国際的な給与所得者の額面所得(中央値)と手取り額の比較

ChatGPT DeepResearcで調査しました。

まず、主要国を中心に給与所得者の中央値年収(額面)と手取り年収を一覧で示します。手取り年収は所得税や社会保険料などすべての控除後の金額です。各国で利用可能な最新データにもとづき、可能な限り2020年代前半の統計値を用いています。

国(通貨)額面所得(中央値)[^1]手取り所得(中央値)
アメリカ合衆国 (USD)$34,612 (List of countries by average wage – Wikipedia)(2020年)約$27,000(概算) (What Americans Really Earn After Taxes )[^USA]
イギリス (GBP)£28,000British GQ](https://www.gq-magazine.co.uk/article/average-uk-salary#:~:text=The%20latest%20government%20data%2C%20published,compared%20to%20February%202023))(2023年)
フランス (EUR)約€30,000(推計)€23,280 (Average salaries in France: Understanding Your Worth )(月額€1,940)
ドイツ (EUR)€39,600 (Salaries in Germany 2024: Average Wages, Best-Paid Jobs)(2024年)約€25,000 (Wie viel ist 3300 Euro brutto in netto? – Jobvector)
日本 (JPY)¥4,430,000 (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)(2022年)¥3,607,460 (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)
ルクセンブルク (EUR)約€60,000(推計)€42,482 ([Salaries in Luxembourg in 2024
スイス (CHF)CHF 81,456 (Wages, income from employment and labour costs)(2022年)約CHF 70,000(推計)
ベルギー (EUR)€44,736 (An overview of Belgian wages and salaries – Statbel)(2022年)約€28,600(推計) (An expat guide to average salaries in Belgium – HousingAnywhere)
アラブ首長国連邦 (USD,無税)$24,300 (Median Income by Country 2024)(2020年)$24,300 (Median Income by Country 2024)

[^1]: 「額面所得(Median Gross)」は税金・社会保険料控除前の年間給与中央値。
[^USA]: アメリカの手取り額は所得税(連邦税・州税)と給与税を合計20%前後控除した概算値 (What Americans Really Earn After Taxes )。

表の読み方: たとえば、日本では給与所得者の中央値年収が約443万円(額面)で、その手取り額は控除後に約361万円となっています (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator) (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)。アメリカでは中央値年収が約3.46万ドル(額面)で、控除後の手取りは概ね2.7万ドル前後と推計されます (List of countries by average wage – Wikipedia) (What Americans Really Earn After Taxes )。一方、**UAE(アラブ首長国連邦)**のように所得税が存在しない国では、額面と手取りが同額となっています (Median Income by Country 2024)。

各国の額面所得と手取り額の詳細比較

上の表より、各国間で額面所得そのものの水準と、税・社会保険料による控除後の手取り額割合に大きな差異があることが分かります。以下、いくつかの国・地域について詳しく解説します。

