以下では、「バイアス抽出」を促す10の切り口それぞれに対して、具体的なケース(状況設定)を行い、そのケースを前提としたプロンプト例を提示しています。実際にLLMに投げる際は、自社や自治体などの現実の状況に合わせて文面を調整してください。
1. 「本当に不便が悪なの?」プロンプト
ケース設定
地方の山間部にある温泉旅館街が、アクセスの悪さゆえ観光客の増加に悩んでいる。自治体と旅館組合が協力し、「不便を逆手に取れないか?」と考え始めている。
具体的プロンプト例
私たちの観光地はアクセスが不便だと見なされがちで、宿泊客の増加に苦戦しています。
しかし、そもそも「不便=悪」という常識が本当に正しいのか疑問を感じています。
そこで、以下の視点で考えてください:
1. 「不便」のメリット:静寂、秘境感、移動そのものがアトラクションになる可能性 など
2. 「あえて不便」を活かした国内外の成功事例がないか
3. どうすればこの“不便さ”をむしろブランド要素に変えられるか
私たちが持っている「アクセスは快適であるべき」「すぐ着ける方が観光客に喜ばれる」というバイアスを疑い、具体的にどんな施策やアイデアが考えられるか提案してください。
2. 「金額の常識を逆手に」プロンプト
ケース設定
新規で高級食パン専門店をオープンしたいが、「パンは安くないと売れない」という思い込みがある。思い切って高価格帯を狙うか迷っている。
具体的プロンプト例
高級食パン専門店を出す計画があります。
一般的に「パンは安いほど売れる」というバイアスがあると思いますが、ここを逆手にとり、
「高すぎて面白い」「安すぎて怪しい」など、極端な価格設定から得られる発想を洗い出してください。
具体的に、
1. 3000円以上する超高価格食パンのメリット・デメリット
2. 1斤100円以下の超低価格食パンを打ち出した場合の印象やリスク
3. これらを上手く活かしたブランディング案
について、私たちの「パンはこうあるべき」という先入観を排除しながら提案してください。
3. 「みんながよいと信じる技術へのアンチテーゼ」プロンプト
ケース設定
ネット通販(EC)サイト運営企業。常に「AIによるレコメンド機能を強化すべき」という考えが社内にあるが、顧客満足度は伸び悩んでいる。あえてレコメンドを排除したらどうなるか検討中。
具体的プロンプト例
私たちのECサイトでは、AIレコメンドが標準だと信じて開発を進めてきましたが、
顧客満足度の伸びに限界を感じています。
そこで「AIレコメンドを一切使わない」または「あえて無作為に商品を表示する」など、
技術を使わない・逆行する戦略の可能性を考えたいです。
私たちが抱えている
「ECは精度の高いレコメンドであるべき」
「ユーザーは自動化された機能を求めている」
といったバイアスをリストアップし、それを真逆に振る発想を提案してください。
メリットや成功事例、想定リスクなども含めて回答をお願いします。
4. 「その『伝統』は本当に守るべき? 壊すべき?」プロンプト
ケース設定
100年以上続く老舗の和菓子店。「伝統の製法」へのこだわりが強いが、若い顧客層からは「古臭い」と見られがち。伝統を守るか壊すか揺れている。
具体的プロンプト例
私たち和菓子店は100年以上の歴史があり、“伝統製法”を大切に受け継いできました。
しかし、若いお客様には「昔ながらで地味」「新しさがない」という印象を与えているようです。
以下の視点で「伝統を手放す・大胆にリブートする」可能性を検討してください:
1. 伝統の意義・守ることで得られる効果
2. 伝統を壊す場合の具体案(パッケージ、ネーミング、販売チャネルの大幅改変など)
3. 「伝統=絶対に守るべき」というバイアスを捨てたときの潜在的なメリット・リスク
私たち自身が気づいていない“伝統信仰”の盲点を具体的に洗い出したうえで、
ビジネス的にどう判断すればいいか提案してください。
5. 「褒める vs 叩く」プロンプト
ケース設定
スマホ向けゲームアプリをリリース予定。通常は「ゲームの魅力をアピールする」広告戦略を立てるが、あえて「クソゲーっぽさを前面に出す」プロモーションを検討している。
具体的プロンプト例
通常、ゲームアプリを宣伝するときは「面白さ」「クオリティの高さ」を強調します。
しかし、あえて「欠点」を堂々と宣伝し、「クソゲーかもしれない!」と自虐を前面に押し出す作戦を考えています。
私たちが持つ「宣伝は褒めるものである」「良いところを見せないと売れない」という
バイアスを徹底的に疑い、以下を検討してください:
1. 自虐的なアピールの成功事例(あるいは失敗事例)
2. “クソゲー感”を武器にバズるメカニズム
3. それによるブランドイメージへの影響(長期的にどうなる?)
