電通グループのビジネスモデル

電通グループ 2025年 ビジネスモデル分析: 収益性回復、AIネイティブ化、そしてコンサルティングファームとの全面競合

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I. 2025年:新中期経営計画(2025-2027)始動と「収益性回復」へのピボット

2025年の電通グループのビジネスモデルを分析する上で、この年が単なる継続ではなく、根本的な戦略的「転換点」の初年度であることを理解することが不可欠である。2025年2月14日に発表された新「中期経営計画(2025-2027)」(以下、新中計)は、過去の戦略、特にM&Aを通じた急速な事業拡大が、必ずしも持続的な収益性に結びつかなかったという厳しい現実認識の上に構築されている 1

したがって、2025年の電通のビジネスモデルは「成長」よりも「立て直し(Rebuilding)」という言葉によって最もよく定義される。新中計の初年度である2025年は、喫緊の課題として特定された「不振ビジネスの見直し」と「経営基盤の再構築」に焦点を当てた年と位置づけられている 3

海外事業の「病巣」:2025年の最重要課題

新中計が最優先で取り組むべき「喫緊の課題」は、海外事業(米州、EMEA、APAC(日本を除く))における「収益性・競争優位性の回復」であると明確に特定されている 3。2025年7月に発行された「統合レポート2025」のCFOメッセージにおいても、2025年度は「海外事業を中心に『収益性の回復』に注力」する年であり、本格的な成長軌道への復帰は2027年度を目標としていることが確認されている 4

この背景には、電通グループの収益構造の深刻な不均衡がある。日本事業(グループ収益の約40%)は一貫して高い収益性(20%台半ばのマージン)を維持する「要塞」として機能している一方で、海外事業(同約60%)は、その規模にもかかわらず、マージンが低く(10%台後半)、近年はマイナス成長に陥っているリージョンも存在するなど、グループ全体の収益性を圧迫する要因となっている 5

この結果、2025年の電通のビジネスモデルは、単一のものとして語ることはできない。それは、「高収益な日本市場(Japan Fortress)」と「大規模なリストラクチャリング下にある海外市場(International Turnaround)」という、ミッションも収益構造も全く異なる、二つの異なるモデルの集合体として機能している。

過去のM&A戦略の「失敗」の清算

新中計の策定にあたり、電通グループ自身が過去の戦略の「失敗」を明確に認めている点は注目に値する。資料では「M&A偏重の成長戦略により、海外事業の収益性・競争優位性が毀損した」と分析されている 1

さらに重要なのは、そのM&A戦略の「内容」である。同資料は、「カスタマー・トランスフォーメーション&テクノロジー(CT&T)領域への傾注」が、結果として電通の伝統的な強みであった「メディア/クリエイティブのケイパビリティ強化不足」を招いたと自己分析している 1

これは、アクセンチュアやデロイトといったITコンサルティングファームに対抗するため、テクノロジーとデータ領域(その中核は2016年に買収したMerkle(マークル))にリソースを集中しすぎた結果、本来の収益源であったメディアおよびクリエイティブ事業との連携が希薄化し、海外事業全体の収益力を弱めてしまったことを示唆している。

したがって、2025年のビジネスモデルは、この「CT&T偏重」からの「揺り戻し」を反映している。海外事業においては、高成長だが競争の激しいCT&T単体での勝負から撤退し、「コアとなるメディア事業とその付加価値を高めるケイパビリティに注力」するという、より現実的かつ収益性重視の戦略へと舵が切られた 1。2025年は、この新しい経営基盤を再構築するための「仕込み」の年である。

[表1:中期経営計画(2025-2027)主要財務目標]

指標2025年の戦略的焦点2027年(最終年)の目標値典拠
オーガニック成長収益性の回復、経営基盤の再構築4%1
オペレーティング・マージン不振ビジネスの見直し16-17%1
ROE(株主資本利益率)海外事業の競争優位性の回復10%台の中盤1
単年営業キャッシュ・フロー1,400億円1

