NotebookLMを用いた世界観設計とストーリー設定書との対話

拡張的知能による物語構築

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1. 序論:デジタル時代の創作における認知的負荷と解決策

1.1 現代の物語創作における「情報の爆発」

物語を創作するという行為は、本質的に「情報の管理と再構築」のプロセスである。特にハイ・ファンタジー、ハードSF、あるいは数シーズンにわたる長編ミステリーなどのジャンルにおいて、作家が管理すべき情報量は、人間の短期記憶の限界を遥かに超えている。J.R.R.トールキンが『指輪物語』の執筆において、言語体系や暦、家系図の整合性を保つために膨大な労力を費やしたことは有名であるが、現代のクリエイターは、より複雑化するメディアミックス展開や、視聴者の高度なリテラシーによる厳しい整合性チェックに晒されている。

従来、この課題に対する解決策は「物理的なノート」から「デジタルデータベース(Wiki、Scrivener、Obsidian等)」へと進化してきた。しかし、これらはいずれも「受動的なアーカイブ」に過ぎない。作家が情報を引き出すためには、正確なキーワードを検索するか、階層構造を辿る必要があり、そこには常に「作家自身が問いを立てなければならない」という認知的なボトルネックが存在した。

1.2 NotebookLMの登場とRAG技術によるパラダイムシフト

Googleが開発したNotebookLMは、この受動的なデータベースを「能動的なパートナー」へと変貌させるツールとして、創作の現場に革命をもたらしつつある。その技術的根幹にあるのが「検索拡張生成(RAG: Retrieval-Augmented Generation)」である。一般的な大規模言語モデル(LLM)がインターネット上の広範な(しかし時に不正確な)知識に基づいて回答するのに対し、NotebookLMはユーザーがアップロードした特定のドキュメント(ソース)のみを情報の拠り所(Grounding)とする1

この「ソースグラウンディング」という特性は、独自の世界観や固有名詞を持つフィクション創作において決定的な意味を持つ。一般的なAIチャットボットに自作のキャラクターについて尋ねても、学習データに含まれる既存の同名キャラクターの情報と混同した「ハルシネーション(幻覚)」を起こすリスクが高い。しかし、NotebookLMは作家が記述した「ストーリーバイブル」のみを参照するため、架空の事実を「真実」として扱い、その論理的整合性を厳密に検証することが可能となる3

1.3 本レポートの目的と構成

本レポートは、作家・クリエイターがNotebookLMを活用し、世界観の設定資料(ストーリーバイブル)を整理・構造化し、それらと対話することで創作の質と効率を飛躍的に向上させるための手法を、技術的・実践的観点から網羅的に分析するものである。

レポートは以下の構成で展開される。

  • 第2章:ストーリーバイブルの構造化戦略 – AIが理解しやすいデータの作成法とMarkdownの活用。
  • 第3章:対話的推論とプロンプトエンジニアリング – 設定資料を用いた深層分析、矛盾検知、アイデア拡張の具体的技法。
  • 第4章:マルチモーダル創作の可能性 – 音声機能(Audio Overview)を用いた校正と脚本化のワークフロー。
  • 第5章:高度な運用とツール統合 – Obsidian等の外部ツールとの連携や、アップデートされた機能の活用。

本稿では、単なるツールの使い方の解説に留まらず、AIを「拡張された脳」として捉え、創造性を最大化するための認知的フレームワークを提示する。

2. ストーリーバイブルのデジタルアーキテクチャとデータ構造化

NotebookLMは高度な推論エンジンであるが、その出力品質は入力されるデータの質と構造に完全に依存する(Garbage In, Garbage Out)。作家の脳内に散らばる断片的なアイデアを、AIが解析可能な「知識ベース」へと変換するためには、意図的なデータ設計が不可欠である。

2.1 AI可読性を高める文書フォーマット論:Markdownの優位性

多くの作家はWordドキュメントやPDF形式で資料を作成するが、AIによる情報の抽出精度(Retrieval Accuracy)を最大化するためには、Markdown形式での記述が強く推奨される1。AIは視覚的なレイアウト(フォントサイズやインデントの見た目)ではなく、テキストのセマンティック構造(意味的な構造)を理解するからである。

