CoT推論を促すプロンプトの具体例

Chain-of-Thought(CoT)推論を効果的に活用するためには、適切なプロンプト設計とそれに対応する詳細な応答が重要です。以下では、CoT推論を促すプロンプトの具体例と、それに対するLLM(Large Language Model)の応答例を示し、実際のプロセスを詳しく解説します。

1. 数学的問題解決の例

1.1 プロンプト例

以下のプロンプトは、数学の問題を解く際にCoT推論を促すために設計されています。

次の数学の問題を解く際に、まず問題を理解し、解決するためのステップを順番に説明してください。

問題:
ある会社では、従業員1人あたりの月間平均売上が50万円です。従業員数を増やすことで、総売上を600万円にしたいと考えています。従業員数を何人にすればよいでしょうか?

1.2 LLMの応答例

まず、問題を整理します。

- 現在の従業員1人あたりの月間平均売上:50万円
- 目標総売上:600万円

求めたいのは、目標総売上を達成するために必要な従業員数です。

次に、必要な従業員数を計算するステップを考えます。

1. 1人あたりの売上を基に、必要な従業員数を求める。
2. 必要な従業員数 = 目標総売上 ÷ 1人あたりの売上
3. 具体的な計算を行う。

計算を行います。

必要な従業員数 = 600万円 ÷ 50万円/人 = 12人

したがって、目標総売上を達成するためには、従業員数を12人にする必要があります。

1.3 解説

この例では、プロンプトに「まず問題を理解し、解決するためのステップを順番に説明してください」と指示することで、LLMが問題を段階的に分析し、論理的なステップを経て解答を導出しています。これにより、ユーザーは解答の過程を明確に理解することができます。

2. 論理パズルの解答例

2.1 プロンプト例

以下の論理パズルを解く際に、まず問題を理解し、論理的なステップを踏んで解答に至る過程を詳しく説明してください。

問題:
Aさん、Bさん、Cさんの3人がそれぞれ異なる職業(医者、エンジニア、教師)に就いています。以下のヒントをもとに、各人の職業を特定してください。

1. Aさんは教師ではない。
2. Bさんはエンジニアではない。
3. Cさんは医者ではない。

2.2 LLMの応答例

まず、問題の条件を整理します。

- 人物:Aさん、Bさん、Cさん
- 職業:医者、エンジニア、教師
- 条件:
  1. Aさんは教師ではない。
  2. Bさんはエンジニアではない。
  3. Cさんは医者ではない。

次に、各条件を基に論理的に推論していきます。

1. **Aさんの職業**
   - Aさんは教師ではないため、Aさんは医者またはエンジニアである。

2. **Bさんの職業**
   - Bさんはエンジニアではないため、Bさんは医者または教師である。

3. **Cさんの職業**
   - Cさんは医者ではないため、Cさんはエンジニアまたは教師である。

ここで、各人の職業の候補をまとめます。

- Aさん:医者、エンジニア
- Bさん:医者、教師
- Cさん:エンジニア、教師

次に、各職業が一人ずつ割り当てられることを考慮します。

- もしAさんが医者であれば:
  - Bさんは教師
  - Cさんはエンジニア

- もしAさんがエンジニアであれば:
  - Bさんは医者
  - Cさんは教師

どちらの割り当ても条件に矛盾しません。

したがって、可能性は以下の2通りです。

1. Aさん:医者、Bさん:教師、Cさん:エンジニア
2. Aさん:エンジニア、Bさん:医者、Cさん:教師

問題文からは、どちらの割り当ても正解となります。

2.3 解説

この例では、複数の条件をもとに各人物の職業を特定する論理パズルを解いています。プロンプトに「論理的なステップを踏んで解答に至る過程を詳しく説明してください」と指示することで、LLMが段階的に推論を進め、可能性を検討しながら結論に達しています。