以上を踏まえ、どんなプロモーションができそうか提案してください。
6. 「利益より別のものが大事?」プロンプト
ケース設定
地方のコミュニティカフェを立ち上げたいグループ。利益第一に考えてカフェを運営するのは難しそうだが、「地域の居場所づくり」「高齢者の安否確認」など、別の価値を優先したい。
具体的プロンプト例
私たちは地方でコミュニティカフェを立ち上げようとしていますが、
正直、利益を上げるのは難しいと感じています。
それでも「地域の居場所」や「高齢者同士の交流」などを最優先したいという想いがあります。
そこで、
1. 「利益以外で成功を測る指標」として何が考えられるか
2. 「利益が出ないと意味がない」というバイアスを手放した場合に開ける可能性
3. 海外や他地域で、利益以外のKPIを重視している成功例
などをリストアップし、私たちの運営モデルに落とし込むとしたらどうなるか提案してください。
7. 「専門家信仰をゼロベースに」プロンプト
ケース設定
新商品開発プロジェクトを進める大手メーカー。いつもコンサルタントや研究所の専門家に依頼してから方向性を決めるが、今回はあえて「素人チーム」だけでアイデアを創出してみたい。
具体的プロンプト例
当社の新商品開発では、常に専門家の監修やコンサルを入れて方針を固めてきました。
しかし、今回はあえて“素人”だけのチームを作り、専門知識に頼らずにアイデアを出してみたいと考えています。
私たちが抱える「専門家がいないと失敗する」「素人の意見は非効率」といったバイアスをリストアップし、
1. 専門家不在によるメリット(自由な発想、迅速な決断など)
2. 実際に取りうるアプローチやワークショップの方法
3. トラブル想定と対処策
などを提案してください。
8. 「対象ユーザーの思い込み」プロンプト
ケース設定
ヘルスケアアプリを開発するスタートアップ。主ターゲットを「健康意識が高い30〜40代女性」としていたが、そこにとらわれすぎて逆に新規獲得が伸び悩んでいる。
具体的プロンプト例
当社のヘルスケアアプリは「30〜40代女性向け」という前提で設計してきましたが、
新規ユーザーが伸び悩んでいます。
そこで、
1. 真逆のターゲット(10代男性やシニア層など)に向けた価値提供ができるか
2. 私たちが「30〜40代女性」と決め込んでいるバイアスを徹底的に洗い出す
3. ユーザー像を再設定した場合のUI/UX、プロモーションの方向性
以上を踏まえ、どんな新たなコンセプトがあり得るか提案してください。
9. 「ネガティブキーワード大集合」プロンプト
ケース設定
家具メーカーが新ラインを立ち上げるにあたって、ユーザーが感じうる不満や文句を先回りして知りたい。そこから製品の改善点を見出す狙い。
具体的プロンプト例
新しい家具ラインを作るにあたって、ユーザーが実際に使ったときの“不満”や“クレーム”を先回りして知りたいです。
あえてネガティブキーワードをひたすら挙げて、そこから潜むバイアスを炙り出してください。
具体的には、
1. 「使いにくい」「高すぎる」「デザインが古い」「組み立てが面倒」などの不満例
2. その不満を引き起こす前提(製造コスト優先、デザイナー目線が強すぎる など)
3. 改善の方向性と、それを採用するメリット・デメリット
を一覧で提案してください。
10. 「理想を口にしない」プロンプト
ケース設定
食品系ベンチャーが新商品を考える際、いつも「自然派で体に良く、おしゃれで売れる」などの理想を語りがち。しかし実際は現状が厳しく、まずは問題点を直視したい。
具体的プロンプト例
私たちは“自然派”や“おしゃれ”など、理想を語りがちです。
しかし今は、コスト面・生産体制・販路不足など、現状に山積みの問題があります。
そこで、
1. 一切“理想”を口にせず、現状の問題とヤバさだけをリストアップすると何が見えてくるか
2. その問題に対して私たちが抱いている「こうしなければならない」という隠れたバイアス
3. 理想を言わないまま進めるときの意思決定プロセス
を明確に示してください。まずは問題を強調することで何が変わるか分析いただけますか?
まとめ
- 各プロンプトは具体的な「ケース設定」(どんな状況で、どんな課題や背景があるか)を明確にすることで、回答が現実的かつ盲点をえぐる内容になりやすい。
- バイアスをあえて崩す・逆手に取るよう求めることで、普段の思考回路では見落としがちなアイデアや課題点が浮かび上がる。
- 実際にLLMへ投げる際は、組織や地域の固有名詞・数字・条件を差し替えることで、よりリアルなアウトプットが得られる。