- すべて架空の企業・製品設定ですが、実際の事例に近い要素を盛り込みました。
- 必要に応じて簡単なデータシミュレーションや効果測定の「仮想」演習も行い、短いPythonコードを示します。(グラフや表記は英語を使用します)
- より深掘りしたい点や不明点があれば、遠慮なくご質問ください。
Case Study 1: B2C(FMCG:Fast Moving Consumer Goods)
1. 概要
- 企業: ALOHA Foods (架空)
- 製品: Healthy Coconut Chips(ココナッツチップスの新商品)
- ターゲット: 20~40代の健康志向な消費者、特に軽めのおやつとしてスナック菓子を置き換えたい層
- 目的: 新商品の認知度向上と市場シェア獲得
ALOHA Foodsはココナッツミルクやココナッツウォーターといった商品で一定のブランド力を築いていたが、今回初めてチップス系スナックに参入する。競合は既存の健康スナックを扱う大手(Kellogg’s、Nestléなど)や、新興のオーガニック系ブランド。
2. フレームワーク活用
2.1 SOSTAC® の適用
- Situation(現状分析)
- 市場規模: 健康・オーガニック系スナック市場は国内で年間約500億円規模(仮定)
- 競合ブランド多数。差別化ポイントは「トロピカルなフレーバー」「ココナッツ由来のヘルシー感」
- 消費者調査で「甘さ控えめ」「グルテンフリー」「低カロリー」を重視する層に響きやすいと判明
- Objectives(目標設定)
- 新商品発売後6か月でブランド認知度を20%→35%に上昇
- 同期間内で売上を2億円達成
- 店頭配荷率を全国主要小売チェーンで60%以上にする
- Strategy(戦略)
- ターゲット: 若年~中堅女性を中心に拡散力のあるSNSキャンペーンで認知拡大
- ブランドイメージ: “Tropical & Healthy” を前面に打ち出し、既存ココナッツ製品とのシナジーを強調
- オムニチャネル: 大手スーパー・ドラッグストアの棚を押さえつつ、D2C(自社EC)でも試供品セット販売
- Tactics(戦術)
- Advertising: 雑誌・インスタ広告(ビジュアル訴求)、YouTube動画広告(短尺)
- Sales Promotion: 大手ドラッグストアでサンプリングイベント、初回購入クーポン配布
- PR: ヘルスケア系インフルエンサーに商品レビューを依頼し、SNS投稿を促す
- Owned Media: ブランド公式サイトで栄養成分や健康的なレシピを紹介
- Action(実行)
- 店頭サンプリング: 第1週~第8週、全国主要都市のドラッグストア(週末に集中)
- SNSキャンペーン: 発売開始月に「#CoconutLifestyle」で投稿コンテストを実施
- 広告代理店・PR会社との進行管理: 月次ベースの進捗レビュー
- Control(管理・改善)
- 認知指標: 自社調査やウェブアンケートでブランド認知率トラッキング
- 売上/配荷率モニタリング: 小売店POSデータの月次レポート
- SNSエンゲージメント率: キャンペーンハッシュタグの投稿数、インプレッション数を集計 → 改善
2.2 AIDAモデルを使ったクリエイティブ作り
- Attention:
- テーマカラー「ココナッツホワイト×トロピカルグリーン」を基調に、目を引くビジュアル
- コピー「Change Your Snack, Change Your Mood!」
- Interest:
- Instagram広告で「ほのかな甘さ」「オイル不使用」「グルテンフリー」を訴求
- オンラインで栄養成分表やレシピ動画を掲載
- Desire:
- 有名インフルエンサーが「罪悪感の少ないおやつ」として実食レビュー
- 店頭サンプルで実際の味を体感してもらう
- Action:
- 期間限定クーポンやECサイトへの誘導リンク
- 大手ドラッグストアの売り場で「2袋目半額セール」
3. データ計測と結果(仮想シミュレーション)
3.1 想定データ
- キャンペーン期間: 6か月
- 総予算: 5千万円(広告費、PR費、人件費、サンプル製造費など)
- メディア別予算配分(例)
Media | Budget (JPY) | Key Metric (target) |
---|---|---|
TVC (Spot) | 10,000,000 | GRP, Reach |
Magazine Ads | 5,000,000 | Estimated Impressions |
Social Ads | 8,000,000 | CTR, CPC, Engagement |
Sampling Events | 12,000,000 | # of Samples, CV Rate |
Influencers (PR) | 5,000,000 | Earned Media Value |
Owned Media Dev. | 5,000,000 | Site Visits, Time on Site |
- メインKPI: 認知度向上率、売上、SNSエンゲージメント、サンプリング数
3.2 簡単なデータ解析例(Pythonによる仮想ROIシミュレーション)
下記のように「メディアごとの実績データ(仮)」を準備したうえで、ROIを試算する場合を想定します。
グラフを英語表記で描画します。
手順
- 各メディアの投下予算
- 見込リーチ数・コンバージョン数
- コンバージョン1件あたりの粗利
- ROI計算
注: 数値はすべてダミーです。
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
