5章 プロンプトの精度を上げる追加のコツ:達人の技を盗む

5.1 ワンランク上のプロンプト作成術

基本要素を踏まえてプロンプトを作成できるようになったあなた。次は、プロンプトの精度をさらに高めるための追加のコツを学んで、プロンプトエンジニアリングの達人を目指しましょう。これらのテクニックは、AIの思考プロセスをより深く理解し、その能力を最大限に引き出すための高度な技と言えるでしょう。

5.2 魔法の言葉:AIの潜在能力を解放する

AI、特に大規模言語モデルは、膨大なテキストデータから学習しています。その学習データの中には、特定の言葉やフレーズと、質の高い文章との間に相関関係が見られる場合があります。これらの「魔法の言葉」をプロンプトに含めることで、AIは質の高い文章を生成する確率を高めることができるのです。

魔法の言葉の例:

  • ステップバイステップ: 「段階的に考えてください」という意味の英語フレーズです。AIに論理的な思考を促し、複雑なタスクを正確に処理するのに役立ちます。
  • テイクアディープブレス: 「深呼吸をしてください」という意味の英語フレーズです。AIに落ち着いてじっくり考えるように促し、より洗練された回答を得るのに役立ちます。
  • 報酬と罰: 「良い回答をしたら飴をあげます」、「間違えたら苦い薬を飲ませます」といった表現は、AIの学習プロセスを模倣したもので、回答の質を高める効果があるとされています。

5.3 具体例:魔法の言葉の効果

例題: ある会社の株価が今後どうなるか、その理由とともに予測してください。

プロンプト例1 (魔法の言葉なし):

〇〇会社の株価は今後どうなると思いますか?
その理由も教えてください。

出力結果:

〇〇会社の株価は、今後上昇する可能性が高いと考えられます。理由は、同社の業績が好調に推移しており、今後も成長が見込まれるためです。

解説: 一般的な予測と理由が提示されていますが、具体的な根拠や分析は不足しています。

プロンプト例2 (魔法の言葉あり):

あなたは経験豊富な金融アナリストです。
ステップバイステップで考えて、
〇〇会社の株価が今後どうなるか予測してください。
その理由も詳しく説明してください。

出力結果:

〇〇会社の株価を予測するにあたり、以下の要因を段階的に分析しました。

  1. 業績: 直近の決算報告によると、〇〇会社の売上高は前年同期比で10%増加しており、営業利益率も改善傾向にあります。
  2. 市場環境: 〇〇会社が属する業界は、市場規模が拡大しており、競争も激化しています。
  3. 競合: 〇〇会社の主要な競合は、△△会社と□□会社です。△△会社は、新製品の投入により市場シェアを拡大しています。□□会社は、コスト削減により収益性を改善しています。
  4. 将来展望: 〇〇会社は、今後、新規事業の展開を計画しており、更なる成長が見込まれます。

以上の分析結果を総合的に判断すると、〇〇会社の株価は、短期的には市場の動向に左右される可能性がありますが、長期的には上昇する可能性が高いと予測されます。

解説: 「ステップバイステップで考えて」という魔法の言葉を加えることで、AIはより論理的な思考プロセスを経て、詳細な分析に基づいた予測を提示しています。

5.4 その他のテクニック:AIとの会話を円滑にする

魔法の言葉以外にも、プロンプトの精度を高めるための様々なテクニックがあります。

  • 否定語を避ける: 否定的な表現よりも、肯定的な表現を使った方が、AIは理解しやすくなります。
    • 例: 「難しい言葉を使わないで」 → 「簡単な言葉で説明してください」
  • キーワードを強調する: 重要なキーワードを鍵括弧やコロンで囲むことで、AIにその重要性を伝えることができます。
    • 例: 「【最新のAI技術】について詳しく教えてください。」
  • 具体的な指示を出す: AIに期待する出力の長さや形式、内容などを具体的に指示することで、より意図した結果を得やすくなります。
    • 例: 「300字以内で要約してください。」、「表形式で出力してください。」、「メリットとデメリットを比較してください。」
  • 情報がない場合は「情報なし」と出力させる: AIが事実でない情報を生成することを防ぐために、情報がない場合は「情報なし」と出力するように指示することができます。
  • 会話タスクのレビューを提示する: AIに特定の役割や口調で会話させたい場合、具体的な会話例を提示することで、AIはより自然な会話を生成することができます。

5.5 まとめ

プロンプトの精度を高めるための追加のコツを学ぶことで、あなたはAIの潜在能力をさらに引き出すことができるようになります。AIとの対話をより深く理解し、プロンプトエンジニアリングの達人を目指しましょう。

次の章では、様々な業務シーンで活用できるプロンプトのテンプレートを紹介していきます。