出典:電通グループ「中期経営計画 2025-2027」資料より作成 1

II. 中核ビジネスモデル:「統合グロースソリューション(IGS)」の解体新書

2025年の電通グループがクライアントに提供する中核的な価値は、「統合グロースソリューション(Integrated Growth Solutions: IGS)」というパッケージに集約されている。これは、電通が自らを単なる広告代理店ではなく、クライアントの事業成長全体にコミットする「統合的成長パートナー(Integrated Growth Partner)」として再定義するための戦略的フレームワークである 6

IGSの4領域:コンサルティングファームへの対抗軸

IGSは、クライアントが直面する課題を4つの変革領域(AX、BX、CX、DX)に分類し、それぞれにソリューションを提供するものです 6

  1. AX (Advertising Transformation): 広告パフォーマンスの最大化。メディアとプラットフォームの進化に対応し、クリエイティビティと運用ノウハウを駆使する、電通の伝統的な中核領域。
  2. BX (Business Transformation): 事業変革。既存事業の変革支援、新規事業の創造、社内改革の支援を通じ、クライアントのトップライン(売上)成長にコミットする領域。
  3. CX (Customer Experience Transformation): 顧客体験変革。データとクリエイティビティを融合させ、最適な顧客体験(カスタマージャーニー)を設計・実行し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指す領域。
  4. DX (Digital Transformation): デジタルトランスフォーメーション。AX、BX、CXの各変革を支えるための、マーケティング基盤(インフラ)自体の変革を主導する領域。

この「4つのX」というフレームワークは、電通が従来の「広告」という枠組みから脱却し、アクセンチュアやデロイトといった大手ITコンサルティングファームが主戦場とする「トランスフォーメーション・パートナー」という土俵で戦うための、意図的な戦略的リポジショニングである。

高成長エンジン「CT&T」セグメントの実態

このIGS、特にコンサルティング領域と重なるBX、CX、DXを牽引してきたのが、電通グループが高成長領域と位置づけてきた「CT&T(カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー)」セグメントである 1

新中計の資料における「用語の定義」によれば、CT&Tは「マーケティング・テクノロジー、カスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM)、コマース、システム・インテグレーション(SI)、トランスフォーメーション&グロース戦略」といった、テクノロジーとコンサルティングが融合した事業群で構成されている 1

このCT&Tセグメントにおいて重要な役割を担っているのが、グループ会社の電通総研(DENTSU SOKEN INC.)である。電通総研は「準大手のSIer」と位置づけられ、業界トップクラスの高い利益率(14.4%)を誇る優良事業体である 7。2025年12月期の第3四半期累計決算においても、電通総研は好調を維持しており、営業利益は前年同期比で+12.5%の増益を達成している 8。この成長は、特に「コミュニケーションIT」セグメント(売上高+21.3%、営業利益+59.4%)によって牽引されており、グループ全体のCT&Tケイパビリティの基盤を形成している 8

このCT&Tセグメントの定義 1 と、電通が2016年に大型買収したデータマーケティング企業「Merkle(マークル)」のケイパビリティ(「データ、アナリティクス、コマース、テクノロジー」 9)を比較検討すると、両者がほぼ同一の領域を指していることがわかる。

つまり、電通グループのビジネスモデルにおいて、「CT&T」は事業セグメントの公式な呼称であり、「Merkle」はその中核、特に海外事業における実働アセットを意味している。セクションIで触れた「CT&Tへの傾注がメディア/クリエイティブの強化不足を招いた」 1 という経営上の反省は、実質的に「Merkle主導のM&Aと事業展開にリソースを集中しすぎた」ことの経営陣による自己評価に他ならない。


IGS領域定義(クライアントへの提供価値)関連するCT&T/Merkleのケイパビリティ典拠
AX (Advertising Transformation)広告パフォーマンスの最大化、メディアプランニングと実行(伝統的領域)+ Merkleのデータ(Merkury)を活用したメディアの付加価値向上1
BX (Business Transformation)新規事業創造、既存事業の変革支援トランスフォーメーション&グロース戦略、コマース戦略1
CX (Customer Experience Transformation)顧客体験価値の最大化、CRM、ロイヤルティ戦略カスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM)、データ&アナリティクス1
DX (Digital Transformation)マーケティング基盤(インフラ)の変革マーケティング・テクノロジー、システム・インテグレーション(SI)、コマース基盤構築1