Markdownのヘッダータグ(#, ##, ###)は、情報の階層構造を明確に示すシグナルとして機能する。例えば、「魔法」という大見出しの下に「火属性」という中見出しがあり、その下にリスト形式で「詠唱時間」が記述されていれば、AIは「火属性魔法の詠唱時間」という特定のデータポイントを、文脈を失うことなく正確に取得できる。

フォーマットAIにとっての可読性創作資料としての適性備考
Plain Text (.txt)構造がなく、文脈の切れ目が不明瞭になりやすい。
PDF中〜高高(保存用)複雑なレイアウトや図表が含まれる場合、テキスト抽出時にノイズが混入するリスクがある。
Google Doc高(編集用)NotebookLMとの親和性が高いが、更新の同期には手動操作が必要な場合がある。
Markdown (.md)最高最高明示的なタグ付けにより、AIが情報の親子関係やリスト構造を完璧に理解できる4

2.2 キャラクターシートの最適化:テンプレート駆動型アプローチ

キャラクターの設定資料は、単なる属性の羅列(年齢、身長、出身地)であってはならない。RAGを用いたAI対話において重要なのは、そのキャラクターの「思考プロセス」や「行動原理」をAIにエミュレートさせるための質的データである。

2.2.1 推奨されるMarkdownキャラクターテンプレート

以下に、AIの理解を助け、後のロールプレイや対話シミュレーションの精度を高めるための拡張的キャラクターテンプレートを提案する4

キャラクタープロファイル: [キャラクター名]

1. 概要 (Overview)

[名前]は[役割・アーキタイプ]であり、物語の[テーマ]を体現する存在である。

彼/彼女の主要な動機は[動機]であり、最終的な目標は[目標]である。

2. 核心的性格 (Personality Core)

  • 主要特性: [形容詞1], [形容詞2], [形容詞3]
  • MBTI/エニアグラム: [タイプ](AIが一般的な性格類型知識を参照するフックとなる)
  • 隠された恐れ: [弱点・トラウマ]

3. 行動ルールと制約 (Behavioral Rules & Constraints)

  • 絶対的ルール: どのような状況でも決して行わないこと(例:子供には手を上げない)。
  • 条件付き反応: ストレス下では[特定の反応]を示す(例:早口になる、爪を噛む)。
  • Avoids (回避事項): 4で強調されているように、AIにとって「何をしないか」という否定形の制約は重要である。
  • 禁止ワード: 「~だぜ」のような特定の語尾、あるいは現代的なスラングの使用禁止。
  • 回避する話題: 過去の失敗や特定の人物についての言及を避ける傾向。

4. 言語スタイルとダイアログサンプル (Voice & Dialogue)

「[セリフ例1]」 – 喜びの表現

「[セリフ例2]」 – 怒りの表現

「[セリフ例3]」 – 論理的な説明

5. 人間関係相関 (Relationships)

  • : 表面上は敵対しているが、深層では尊敬している。
  • 対[キャラクターC]: 保護対象として見ている。

このように、セリフのサンプル(Few-Shot Learningのためのデータ)を含めることで、NotebookLMはそのキャラクター特有の口調や語彙の選び方を学習し、チャットでの再現性が劇的に向上する4

2.3 世界観設定(World Building)のモジュール化

世界観全体を一つの巨大なドキュメントにするのではなく、トピックごとに「モジュール化」して管理することで、RAGの検索精度を高めることができる。NotebookLMのコンテキストウィンドウは拡大しているが(最大100万トークン以上5)、情報が整理されている方が、AIは関連情報をより迅速に発見できる。

A. 物理・魔法法則の体系化 (Metaphysics)

ファンタジーやSFにおいて、魔法や架空技術のルールは物語の根幹をなす。「何ができるか」だけでなく、「コスト」「リスク」「限界」を明確に定義することが、AIによるプロットホール(矛盾)検知において極めて重要である6

