ポテト三振ガール、言語化で覚醒する

高校一年の美咲は、
ハンバーガーショップで“伝説”になっていた。

もちろん悪い意味で。

「ポテトの塩、またノーコンです!」
「揚げ時間、今日もバラバラです!」

キッチンからの悲鳴が、
バイトのたびに聞こえる。

美咲は泣きそうだった。

(なんで私、ポテトで毎回エラー出すの!?
 野球部じゃないんだから!)

先輩は優しいが、
毎回フォローするのも大変らしい。


そんなある日。
閉店後の店内に、店長が現れた。

「美咲、ちょっと来い」

怒られると思ってビクッとしたが、
店長は意外にも真剣な顔をしていた。

「お前、メモ帳持ってるか?」

「え、ポテトの反省文ですか?」

「違うわ。
 お前が“何してるか”を書けって意味だよ」

店長は腕を組み、こう続けた。

「頭の中にある“なんとなく”が原因なんだよ。
 全部、言葉にして出せば、ミスは減る」

美咲はぽかんとした。

(ポテトの呪い、原因そこ!?)


家に帰ると、美咲はノートを開いた。
そして、さっそく書き出した。

・ポテトをザザッと入れる
・タイマーをピッと押す
・揚がったらフリフリする
・塩をテキトーにふる
・袋にドサッと入れる

書いた瞬間、美咲は固まった。

(……テキトー!?
 私、こんなアバウトに生きてたの!?)

自分の行動が丸裸になり、
ちょっと泣きそうになった。

しかし、そのおかげで、
何が崩壊の元凶なのかがハッキリした。


翌日。

美咲はノートをポケットに入れて出勤した。

塩をふる前に、心の中で唱える。

(3回! 3回! 絶対3回!!)

タイマーも確認する。
バスケットも丁寧に振る。

結果——
ミスが激減した。

「美咲ちゃん、今日どうしたの?
 急にプロになった?」

先輩が驚いていた。

美咲は得意げに言った。

「言語化したので!」

「げ、言語化?」

「はい! 脳内に“観測可能モード”が搭載されました!」

先輩はよくわかってない顔で頷いた。


数週間後。

美咲は新人バイトの指導を任された。

新人のりんかちゃんは、
昔の美咲を彷彿とさせる“ふわふわ系”。

「塩って……なんとなくですよね?」

「なんとなくは地獄を生むよ」

美咲はドヤ顔で、ノートを差し出した。

「これ、美咲式ポテト完全攻略ノート」

りんかちゃんは感動し、
「これ宝物にします!」と抱きしめた。

美咲は照れた。

(言葉にした基準って、
 なんか……伝説のアイテムっぽいな)


さらに数ヶ月後。

ミスが減ったおかげで、
美咲は勤務時間に余裕ができた。

そしてお金を貯め、
気になっていたコスメや服も買えるようになった。

バイトも学校も、なんだかうまく回る。

美咲は思う。

(私の人生、言語化で強化された……?
 いや、絶対された!!!)

ちなみに、店長は今でも言う。

「美咲、お前は“ポテト三振ガール”から
 “誤差ゼロの女”になったな」

美咲は胸を張る。

「はい! 私、アップデートされましたので!!」

その日も、店内には塩を3回ふる音が軽やかに響いていた。