  • アメリカ合衆国: アメリカの給与所得者中央値の額面年収は約3.5万ドルです (List of countries by average wage – Wikipedia)。連邦所得税や州所得税、社会保障税などを差し引いた手取りは約2.7万ドル程度と推計されます。実際、年収5万ドルの労働者の場合を例に取ると、所得税と社会保険料差引後の手取りは約3.91万ドルとなるとの試算があります (What Americans Really Earn After Taxes )。中央値層(約3.5万ドル)ではこれより控除額が少ないため、手取りは額面の80%前後になると見られます。
  • イギリス: イギリスでは直近の政府統計で全産業の中央値月収が**£2,334(月額、額面)と報告されています (Average UK salary 2024: How do you compare? | British GQ)。これは年額に換算して約£28,000の額面給与に相当します。その場合の所得税・国民保険(NI)控除後の手取りは約£23,000**となり、額面の約82%が手元に残ります (£28000 After Tax 2025/2026 – Income-tax.co.uk)。イギリスは個人控除(2023年度で約£12,570)が大きく、中位の給与水準であれば20%の基本税率のみが適用されるため、**税負担率は比較的低め(約15~18%)**に収まります。
  • フランス: フランスの給与中央値の額面年収は約€30,000前後と推定されます。フランス国立統計経済研究所(INSEE)の分析によれば、フルタイム労働者の中央値月収(手取り)は€1,940程度と報告されています (Average salaries in France: Understanding Your Worth )。これは年額手取り約€23,300に相当し、額面給与のだいたい75~80%に当たります。フランスでは所得税の累進課税に加え、社会保障負担(CSGなど)が給与から控除されますが、中位の所得層では多くの人が所得税非課税枠に収まることもあり、手取り額は額面の8割近くを維持します (Average salaries in France: Understanding Your Worth )。
  • ドイツ: ドイツの中央値給与(額面)は月額約€3,300、年額にして約€39,600です (Salaries in Germany 2024: Average Wages, Best-Paid Jobs)。控除面では、ドイツは所得税と社会保険料の合計負担が主要国でも高い水準です。独身者で中央値程度の収入の場合、年間所得税と従業員社会保険料の合計は額面の35~40%前後に達します(税率は累進ですが、社会保険料が一律で約20%) (Wie viel ist 3300 Euro brutto in netto? – Jobvector)。その結果、手取り年収はおよそ€25,000前後と、額面の約60~65%程度に減少します。例えば月収€3,300の独身労働者の場合、所得税・社会保険料を差し引いた月々の手取りは約€2,100程度となります (Wie viel ist 3300 Euro brutto in netto? – Jobvector)。
  • 日本: 日本の給与所得者については、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に基づく年間給与中央値(額面)は約443万円と報告されています (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)。この水準の労働者の場合、所得税(源泉徴収)や住民税、厚生年金保険料、健康保険料などを差し引いた手取り年収は約361万円となります (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)。つまり、日本では**額面給与の約80~82%**が手取りとして受け取れる計算です。日本は欧州諸国に比べると社会保険料負担がある程度大きいものの、所得税・住民税の累進性が中所得層まで穏やかなため、**中央値層の税負担率は2割弱(手取り8割超)**に収まっています (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)。
  • ルクセンブルク: ルクセンブルクは賃金水準が非常に高い国で、EU統計局(Eurostat)によれば中央値年収(手取り)は€42,482にも達します (Salaries in Luxembourg in 2024 | Average Incomes and Minimum Wages — Luxtoday.lu)。これを額面に直すと推定**€60,000程度**の年収に相当します。ルクセンブルクは高所得者向けの累進課税が充実しており、社会保険料と所得税を合わせた控除率は中央値でも約30%前後になるとみられます。そのため、手取りは額面の約70%程度(約3割が控除)となります。実際、ルクセンブルクの手取り中央値€42,482はEU平均の手取り中央値(約€18,372)と比べても2倍以上であり (Salaries in Luxembourg in 2024 | Average Incomes and Minimum Wages — Luxtoday.lu)、高額な額面給与と比較的高い税負担率の両方を反映しています。
  • スイス: スイスもまた世界で最も給与水準が高い国の一つです。連邦統計局のデータでは全産業中央値月収(額面)はCHF 6,788(2022年)で、年額約CHF 81,456に及びます (Wages, income from employment and labour costs)。スイスは連邦・州・市町村の所得税を合わせても税率が低めで、社会保険料(年金・医療)は給与から控除されるものの割合は欧州大陸諸国より抑えられています。結果として中央値層では額面の85%以上が手取りに残るケースも多く、手取り年収はおよそCHF 70,000前後と推定されます。実効税率が低いため、スイスでは額面と手取りの差が比較的小さい点が特徴です。
  • ベルギー: ベルギーは給与に対する税・社会保険料の控除負担が世界で最も重い水準として知られます。統計局(Statbel)の発表では中央値月収(額面)は€3,728で、年額約€44,736となります (An overview of Belgian wages and salaries – Statbel)。これに対し、手取り中央値はおよそ月€2,400弱(年額約€28,000台)と見積もられ、額面の60~65%程度しか残りません。実際、2022年時点でベルギーの平均的な独身労働者は、給与総額に対する所得税と従業員社会保険料の負担率が約40%に及んでいました (A Comparison of the Tax Burden on Labor in the OECD, 2024)。OECDの報告でも、ベルギーの単身平均労働者の税負担(タックスウェッジ)はOECD平均の約7倍にもなるとされています (A Comparison of the Tax Burden on Labor in the OECD, 2024)。こうした高負担により、額面給与が高くても手取りは抑えられるのがベルギーの特徴です。
  • アラブ首長国連邦(UAE): UAEは所得税が課されないため、給与の額面=手取りとなります (Median Income by Country 2024)(一部、年金基金拠出などの控除はあるものの、非課税枠での労働が一般的)。UAEの中央値年収は約2.43万ドルと推計されています (Median Income by Country 2024)。これは中東地域ではトップクラスであり、手取り額でもルクセンブルクやノルウェーと並ぶ水準です。高い給与水準と無課税制度により、名目上の収入がそのまま可処分所得になる点で際立っています。

