以下では、大規模言語モデル(LLM)にメタ認知を促すための「プロンプト例」をいくつか提案します。
メタ認知という観点から、“どのように思考プロセス(推論・戦略)を振り返り、改善点を見出すか” という点を重視した質問形式にしてあります。
実際にChatGPTなどに入力して試すときは、必要に応じて文面をカスタマイズしてください。
プロンプト例 1: 「思考手順の振り返り」
あなたが前に示した解答や推論過程について振り返ってください。
- どのようなステップや方法で答えにたどり着いたと推測できますか?
- その推論のどの部分が特に有効だったと思われますか?
- 逆に、誤解や不十分な部分があったとすればどこでしょうか?
- それらを修正または改善するとしたら、どのような方法が考えられますか?
ねらい: 解答(アウトプット)の表層だけでなく、「どう考えたのか」というプロセスを再評価し、成功要因・失敗要因を特定する。
プロンプト例 2: 「解答の妥当性チェック」
先ほどの回答や提案の信頼性・妥当性を自己評価してください。
- 結論や結果は正しい・的確と思われますか? その根拠は何でしょうか?
- 不明瞭な点や曖昧な点はありますか? それらをクリアにするにはどうすればいいですか?
- 別の視点から見ると、矛盾点や不足点が生じる可能性はありますか?
- もし修正すべき点があるなら、どのように修正しますか?
ねらい: 回答の正否や説得力を吟味する「モニタリング」を意図的に促し、必要に応じて回答を補足・再構成する。
プロンプト例 3: 「プロセスの自己分析と改善提案」
問題解決のプロセスを振り返りながら、今後の改善策を考えてください。
- 問題解決に使った手順や戦略はどのようなものでしたか?
- その手順のうち、特に効果的だった要素は何ですか?
- 新たに導入すると効果がありそうな戦略や方法はありますか?
- 次回類似の課題に取り組むとき、どのようにアプローチを変えるとよいですか?
ねらい: 過去のアプローチに対する自己評価と、新たな戦略の探索を行わせる。
プロンプト例 4: 「結果とプロセスのギャップを探る」
今回の回答結果と推論のプロセスを比較し、ギャップを分析してください。
- もし回答と論理展開に食い違いがあるとすればどこでしょうか?
- そのギャップはどうして生まれたと思われますか?
- ギャップを埋めるために必要な追加情報や検討は何かありますか?
- 再度回答を精査するとしたら、どのように変更しますか?
ねらい: 「どこがうまくいかなかったのか」を意識化し、プロセスと結果を擦り合わせるメタ認知を促進する。
プロンプト例 5: 「根拠・証拠を問い直す」
先ほどの回答や推論を支える根拠について点検してください。
- その根拠はどこから得た情報や前提を基にしていますか?
- その情報源や前提が妥当であることを証明・裏付ける証拠はあるでしょうか?
- もし根拠が薄いと感じる部分があるとしたら、どのように補強できますか?
- 追加で検証すべき資料や視点は何か思い当たりますか?
ねらい: 「なぜその結論に至ったのか」を深堀りし、思考の裏付けを自覚的に再評価させる。
プロンプト例 6: 「想定外の視点での見直し」
先ほどの回答を、全く別の視点や仮説で検証するとしたらどうなりますか?
- 例えば、真逆の立場から見た場合に、どんな反論や異論が考えられますか?
- それらの反論に対して、どのように答えればよいでしょうか?
- 今回の回答をさらに強固にするために取り入れたい視点はありますか?
- それにより修正される点や付け足すべき点は何ですか?
ねらい: 「視点の転換」や「対立仮説への対応」を促し、より多角的なメタ認知を行わせる。
プロンプト例 7: 「戦略の振り返りと段階的分析」
問題解決のプロセスを段階的に振り返ってみてください。
- 目標設定や問題の捉え方
- 情報収集や下調べ
- 仮説立案や推論
- 答えの導出・検証
- 各段階ごとに、どんなアプローチをとったか簡単に振り返ってください。
- どの段階が最も成功の要因になりましたか? または失敗の要因になりましたか?
- 次回、どのように最適化・改善できると思いますか?
ねらい: フェーズごとの分析を促し、どこに問題や成功の鍵があったかを具体化させる。
プロンプト例 8: 「学習・推論のプロセス可視化」
あなたの学習や推論のプロセスを、可能な範囲で可視化するとしたらどのように整理できますか?
- インプットとして受け取った情報は何でしたか?
- そこから中間的に導いた仮説や推論はどのようなものでしたか?
- どの時点で答えや結論を確定づけましたか?
- もし途中の仮説が変化した点があれば、なぜ変化したのかを説明してください。
ねらい: 「可視化」というキーワードを使い、ステップごとに言語化・図解的に整理させることで、メタ認知を深める。
プロンプト例 9: 「自己評価と次へのフィードフォワード」
今回の回答について自己評価し、それを今後の回答にどのように活かせるかを考えてみてください。
- 自分自身の回答や提案がどれくらい有用だと思いますか?
- 改善の余地があるとしたらどこでしょう?
- この学習や推論の過程を活かして、次に同様の質問が来た場合にどのように変化させたいですか?
- 具体的な改善アクションや戦略を挙げてください。
ねらい: 現在の回答の評価と、今後の「フィードフォワード」(未来へ向けた改善策)を具体的に考えさせる。
プロンプト例 10: 「メタ認知の習慣化を促す継続質問」
回答のたびに行うメタ認知チェックのルーティンを提案してください。
- どのような項目をチェックするのが有効ですか?
- 学習や回答プロセスのどの段階で、そのチェックを行うのが望ましいですか?
- チェックリストの具体的な項目を作るとしたら、どんな質問が並びそうですか?
- そのルーティンを継続するための工夫はどのようなものですか?
ねらい: 質問自体に「メタ認知を促す仕組み」を埋め込み、毎回のやり取りで少しずつ振り返りを行う習慣を築く。
使い方のヒント
- タイミング: 1回の回答の最後に、あるいは一定数の回答を行った後など区切りの良いところでこうしたメタ認知的な質問を投げると効果的です。
- 意図の共有: 「あなたの推論をチェックしてほしい」「根拠を明確にしてほしい」など、メタ認知させたい目的や意図をあらかじめ伝えると、より的確な回答が得やすくなります。
- 深掘りや再質問: 初回の回答があいまいな場合、さらに深掘りする追質問を投げかけて、段階的にメタ認知を誘導する方法も有効です。
- 短文でもOK: 必ずしも長い質問である必要はありません。「今の回答を自己評価してみて」「根拠を再確認してくれる?」といった短いフレーズでもメタ認知的な反応を引き出せます。
以上のプロンプト例を参考に、ChatGPTなどのLLMに対して「自らの推論や回答を振り返り、評価し、改善策を考える」よう促すと、単なる答えの提示だけでなく、推論プロセスや戦略に関するヒントを得ることができるはずです。ご活用ください。