意思決定や議論が噛み合わない原因を「思考力不足」だと思う人は多い。
でも実務の現場で起きていることは、もっと単純です。
前提が揃っていない。
あるいは、前提が揃っていても、どこを揃えれば結論が安定するのかが見えていない。
そこで今回は、前提を“分解可能なもの”として捉え直し、
前提がどんな割合で構成されているかを、確率感(現場感)で提示します。
結論:前提は3段階で「削れる」
前提を100としたとき、だいたい次の3段階で整理できます。
- 定義の明確化で消える
- データ(根拠)の用意で消える
- 価値の優先順位+評価基準で消える
そして、それでも消えないものが最後に残る。
第1層:定義で消える前提(約25〜30%)
前提のうち、意外と多いのがこれです。
- 用語の意味が揃っていない
- スコープ(どこまでの話か)が曖昧
- 比較基準(過去比/他社比)が混在
- 成功・失敗の定義が曖昧
これらは、能力の問題ではなく設計の問題です。
定義を書けば消える。書かなければ事故る。
第2層:データで消える前提(約30〜40%)
次に大きいのが「材料不足」ゾーンです。
- 情報が古い/断片的
- 出典が不明
- 反証データが未確認
- 数字の前提条件が共有されていない
ここはAIやNotebookLMが非常に強い領域です。
集めて、並べて、突き合わせるだけで解消できる前提が多い。
ここまでで消える割合:合計60〜70%
つまり前提のうち、
約6〜7割は、定義とデータで解消できる
この時点で議論はかなり整理されます。
ただし重要なのはここからです。
残り30〜40%のうち、さらに削れるものがある
定義とデータで削ったあとも、前提は残ります。
この残りは「本質」に近い。
しかし、ここにもまだ“整理不足で残っているもの”がある。
それが次の層です。
第3層:価値の優先順位+評価基準で消える前提
(残りのうち約50〜60%)
定義とデータを揃えても結論が割れる原因の多くは、実はこれです。
- 「何を優先するか」が明文化されていない
- 「何をもって良しとするか」が曖昧
- 価値の宣言と評価の物差しが噛み合っていない
典型例はこうです。
- 成長重視と言いながら、評価は短期利益
- 安定重視と言いながら、判断基準はスピード
- 品質重視と言いながら、現場のKPIは件数
これはロジックではなく、価値と基準の整合性の問題です。
どのくらい削れるか(確率感)
前提全体を100とし、残りが30〜40%だとすると、
- その残りの約50〜60%が
「価値優先+評価基準の明確化」で解消される
これを全体に換算すると、
全体の約18〜22%
つまり、ここまでで前提の80〜90%が整理される
整理の累積で見るとこうなります。
- 定義+データ:60〜70%
- 価値優先+評価基準:+18〜22%
- 合計:約80〜90%
ここまで来ると、議論は驚くほどスムーズになります。
「何が争点なのか」が明確になるからです。
それでも最後に残る前提(全体の約10〜20%)
最後に残るのが、定義でもデータでも価値整理でも消えない領域です。
- 不確実性そのもの(未来・外部環境)
- 不可逆な制約(時間・予算・やり直し不能性)
- 感情・納得・政治性
- 責任と覚悟(誰が引き受けるか)
ここは、AIにもロジックにも委ねられない。
「それでもやるか?」
という引き受けの問題だけが残る。
まとめ:前提を構成する割合(保存版)
最後に、全体像を一枚にします。
- 25〜30%:定義で消える
- 30〜40%:データで消える
- 18〜22%:価値の優先順位+評価基準で消える
- 10〜20%:最後まで残る(引き受けるしかない)
おわりに:AIの“正しい効き方”
AIは、正解を出す装置ではありません。
前提のうち、AIが解消できる8〜9割を徹底的に削り、
人が引き受けるべき1〜2割を露出させる装置です。
意思決定が難しいのは、情報が足りないからではない。
最後に残る前提が、いつも“人間の仕事”だからです。



