社会福祉法人が実施可能な事業類型

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序論:社会福祉法人の法的枠組みと公的使命

社会福祉法人の定義

社会福祉法人(以下、「社福法人」という)は、社会福祉法に基づき、「社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人」と定義される特別法人である 1。その本質は、極めて高い公益性と非営利性という二つの特性に集約される 4。この特殊な法人格により、社福法人は法人税や事業税の原則非課税措置、共同募金をはじめとする各種助成金の受給資格といった社会的な優遇を受ける一方で、その事業運営には厳格な規制と監督が伴う 1。社福法人は、地域社会における多様な福祉ニーズに応えるための中心的な担い手として位置づけられており、その設立には所轄庁(都道府県知事または市長等)の認可が必要となる 6

2016年社会福祉法改正とその影響

今日の社福法人の事業運営を理解する上で、2016年(平成28年)に行われた社会福祉法の大改正は極めて重要な文脈を提供する。この制度改革は、「経営組織のガバナンスの強化」「事業運営の透明性の向上」「財務規律の強化」「地域における公益的な取組を実施する責務」「行政の関与の在り方」を5つの柱として断行された 4。この改革により、現代の社福法人には、これまで以上に厳格な内部統制、情報公開、そして財務の健全性が求められるようになった。特に注目すべきは、「地域における公益的な取組」が法的な責務として明記された点である 4。これは、社福法人が単なるサービス提供者にとどまらず、地域社会の福祉課題解決に積極的に貢献する中核的存在としての役割を期待されていることを示している。このような背景から、社福法人が実施可能な事業の各類型とその財務的区分を正確に理解することは、コンプライアンス遵守と持続可能な経営の両面において、かつてなく重要性を増している。

事業類型分類の論理的根拠

社福法人が行うことのできる事業が、「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」という三つの類型に厳格に分類されているのは、単なる行政上の整理ではない。この分類は、社福法人の公的使命を保護し、その信頼性を担保するための、意図的に設計された法的構造である。その根底には、以下の三つの目的が存在する。

  1. 中核的使命の保護: 利用者の生命や生活に直結する社会福祉事業を、他の事業から生じうる財務的リスクや経営資源の散逸から保護する。
  2. 使命への貢献の確保: 社会福祉事業以外の付随的な事業(公益事業・収益事業)が、直接的または間接的に、法人の主たる目的である社会福祉事業の推進に貢献することを法的に保証する。
  3. 公的信頼性と説明責任の維持: 公的資金や寄付金、あるいは収益事業から得た利益が、どのように使途されているかを明確に区分し、透明性を確保することで、社会からの信頼を維持する。

この三層構造を理解することは、社福法人の事業戦略、ガバナンス、そしてコンプライアンス体制を構築する上での第一歩となる。


第1部 社会福祉法人事業の三本柱

三層構造の概観

社福法人の事業活動は、社会福祉法によって明確に定義された以下の三つのカテゴリーに分類される。

  1. 社会福祉事業: 社福法人の設立目的そのものであり、実施が義務付けられる中核事業。
  2. 公益事業: 社会福祉事業ではないが、社会福祉と密接に関連し、公益に資する付随的事業。
  3. 収益事業: 上記二つの事業の財源を確保する目的でのみ実施が認められる付随的事業。

    1

主従関係の原則

これら三つの事業類型の関係性を規律する最も重要な法的原則が、「主従関係の原則」である。社会福祉事業は、法人の活動全体の中で常に「主たる」地位を占めなければならない。一方で、公益事業と収益事業は、その規模、投入される経営資源、事業費のいずれにおいても、社会福祉事業に対して「従たる」地位に留まることが絶対的な要件とされる 7。この原則は単なる理念ではなく、事業計画の策定、予算編成、そして所轄庁による認可・監督の場面において、具体的な判断基準として機能する。例えば、収益事業の年間事業費が社会福祉事業のそれを上回るような計画は、この原則に反するため認められない。

以下に、これら三つの事業類型の法的・財務的な違いを明確にするための比較表を示す。この表は、各事業の詳細な分析に入る前の、全体像を把握するための基礎的な参照点となる。