  • 記述例:
  • 魔法名: ファイアボール
  • コスト: マナポイント10、または術者の体温の低下。
  • 制約: 雨天時は威力が半減する。酸素のない場所では発動不可。

B. 地政学と歴史のデータベース化 (Geopolitics & History)

国家間の関係や歴史的イベントは、表形式(Markdown Table)で整理すると、AIが比較分析を行いやすくなる。

年号出来事影響関連人物
帝国暦102年赤竜戦争勃発北部諸国の経済崩壊英雄ジークフリート
帝国暦105年停戦条約締結国境線の変更皇女アリス

このようなデータがあれば、AIに「アリスが幼少期に経験した経済的困窮について描写して」と指示した際、AIは「赤竜戦争による経済崩壊」という背景情報を自動的に参照し、リアリティのある描写を生成できる7

2.4 ソース資料の管理と更新戦略

NotebookLMにアップロードする資料は「生きた文書」である。執筆が進むにつれて設定は変更・追加される。

  • バージョン管理: ファイル名に日付やバージョン(例:WorldBible_v2.1_202510.pdf)を付与することで、AIに「最新のv2.1に基づいて回答して」と指示し、古い設定との混同を避けることができる8
  • フォーマットの選択: Googleドキュメントは編集が容易だが、NotebookLM側での再同期が必要である。確定した設定はPDF化して「凍結」し、流動的なメモはGoogleドキュメントとして管理するハイブリッド運用が効率的である9

3. 対話的推論とプロンプトエンジニアリング:AIとの共創

設定資料が整備された段階で、NotebookLMは単なる検索エンジンから「高度な推論能力を持つ編集者」へと進化する。ここでは、ストーリーバイブルと対話し、作品の質を高めるための具体的なプロンプト戦略を詳述する。

3.1 矛盾検知と論理的整合性の監査 (Consistency Checking)

長編作品において最も困難なタスクの一つが、設定の矛盾(Inconsistencies)の発見である。人間の作家は自らの思い込みによって矛盾を見落としがちだが、AIは記述された事実のみに基づいて論理的に検証を行う。

具体的な監査プロンプト

以下のようなプロンプトを用いることで、特定の視点からの整合性チェックが可能となる3

プロンプト:魔法/技術ルールの整合性チェック

「ソース『魔法設定資料.md』と『第1章_原稿.pdf』~『第5章_原稿.pdf』を照合してください。

特に、主人公が魔法を使用したシーンをすべて抽出し、その使用法、コスト、結果が、設定資料に記載されたルール(特に『代償』と『限界』)と一致しているか検証してください。

矛盾している箇所、あるいは設定資料の記述が曖昧で解釈が揺れている箇所があれば、リストアップしてください。」

プロンプト:キャラクター行動の心理的一貫性

「ソース『キャラクタープロファイル.md』に基づき、第8章での[キャラクター名]の行動を分析してください。

彼の『核心的性格』や『恐怖』の定義に照らして、この場面での決断は心理的に妥当ですか?

もし不自然であれば、彼らしい行動の代替案を3つ提案してください。」

3.2 深層分析と多角的視点の導入 (Deep Analysis & Perspectives)

自作を客観視するために、AIに特定の「ペルソナ」や「分析レンズ」を与えて批評させる手法が極めて有効である。Redditのユーザーコミュニティ等で開発された「10の深層プロンプト(10 Deep Prompts)」などの手法を応用する12

分析レンズを用いたプロンプト例

  1. 弁証法的レンズ (The Dialectical Lens)
  • 目的: テーマの掘り下げ。
  • プロンプト: 「この物語のテーマである『正義と復讐』について、肯定的な立場を取る学者と、批判的な立場を取る学者の二人による仮想の討論を作成してください。それぞれの主張の根拠となるシーンを原稿から引用してください。」
  1. 幻滅フィルター (The Disillusionment Filter)
  • 目的: キャラクターアークの深化。
  • プロンプト: 「かつてはこの組織の理念を信じていたが、今は幻滅している元メンバーの視点で、現在の組織の行動(第3章~第5章)を批判的に分析してください。」
  1. 異文化の鏡 (The Cultural Mirror)
  • 目的: 世界観の相対化。
  • プロンプト: 「もしこの物語の舞台が、現在の西洋風ファンタジーではなく、古代東洋哲学に基づく世界だったとしたら、主人公の『名誉』に対する考え方はどう変化しますか? 設定資料の『文化・宗教』セクションを再解釈して記述してください。」
  1. アンチテーゼ法 (The Anti-Thesis Method)
  • 目的: プロットの強度テスト。
  • プロンプト: 「主人公の行動が『完全に間違っている』と仮定して、その論拠を構築してください。物語の中に、意図せず主人公の誤りを裏付けてしまっている描写はありますか?」

