TransformerのScaled Dot-Product Attentionの計算を行う場合、1個のGPUで何ペアの並列計算ができるか?

1つのGPUで何ペアの並列計算ができるかという質問についてですが、具体的に何ペアを並列に計算できるかは、GPUの性能やメモリ容量、計算の複雑さなどの要因に依存します。一般的に言えば、現代のGPU(例えばNVIDIAのA100やV100など)は、Attentionのような大規模な行列演算を一度に多数の並列プロセスで処理する能力があります。

1. GPUの並列計算能力

  • CUDAコア:GPUには数千個ものCUDAコア(小さな計算ユニット)があり、これらが同時に計算を行うことで膨大な数の並列処理が可能になります。
  • 行列演算の最適化:Attentionの計算は行列の積を伴うため、GPUに最適な形で処理が行えます。行列演算はGPUの得意分野で、特に内積の計算やソフトマックスなどは数千の演算を一度に並列化することで非常に効率的に実行できます。

例えば、NVIDIA A100 GPUなどのハイエンドGPUは、単精度(FP32)で数百TFLOPS(テラフロップス)の演算能力を持ち、これは1秒間に数百兆の浮動小数点演算を行う能力に相当します。

2. Attentionの計算とGPU

Attention計算の複雑さはシークエンスのトークン数に応じて増加し、トークン数が ( n ) の場合、全てのトークン間のAttentionスコアを計算するために \( n \times n \) の計算が必要です。たとえばトークン数が10であれば10 × 10 = 100ペアを計算します。

GPUは、この100ペアのAttentionスコアを効率的に計算するために、それぞれのペアごとの計算を並列に行うことができます。ハイエンドのGPUであれば、これを同時に数千から数万ペアまで並列に処理することが可能です。特に、GPUは行列乗算(多くのペアの内積計算)を行う際に非常に効率的であり、Attentionのような計算には最適です。

3. 実際の並列性の限界

1つのGPUで同時に処理できるペアの数は、GPUのメモリ容量とシークエンスの長さによって制限されます。

  • メモリ容量:Attentionの計算では中間的な結果も保持する必要があるため、メモリが足りなくなると並列処理の数が制限されます。例えば、NVIDIA A100のような40GBの大容量メモリを持つGPUであれば、非常に長いシーケンスでも並列に計算できますが、メモリ容量が少ないと一度に処理できるトークン数も減ります。
  • シークエンス長と次元数:シークエンスが長く、トークンの次元数(例えば768次元など)が高いほど、計算とメモリの負荷が増大します。この場合、GPUのリソースを効率的に使うための工夫(例えばバッチサイズの調整や勾配チェックポイントなど)が必要です。

まとめ

  • 1つのGPUで何ペアを同時に並列計算できるかは、そのGPUの計算能力とメモリ容量に依存します。
  • 現代のGPUであれば、数千から数万ペアのAttention計算を同時に行うことが可能です。
  • ただし、シークエンスの長さが増えると必要な計算とメモリの負荷が急速に増加し、計算資源の効率的な使い方が重要になります。

このように、GPUの並列計算能力を活用してAttentionの計算を効率化し、膨大なトークン間の関係を短時間で評価できるのが、Transformerアーキテクチャの強みの一つです。