント
5. 問い合わせ先
【記載必須事項】
- 申込方法・締切
- 費用(無料/有料)
- 定員(ある場合)
- 注意事項・持参物
【メディア配慮】
- 取材しやすい時間帯の提示
- 写真撮影可能箇所の明示
- 背景説明資料の準備
2.5 条例・規則作成支援
【テンプレート7】条例検討支援
○○市の{分野}に関する条例制定について、検討材料を整理してください。
【検討事項】
- 条例の目的:{解決したい課題}
- 対象範囲:{適用対象・地域}
- 既存法令:{関連する法律・政令}
【調査内容】
1. 他自治体の類似条例事例(5自治体以上)
2. 条例で規定可能な事項の整理
3. 法的制約・留意点の整理
4. パブリックコメント実施方法
【検討資料】
- 条例骨子案(章立て程度)
- 想定される条文の項目
- 施行スケジュール案
- 関係部署との調整事項
【重要な注意事項】
- 法的判断が必要な部分は明確に区別
- 条例案そのものではなく「検討材料」として作成
- 最終的な法的判断は必ず法務担当者・外部専門家に確認する旨を明記
- 上位法との整合性確認の必要性を示す
第3章:プロンプト改善の実践手法
3.1 段階的プロンプト改善法(3-Step Method)
Step 1: シンプルスタート
最初は基本要素のみで開始
↓
ChatGPTに○○について教えてください
Step 2: 条件追加
Step 1の結果を確認し、不足要素を追加
↓
○○市の住民向けに、○○について初心者でもわかるように500字で説明してください
Step 3: 詳細調整
最終的な品質向上のための詳細指定
↓
○○市(人口5万人、高齢化率35%)の住民向けに、○○について
以下の条件で説明してください:
・対象:65歳以上の高齢者
・文字数:500字
・構成:背景→手続き→注意点
・口調:丁寧で親しみやすく
・避ける:専門用語、カタカナ語
3.2 プロンプト品質チェックリスト
作成前チェック(事前準備)
- [ ] 目的は明確に定義されているか?
- [ ] 対象者(読み手)は特定されているか?
- [ ] 成果物の具体的イメージはあるか?
- [ ] 制約条件(予算、期限、法令等)は整理されているか?
- [ ] 自治体の特性情報は準備されているか?
プロンプト作成時チェック(入力時)
- [ ] 役割設定は具体的か?
- [ ] 指示内容に曖昧な表現はないか?
- [ ] 出力形式は明確に指定されているか?
- [ ] 必要な背景情報は含まれているか?
- [ ] 制約条件は明記されているか?
出力後チェック(検証時)
- [ ] 期待した内容が出力されているか?
- [ ] 事実関係に誤りはないか?
- [ ] 法的・制度的な問題はないか?
- [ ] 自治体の実情に適合しているか?
- [ ] そのまま使用できる品質か?
3.3 失敗パターンと改善策
🔴 失敗パターン1:曖昧な指示
❌ 悪い例
「良い感じの住民説明資料を作って」
⚠️ 問題点
・対象者が不明
・「良い感じ」が主観的
・用途・目的が不明確
・分量・形式が未指定
✅ 改善例
「道路工事に関する住民説明会資料を作成してください。
【対象】工事区間周辺の住民約200世帯
【説明内容】工事期間、迂回路、騒音対策、問い合わせ先
【形式】A4×2ページ、図表含む
【配布方法】回覧板での配布」
🔴 失敗パターン2:自治体情報の不足
❌ 悪い例
「子育て支援策を提案して」
⚠️ 問題点
・自治体規模が不明
・現状の支援策が不明
・予算制約が不明
・地域特性が未考慮
✅ 改善例
「○○市の子育て支援策充実案を検討してください。
【市の現状】
・人口2万人、年間出生数150人(10年前比30%減)
・既存支援:児童手当、医療費助成(中学生まで)
・保育所:公立2か所、私立1か所(待機児童なし)
・予算制約:新規事業は年間300万円以内」
🔴 失敗パターン3:AIへの過度な依存
❌ 悪い例
「この予算案について議会で承認されるか判断して」
⚠️ 問題点
・政治的判断をAIに委ねている
・承認可能性は予測不可能
・人間の判断が必要な領域
✅ 改善例
「この予算案について、議会審議で想定される質問と
回答案を検討してください。
※最終的な政治判断や承認可能性の予測はできませんが、
過去の類似案件から想定される論点を整理します。」
第4章:応用技術とテクニック
4.1 Few-Shot プロンプティング(例示による学習)
基本構造
以下の例を参考に、同様の形式で○○を作成してください。
【例1】
{具体的な例1}
【例2】
{具体的な例2}
【作成対象】
{新しく作成したい内容}
自治体での活用例
以下の広報文例を参考に、新しいサービスの広報文を作成してください。
【例1:図書館サービス】
「忙しい毎日の中で、読書の時間を見つけるのは大変ですね。
○○市立図書館では、お仕事帰りや休日でも利用しやすいよう、
平日は19時まで、土曜日も17時まで開館しています。
また、インターネットでの予約サービスも充実しており...」
【例2:健康診断サービス】
「健康診断を受けたいけれど、平日は忙しくて...そんな方のために、
○○市では休日健康診断を実施しています。
事前予約制で、待ち時間も短縮。お忙しい皆様の健康管理を...」
【作成対象】
新しく開始する「オンライン申請サービス」の広報文
4.2 Chain of Thought(思考の連鎖)プロンプティング
段階的思考の促進
以下の手順で段階的に検討してください:
1. まず、現状の問題点を整理してください
2. 次に、解決すべき優先順位を付けてください
3. それぞれの解決策を3つずつ考えてください