手取り率(可処分率)の国際比較と傾向

上記のように、各国の額面給与に対する手取り額の割合(可処分率)は、税制や社会保障制度によって大きく異なります。一般的な傾向として:

  • 高福祉・高税率の国: ベルギーやドイツ、フランスなど、社会保障が充実し累進課税が強い国では、手取りは額面の6~8割程度にとどまります。特にベルギーでは手取り率が6割前後と低く、ドイツやフランスでも7割前後です (Wie viel ist 3300 Euro brutto in netto? – Jobvector) (Average salaries in France: Understanding Your Worth )。これらの国では社会保険料(年金・医療・失業保険など)と高率の所得税が控除の主因となっています。
  • 中程度の税負担の国: 日本、イギリス、カナダ、オーストラリアなどは、累進課税や社会保険料負担はあるものの、高税率国ほどではありません。中央値層でみると、手取りは額面の約75~85%程度が一般的です (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator) (£28000 After Tax 2025/2026 – Income-tax.co.uk)。例えば日本は手取り約81% (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)、イギリスも約82% (£28000 After Tax 2025/2026 – Income-tax.co.uk)が目安で、家族構成や控除によって若干上下します。これらの国は控除率が中程度(2割前後)であり、社会保障給付と税負担のバランスが比較的とれています。
  • 低税率の国: 米国や韓国などは、平均的な税・保険料負担は中程度ですが、中央値層では控除率が比較的低めになる傾向があります。アメリカは連邦控除額が大きく多くの州で所得税率も低いため、中央値付近では手取りが額面の80~85%程度と推計されます (What Americans Really Earn After Taxes )。韓国も社会保険料率はあるものの所得税が低く、中央値層の手取り率は8割超と報告されています(韓国の税・社会負担率はOECD平均より低い約23% (Global Wage Report 2024-25))。このように比較的低い税負担の国では、中位の労働者にとって額面と手取りの差が小さく抑えられます。
  • 無所得税の国・地域: UAEやサウジアラビア、カタールなど所得税のない国では、額面がそのまま手取りになります。例えばUAEでは中央値年収約2.4万ドルがそのまま可処分所得であり (Median Income by Country 2024)、控除による目減りはほとんどありません。ただし社会保険として市民が拠出する年金基金(例えばUAE国民は給与の5%を年金拠出)など限定的な控除は存在します。それでも**実質的な手取り率は95~100%**と極めて高い水準です。

