推敲とは感覚やセンスの問題ではない。
それは「文章のコスパ」を上げる作業だ。つまり、次のような式で表せる。
文章の効率 = 伝わる情報量 ÷ 文字数
分母(文字数)を減らすか、分子(情報量)を増やすか。
どちらを選ぶかで、推敲の方向が決まる。
1. 分母を削る:ムダを捨てて軽くする
「〜であると言える」「〜することができる」──こうした冗語は、情報を増やさずに文字数だけを食う。
削ることで分母が減り、密度が上がる。文を軽くするとは、読者の思考負荷を下げることでもある。
例:
本件については、まず社内で検討を進めさせていただき、その結果を踏まえてご連絡いたします。
→ 本件は社内検討後、結果を報告します。
たった20文字減らしただけで、文の重力が消える。
2. 分子を増やす:情報を濃くする
逆に、空気のような文章には中身を注ぎ込む。
数字、固有名詞、因果関係を足すと、情報量が跳ね上がる。
情報密度を上げるほど、説得力も上がる。
例:
売上が伸びている
→ 2025年度は前年比+12%で売上が過去最高
分母(文字数)は2倍程度だが、分子(情報量)は何十倍?にもなっている。
3. 最適点を探す
ただし、コスパ至上主義には落とし穴がある。
礼儀やリズムが必要な場では、分母にも意味がある。
推敲とは「削る」ではなく「整える」作業、つまり情報密度の最適化である。
最適な文章密度とは、
(理解度 × 好感度)÷ 文字数
を最大化する点にある。
数学的に見ても、推敲はバランスの芸術だ。
4. 小さなKPIで磨く
文章を磨くときは、次の3つの指標を手元に置くとよい。
| 指標 | 定義 | 改善方向 |
|---|---|---|
| 情報密度 | 主要メッセージ数 ÷ 文字数 | 上げる(詰める) |
| ノイズ率 | 冗語・曖昧表現数 ÷ 文字数 | 下げる(削る) |
| 可読率 | 平均文長やリズムの快適度 | 適度に保つ |
推敲とは、感性を数値で制御する知的スポーツなのだ。
まとめ
文章の良し悪しは「書いた量」ではなく「伝わった量」で測られる。
だから、推敲とは削除ではなく再配分。
伝えるために、何を減らし、何を残すか──
その判断ができる人こそ、言葉の投資家である。