3. 複雑な意思決定支援の例

3.1 プロンプト例

以下のビジネスシナリオに対して、最適な意思決定を行うために、考えられる選択肢とそれぞれの利点・欠点を順を追って分析してください。

シナリオ:
中規模のソフトウェア開発会社が、新しい製品ラインを立ち上げることを検討しています。現在のリソースは限られており、リスクを最小限に抑えつつ、成功の可能性を最大化したいと考えています。以下の選択肢があります。

1. 新製品の開発に既存のチームを再配置する。
2. 新たに人材を採用して専任のチームを組む。
3. 外部の開発パートナーと提携する。

3.2 LLMの応答例

まず、ビジネスシナリオを整理します。

- 会社:中規模のソフトウェア開発会社
- 目標:新しい製品ラインの立ち上げ
- 現状:リソースが限られている
- 目標:リスクを最小限に抑え、成功の可能性を最大化

選択肢:
1. 既存のチームを再配置
2. 新たに人材を採用して専任チームを組む
3. 外部の開発パートナーと提携

次に、各選択肢の利点と欠点を分析します。

#### 1. 既存のチームを再配置

**利点:**
- 追加の人件費が不要
- チームメンバーは既に会社の文化やプロセスに精通している
- コミュニケーションがスムーズ

**欠点:**
- 既存のプロジェクトに影響を与える可能性がある
- チームの負荷が増加し、モチベーションが低下する恐れがある
- 新製品に特化したスキルが不足している可能性がある

#### 2. 新たに人材を採用して専任チームを組む

**利点:**
- 新製品に特化したスキルや知識を持つ人材を確保できる
- 既存のチームの負担を軽減できる
- 専門的な視点からのイノベーションが期待できる

**欠点:**
- 採用コストと時間がかかる
- 新人のオンボーディングに時間が必要
- 新しいチームの統合に課題が生じる可能性がある

#### 3. 外部の開発パートナーと提携する

**利点:**
- 即座に専門的なスキルを活用できる
- 内部リソースを他のプロジェクトに集中できる
- 柔軟なスケーリングが可能

**欠点:**
- パートナー選定に慎重を要する
- コミュニケーションやコラボレーションの課題が生じる可能性がある
- 長期的なコストが高くなる場合がある

### 結論

各選択肢にはそれぞれ利点と欠点が存在します。リスクを最小限に抑えつつ成功の可能性を最大化するためには、以下のような戦略が考えられます。

- **短期的なニーズには外部パートナーを活用しつつ、長期的には新たな人材を採用して専任チームを組む。** これにより、即座に開発を開始しながら、持続可能な体制を構築できます。
- **既存のチームの負荷を適切に管理し、必要に応じてサポートを提供する。** チームのモチベーションとパフォーマンスを維持することが重要です。

最終的な意思決定は、会社の具体的な状況や優先事項に基づいて行うべきです。

3.3 解説

この例では、ビジネス上の複雑な意思決定を支援するために、LLMが各選択肢の利点と欠点を詳細に分析しています。プロンプトに「考えられる選択肢とそれぞれの利点・欠点を順を追って分析してください」と指示することで、LLMは体系的に情報を整理し、論理的な結論を導き出しています。

4. まとめ

以上の例からわかるように、Chain-of-Thought(CoT)推論を効果的に活用するためには、以下のポイントが重要です。

  1. 明確な指示を含むプロンプト設計: モデルに対して具体的な思考過程を促す指示を含めることで、CoT推論を誘導します。
  2. 段階的な情報整理と分析: 問題を小さなステップに分解し、順を追って解決策を導出するプロセスを明示します。
  3. 論理的な結論の提示: 各ステップを経て、最終的な結論や推奨事項を明確に示します。

これらの手法を活用することで、LLMは複雑なタスクに対しても高精度で信頼性の高い応答を生成することが可能となります。CoT推論は、ユーザーが問題解決の過程を理解しやすくするだけでなく、モデル自体の説明可能性と透明性を向上させる重要な手法です。