出典:電通グループおよび電通総研の公開資料に基づき作成 1

III. Merkle(マークル)の戦略的統合と「Merkury」プラットフォームの価値

2016年の買収以来、Merkleは電通のテクノロジー戦略の中核であり、対コンサルティングファーム戦略の「切り札」であった。しかし同時に、そのM&A戦略が海外事業不振の遠因ともなった。2025年のビジネスモデルにおいて、この「諸刃の剣」であるMerkleがどのように再統合され、活用されようとしているのかは、新中計の成否を占う上で極めて重要である。

Merkle:「最高の資産」と「IR上の不在」というパラドックス

外部アナリストは、Merkleを電通の国際事業における「宝石(gem)」と評し、その技術力は「どのホールディングカンパニー(競合他社)にも劣らない」と高く評価している 10。Merkleは、Publicis Groupeが保有するEpsilonや、Omnicomが保有するAcxiomに対抗しうる、唯一無二のデータ、アナリティクス、コマース、テクノロジーのケイパビリティを電通にもたらした 9

しかし、ここに重大なパラドックスが存在する。外部からは「宝石」と見なされているにもかかわらず、電通グループ自身の「統合レポート2025」やIRライブラリを対象とした調査では、**Merkleの具体的な「統合成果」や「M&A戦略」に関する詳細な記述が「利用不可能(unavailable)」または「明示的に言及されていない」**という結果が示されている 4

この「意図的な不可視性」は、セクションIで述べた経営の反省点を裏付けるものである。Merkleの買収自体とそれに続く一連の大型M&Aが、新中計で公式に認められた「M&A偏重」による「収益性毀損」1 の主要因であった可能性が高い。そのため、2025年の投資家向け公式レポートにおいて、その「統合成果」を積極的にアピールすることができず、むしろ意図的に言及を避けているという、電通の苦しい経営判断が透けて見える。

2025年の「解」:Merkury for Mediaによるバンドル戦略

では、2025年のビジネスモデルにおけるMerkleの真の役割は何なのか。それは、セクションIで述べた「揺り戻し」戦略、すなわち「コアとなるメディア事業の付加価値向上1 にある。

新中計の資料において、Merkleの関連技術として唯一具体的に言及されているのが、US(米国)市場で先行導入される「Merkury for Media」である 1。これは、Merkleの強力なデータプラットフォーム「Merkury」9 を、電通の伝統的なメディアエージェンシー(Carat、iProspectなど 9)のメディアプランニングと実行プロセスに深く組み込むことを意味する。

結論として、2025年の電通(特に海外事業)のビジネスモデルは、CT&T(Merkle)をコンサルティングファームと競合しながら単体で販売することではない。そうではなく、「メディア(広告枠)」と「データ/テクノロジー(Merkle)」を切り離して売るのではなく、「Merkury for Media」によって強制的にバンドル(抱き合わせ)し、コモディティ化しつつあるメディアバイイングの利益率を防衛・向上させる戦略へと転換した。2025年は、この新しい「防衛的統合」モデルを軌道に乗せるための正念場の年である。

IV. AIネイティブ化戦略:「AI For Growth 2.0」がもたらすバリューチェーン変革

2025年の電通のビジネスモデルには、「防衛」の海外事業とは対照的な、「攻撃」の側面も存在する。それが、日本事業が主導する最先端のAI戦略である。2025年5月19日、国内電通グループ(電通総研、電通、電通デジタルなど)は、独自のAI戦略「AI For Growth 2.0」を発表した 12

この戦略の核心は、単なる「AIの利活用」による業務効率化 13 に留まらない。それは、マーケティングの全工程(バリューチェーン)をAIエージェントが自律的にサポートする「AIネイティブ化」を実現し、電通のサービス提供プロセス自体を根本的に変革することを目指している 12

電通の「AIの堀(Moat)」:独自の専有アセット

汎用的な大規模言語モデル(LLM)を導入するだけでは、アクセンチュアや博報堂といった競合他社に対する持続的な競争優位性(Moat=堀)にはならない。「AI For Growth 2.0」の真の独自性は、電通グループが長年蓄積してきた**2つの「専有アセット」**をAIの学習基盤としている点にある。

