インフォグラフィックの類似概念をどう整理するか

インフォグラフィックの周辺には、似ている言葉がかなり多くあります。しかも分野ごとに呼び方がずれるので、同じものを別名で呼んでいるケースもあります。知識可視化の研究でも、近い現象に対して多くのラベルが並立していることが指摘されています。

そのため、まず前提として、ここでの整理は学術的な唯一解ではなく、実務で使い分けやすい分類です。分類の妥当性の自己評価は 82% です。特に、情報デザインとインフォグラフィック、データストーリーテリングと説明型可視化は重なりが大きいです。IIID は情報デザインの中にデータ可視化やインフォグラフィックを含む実践例を示しており、IBM もデータ可視化の例としてインフォグラフィックを挙げています。(iiid)

類似概念の整理表

下の表は、インフォグラフィックを基準に、近い概念を用途と出力の違いで並べたものです。最後の列の確率は、インフォグラフィックと成果物レベルで混同されやすい度合いの推定値です。

概念ざっくり定義主な目的典型的な出力インフォグラフィックとの違い重なり確率
情報デザイン情報の意味を伝え、複雑な仕組みを理解しやすくする設計の総称理解しやすさの設計案内、説明資料、教材、図解、インフォグラフィックインフォグラフィックは情報デザインの一部として扱う方が自然90%
データビジュアライゼーションチャート、プロット、インフォグラフィックなどでデータを視覚表現する手法データの関係や傾向の把握と伝達グラフ、ダッシュボード、図表データ中心かどうかが分かれ目。インフォグラフィックは物語性や編集要素が強くなりやすい85%
説明型データ可視化読み手を特定の理解に導く、著者主導の可視化説明、説得、公開向け表現記事用グラフ、注釈付きチャート実務ではかなり近い。インフォグラフィックの中核に近い考え方88%
探索型データ可視化読み手が操作しながら発見する可視化分析、探索、仮説発見BI画面、分析用チャートインフォグラフィックよりも「読む」より「探る」寄り55%
インタラクティブ可視化可視化の中で直接探索や分析ができる表現追加発見、比較、深掘り操作可能なダッシュボード、地図、グラフインフォグラフィックは静的でも成立するが、こちらは操作性が主役60%
データストーリーテリングデータと分析を使って一貫した物語を作る手法意思決定の促進、行動喚起スライド形式の説明、ダッシュボード内ナラティブ、記事構成インフォグラフィックは「1枚の表現」、こちらは「物語構成」まで含む80%
ダイアグラムものの構造や仕組みを説明する図構造説明、関係整理構成図、フロー図、相関図ダイアグラムは部品。インフォグラフィックは部品を編集して一枚にまとめることが多い75%
ナレッジビジュアライゼーション協働で知識を作る、統合する、使うための可視化知識共有、合意形成、理解の統合概念図、メタファー図、ワークショップ図解データよりも知見や前提、暗黙知の共有に寄る70%
ビジュアルシンキング画像、記号、図を使って考えや概念を整理し共有する方法思考整理、学習、問題解決ホワイトボード図解、手描き整理図成果物というより思考プロセス。インフォグラフィックはその成果物になりやすい65%
ビジュアルノート テイキング文字と図を組み合わせて要点を記録する方法理解定着、要約スケッチノート、会議メモ図解個人メモ寄り。磨くとそのままインフォグラフィック素材になる68%
プレゼンテーションビジュアルスライドで情報共有するための視覚構成発表、共有、説明スライド、SmartArt、図解入り資料時系列で見せる前提が強い。インフォグラフィックは1枚完結が多い72%

実務での使い分けのコツ

実務では、どの言葉を使うかより、何を作るかで決める方が早いです。もし1枚で要点を伝えたいならインフォグラフィック寄りです。相手に操作させたいなら探索型やインタラクティブ可視化寄りです。会議で前提や論点をそろえたいなら、ナレッジビジュアライゼーションやビジュアルシンキングの語彙が効きます。公開記事やnoteで読者を導くなら、説明型データ可視化とデータストーリーテリングの発想を混ぜると設計が安定します。説明型と探索型の違いは、EU のガイドと Datawrapper の説明がかなり明快で、公開向けか分析向けかで切り分けると迷いにくいです。(data.europa.eu)

また、プレゼン資料はインフォグラフィックと近い見た目になりやすいですが、前提が少し違います。プレゼンはスライドという時間軸を前提にし、PowerPoint の Designer も画像や表やグラフを見てレイアウト提案を返す設計になっています。つまり、プレゼンは連続体、インフォグラフィックは凝縮体として捉えると整理しやすいです。(PMC)

参考文献

1)Merriam Webster の「infographic」定義です。インフォグラフィックを「視覚的に情報を提示する図表や図解」として確認する基準に使えます。(メリアム・ウェブスター)

2)IBM のデータ可視化解説です。データ可視化の定義に加えて、チャートやプロットだけでなくインフォグラフィックも含む扱いが確認できます。(IBM)

3)IIID の情報デザイン説明です。情報デザインの中にデータ可視化やインフォグラフィックが並んでおり、上位概念として見る根拠になります。(iiid)

4)EU データ可視化ガイドの説明型と探索型の区分です。公開向けと分析向けの違いを整理する時に使いやすい資料です。(data.europa.eu)

5)Datawrapper Academy の説明型可視化の解説です。著者主導で読者に何を見せるかという実務視点が明確です。(academy.datawrapper.de)

6)Qlik のインタラクティブ可視化の定義ページです。可視化の中で直接探索して分析するという定義がはっきりしています。(Qlik)

7)Microsoft Power BI のデータストーリーテリング解説です。データを用いた一貫した物語づくりとして整理されています。(Microsoft)

8)Qlik のデータストーリーテリング解説です。スライドのタイムラインで物語化する実装イメージがつかみやすい資料です。(Qlik Help)

9)Britannica Dictionary の「diagram」定義です。ダイアグラムを構造説明の基本部品として置く時の基礎になります。(Encyclopedia Britannica)

10)Eppler の知識可視化の章です。知識可視化を、協働で知識を作る、統合する、使うための可視化として捉える時の基盤資料です。

11)IED のビジュアルシンキング解説です。図や記号で概念を整理し共有する方法としての整理に使えます。(ied.edu)

12)Teach Britannica のビジュアルノート テイキング解説です。文字と図を組み合わせる実践として、スケッチノート系の位置づけを確認できます。(Teach Britannica)

13)Microsoft Support の PowerPoint Designer 解説と、PMC の視覚プレゼンテーション論文です。プレゼンテーションビジュアルを、時間軸を持つ視覚共有として捉える根拠になります。(マイクロソフトサポート)

必要なら次に、あなたの用途に合わせて、書籍用、note用、セミナー用の3系統で、この表をさらに実務寄りに組み替えます。例えば、あなたの文脈だと「意思決定の前提をそろえる図解」はナレッジビジュアライゼーション寄り、「記事で読ませる図解」は説明型可視化寄り、という切り分けがかなり使いやすいです。