表1:事業類型の比較概要

項目社会福祉事業 (Social Welfare Business)公益事業 (Public Interest Business)収益事業 (Profit-Making Business)
定義と法的目的社会福祉法第2条に規定される事業。法人の設立目的そのもの。 1社会福祉と関連性のある公益を目的とする事業。 10社会福祉事業または公益事業の経営に充てるための収益を得ることを目的とする事業。 8
主従関係主たる事業 (Primary)従たる事業 (Subordinate) 7従たる事業 (Subordinate) 7
剰余金・収益の使途事業継続のための内部留保。他事業への充当は原則不可。同一法人内の社会福祉事業または他の公益事業に充当しなければならない。 10同一法人内の社会福祉事業または公益事業に充当しなければならない。 8
代表的な事業例特別養護老人ホーム、保育所、障害者支援施設の経営など。 1介護保険法に基づく居宅サービス事業、有料老人ホームの経営、福祉人材の養成事業など。 7法人所有不動産の賃貸(貸ビル、駐車場経営)など。 7

この比較表から、資金の流れが一方向であることが明確に見て取れる。すなわち、収益事業で得た利益は社会福祉事業や公益事業の財源となりうるが、その逆、例えば公的補助金が含まれる可能性のある社会福祉事業の資金を収益事業に投じることは厳しく制限される。この構造こそが、社福法人の非営利性と公益性を財務面から担保する核心的なメカニズムなのである。


第2部 中核的使命:社会福祉事業の詳解

社会福祉事業は、社福法人の存在理由そのものであり、社会福祉法第2条において「第一種社会福祉事業」と「第二種社会福祉事業」に分類される 1。この分類は、提供されるサービスが利用者に与える影響の度合いに基づいており、それぞれに異なる規制が課されている。

2.1 第一種社会福祉事業

法的定義と趣旨

第一種社会福祉事業は、利用者への影響が特に大きく、事業の安定的な継続が利用者の保護のために不可欠とされる事業群を指す 1。その多くは、利用者が生活の場を施設に委ねる入所・居住系のサービスであり、事業が中断した場合に利用者が直面するリスクが極めて高い。このため、法は経営の安定性を最優先事項とし、厳格な規制を設けている。

厳格な経営主体の制限

第一種社会福祉事業の最も顕著な特徴は、その経営主体が原則として国、地方公共団体、または社会福祉法人に限定されている点である 1。これは、高い公益性と永続性が求められるこれらの事業を、信頼性の高い公的な担い手に委ねるという政策的判断の表れである。民間企業等がこれらの事業に参入するには、都道府県知事等の極めて厳格な許可が必要となり、事実上、社福法人が民間における唯一の担い手となっている。

第一種社会福祉事業の網羅的内訳

社会福祉法に定められる第一種社会福祉事業は、関連する法律ごとに以下のように分類される 3

  • 生活保護法に規定する事業:
  • 救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設、宿泊提供施設の経営
  • 児童福祉法に規定する事業:
  • 乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、障害児入所施設(福祉型・医療型)、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設の経営
  • 老人福祉法に規定する事業:
  • 養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームの経営
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に規定する事業:
  • 障害者支援施設の経営
  • 売春防止法に規定する事業:
  • 婦人保護施設の経営
  • その他の事業:
  • 授産施設を経営する事業、生計困難者に対する無利子または低利での資金を融通する事業

2.2 第二種社会福祉事業

法的定義と趣旨

第二種社会福祉事業は、第一種社会福祉事業と比較して、利用者への影響が相対的に小さいとされる事業群である 1。主に在宅での生活を支援するサービスや、通所型のサービス、相談事業などがこれに該当する。利用者の選択の自由度が高く、代替サービスの確保も比較的容易であるため、公的な規制の必要性も第一種に比べて低いとされている。

経営主体の要件

第二種社会福祉事業には、経営主体に関する原則的な制限が存在しない 3。株式会社を含む民間事業者やNPO法人など、多様な主体が都道府県知事等への届出を行うことで事業経営が可能となる。これにより、地域の実情に応じた多様なサービスの供給が促進されることが期待されている。

第二種社会福祉事業の網羅的内訳

第二種社会福祉事業は極めて多岐にわたるが、主なものは以下の通りである 3

  • 在宅・通所サービス: 障害福祉サービス事業(居宅介護、生活介護等)、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、障害児通所支援事業(放課後等デイサービス等)など。
  • 保育・子育て支援: 保育所の経営、放課後児童健全育成事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業など。
  • 相談支援事業: 障害児相談支援事業、児童家庭支援センターの経営、福祉サービス利用援助事業、各種更生相談に応ずる事業など。
  • その他: 生計困難者への生活必需品の給付事業、母子家庭等日常生活支援事業、隣保事業、社会福祉事業に関する連絡または助成を行う事業など。