  1. 「People Model」(ピープルモデル)
  • 基盤アセット: 電通が独自に構築・保有する「大規模調査データ(約15万人、約30業種)」という専有データ 12
  • 提供価値: この専有データをLLMでファインチューニングすることにより、「1億人規模の高解像度なAIペルソナ」を仮想空間に再現する。これにより、従来は数週間を要していた大規模なアンケート調査やマーケットシミュレーションを「高速」かつ「低コスト」で実行可能にする。これは、マーケティングの意思決定プロセスを根本から覆す可能性を秘めており、この独自のアンケートシステムは特許出願中である 12
  1. 「Creative Thinking Model」(創造的思考モデル)
  • 基盤アセット: 電通の社内の専門人財(トップクリエイター)の「知見、アイデア、思考法」という専有知見(暗黙知) 12
  • 提供価値: クリエイターの「暗黙知」をAIに学習させることで、高度なビジュアルアイデアの生成を可能にする。これは、一部のスタークリエイターに依存していた「クリエイティビティ」という価値を、「形式知」化し、スケーラブルに(規模を拡大して)提供する試みである。この手法も特許出願中である 12

2025年の電通の最先端ビジネスモデルは、これら2つの「専有アセット」をAI化し、自社グループ内での活用に留まらず、今後はクライアント向けにも「統合マーケティングAIエージェント」として提供していくことにある 12。これは、電通のビジネスモデルが、従来の「人財の時間を売る」労働集約型から、「独自のAI資産を売る」資産集約型へと進化する、重大な第一歩を意味している。

このAI戦略は、すでに具体的なソリューション事業も生み出している。2025年7月6日には、電通デジタル、電通総研などグループ4社が、次世代ソリューション「AIコンタクトセンター」の開発・提供を発表した 14。これは、IGSのCX領域における具体的なAI実装例であり、AIによる業務効率化と顧客体験の向上を両立させるものである。

[表3:電通のAI戦略「AI For Growth 2.0」主要AIモデル比較]

独自AIモデル目的(提供価値)基盤となる「専有アセット」2025年ステータス典拠
People Model (ピープルモデル)高速なマーケットシミュレーション、仮想アンケート・インタビュー電通独自の大規模調査データ(約15万人)1億人規模のAIペルソナを仮想再現。特許出願中。12
Creative Thinking Model (創造的思考モデル)高度なビジュアルアイデアの生成社内の専門人財(クリエイター)の知見・思考法従来手法比で有意な向上を確認。特許出願中。12

出典:「AI For Growth 2.0」発表資料に基づき作成 12

V. 競争環境のパラダイムシフト:対アクセンチュア戦略と差別化要因

2025年時点の電通のビジネスモデルは、もはや従来の広告代理店(例:博報堂DYホールディングス、サイバーエージェント 6)との競争文脈だけでは分析できない。「CX(顧客体験)」という主戦場において、ITコンサルティングファーム、特にアクセンチュアとの「全面戦争」の文脈で分析されなければならない 15

「異種格闘技」の構造:M&Aによる相互侵食

業界の境界線はすでに取り払われている。世界のデジタルマーケティング企業トップ10をランク付けした調査では、アクセンチュア、IBM、そして電通グループが同列の競合として並んでいる 16

この「異種格闘技」ともいえる競争状態は、偶然の産物ではない。グローバルITサービス市場における過去30ヶ月(2019-2021年頃)のM&A活動を分析したデータによると、最も積極的なM&Aを行った買い手は、1位 アクセンチュア(53件)、2位 電通(件数非公開)、3位 デロイトであった 17

2025年の競争環境は、両者が「デジタルケイパビリティの構築」17 という共通の目的のために、互いの領域を侵食するM&Aを仕掛けた結果、必然的に生じたものである。

  • アクセンチュア(ITコンサル): 「Accenture Song」ブランドを立ち上げ、多数のクリエイティブ・エージェンシーを買収することで、テクノロジーからクリエイティブへと侵食した。
  • 電通(広告代理店): Merkleや電通総研(SIer)7 の買収・強化を通じて、クリエイティブからテクノロジーへと侵食した。

2025年は、両者が「CX」と「デジタルマーケティング」という「中央の戦場」で正面から激突している状態である 15

電通の差別化要因:「クリエイティビティ」と「データ・テクノロジー」の融合

この異種格闘技において、電通が主張する独自の強み(差別化要因)は、「**世界レベルの『クリエイティビティ』**と、課題解決を導く『データ・テクノロジー』という、独自の強みを兼ね備える」点にある 6