# メディア別(仮)データ
media = ["TVC", "Magazine", "Social", "Sampling", "Influencer", "Owned Media"]
budget = np.array([10, 5, 8, 12, 5, 5]) # million JPY
conversions = np.array([20000, 8000, 30000, 15000, 10000, 6000]) # hypothetical
profit_per_conversion = 500 # JPY (example: each conversion = 500円の粗利)
# ROI計算
gross_profit = conversions * profit_per_conversion / 1000000 # in million JPY
roi = gross_profit / budget
# グラフ描画
fig, ax1 = plt.subplots(figsize=(8, 5))
color1 = 'tab:blue'
ax1.set_xlabel('Media Channel')
ax1.set_ylabel('Budget (Million JPY)', color=color1)
ax1.bar(media, budget, color=color1, alpha=0.6, label="Budget")
ax1.tick_params(axis='y', labelcolor=color1)
ax2 = ax1.twinx()
color2 = 'tab:red'
ax2.set_ylabel('ROI (Gross Profit / Budget)', color=color2)
ax2.plot(media, roi, color=color2, marker='o', label="ROI")
ax2.tick_params(axis='y', labelcolor=color2)
fig.suptitle("Budget and ROI by Media Channel")
ax1.legend(loc="upper left")
ax2.legend(loc="upper right")
plt.show()
上記コードでは、Budget(水色バー)とROI(赤線)を同時に可視化します。たとえば「Social」のROIが最も高くなる場合、SNS広告施策が費用対効果に優れていたとわかります。
シミュレーション考察(例)
- Samplingイベントはコストが大きいわりにROIがやや低めだが、試食・体験 の効果でLTV(継続購入) に貢献する可能性が高い。
- Social広告やインフルエンサー施策はターゲット層に刺さりやすく、認知拡大と売上への寄与も大きい。
4. 結果と次なるアクション
- 認知度: 目標35%に対して34%程度(あと一歩及ばず)
- 売上: 6か月で2.2億円と目標達成
- 学び: Samplingのコスト効率は低い一方でブランドロイヤルティ向上が見込まれ、中長期的には投資価値あり。ソーシャル経由の売上が予想以上に高く、デジタル広告予算のさらなる増強を検討。
- 改善策: 今後はECサイトの継続購入モデル(サブスク)展開や、新フレーバーの追加などでLTV向上を目指す。
これがB2C(FMCG)における一連のプロモーションフレームワーク実践例です。
Case Study 2: B2B(SaaS企業の新ソリューション導入促進)
1. 概要
- 企業: CloudBridge (架空)
- 製品: CloudBridge Analytics Suite (クラウド型データ分析ツール)
- ターゲット: 中堅~大手企業のIT部門、経営企画部門
- 目的: SaaS型データ分析ツールの導入企業を年内50社に増やす
クラウド型BI/Analyticsの競合はTableau、Power BI、Looker等。差別化ポイントとして「導入ハードルの低さ」「日本語サポート強化」「高いカスタマイズ性」を打ち出している。
2. フレームワーク活用(SOSTAC® + AIDAの連携)
2.1 Situation(現状分析)
- B2B市場はBIツールの競争激化。デジタルマーケティング強化が必要。
- IT予算の縮小やクラウド移行の加速などの外部要因。
- 自社は導入コンサルティング体制が手厚く、競合優位性あり。
2.2 Objectives(目標設定)
- 年間導入数: 50社(うち10社は大手クラス)
- 問い合わせ数: 月100件以上
- 商談転換率: 30% → 40% へ引き上げ
2.3 Strategy(戦略)
- ターゲット: BIツール未導入の中堅企業、Excelでの分析に限界を感じている層
- 主軸チャネル: ホワイトペーパーやウェビナーを活用し、リード獲得後に個別デモとコンサル提案で受注につなげる
- 差別化要素: 日本語サポート、短期導入、柔軟なカスタマイズ性
2.4 Tactics(戦術)
- Inbound Marketing:
- ホワイトペーパー「Excelからの卒業!BI導入ガイド」配布 → リード情報を獲得
- ウェビナー(オンラインセミナー)毎月開催 → 専門家による製品デモ
- Paid Ads (LinkedIn, Google Ads):
- 検索キーワード: “BI tool”, “Data Analytics”, “クラウドBI” など
- LinkedIn広告でITマネージャークラスを狙う
- Email Marketing / MA (Marketing Automation):
- ダウンロードやウェビナー参加者を段階的にナーチャリング(3~5通のシナリオメール)