4. 最後に、最も実現可能性の高い案を選んでください
各段階で理由も併せて説明してください。
政策立案での応用例
○○市の高齢者移動支援について、以下の手順で検討してください:
【手順1】現状分析
・高齢者の移動に関する課題を3つ挙げてください
・それぞれの課題の原因を分析してください
【手順2】他自治体事例研究
・類似した課題を解決した自治体事例を3つ調査してください
・各事例の成功要因を整理してください
【手順3】○○市での適用可能性検討
・各事例が○○市で実現可能か評価してください
・評価基準:予算(500万円以内)、人員、地域特性
【手順4】最適案の選定
・最も適した解決策を1つ選び、理由を説明してください
・実施スケジュールと必要な準備を整理してください
4.3 Role Playing(役割演技)プロンプティング
多角的視点での検討
以下の立場から、それぞれの意見を述べてください:
【立場1】市民課窓口職員として
・住民対応の観点から見た問題点と改善案
【立場2】予算担当者として
・財政面から見た実現可能性と課題
【立場3】高齢住民として
・サービス利用者の視点から見た使いやすさ
最後に、3つの視点を踏まえた総合的な改善案を提示してください。
4.4 Constraint-Based(制約ベース)プロンプティング
制約条件の効果的活用
以下の制約条件を満たしながら、○○を作成してください:
【必須制約】
・予算上限:年間200万円
・実施期間:6ヶ月以内
・関係法令:○○法の遵守
【推奨制約】
・他部署との連携最小化
・既存システムの活用
・段階的実施の可能性
【除外制約】
・新規人員の配置不可
・ハードウェア購入不可
・外部委託費用は含めない
これらの制約の中で、最も効果的な解決策を提案してください。
第5章:組織的なプロンプト活用推進
5.1 庁内プロンプトテンプレート整備
部署別テンプレート集の構築
【基本テンプレート】
├── 市民課
│ ├── 住民案内文書作成
│ ├── 窓口対応FAQ作成
│ └── 申請書類簡素化検討
├── 企画課
│ ├── 政策提案書作成
│ ├── 事業評価・見直し
│ └── 他自治体事例調査
├── 総務課
│ ├── 規則・要綱作成支援
│ ├── 議会答弁資料作成
│ └── 人事制度検討
└── 広報課
├── プレスリリース作成
├── 広報紙記事作成
└── SNS投稿案作成
テンプレート管理システム
【管理項目】
・作成日・更新日
・作成者・承認者
・利用頻度・評価
・改善履歴
・関連法令・根拠
【品質管理】
・定期的な内容見直し(半年ごと)
・利用者フィードバック収集
・成功事例・失敗事例の共有
・ベストプラクティスの更新
5.2 職員研修プログラム
段階別研修カリキュラム
【初級編:基礎理解(2時間)】
- AIと対話型AIの基本概念
- プロンプトの重要性
- 基本的な書き方(5W1H)
- 簡単な実習(住民案内文作成)
【中級編:実践応用(4時間)】
- 業務別プロンプト作成実習
- 失敗事例から学ぶ改善法
- 品質評価とブラッシュアップ
- セキュリティとコンプライアンス
【上級編:専門活用(6時間)】
- 高度なプロンプト技術
- 部署横断的な活用事例
- 独自テンプレート開発
- 組織全体への展開方法
継続的スキル向上
【月次活動】
・プロンプトコンテスト開催
・成功事例発表会
・質問・相談会
【四半期活動】
・新技術・手法の研修
・他自治体との情報交換
・システム・ツールの更新
【年次活動】
・全庁的な効果測定
・研修プログラム見直し
・先進事例の視察研修
5.3 成果測定と継続改善
効果測定指標
【定量指標】
・時間短縮効果:作業時間の変化
・コスト削減効果:人件費・外注費の削減
・品質向上効果:エラー・修正回数の減少
・利用率:職員の活用頻度
【定性指標】
・職員満足度:アンケート調査
・住民サービス品質:苦情・要望の変化
・業務効率感:主観的評価
・スキル向上:自己評価・他者評価
PDCA サイクル
【Plan:計画】
・目標設定(時間短縮○%、利用率○%)
・実施スケジュール
・必要リソースの確保
【Do:実行】
・研修実施
・テンプレート提供
・利用サポート
【Check:評価】
・効果測定
・利用者フィードバック収集
・課題・問題点の整理
【Act:改善】
・テンプレート改良
・研修内容見直し
・新たな活用領域の開拓
付録:プロンプト作成支援ツール
チェックリスト式プロンプト生成器
□ 役割設定:AIに与える具体的な役割は?
└ 入力例:○○市の○○課○○年経験職員
□ 目的設定:何を作成・検討したいか?
└ 入力例:住民向け案内文書/政策提案書/FAQ
□ 対象者:誰のための成果物か?
└ 入力例:高齢者/子育て世帯/事業者
□ 制約条件:守るべき条件は?
└ 入力例:予算○万円/期間○ヶ月/法的根拠
□ 出力形式:どんな形で出力してほしいか?
└ 入力例:A4×2枚/箇条書き/表形式
これらを統合したプロンプトを自動生成
業務別クイックスタート集
【1分で使える基本プロンプト】
📋 住民案内作成
「○○市の○○課職員として、{サービス名}の住民向け案内を、{対象者}向けに{文字数}字で作成してください。」
📊 データ分析支援
「○○市の{データ名}について、{分析目的}の観点から、傾向と課題を整理し、3つの改善提案をしてください。」
📝 会議資料作成
「{会議名}の資料として、{議題}について、現状→課題→対応策の構成で、A4×2枚の資料を作成してください。」
🗣️ 議会答弁準備
「{質問内容}への答弁として、現状報告→課題認識→今後の対応の流れで、5分以内の答弁案を作成してください。」