アクセンチュアが「テクノロジー主導のクリエイティブ」であるとすれば、電通は「クリエイティブ主導のテクノロジー」または「データ主導のクリエイティビティ」を標榜する。2025年の電通のビジネスモデルは、この「融合」をいかにクライアントに説得できるかにかかっている。IGS 6 はそのための「メニュー」であり、AI For Growth 2.0 12 はその「エンジン」である。

しかし、この戦略には最大のリスクが伴う。アナリストは、電通が国際事業(Dentsu International)の売却を検討する場合、その「宝石」であるMerkleの「買い手候補」として、あろうことか最大の競合であるアクセンチュアの名前を挙げている 10

これは、2025年の電通が直面する最も過酷な現実を示している。新中計(2025-2027)で「収益性の回復」3 に失敗し、Merkleとクリエイティブ/メディア事業の「統合」が不十分だと市場に判断された場合、電通のビジネスモデルは「解体」される可能性がある。そして、その最大の技術資産(Merkle)は、最大の競合であるアクセンチュアに買収されるリスクさえ存在する。2025年のビジネスモデルは、「Integrate or Die(統合か、さもなくば解体・売却か)」という崖っぷちのシナリオの上に成り立っている。

[表4:2025年 競争環境マトリクス(対 広告代理店 vs 対 コンサル)]

企業名伝統的強み2025年の戦略的焦点M&A戦略(Tech/Creative)電通への脅威典拠
電通グループメディアバイイング、クリエイティビティ海外事業の収益性回復、AIネイティブ化、IGSの推進Creative → Tech (Merkle, SIerを買収)収益性回復の失敗による事業解体リスク3
博報堂DY HLDGSクリエイティビティ、「粒ぞろい」の人財国内市場での地位強化、AaaS(Advertising as a Service)Creative → Tech (小〜中規模)国内の伝統的領域での競合6
サイバーエージェントデジタル広告運用、ゲーム事業AIトランスフォーメーション、メディア事業(ABEMA)Digital Native (TechもCreativeも内製)デジタル・AI領域での国内最先端競合6
アクセンチュア (Song)ITコンサルティング、システム・インテグレーションCX、デジタルマーケティング、クリエイティブ領域の拡大Tech → Creative (広告代理店を買収)CX領域での全面競合、Merkle買収候補10

出典:各種公開情報に基づき作成 3

VI. 結論:2025年 電通の「三分裂」ビジネスモデルと戦略的展望

本レポートの分析から、2025年時点の電通グループのビジネスモデルは、単一のものではなく、それぞれ異なるミッションを持つ3つの異なるモデルが併存する「三分裂(Tri-Fractured)モデル」であると結論付けられる。

  1. 「日本の要塞(Japan Fortress)」モデル
  • 概要: 高収益で安定した国内事業 5
  • 2025年の役割: グループ全体のキャッシュ・フロー創出源(「銀行」)としての役割。同時に、最先端の「AI For Growth 2.0」戦略を開発・テストし、グループの未来の武器を開発する「R&Dセンター」としての役割を担う 12
  1. 「海外事業の再生(International Turnaround)」モデル
  • 概要: M&A偏重で収益性が毀損した海外事業 1
  • 2025年の役割: 新中計に基づき、徹底した「収益性回復」がミッション 3。そのビジネスモデルは、「防衛的統合」である。MerkleのCT&Tケイパビリティを単体で売るのではなく、「Merkury for Media」を通じて「コア・メディア事業」にバンドルし、利益率を改善する 1
  1. 「AIネイティブ」モデル
  • 概要: 「AI For Growth 2.0」によって生み出される未来のモデル。
  • 2025年の役割: 電通独自の「専有データ」と「専有知見」をAI化し 12、従来の「人月商売(労働集約型)」から脱却し、スケーラブルな「AIエージェント販売(資産集約型)」へと移行する布石を打つ。