規制のスペクトラムという政策的意図

第一種と第二種社会福祉事業の区別は、単なる行政上の分類を超えた、意図的な公共政策の設計(ポリシー・デザイン)を反映している。この二つのカテゴリーは、規制の強度を調整するための「スペクトラム(連続体)」として機能しており、それによって政府は二つの異なる政策目標を同時に達成しようとしている。

そのメカニズムは次の通りである。まず、特別養護老人ホームや児童養護施設のような、利用者の生命と生活の基盤そのものを預かる第一種事業については、失敗のリスクが社会的に許容できない。そこで、法は経営主体を公的機関と社福法人に限定するという高い参入障壁を設け、安定性と継続性を最優先する「クローズド・マーケット(閉鎖市場)」を形成している 1。これにより、最も脆弱な立場にある人々を保護しているのである。

一方で、デイサービスや相談事業のような第二種事業については、多様なニーズに柔軟に応えること、そしてサービス提供者間の健全な競争を通じて質の向上を図ることが重要となる。そこで、法は届出制を採用して参入障壁を低くし、株式会社やNPO法人など多様な主体が参入できる「オープン・マーケット(開放市場)」を創出している 3

このように、第一種と第二種の区分は、保護の必要性が高い領域では「安定性」を、多様性が求められる領域では「活性化」を、それぞれ最大化するための洗練された政策的手段なのである。社福法人がどちらの事業領域に注力するかという経営判断は、単なるビジネス上の選択ではなく、この国の福祉政策が描く大きな設計図の中で、自らがどのような役割を担うかを選択することを意味している。


第3部 付随的事業:公益事業と収益事業

社福法人は、その中核的使命である社会福祉事業を補完し、強化するために、一定の条件下で公益事業および収益事業を行うことが認められている。これらの事業はあくまで付随的なものであり、その実施には厳格な法的要件が課せられる。

3.1 公益事業

目的と範囲

公益事業とは、法的に社会福祉事業とは定義されないものの、社会福祉と密接な関連性を持ち、広く公共の利益に貢献する事業を指す 7。社福法人が長年培ってきた専門性や地域ネットワークを活かし、社会福祉事業の枠組みだけでは対応しきれない多様なニーズに応えるための重要な手段となる。

厳格な法的要件

公益事業の実施が認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要がある 7

  1. 公益目的性: 事業の目的が公益に資するものであること。
  2. 関連性: 社会福祉と何らかの関係がある事業であること。全く無関係な事業は認められない。
  3. 非妨害性: 当該事業の実施が、法人の主たる社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれがないこと。
  4. 従たる地位: 事業規模が社会福祉事業を超えない、従たる地位にあること。
  5. 剰余金の使途: 事業から剰余金が生じた場合、その全額を同一法人内の社会福祉事業または他の公益事業に充当すること。

事業の類型と具体例

公益事業として認められる事業は多岐にわたるが、以下に代表的な例を挙げる。

  • 介護保険法に基づくサービス: 居宅サービス事業、地域密着型サービス事業など、社会福祉事業に分類されない介護保険サービス 7
  • 有料老人ホームの経営 7
  • 子育て支援関連事業: 社会福祉事業に該当しない任意の子育て支援プログラムやイベントの実施 10
  • 福祉人材の育成・確保: 介護福祉士や保育士等の養成事業 10
  • 施設の貸与: 他の公益的な活動を行う団体に対し、会館等を無償または実費に近い対価で提供する事業 17
  • 行政事務の受託: 市町村から福祉関連の助成事業等の行政事務を受託して実施する事業 16

3.2 収益事業

目的と範囲

収益事業は、その名称とは裏腹に、利益の追求自体を目的とするものではない。その法的目的はただ一つ、事業活動によって得られた収益を、当該社福法人が行う社会福祉事業または公益事業の経営に充当することである 8。社福法人はあくまで非営利法人であり、収益事業から得た利益を役員や評議員に分配することは固く禁じられている 15

