はじめに
経営者の皆様は日々、様々な問題に直面されていることでしょう。売上の停滞、顧客離れ、社内コミュニケーションの齟齬、生産性の低下など、ビジネスにおける課題は尽きることがありません。これらの問題を効果的に解決するためには、適切な分析手法が不可欠です。
今回のコラムでは、マーケティングの世界で広く活用されている「STP分析」のフレームワークが、実は問題解決においても非常に有効であることをご紹介します。特に「S(セグメンテーション)」と「T(ターゲティング)」の考え方が、問題分析のプロセスと驚くほど類似しているのです。この知見を活用することで、貴社の課題解決力を大幅に向上させることができるでしょう。
STP分析とは何か
まずは基本に立ち返りましょう。STPとは以下の3つのステップから成るマーケティング戦略のフレームワークです:
- Segmentation(セグメンテーション):市場を特性や行動パターンに基づいて細分化する
- Targeting(ターゲティング):自社にとって最も価値の高いセグメントを選択する
- Positioning(ポジショニング):選択したセグメントに対して、最も効果的な価値提案を行う
このフレームワークは、限られたリソースを最大限に活用するために、「誰に」「何を」「どのように」提供するかを明確にするものです。
問題解決のプロセスとSTPの類似性
ここで注目すべきは、問題解決のプロセスがSTPのアプローチと構造的に似ている点です。問題を解決する際にも、以下のようなステップを踏みます:
- 問題状況を細分化する(=セグメンテーション)
- 根本原因を特定する(=ターゲティング)
- 解決策を実行する(≒ポジショニング)
では、問題解決におけるセグメンテーションとターゲティングについて、具体的に見ていきましょう。
問題のセグメンテーション
マーケティングで市場を細分化するように、問題解決では「問題の状況」を細分化します。
セグメンテーションの方法
- 時間軸による分解:問題がいつ発生したのか、どのような頻度で起こるのか
- 領域による分解:問題が発生している部署、プロセス、製品ライン
- 関係者による分解:問題に関わる人々(社内外の顧客、従業員、取引先など)
- 要素による分解:技術的要素、人的要素、環境的要素など
例えば、「売上が落ちている」という大きな問題があった場合、以下のように細分化できます:
- 時間軸:いつから落ち始めたのか、季節性はあるのか
- 領域:どの製品・サービスで特に落ちているのか
- 関係者:どの顧客セグメントが減少しているのか
- 要素:価格、品質、マーケティング、競合状況など
このように問題を細分化することで、漠然とした課題が具体的な要素に分解され、分析しやすくなります。
問題の原因のターゲティング
次のステップは、セグメント化された問題の中から、最も重要な原因を特定する「ターゲティング」です。
原因特定のアプローチ
- 重要度分析:各セグメントが全体の問題にどれだけ影響しているか
- 対応可能性:自社のリソースや能力で対応できるか
- 根本原因の連鎖:原因と結果の連鎖を辿り、根本的な原因を突き止める
- パレート分析:80/20の法則に基づき、最も影響の大きい20%の原因に集中する
例えば、「新製品の売上が伸びない」という問題を細分化した後、以下のように原因をターゲティングできます:
- 市場調査の結果、価格よりも認知度の低さが主な原因と判明
- 認知度の低さの根本原因は、適切なマーケティングチャネルの選択ミス
- マーケティングチャネルの選択ミスの背景には、ターゲット顧客の行動パターンの誤認識がある
このように原因を絞り込むことで、限られたリソースを最も効果的な対策に集中投下できます。
中小企業での実践方法
中小企業は大企業と比べてリソースが限られているからこそ、このようなフレームワークを活用した効率的な問題解決が重要です。以下に実践のためのステップを示します:
1. 問題セグメンテーションのワークショップを開催する
- 経営陣と現場責任者を集めて、現在直面している問題を洗い出す
- 各問題を時間、領域、関係者、要素などの観点から細分化する
- 付箋やホワイトボードを使って視覚化すると効果的
2. データに基づいた原因のターゲティング
- 各セグメントの影響度を数値化(可能な限り)
- 顧客アンケート、社内調査、販売データなどの客観的情報を活用
- 仮説を立て、小規模な検証を繰り返す
3. アクションプランの策定と実行
- 特定された原因に対する具体的な対策を立案
- 責任者と期限を明確にする
- 実施後の効果測定方法も事前に決定しておく
成功事例
事例1:飲食店の客数減少問題
あるレストランで客数が減少していました。問題をセグメント化したところ、特に平日のランチタイムに客数が落ち込んでいることが判明。さらに原因を分析したところ、近隣にオープンした競合店のランチメニューが価格競争力を持っていることがターゲットとなる原因と特定されました。
対策として、ランチタイム限定の差別化メニューを開発し、価格ではなく品質と独自性で勝負する戦略に転換。結果として、客数が回復しただけでなく、客単価も向上しました。
事例2:製造業の不良品率上昇問題
ある製造業で不良品率が上昇していました。問題を細分化すると、特定の製造ラインで、特定の時間帯に不良品が増加していることが分かりました。原因をターゲティングした結果、その時間帯の温度管理が不適切であることが判明。
温度管理システムの改善と作業手順の見直しにより、不良品率が大幅に減少し、結果としてコスト削減と顧客満足度の向上につながりました。
まとめ
マーケティングのSTPフレームワークと問題解決のプロセスには、驚くほどの共通点があります。特に「セグメンテーション」と「ターゲティング」の考え方は、問題分析において非常に強力なツールとなります。
問題を漠然と捉えるのではなく、細分化し、本質的な原因を特定することで、限られたリソースを最大限に活用した効果的な解決策を見出すことができるのです。
中小企業の経営者の皆様には、ぜひこのアプローチを日々の経営課題に適用していただきたいと思います。マーケティングと問題解決、この二つの異なる分野の知見を融合させることで、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
本コラムが皆様のビジネス課題解決のお役に立てれば幸いです。ご質問やご意見がございましたら、ぜひお寄せください。