考察: 額面と手取りの差を生む要因

各国で額面所得と手取り所得の差(控除率)が生じる主な要因には次のようなものがあります。

  • 所得税の税率構造: 累進課税が強い国ほど、中所得層でも税負担が大きくなりやすい。ベルギーやドイツでは年収3~4万ユーロ台から30%以上の所得税率が適用されるため (A Comparison of the Tax Burden on Labor in the OECD, 2024)、中央値層でも税引き後手取りが圧縮されます。一方、米国や日本のように中位層への課税が緩やかな国では、所得税による控除割合が小さくなります。
  • 社会保険料(給与天引き)の比重: 年金保険や医療保険料、雇用保険料などの従業員負担分が額面給与から控除されます。ドイツやフランス、日本など公的保険制度が整った国では、給与の10~20%超が社会保険料として差し引かれます (Wie viel ist 3300 Euro brutto in netto? – Jobvector) (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)。逆に、社会保障制度が税財源中心(例: 北欧諸国の医療は税負担が主体)だったり、民間任意加入が多い国(例: 米国の医療保険)では、この部分の控除は相対的に小さいです。
  • 地方税・住民税等: 日本の住民税やアメリカの州所得税、ドイツの教会税など、国税以外の課税も手取りに影響します。日本の住民税は一律10%前後で給与から控除され、手取りを目減りさせます (Japan (JP) – Salary After Tax Calculator)。アメリカでは居住州によって州所得税が0%のところもあり、同じ額面でも手取りは州ごとに異なります (What Americans Really Earn After Taxes )。
  • 非課税枠・控除制度: 各国には個人控除や扶養控除など課税所得を減らす制度があります。これが充実していると、中位の収入層まで税負担が軽減されます。例えばイギリスは個人控除が約£12,500と大きく (28,000 income tax calculator 2025 – United Kingdom – salary after tax)、多くの労働者がその範囲で低税率に収まります。米国も標準控除額が大きいため、中央値層の相当部分が課税最低限に留まりやすい傾向があります。
  • 家族構成や社会手当: 手取り額は家族状況による税額の違いや社会手当の影響も受けます。フランスやドイツでは扶養家族がいれば税率が下がる制度(スプリッティングやクレジット)があり、同じ額面でも家族持ち世帯の可処分所得は単身者より多くなるケースがあります (A Comparison of the Tax Burden on Labor in the OECD, 2024)。一方、北欧諸国のように個人課税が徹底している国では家族による違いは小さいです。

以上のような要因が組み合わさり、各国で「額面に対する手取り割合」が異なっています。

まとめ

最新データにもとづく各国の比較から、額面給与の中央値そのものも国によって大きく異なるうえ、そこから差し引かれる税・社会保険料の割合にも大きな開きがあることが確認できました。

  • 所得水準の差: ルクセンブルクやスイス、アメリカなどは中央値所得が高く、反対に新興国では中央値所得自体が低いです。例えばルクセンブルクの手取り中央値は約€42,000とEU平均の2倍以上 (Salaries in Luxembourg in 2024 | Average Incomes and Minimum Wages — Luxtoday.lu)ですが、インドや南アジア諸国では中央値所得が数千ドル程度に留まります (Median Income by Country 2024) (Median Income by Country 2024)(そうした国々では課税自体が限定的で、多くの労働者が非課税枠内に収まっています)。
  • 税負担の差: 高所得国の中でも、手取り率(可処分率)の高低が顕著です。ベルギーやドイツのように税・社会保険料が重い国では、額面が同程度でも手取りが大きく目減りします。一方、米国や日本、スイスのように控除率の低い国では、額面に対する手取りの割合が高くなっています。例えば同じ額面年収€40,000でも、ベルギーでは手取りが€25,000程度 (Wie viel ist 3300 Euro brutto in netto? – Jobvector)に減るのに対し、スイスでは約€34,000(CHF換算)前後が手元に残る計算になります。
  • 政策と暮らしへの影響: 手取り額の国際比較は、その国の税制や社会保障給付の水準とも表裏一体です。高負担の国々では社会保障や公共サービスが充実している反面、個人の可処分所得は抑えられます (A Comparison of the Tax Burden on Labor in the OECD, 2024)。逆に低負担の国では自己責任で賄う支出も多い代わりに、手取り収入は大きくなります。例えば、北欧や西欧大陸の国民は高い税負担の代償として教育・医療が安価または無料で提供されますが、アメリカでは手取り収入から高額の民間医療保険料や大学学費を支払うケースが一般的です。

今回比較したように、「額面所得=稼いだ金額」と「手取り所得=実際に使える金額」には各国で大きな差があります。これは各国の税・社会保障制度の設計思想の違いを反映しており、単純な額面の多寡だけでなく「手取りベースで生活水準を捉える」ことの重要性を示しています。国際的に見ると、額面上は高収入でも手取りでは同水準、あるいは逆転する例もあり、特に移住や海外就職を考える際には額面と控除後の差を考慮する必要があります (Salaries in Luxembourg in 2024 | Average Incomes and Minimum Wages — Luxtoday.lu) (A Comparison of the Tax Burden on Labor in the OECD, 2024)。各国の最新データを踏まえ、こうした額面と手取りの実態を正しく理解することが大切です。