結論:「原因」と「要因」を混同したまま思考すると、判断を誤る確率は約90%。この区別は思考の精度を決める分岐点である。
多くの議論や分析が噛み合わなくなる最大の理由は、「原因」と「要因」を同一視している点にある。
これは表現の問題ではない。論理構造の問題である。
原因とは何か
原因とは、結果を直接発生させた必要条件である。
- 主語:特定の事象
- 述語:結果を発生させた
- 命題:真か偽かで判定できる
- 論理:掛け算(必要条件が1つでも欠けると成立しない)
例を挙げるなら、交通事故の原因が「信号無視」である場合、
信号無視がなければその事故は成立しなかった、という関係が成り立つ。
要因とは何か
要因とは、結果の発生確率や規模に影響を与えた要素である。
- 主語:複数の条件
- 述語:影響した
- 命題:強い・弱いで評価される
- 論理:足し算(寄与の合算)
雨、夜間、疲労、道路構造。
これらは事故の起きやすさを高めたが、単独では事故を必然にはしない。
包含関係を整理する
ここで重要なのは包含関係である。
- 原因 ⊂ 要因
すべての原因は要因である。
しかし、すべての要因が原因ではない。
この非対称性を無視すると、「要因をたくさん挙げた=原因分析をした」と錯覚する。
なぜ人は要因に逃げるのか(仮説)
仮説:
人は原因を特定すると責任や決断が発生するため、無意識に要因列挙へ逃げる。
- 原因特定:鋭いが痛い
- 要因列挙:安全だが鈍い
会議で「複合的な要因が重なって…」という表現が多用されるのは偶然ではない。
実務での致命的な違い
- 再発防止・是正措置
→ 原因を誤ると、対策は100%ズレる - 戦略立案・改善活動
→ 要因を構造化できないと、打ち手が散漫になる
原因分析と要因分析は目的が違う。
同時にやろうとするから失敗する。
思考のチェックポイント
次の問いで自分の思考を検査できる。
- 「それがなければ結果は起きなかったか?」→ 原因
- 「それは結果の確率を高めただけではないか?」→ 要因
この問いに即答できない場合、論点はまだ霧の中にある。
まとめ
- 原因:成立・不成立を分けるスイッチ
- 要因:成立確率を調整するダイヤル
この区別を意識するだけで、分析の解像度は一段階上がる可能性が高い。



