仮説生成+検証プロンプト: ケーススタディ(ビジネス編)

以下では、「仮説(アブダクション)を生成するためのプロンプト」と「その仮説を検証するためのプロンプト」をセットで示します。ケーススタディ(具体的な事例)として、いくつかの場面を想定した例を提供します。LLM (Large Language Model) に入力する際、まず「仮説生成プロンプト」を与えて応答を得てから、続いて「検証プロンプト」を入力するといった流れをイメージしてください。


ケーススタディ1: ビジネスの売上急落

仮説生成プロンプト (アブダクション)

【状況】
・先月から自社の売上が急激に落ちています。
・広告出稿は減らしていません。
・競合他社が新製品を発表したとの情報があります。
・季節要因を疑いましたが、例年と大きな違いはないようです。
・顧客満足度アンケートでは目立ったクレームはありません。

【指示】
この状況から、売上急落の原因を最も合理的に説明できそうな仮説を、複数パターン挙げてください。
考えられる可能性を網羅的に示し、それぞれに仮説の根拠も簡潔に添えてください。

仮説検証プロンプト

【状況・前提】
先ほど生成した仮説を確認し、それぞれの仮説がどれほど妥当かを検証したい。

【指示】
1. あなたが先に示した「売上急落の原因」仮説を1つずつ取り上げてください。
2. 仮説を裏付ける証拠・データと、反証しうる要素・データの両面を検討し、検証可能性を評価してください。
3. 検証のために、追加でどのような情報や分析が必要かもリストアップしてください。

ケーススタディ2: 小説のストーリー考案

仮説生成プロンプト (アブダクション)

【状況】
・探偵小説を執筆しています。
・被害者は自宅書斎で倒れており、凶器は見当たりません。
・窓ガラスは割れていて、部屋には足跡が2種類あります。
・近隣の住民は銃声を聞いていません。
・被害者は盗難被害の報告をしていません。

【指示】
上記の状況をもっともらしく説明できる「犯行手口」や「犯人像」の仮説を、複数提案してください。
それぞれの仮説の筋道(犯行手順や状況説明)を簡潔にまとめてください。

仮説検証プロンプト

【状況・前提】
先ほどあなたが提案した仮説のうち、どれが最も合理的であるかを判断したい。

【指示】
1. それぞれの仮説について、物証(割れた窓、足跡、騒音の有無など)との整合性を評価してください。
2. 犯人像・動機に関して追加でどのような調査をすれば検証が進むのか、具体的な方法を提示してください(たとえば指紋調査、近隣住民の再聴取など)。
3. 最後に、最も有力だと思われる仮説を1つ選び、理由を述べてください。

ケーススタディ3: 新製品コンセプト開発

仮説生成プロンプト (アブダクション)

【状況】
・若年層向けスマート家電を企画中。
・既存製品は使い方が複雑で、高齢者には敷居が高いとのフィードバックがある。
・若いユーザーからは「アプリ操作をもっとシンプルに」「SNS連携を強化してほしい」という要望が多数。
・同業他社も新製品を発表予定で、市場は競争が激化している。

【指示】
上記の情報を踏まえ、若年層に受け入れられる新製品コンセプトについて、複数の仮説を立ててください。
・どんな機能があれば若年層のニーズを満たせるか?
・競合製品と差別化するためのアイデアはあるか?
各仮説には「狙い」「期待されるユーザーメリット」を含めて記述してください。

仮説検証プロンプト

【状況・前提】
先ほど挙げた新製品のアイデア(仮説)を検証したい。

【指示】
1. 各コンセプト(仮説)をユーザー目線・コスト面・技術面で検証してください。
2. 仮説実現のために必要なリソースやリスクを洗い出し、優先度をつけて一覧にしてください。
3. 市場調査やユーザーテストで確認すべき具体的項目を提示してください。

ケーススタディ4: 学習者の成績低迷

仮説生成プロンプト (アブダクション)

【状況】
・ある高校生が英語の成績だけ極端に低迷しています。
・他の科目(数学や理科)は平均点以上を維持。
・部活動は運動系で、週に4回ほど練習している。
・英語の予復習はあまりしていない様子。

【指示】
この生徒の英語成績が伸びない原因を推測する仮説を、できるだけ多面的に提案してください。
学習態度、学習方法、モチベーション、時間管理など、あらゆる可能性を視野に入れてください。

仮説検証プロンプト

【状況・前提】
先ほどの仮説をもとに、真実味が高い順に検討したい。

【指示】
1. 仮説ごとに、「観察される行動」や「成績データ」との整合性を評価してください。
2. 具体的にどのような追加情報(例:勉強時間の記録、過去の英語テストの誤答分析、本人のアンケート回答など)があれば仮説を裏づけられるか提示してください。
3. 優先的に対処したほうがよさそうな仮説を選び、その改善策を提案してください。

ケーススタディ5: Webサービスのトラフィック急増

仮説生成プロンプト (アブダクション)

【状況】
・運営中のWebサービスのトラフィックが今週急上昇。
・有料広告キャンペーンは行っていない。
・SNSでの口コミが増えているようだが、まだ調査は不十分。
・直帰率(サイトにアクセスしてすぐ離脱)が低下し、滞在時間が増えている。

【指示】
この突然のトラフィック増加を合理的に説明する仮説を挙げてください。
以下のポイントを考慮してください:
1) どこでサービスが話題になっているか?
2) リンク元は何か(SNS, ブログ, ニュースサイト等)?
3) UIや機能の改善でユーザー満足度が上がった可能性は?

各仮説に、そう考えられる理由を添えてください。

仮説検証プロンプト

【状況・前提】
先ほど提示されたトラフィック増加の仮説について、妥当性を検討したい。

【指示】
1. 仮説に沿って実際に調べるべきKPIやアクセス解析データを特定してください(例:リファラ情報、SNS上の言及数、検索キーワードなど)。
2. 仮説が真である場合と、偽である場合の両方を想定し、どのようなデータが得られるかを比較してください。
3. データ収集・分析の具体的手順と、最終的な判断基準(どの数値で仮説を合否判定するか)を明確に示してください。

まとめ

上記の例では、「仮説生成プロンプト (アブダクション)」→「仮説検証プロンプト (演繹/帰納による根拠確認)」 という流れを意識した構成になっています。

  • 仮説生成プロンプト
    • 「何が起きているのか?」→「最も筋が通る説明はどんなものか?」をLLMに問い、複数の可能性を示してもらう。
    • ポイント:観察事実や状況を羅列し、「それを説明する仮説」を複数提示させる。
  • 仮説検証プロンプト
    • 先ほど生成した仮説それぞれを、どのように検証すればよいかをLLMに問う。
    • ポイント:証拠の有無、データ収集、追加の質問・実験などを具体化させる。

このように「アブダクション → 検証(演繹や帰納)」のステップをLLMに意識させることで、アイデアを出す段階と、検証・絞り込みを行う段階を明確に区別しつつ、思考プロセスを深める活用が可能になります。