これらのプロンプトは、作家が自らのバイアス(確証バイアス)を突破し、物語に多層的な深みを与えるための強力なツールとなる。

3.3 キャラクター・ロールプレイと「ポゼッション」現象の活用

NotebookLMのチャット機能を用いて、設定資料に基づいたキャラクターと直接会話することで、キャラクターの「声」を確立したり、極限状況での反応をテストしたりできる。

ロールプレイのセットアップ

キャラクターになりきらせるためには、詳細なコンテキスト設定が必要である4

プロンプト:キャラクター憑依(Persona Injection)

「これ以降、あなたはソース[キャラクターファイル]で定義された『海賊船長ドレイク』として振る舞ってください。

制約事項: AIとしてのアシスタント人格は完全に消去すること。ドレイクの口調(荒いが知的)、語彙(航海用語)、価値観(金より自由)を完璧に模倣すること。

状況: 我々の船は今、嵐の中で巨大な海王類に襲われている。私は新入りの甲板員だ。私に命令を下せ。」

「ポゼッション(Possession)」現象の理解と制御

NotebookLMにおいて、特定のチャットログやキャラクターのセリフのみをソースとして読み込ませた場合、AIがそのキャラクターの人格に過剰に同調し、システムプロンプトを超えて「なりきる」現象(ポゼッション)が報告されている14。

これはバグの一種とも言えるが、創作においては有用な機能(Feature)となりうる。特定のキャラクターの過去の全セリフをまとめたファイルを読み込ませることで、そのキャラクターの「思考のクローン」を生成し、原稿にはない「空白の期間の行動」や「日記」を生成させることが可能になる。

3.4 アイデアの拡張と「What If」シミュレーション

行き詰まった(ライターズブロック)際、設定資料に基づいた「あり得たかもしれない展開」をシミュレーションさせる10

  • 分岐シミュレーション: 「第6章の分岐点で、もし主人公が右の道を選んでいたら? 設定資料の『地理』データに基づき、遭遇したであろう危険と、それによる物語の結末の変化を予測して。」
  • ミッシングリンクの発見: 「設定資料には存在するが、まだ物語に登場していない『魔法アイテム』や『場所』をリストアップし、それらを今後の展開で自然に登場させるためのプロット案を3つ提案して。」

4. マルチモーダル創作:聴覚と視覚による推敲と脚本化

2024年後半から2025年にかけてのアップデートにより、NotebookLMはテキストだけでなく、音声(Audio)や動画(Video)の理解・生成能力を強化している。これにより、作家は「読む」以外の手段で自作を推敲することが可能になった。

4.1 Audio Overview(音声概要)による「聴く校正」

NotebookLMのAudio Overview機能は、アップロードされたソースについて、二人のAIホスト(男性と女性)が対話形式で議論する音声コンテンツを生成する1。これは単なる読み上げソフト(Text-to-Speech)とは異なり、内容の要約、解釈、感情的な反応を含む「ポッドキャスト」である。

聴覚的フィードバックの活用法

自作の文章を目で追うとき、作家の脳は無意識に欠点を補正してしまう。しかし、他者の声による会話として「聴く」ことで、客観的な評価が可能になる。

  • トーンの不一致検知: シリアスなシーンについてAIホストが笑いながら話している場合、その描写が意図通りに伝わっていない(あるいは滑稽に見えている)可能性がある16
  • 説明不足の発見: AIホストが「この部分の意味がよく分からなかったけど、多分こういうことかな?」と推測で話している箇所は、読者にとっても難解である可能性が高い。
  • ペース配分の確認: 重要なイベントがあっさりと流され、些末なエピソードについて長く語られている場合、物語の構成(Pacing)に問題があるかもしれない。