厳格な制約と禁止事項

収益事業の実施には、公益事業以上に厳しい制約が課せられる。特に、以下の要件を満たさなければならない。

  1. 社会的信用の維持: 法人の社会的信用を傷つけるおそれのある事業は一切認められない。具体的には、風俗営業や高利な金融業、およびこれらの事業に便宜を供与する行為が明示的に禁止されている 15
  2. 中核的使命への非妨害: 社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのある事業は実施できない。例えば、福祉施設の近隣で騒音やばい煙を発生させる事業や、社会福祉事業と同一の設備を共用することでサービスの質を低下させるような事業は不適当とされる 15
  3. 従たる地位の厳守: 事業規模が主たる社会福祉事業を超えることは認められない 11

許容される事業モデル

上記の厳しい制約を満たす限りにおいて、収益事業の種類に特段の制限はないが、実際には法人の品位を損なわず、安定的かつ低リスクな事業が選択されることが一般的である。

  • 不動産賃貸業: 法人が所有する土地や建物を活用した貸ビル、アパート、マンションの経営 7
  • 駐車場経営 7
  • 公共施設等における売店の経営 15

目的の階層性がもたらすガバナンス機能

「社会福祉事業 > 公益事業 > 収益事業」という法的に定められた序列は、単なる事業分類システムではない。これは、社福法人のガバナンスを規律するための、極めて強力な内部統制メカニズムとして機能している。この階層構造は、法人の理事会や評議員会に対し、あらゆる付随的事業の実施を検討する際に、「その事業が、我々の法人が掲げる中核的使命(社会福祉事業)の推進に、いかに貢献するのか」という問いへの明確な回答を常に要求する。

例えば、理事会が新たな駐車場経営(収益事業)の開始を検討する場合、その事業の投資収益率(ROI)のみを基準に判断することは法的に許されない。理事会は、その駐車場経営から得られる収益が、法人が運営する特別養護老人ホーム(社会福祉事業)のサービス向上や設備投資にどのように充当されるのか、その計画を具体的に示し、正当化する法的・倫理的義務を負う。

この法的枠組みは、非営利組織が陥りがちな「ミッション・ドリフト(使命からの逸脱)」、すなわち資金調達や新たな事業機会を追求するあまり、本来の設立目的から徐々に乖離してしまう現象に対する、強力な防波堤となる。所轄庁や評議員会は、理事会の経営判断を評価する際に、「中核的使命への貢献」という明確な法的基準を用いることができる。したがって、この目的の階層性は、社福法人がその公的な使命に忠実であり続けることを保証するための、法の設計に組み込まれたガバナンスそのものなのである。


第4部 戦略的統合、ガバナンス、および規制上の留意点

社福法人が三つの事業類型を適切に運営するためには、事業間の境界を明確に保ち、それぞれに適用される財務・税務上のルールを遵守することが不可欠である。

4.1 事業間の境界と財務管理

中核的使命の優位性の確保

「従たる地位」の原則を実務において遵守するためには、単に事業費の規模を比較するだけでなく、経営陣の関与度合い、人員配置、その他の経営資源の配分においても、社会福祉事業が常に最優先される体制を構築する必要がある。

会計および資産の区分

法は、社会福祉事業、公益事業、収益事業のそれぞれについて、会計を明確に区分すること(区分経理)を義務付けている 13。これは、各事業の収支状況を透明化し、資金の使途を明確にするための基本的な要請である。同様に、法人が所有する財産も、どの事業に属するものかを明確に区分管理しなければならない。この会計・資産の区分は、財務の透明性を確保し、所轄庁の監査に対応するための根幹をなす。

資金の流れに関する規律

各事業会計間の資金移動には、厳格なルールが適用される。原則として、資金の流れは一方向である。

  • 収益事業から他事業へ: 収益事業で得た利益は、社会福祉事業または公益事業の経営に充当しなければならない 8
  • 社会福祉事業から他事業へ: 公的な補助金や介護保険収益を含む社会福祉事業の資金を、収益事業の赤字補填などに使用することは原則として認められない。
  • 法人外への支出の禁止: 生じた剰余金や収益を、法人外の他の団体に寄付したり、特定の個人に分配したりすることは固く禁じられている 14。これにより、法人の資産がその公的使命を果たすために内部に留保されることが保証される。

4.2 税務上の重大な相違点:コンプライアンスの陥穽

「収益事業」の二重定義という罠

社福法人のコンプライアンスにおいて、最も重大かつ誤解されやすいリスクの一つが、「収益事業」という言葉が持つ二重の法的意味である。社会福祉法上の「収益事業」と、法人税法上の課税対象となる「収益事業」は、その定義が全く異なる。この違いを認識しないまま事業運営を行うと、予期せぬ多額の納税義務が発生する可能性がある 20