- ドリップキャンペーンで導入事例動画やROI試算例を送信
- Sales Promotion:
- 30日間無料トライアル
- 初期導入支援無料キャンペーン(期間限定)
2.5 Action(実行)
- ウェビナー運営: マーケ部と技術部が協同で毎月1回開催
- MA運用: リード獲得~スコアリング~アポイント獲得フロー構築
- フィールドセールス: 有望リードに対して個別デモ&PoCの提案
2.6 Control(管理・改善)
- KPIモニタリング:
- リード数, MQL (Marketing Qualified Lead) → SQL (Sales Qualified Lead) 変換率
- ウェビナー参加者の商談化率
- 導入企業数, LTV, チャーン率
- PDCA:
- ウェビナーの訴求内容やタイトルをテスト → 参加率向上を図る
- メール開封率・クリック率を改善するためにコピーライティングや送付タイミングを最適化
3. AIDAモデルによるリード獲得~成約プロセス
- Attention
- LinkedIn広告、Google検索広告、展示会(リアルイベント)などでBIツールの存在を認知
- Interest
- ウェビナーやホワイトペーパーで業務効率化・データ活用のメリットを提示
- 競合製品と比較した際の導入容易性やコスト優位を強調
- Desire
- 無料トライアルで操作性を体験
- 成功事例(ROI改善やレポート自動化)を紹介して導入意欲を高める
- Action
- フィールドセールスがトップマネジメントやIT部門を説得 → 契約締結(導入)
- 継続してオプション機能やサブスクプランへのアップセル
4. 仮想結果と分析
- 6か月経過時点で30社が導入(進捗60%)、うち大手企業5社
- ウェビナー経由の商談転換率が40%と高い(→今後はウェビナーを月2回開催に拡大検討)
- LinkedIn広告のCPL (Cost per Lead)が思ったより高め → クリエイティブやターゲティング条件を再調整する余地あり
- 導入した企業のNPSが高く、追加モジュール契約へのアップセル率30%超
次の一手:
- ウェビナーやホワイトペーパーの英語版を作成し、グローバル企業にもリーチ
- MAツールとCRMの連携をさらに強化し、既存顧客の顧客満足度向上プログラムを実施
- 大手事例の成功ストーリーを動画化して、さらにトラフィックを呼び込む
Case Study 3: D2Cスタートアップのデジタルプロモーション
1. 概要
- 企業: LunaCare (架空)
- 商品: オーガニック・フェイスマスク (D2Cブランド)
- ターゲット: 20~30代女性、自然派コスメを好む層
- 目的: ブランドローンチ初年度にEC売上1億円を目指す
2. プロモーション戦略(IMC + PESOモデル)
- Paid Media
- Instagram広告、Google Display Networkでビジュアル訴求
- インフルエンサー広告:美容系YouTuberやInstagrammerへのスポンサード投稿
- Earned Media
- 美容系オンラインメディアへの掲載(プレスリリース配信)
- アーリーユーザーのクチコミ・レビューを拡散
- Shared Media
- 公式Instagram:ユーザー参加型キャンペーン (#LunaGlowチャレンジ) で投稿を促す
- TikTokでの使用動画シェア、ビフォーアフター投稿
- Owned Media
- 公式ECサイト(ブログ、製品ストーリー、製造工程の透明性をアピール)
- メルマガやLINE公式アカウントでクーポン配布
3. フレームワークの補足
- SOSTAC® を一部簡易適用:
- Situation: スキンケア市場はレッドオーシャン。価格競争厳しいが、オーガニック志向が拡大中。
- Objectives: 初年度EC売上1億円、SNSフォロワー10万人
- Strategy: SNSとECを直結したD2Cモデルで効率よく集客。UGC(User Generated Content)の波及を狙う。
- Tactics: インスタライブでの製品デモ、口コミキャンペーン、定期購入プランの優遇など。
- Action: デジタルマーケ担当・EC担当が週1で連携ミーティング。インフルエンサーと投稿スケジュールを共有。
- Control: ShopifyなどECプラットフォームの売上ダッシュボード、SNSのエンゲージメント分析、月次で集客チャネル別ROIをチェック。
4. 仮想結果
- ローンチ3か月で売上3,000万円、インスタフォロワー5万人
- 新規ユーザーの約30%がインフルエンサーの投稿経由で来訪
- 口コミやSNS拡散が思ったより強く、広告費を抑えつつ売上を伸ばせた
- ただし、リピート購入率はまだ15%と低く、定期購入誘導の仕組みが課題
まとめ
これらのケーススタディはいずれも“架空の設定”ですが、実際の企業が取り組む際に発生しうる課題や施策を、SOSTAC®、AIDA、IMC、PESOモデルなどのフレームワークに当てはめながら具現化した例です。
- Case Study 1(B2C・FMCG): 新しいスナック菓子のローンチと店頭・オンライン連携
- Case Study 2(B2B・SaaS): ウェビナーやホワイトペーパーによるリード獲得とMA/セールス連携
- Case Study 3(D2Cスタートアップ): SNSキャンペーンとUGC(User Generated Content)で拡散、ECサイトで直接販売
いずれもプロモーションフレームワークの各ステップを意識しつつ、具体的なチャネル選択 や KPI設計、効果測定 の流れを通してPDCAを回すことが成功のカギとなっています。