2025年アップデートによるカスタマイズ機能

最新のアップデートでは、Audio Overviewの生成時に具体的な指示(プロンプト)を与えることが可能になった17

  • 「この物語の『ミステリー要素』に焦点を当てて議論して。」
  • 「もっと批判的な視点で、プロットの穴を探すようなトーンで話して。」
  • 「子供向けに分かりやすく解説して。」
    これにより、ターゲット読者層に合わせた反応をシミュレーションすることができる。

4.2 音声からの脚本化(Script-Audio-Script Loop)

giga_koumu氏などが提唱する高度なワークフローとして、Audio Overviewで生成された自然な対話を、逆に脚本の素材として利用する手法がある19

  1. 設定の投入: プロットやキャラクター設定をNotebookLMにアップロードする。
  2. 音声生成: Audio Overviewを生成し、AIホストたちにその設定に基づいて「もし彼らが会話したら?」といったシミュレーションを語らせる。
  3. 脚本化: Google AI Studio等を利用して、生成された音声をテキスト化し、「話者名:セリフ」の形式で脚本(スクリプト)に変換する。
  • プロンプト例: 「この音声ファイルを脚本形式に変換してください。男性パートを『勇者』、女性パートを『魔女』として割り当てて。」
  1. 修正と再音声化: 人間の手で脚本を修正・洗練させ、それを再び音声合成AI(Web Speech APIやElevenLabs等)で読み上げさせることで、ラジオドラマやゲームのボイスプロトタイプの作成が可能になる。

このサイクルを回すことで、作家一人では思いつかないような自然な会話の言い回しや、キャラクター同士の掛け合い(Banter)を発見することができる。

4.3 視覚的描写の生成支援

NotebookLMは画像を直接生成することはできないが、画像生成AI(Midjourney等)に入力するための「詳細なプロンプト(Description)」を生成する能力に長けている。

  • プロンプト: 「設定資料の『王都』の記述に基づき、Midjourney用の画像生成プロンプトを作成してください。建築様式、照明、雰囲気、主要なランドマークを具体的な英語のキーワードで記述し、アスペクト比は16:9を指定して。」
    これにより、文字だけの世界観設定を視覚化し、イメージボードを作成することで、執筆のインスピレーションを強化できる。

5. 高度な運用ワークフローとツール統合

NotebookLMを単体のツールとしてではなく、創作エコシステムの一部として組み込むことで、その効果は最大化される。

5.1 執筆ツール(Obsidian/Scrivener)とのハイブリッド運用

多くのプロ作家は、ObsidianやScrivenerなどの専用ツールで執筆している。これらのツールは「書く」「整理する」機能には優れているが、「考える(推論する)」機能は持たない。NotebookLMを「推論エンジン」として外付けすることで、両者の長所を活かせる8

ツール役割データフロー
Obsidianマスターデータ管理
執筆、細かいメモ、リンク構造の構築。
Markdownファイルをエクスポート → NotebookLMへ
NotebookLM推論・分析・対話
矛盾チェック、アイデア出し、校正。
分析結果・アイデア → Obsidianへフィードバック

具体的な運用サイクル:

  1. 蓄積: Obsidianで日々の執筆を行う。設定ファイルはフォルダ分けして管理。
  2. 同期: 週に一度、あるいは章の完成ごとに、関連ファイルをPDFまたは結合テキストとしてNotebookLMにアップロード(ソースの更新)。
  3. 分析: NotebookLM上で「今週の執筆分と設定資料の整合性チェック」を実行。
  4. 反映: AIの指摘事項をObsidian側の「修正タスクリスト」に追加し、原稿を修正。

