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ハンロンの剃刀(Hanlon’s razor)
ハンロンの剃刀とは、「悪意で説明する前に、まず凡ミス・誤解・不注意を疑え」という経験則(ヒューリスティック)を指す言葉です。 日常の人間関係から組織運営、社会...
「悪意を前提にする分析」をやめると、企業理解の精度が上がる。
なぜなら、上場企業の問題の90%は、
悪意ではなく“構造的な問題・凡ミス・組織の習性”で説明できるから。
これは、
- インセンティブ設計
- 情報共有の弱さ
- 人手不足
- 古い仕組みのまま運用
- 現場と経営の齟齬
…といった「普通の原因」で十分説明できる。
◆ 投資家が犯しやすい“悪意仮説”
①「この会社は故意に情報を隠している」
実際:
- 担当者が情報整理できていない
- 文章力不足
- 部門横断の承認プロセスが遅い
- 「何を開示すべきか」の判断基準が曖昧
→ これだけで説明できるケースがほとんど。
②「決算が弱かったのは、経営が無能だから」
実際:
- 原材料価格の時差
- 投資フェーズ特有の利益圧迫
- 需要予測の外れ
- 部門間の連携不足
→ 無能よりも「外生要因+凡ミス」の方が頻度が高い。
③「新規事業が失敗したのは、悪意ある社内政治の結果だ」
実際:
- 想定市場が小さかった
- 技術が間に合わなかった
- 営業部門がモデルを理解していない
→ シンプルな原因の積み重ね。
◆ 投資での“正しい使い方”
1. まず悪意ではなく「構造」を疑う(確率 95%の正解ステップ)
例:粉飾では?
→ 内部統制の弱さ、監査法人との緊張感不足、KPI文化の欠如
こうした「凡庸な組織の弱点」で説明できるなら、それが第一仮説。
2. 説明変数を少なくしてビジネスモデルを読む
- 経営層の質
- コスト構造
- 市場構造(寡占 / 競争過多)
- 固定費比率
- プロダクトの強さ
これだけで決算の8割は説明できる。
複雑な陰謀シナリオを持ち込む必要はほぼない。
3. 悪意が必要な説明は“最終手段”
つまり、
- 二重帳簿
- 架空売上
- 意図的リーク
のような「意図的に手間がかかる行為」は確率が低い。
◆ ハンロンの剃刀が“特に強力に働く”領域
● ① ガバナンス問題
- 意図的な隠蔽より「制度疲労」「人材不足」が本命
● ② 成長鈍化の原因分析
- “やる気がない” より
“市場の天井”や“組織能力の限界”
● ③ 業績悪化の読み解き
- 不正より「顧客ロス」「コスト増」「予算管理の弱さ」
● ④ 株価暴落の解釈
- 陰謀ではなく「需給」「アルゴ」「外国人売り」
◆ 投資での“誤った悪意仮説”を避けると何が変わるか
✔ 分析のブレが減る(安定したモデルになる)
✔ ビジネスモデルとKPIの理解に集中できる
✔ 企業を感情ではなく“確率”で読める
✔ 情報ノイズを削り、意思決定がシンプルに
✔ 経営者のメッセージを冷静に評価できる
結果として、
再現性のある投資判断を作れる。
◆ まとめ(最重要ポイント)
- 上場企業は「悪意を持って動く」より「構造的にミスる」確率が圧倒的に高い
- だから、
まずミスと構造を疑う → 説明できなければ悪意仮説へ - これは投資家の認知の歪み(悪意推定バイアス)を矯正し、
より正確な企業分析につながる