2025年の電通は、これら3つの異なるモデルを「統合グロースソリューション(IGS)」6 という一つの旗印のもとに束ね、シナジーを生み出そうと試みている。

戦略的展望と最大のリスク

  • 最大の成功シナリオ: 「日本の要塞」(モデル1)が生み出すAI(モデル3)が、「海外事業の再生」(モデル2)におけるメディアやクリエイティブの付加価値を劇的に高める。これにより、最大の競合であるアクセンチュア 15 に対する明確な差別化要因を確立し、2027年のマージン目標(16-17%)1 を達成する。
  • 最大のリスクシナリオ: 「海外事業の再生」(モデル2)が失敗し、収益性が回復しない場合、「Integrate or Die」の分析 10 が現実となり、グループは解体の岐路に立たされる。最大の資産であるMerkleが競合(アクセンチュア)の手に渡り、「日本の要塞」だけが残るという事態も想定される。

2025年は、この重大な分岐点における「最初の一年」である。したがって、投資家や競合他社が注目すべき最も重要な先行指標は、四半期ごとに発表される(2025年8月14日の第2四半期決算 18、およびその後の第3四半期決算 19海外事業の「収益性回復」の進捗である。この数字こそが、電通の壮大なビジネスモデル変革の成否を占う、2025年時点での最も信頼できる指標となるだろう。

引用文献

  1. 中期経営計画 2025-2027 – 電通グループ – Dentsu https://www.group.dentsu.com/jp/ir/common/pdf/MTMP2025-2027J.pdf
  2. 中期経営計画 2025-2027を発表 – 株式会社電通グループ https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/001417.html
  3. 中期経営計画 2025-2027 – 電通グループ – Dentsu https://www.group.dentsu.com/jp/about-us/mtmp2025-2027.html
  4. Untitled – 電通グループ – Dentsu https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/common/pdf/integrated-report2025.pdf
  5. What Dentsu International’s potential sale could mean for agency models https://www.marketing-interactive.com/what-dentsu-international-s-potential-sale-could-mean-for-agency-models
  6. 【27卒向け】電通・博報堂・サイバーエージェント・ADK、広告 … https://typeshukatsu.jp/s/article/step/87143/
  7. 【SIerLab】電通総研の日本一詳しい企業研究 https://breaking-info.online/2024/03/14/tech-sier-dentsusoken/
  8. 2025年12月期第3四半期 決算説明会資料 https://pdf.irpocket.com/C4812/LgpJ/hKm2/hqDh.pdf
  9. What A Possible Dentsu Sale Means For CMOs – Forrester https://www.forrester.com/blogs/what-a-possible-dentsu-sale-means-for-cmos/
  10. Media Buying Briefing: What’s going to happen with Dentsu outside of Japan? https://digiday.com/media-buying/media-buying-briefing-whats-going-to-happen-with-dentsu-outside-of-japan/
  11. IR – 株式会社電通グループ https://www.group.dentsu.com/jp/ir/
  12. 国内電通グループ、AIネイティブ化を加速する独自のAI戦略「AI For … https://www.dentsusoken.com/news/release/2025/0519.html
  13. 国内電通グループ、「dentsu Japan AIセンター」を発足 | プレスリリース – 電通総研 https://www.dentsusoken.com/news/release/2025/0707.html
  14. データ・AI最新情報 – 電通デジタル https://www.dentsudigital.co.jp/services/data-ai/latestnews
  15. CXという戦場でアクセンチュアと競合が増えています。 電通がコンサル会社への志向を強くする広告代理店業界。 一方でコンサルティング会社の倒産が増加。 得意先のPLに効く提案力と実行力をどこに求めるか、電| 森浩昭|未来を創るマーケティングストラテジスト| – note https://note.com/threeplussix/n/n2d2a804021e3
  16. Top 10 Digital Marketing Companies in the World 2025 https://www.expertmarketresearch.com/blogs/top-digital-marketing-companies
  17. Accenture, Dentsu and Deloitte top buyers in IT services market – Consultancy.uk https://www.consultancy.uk/news/24097/accenture-dentsu-and-deloitte-top-buyers-in-it-services-market
  18. 2025年度第2四半期連結決算発表予定日時のお知らせ – 電通グループ https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/001524.html
  19. 2025年度第3四半期連結決算発表予定日時のお知らせ – 電通グループ – Dentsu https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/001555.html