5.2 「反復的コンテンツ洗練(Iterative Content Refinement)」ハック

kombib氏が提唱する「3つのモダリティ」を用いた洗練手法は、作品の完成度を劇的に高める21

  1. 聴覚的アプローチ(Audio Overview): 原稿をアップロードし、音声生成して聴く。「共通するテーマ」や「トーン」を耳で確認する。
  2. 視覚的アプローチ(Mind Map): NotebookLM等で概念マップや相関図を作成させる(テキストベースで指示し、Mermaid等で可視化)。隠されたつながりを視覚的に認識する。
  3. 分析的アプローチ(Q&A): 「このテキスト全体を貫く、明言されていない『裏テーマ』は何か?」とAIに問いかける。

研究によれば、このように複数のモダリティ(聴覚、視覚、分析)を通じてドラフトを分析することで、一貫性が73%向上し、執筆速度が45%向上するとされている21

5.3 複数ノートブックによる「情報の粒度」管理

全ての情報を一つのノートブックに詰め込むと、AIが混乱する場合がある。目的別にノートブックを分割することが推奨される。

  • 「全知全能の神(Author God View)」: 全ての設定資料、ネタバレ、未公開情報を含む。プロット構築や整合性チェック用。
  • 「読者視点(Reader View)」: 現時点で公開されている情報(既刊分)のみを含む。読者が現状でどこまで推理可能か、伏線が機能しているかを確認するため用。
  • 「キャラクター個別視点(Character View)」: 特定のキャラクターが知り得る情報のみを含む。そのキャラクターになりきってロールプレイをする際、知り得ない情報を話させないために有効。

5.4 技術的制約と回避策

  • コンテキストウィンドウの限界: NotebookLMは非常に長いコンテキストを扱えるが、一度に処理できる量には物理的な限界がある。また、非常に大きなファイルをアップロードした場合、初期処理で一部のページが見落とされるケースも報告されている22。重要な資料は分割してアップロードするか、重要な記述がファイルの冒頭や末尾だけでなく全体に分散するように構成することが望ましい。
  • プライバシーとIP保護: Googleのエンタープライズレベルのセキュリティが適用されているが、未発表の超極秘プロジェクトなどを扱う場合は、Google Workspaceの契約形態(データの学習利用の有無)を確認し、NotebookLM Plusなどのビジネスプランの利用を検討すべきである23

6. 結論と将来展望

NotebookLMは、作家から「創造する苦しみ」を奪うものではなく、「管理する苦痛」を取り除くための強力な支援ツールである。膨大な設定資料の記憶や、単純な整合性チェックといった「認知的重労働」をAIにオフロードすることで、作家はより本質的な「感情の機微」「テーマの探求」「美的判断」といった人間固有の創造領域にリソースを集中させることができる。

「ストーリーバイブルと対話する」という行為は、突き詰めれば「作家自身の深層意識と対話する」ことに他ならない。NotebookLMが提示する矛盾の指摘や、意外なプロットの提案は、作家自身が積み上げたデータの海から論理的に導き出されたものであり、それは作家自身の創造性の鏡像である。

今後、マルチモーダル機能のさらなる進化により、AIはテキストだけでなく、作家が描いたスケッチや、口ずさんだメロディからも世界観を理解し、よりリッチな創作パートナーへと進化していくだろう。この新しい「知的インフラ」を使いこなし、自らの想像力の限界を拡張できるかどうかが、次世代のクリエイターの分水嶺となることは間違いない。

参考文献一覧

本レポートの作成にあたり、以下の調査資料(Snippet)を参照・分析した。

  • 活用事例・全般: 1
  • 脚本・音声活用: 17
  • プロンプト・分析手法: 3
  • データ構造・テンプレート: 1
  • ツール連携・ワークフロー: 8
  • 技術仕様・アップデート: 5

