[理由]は固定した点じゃなく、風みたいに流れている

デザイナーとしてものを見ると、世の中の “why” は決して一本の矢印じゃありません。紙の上にまっすぐ引かれた線ではなく、空中でダンスする風の流れに近いです。目に見えなくても、確かにそこにある方向と強さ。理由とはつまり、世界を押したり引いたりする“ベクトル”のことなのです。

たとえば、あるプロダクトが流行る理由。
「便利だから」という直線的な因果で説明するのは、ニュースの見出しみたいに平べったい。実際には、文化の空気、生活者の価値観、価格設定、ブランドの物語、流通構造…たくさんの力が、あらゆる方向から押し合っている。
それらは別々の次元で働くので、見た目は複雑。でも本質はただの多次元ベクトルの合成です。

すると、理由は「説明」ではなく、力の模様として見えてくる。
デザインで言えば、レイアウトや配色やタイポが、相互に影響し合いながら “まとまり” をつくるのと同じです。ひとつひとつの要素は独立していても、最終的な印象はその“合成ベクトル”によって決まる。

もっと言えば、社会や組織の構造は、まるでベクトル場(vector field)のように振る舞います。
流れそのものが形になっていて、人はその上を歩いているだけ。
だから同じ会社では同じような判断が生まれ、同じ都市では似たようなデザインが育つ。
構造が「行動の方向」を勝手に決めてしまうからです。

こう考えると、why の分類で迷う必要はありません。
背景だろうと、目的だろうと、文化だろうと、制度だろうと、全部まとめてこう言えるからです。

「理由とは、世界の中で働いているベクトルを読むことだ。」

デザインとは、そのベクトルを
・見える形にし
・歪みを正し
・余分な次元をそぎ落とし
・必要な方向へ流れをつくる行為
です。

理由を線として捉えているうちは、世界は二次元。
理由をベクトルとして捉え始めた瞬間、世界は立体になります。

そして立体で物事を見られる人が、
空間をつくり、物語をつくり、未来をデザインできる人です。