言語モデルにおける「MLM(Masked Language Model)」と「CLM(Causal Language Model)」の違い

以下に、言語モデルにおける「MLM(Masked Language Model)」と「CLM(Causal Language Model)」の違いをまとめた一覧表を作成しました。

項目MLM(Masked Language Model)CLM(Causal Language Model)
モデルの代表例BERTGPT
学習の方法文章中の一部の単語を「マスク」し、それを予測するタスクで学習与えられた文脈から次の単語を逐次予測するタスクで学習
マスクの利用文中のランダムな位置にある単語を「[MASK]」トークンで隠すマスクを使用せず、既知の文脈に基づき次の単語を予測
入力データ文全体を使用し、マスクされた単語を予測過去の単語から次の単語を予測
コンテキストの利用双方向(全体の文脈)一方向(過去から未来へ)
特徴双方向的に文全体を理解しながら学習するため、単語間の依存関係を深く理解できる文脈から次の単語を予測するため、自然な文章生成に強い
利用例文の意味の理解、質問応答、要約文章生成、会話システム
長所文全体の意味を捉えるのに優れ、下流タスク(分類など)に強いスムーズな文章生成が可能で、自然言語生成タスクに適している
短所[MASK] トークンは実際の利用環境に存在しないため、自然な生成には不向き双方向の情報を捉えられないため、文全体の理解には弱い

言語モデルの学習方法には大きく分けて「MLM(Masked Language Model)」と「CLM(Causal Language Model)」の2種類があります。これらの手法は、言語データを利用してモデルを訓練するための異なるアプローチであり、それぞれ特有の長所と短所を持っています。

まず「MLM(Masked Language Model)」について説明します。この手法は、BERTのようなモデルで使用されています。MLMの学習方法では、入力された文章の中から一部の単語を意図的に「マスク」して隠します。そして、隠された単語を予測するタスクを通じてモデルを訓練します。たとえば、「今日は[MASK]が良いです」という文が与えられた場合、モデルは「天気」などの適切な単語を予測するように訓練されます。このように、文章全体の文脈を利用して特定の単語を推測することで、MLMは文全体の理解能力を向上させます。MLMは双方向的に文脈を理解することができるため、文の意味の把握や要約、質問応答などのタスクに優れています。

一方で「CLM(Causal Language Model)」は、GPTのようなモデルで採用されています。CLMの学習では、与えられた文脈から次に続く単語を順に予測する形で訓練が行われます。例えば、「今日は天気が」と入力されれば、次に来るべき単語を予測し、「良いです」といった自然な続きになるように学習します。CLMは文を左から右へ一方向に処理するため、逐次的な文章生成が得意です。この特性により、会話システムや物語生成など、自然でスムーズな文章を必要とするタスクに強みを持っています。

それぞれの手法には、適した用途と特有の課題があります。MLMは文全体の文脈を理解することに優れており、例えば文章の分類や、質問応答といったタスクに対して非常に有効です。しかし、学習時に使用する「[MASK]」トークンは実際の使用場面には存在しないため、文章生成においては不自然さが残る可能性があります。一方、CLMはマスクを使用しないため、より自然な文章を生成できますが、文脈の理解は過去から未来への一方向に限られ、双方向的な理解には弱さがあります。

これらの違いを理解することで、目的に応じた最適な言語モデルを選ぶことができます。例えば、文章の意味理解が重要なタスクにはMLMを、自然な文章生成が求められるタスクにはCLMを使うといった選択が可能です。各モデルの学習アプローチを理解することは、AIを活用する上で非常に重要です。