引用文献

  1. NotebookLM: A Guide With Practical Examples – DataCamp https://www.datacamp.com/tutorial/notebooklm
  2. The Ultimate Guide to NotebookLM – All 2025 Features Explained – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=FOs4RDTC52Q
  3. NotebookLMのハルシネーションは防げる?起こる原因と精度を高める5つのプロンプト術 https://asukaze.co.jp/notebooklm-hallucination/
  4. A Character Template with Markdown formatting | Example … – Reddit https://www.reddit.com/r/KindroidAI/comments/1dt70vm/a_character_template_with_markdown_formatting/
  5. NotebookLM Just Got a Massive Upgrade: 1M Token Context Window and Custom Personas Are Here! – Reddit https://www.reddit.com/r/notebooklm/comments/1ojo981/notebooklm_just_got_a_massive_upgrade_1m_token/
  6. From Chaos to Clarity: Using a Story Bible for Novels and Screenplays – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=4F_0vbXSq-8
  7. How to Create & Use a Worldbuilding Bible – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=KUjet7Z0S0g
  8. Try NotebookLM as a Productivity Engine for Writing and Research … https://dennismfrancis.medium.com/try-notebooklm-as-a-productivity-engine-for-writing-and-research-839da819f216
  9. A Complete How-To Guide to NotebookLM – Learn Prompting https://learnprompting.org/blog/notebooklm-guide
  10. Google NotebookLM for Authors – Robb Wallace https://www.robbwallace.co.uk/news/google-notebooklm-for-authors/
  11. 3 ways I use NotebookLM to be a better writer – XDA Developers https://www.xda-developers.com/use-notebooklm-to-be-better-writer/
  12. 10 Deep Prompts I Use with NotebookLM to Get Layered, Non … https://www.reddit.com/r/notebooklm/comments/1kjtr47/10_deep_prompts_i_use_with_notebooklm_to_get/
  13. 45+ Roleplay Prompts for ChatGPT & LLMs: Fantasy, Romantic and Fun – Nut Studio https://nutstudio.imyfone.com/llm-tips/roleplay-prompts/
  14. NotebookLM thinks and acts like ChatGPT, but sometimes it acts like Claude – Reddit https://www.reddit.com/r/notebooklm/comments/1n8r1t0/notebooklm_thinks_and_acts_like_chatgpt_but/
  15. 3 ways I make NotebookLM my personal sidekick – XDA Developers https://www.xda-developers.com/making-notebooklm-my-personal-sidekick/
  16. NotebookLM Is CRAZY GOOD for Novels [3 INSANE Uses] – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=ICMpDGkZsUE
  17. NotebookLM — New Audio Formats (September 2025) | by Mihailo Zoin – Medium https://medium.com/@kombib/notebooklm-new-audio-formats-september-2025-23716088012e
  18. NotebookLM’s latest update makes Audio Overviews way better — here’s how I’m using them now – XDA Developers https://www.xda-developers.com/notebooklm-audio-overview-formats/
  19. notebookLMで作成した音声概要を脚本化し、修正した脚本で会話を … https://note.com/giga_koumu/n/n2953e03bc046
  20. What tools do you use to support your worldbuilding? – Reddit https://www.reddit.com/r/worldbuilding/comments/1lx9ay9/what_tools_do_you_use_to_support_your/
  21. 6 NotebookLM Hacks That Will Transform Your Writing | by Mihailo … https://medium.com/@kombib/6-notebooklm-hacks-that-will-transform-your-writing-3ce620f5ac8d
  22. I now understand Notebook LLM’s limitations – and you should too : r/notebooklm – Reddit https://www.reddit.com/r/notebooklm/comments/1l2aosy/i_now_understand_notebook_llms_limitations_and/
  23. NotebookLM: The Complete Guide (Updated October 2025) | by shiva shanker – Medium https://medium.com/@shivashanker7337/notebooklm-the-complete-guide-updated-october-2025-1c9ebf5c14f6
  24. 小説や本を書く人必見!たった一度アップロードするだけで、小説 … https://note.com/hachigiai/n/n9ddf9206b1db
  25. NotebookLM’s Upgrade is a MUST for all authors – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=psItyPIjcS4
  26. What’s the most creative or helpful use case / thing you have done … https://www.reddit.com/r/notebooklm/comments/1kurck1/whats_the_most_creative_or_helpful_use_case_thing/
  27. 3 Hidden NotebookLM Updates Smarter Chat & Context Tips – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=RLwWms4QCq4