この問題の構造は、以下の二つの異なる法的視点から「収益事業」を分析することで明らかになる。

  1. 社会福祉法上の定義: ある事業が「収益事業」に該当するか否かは、その事業の目的によって判断される。すなわち、「社会福祉事業等の財源に充てるために収益を得る」という目的があれば、それは社会福祉法上の収益事業となる。事業の種類自体には、社会的信用を損なわない限り大きな制限はない 15
  2. 法人税法上の定義: ある事業が課税対象の「収益事業」に該当するか否かは、その事業の種類によって判断される。法人税法は、物品販売業、不動産貸付業、請負業など34種類の事業を課税対象として列挙しており、これらのいずれかに該当し、かつ継続して行われる事業は、その収益の目的がどれほど公益的であっても課税対象となる。

この定義のズレは、深刻なコンプライアンス上の罠を生み出す。例えば、障害者の就労支援B型事業所が製品を製造・販売する活動は、社会福祉法上は紛れもなく中核的な「社会福祉事業」である。しかし、税務当局の視点からは、その製品販売による収益は法人税法上の「物品販売業」や「請負業」に該当すると判断され、課税対象となる可能性がある 20。一方で、駐車場経営は社会福祉法上では明確な「収益事業」であり、同時に法人税法上でも「駐車場業」として課税対象となる。

ここから導き出される重要な結論は、ある事業活動が課税対象となるか否かは、その活動の崇高な目的ではなく、その性質(法人税法が定める34業種のいずれに該当するか)によって機械的に決定されるということである。したがって、社福法人の経営陣は、自法人が行うすべての収益獲得活動について、「社会福祉法上の許容性」と「法人税法上の課税可能性」という、二つの全く異なる法的レンズを通して分析しなければならない。この判断には高度な税務・法務の専門知識が不可欠であり、理事会レベルでの重要なリスク管理項目と言える。


結論:持続可能なインパクトに向けた事業運営の指針

本稿では、社会福祉法人が実施可能な事業の類型について、その法的枠組みとガバナンス上の要請を包括的に分析した。分析から明らかになった主要な点は以下の通りである。

  • 社福法人の事業は、「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」という厳格な法的階層構造の中に位置づけられ、社会福祉事業が常に主たる地位を占めなければならない。
  • 第一種と第二種社会福祉事業の区分は、保護と活性化という二つの政策目標を両立させるための、意図的に設計された規制のスペクトラムとして機能している。
  • 公益事業および収益事業という付随的事業の実施には、中核的使命への貢献と非妨害、社会的信用の維持といった厳しい条件が課せられており、この構造自体がミッション・ドリフトを防ぐガバナンス・メカニズムとなっている。
  • 特に留意すべきは、社会福祉法上の「収益事業」と法人税法上の課税対象となる「収益事業」の定義が全く異なる点であり、この認識不足は重大なコンプライアンス違反につながるリスクを内包している。

社福法人の経営陣にとって、この複雑な法的枠組みは、単なる制約の集合体として捉えるべきではない。むしろ、それは法人の公的使命を最大化し、長期的な財務的持続可能性を確保し、そして社会からの高い信頼を維持するための戦略的なロードマップと見なすべきである。

各事業の法的要件を深く理解し、それらを巧みに組み合わせることで、社福法人は多様な財源を確保し、地域社会の複雑なニーズに柔軟に応える強靭な事業ポートフォリオを構築することが可能となる。法が定める厳格な規律を遵守することは、単なる義務ではなく、社会福祉法人という特別な法人格に与えられた公的使命を全うし、その社会的価値を永続させるための最も確実な道筋なのである。

引用文献

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  3. 第1章 社会福祉法人制度の概要 – 清瀬市 https://www.city.kiyose.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/295/gaiyou1.pdf
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  5. 社会福祉法人ってなに? – 全国社会福祉法人経営者協議会 https://www.keieikyo.com/about/whats.html
  6. 社会福祉法人制度 – 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/index.html
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  14. 社会福祉法人の収入・収益の取扱い – 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000573683.pdf
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  21. 社会福祉法人専門の税理士と一般的な業務を行う税理士の違いを解説 https://acc-tax.net/useful/funfuct/303/