1. エグゼクティブサマリー
本報告書は、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(以下、「本法」または「AI活用推進法」と称す)について、その目的、主要な規定、ガバナンス体制、予期される影響、そして戦略的重要性を包括的に分析するものである。本法は、AI関連技術の研究開発及び活用を総合的かつ計画的に推進することにより、国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている 1。日本がAIのリスクを管理しつつ、AI開発・活用における主要国となることを目指す野心的な取り組みの法的基盤をなすものである。
本法は、具体的な規制を詳細に定めるものではなく、むしろ基本理念と基本的施策の方向性を示す「基本法」としての性格が強い 2。これは、急速に進化するAI技術の特性を考慮し、具体的な指針や、将来的にはより対象を絞った規制を、技術の進展に合わせて柔軟に策定していくという立法戦略を示唆している。政府は、本法を通じて「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」の実現を目指しており 2、初期段階ではイノベーションを促進する柔軟な環境を優先する姿勢がうかがえる。
内閣に設置される人工知能戦略本部が、AI基本計画の策定・推進を統括し 1、国、地方公共団体、研究開発機関、活用事業者、そして国民それぞれの責務を定めることで、オールジャパンでのAI推進体制を構築しようとしている 1。研究開発の推進、基盤整備、人材育成、国際連携、そしてリスク対応といった多岐にわたる施策が盛り込まれており、イノベーション促進(アクセル)とリスク対応(ブレーキ)のバランスを取ることが企図されている 2。
本法の施行は、企業活動、経済社会、そして国民生活に広範な影響を及ぼすと予想される。特に、事業者に対しては、当面は努力義務が中心となるものの、政府による調査や指導・助言の可能性も視野に入れる必要がある 2。本法は、日本のAI戦略を国際的な潮流と連携させつつ、国内のAIエコシステムの発展を加速させるための重要な一歩と位置づけられる。
2. はじめに:日本のAI活用推進法の成立背景と目的
2.1. 立法背景と動機
人工知能(AI)技術は、現代社会において経済成長と社会変革を駆動する中核技術として認識されている。このような状況下、日本において「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI活用推進法)が制定された背景には、国内のAI分野における課題認識と、国際的なAIガバナンスの動向への対応という二つの側面が存在する。
国内的には、AI分野への民間投資額や個人のAI利用率において、日本は米国や中国といった主要国に後れを取っているとの認識があった 2。2023年のAI分野への民間投資額で日本は約7億ドルと世界12位であり、米国の約672億ドルとは大きな差が開いている 2。また、生成AIの利用経験がある個人の割合も、日本は9%に留まり、米国(46%)や中国(56%)と比較して著しく低い水準であった 2。このような状況は、日本の国際競争力低下への懸念を生じさせていた。
同時に、ディープフェイクによる偽情報の拡散やプライバシー侵害、著作権侵害といったAIの悪用事例に対する国民の不安感も高まっていた 2。既存の刑法や業法だけでは、急速に進化するAI技術特有のリスクに十分対応できないとの認識が広がり、「AIには規制が必要」と考える国民が77%に上るという調査結果もあった 2。これまでの企業の自主的な対応に委ねるアプローチから、国が主導して一定の法的枠組みを整備する必要性が認識されるようになった 1。
国際的には、欧州連合(EU)が包括的な「AI法(AI Act)」の制定を進め、米国においても「AI権利章典(AI Bill of Rights)」の策定や大統領令の発出など、AIに関するルール形成の動きが活発化していた 3。これらの国際的な動向は、日本に対しても、従来のソフトロー中心のアプローチから、より明確な法的立場を示すことの必要性を強く意識させる要因となった 3。
このような国内外の状況を踏まえ、日本政府はイノベーションの促進とリスク対応を両立させる新たな基本法の必要性を訴え、AI活用推進法の制定に至った。本法案は2025年2月28日に閣議決定・国会提出され 1、同年6月4日に公布された 3。施行日については、原則として公布日とされたが、第3章(人工知能基本計画)及び第4章(人工知能戦略本部)に関する規定は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日とされている 3。
この立法プロセスは、国内のAI導入の遅れや国民の不安といった内部的要因と、国際的な規制整備の潮流という外部的要因の双方に促された「反応的」側面を持つと同時に、日本をAI分野における世界のリーダーへと押し上げるという「積極的」な国家戦略の一環としても位置づけられる。
2.2. 本法の核心的目的と意義
AI活用推進法の核心的な目的は、第1条において「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画の策定その他の施策の基本となる事項を定めること等により、科学技術・イノベーション基本法及びデジタル社会形成基本法その他の関係法律による施策と相まって、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与すること」と規定されている 1。
本法は、AIの開発・活用促進に関する日本初の基本法としての意義を持つ 2。これは、個別のAI技術や応用分野ごとの規制ではなく、国全体のAI戦略の根幹をなす理念と方向性を示すものである。政府は本法を通じて、「世界のモデルとなる制度」を構築し、日本を「最もAIを開発・活用しやすい国」へと押し上げることを目指している 2。この目標は、単に技術開発を奨励するだけでなく、AI利用に伴うリスクにも適切に対処することで、社会からの信頼を得て持続可能なAIエコシステムを構築しようとする意志の表れである。
特に重要なのは、本法がイノベーションの促進(アクセル)とリスクへの対応(ブレーキ)という二つの側面を両立させようとしている点である 2。これは、AIの持つ immense な可能性を最大限に引き出しつつ、人権侵害や社会的不安といった負の側面を抑制するための戦略的なバランス感覚を反映している。罰則規定を伴う直接的な規制を初期段階では抑制し、まずは基本理念や指針の策定、研究開発支援、人材育成といった推進策を中心に据えつつも、不正利用に対する国の調査権限や是正勧告といったリスク管理の仕組みも設けている点が、このバランス戦略を具体化している 2。
このように、AI活用推進法は、日本のAI戦略における法的・政策的枠組みの基礎を築き、今後の具体的な施策展開の指針となる重要な法律と評価できる。
3. 本法の解剖:主要規定と法的枠組み
3.1. 「人工知能関連技術」の定義と適用範囲
本法における「人工知能関連技術」の定義は、その適用範囲を決定する上で極めて重要である。第2条において、この用語は以下のように定義されている。「人工的な方法による学習、推論、判断等の知的な機能の全部又は一部を代替する機能を実現するための技術及び当該技術を用いて入力された情報を処理し、その結果を出力する情報処理システムに関する技術」1。
この定義は、二つの主要な要素を含んでいる。第一に、人間の認知能力、推論能力、判断能力といった知的機能を代替する「機能を実現するための技術」そのものを指す。これには、機械学習、深層学習、自然言語処理、画像認識といった基盤となるAIアルゴリズムやモデルが含まれると考えられる。第二に、これらの技術を実際に用いて情報を処理し、結果を出力する「情報処理システムに関する技術」も包含する。これにより、AI技術そのものだけでなく、AIを組み込んだ具体的なアプリケーションやサービスも法の対象となることが明確にされている。
この定義の射程は意図的に広範に設定されている。特定の技術やアプローチに限定せず、人間の知的機能を代替するという機能的側面に着目することで、将来的に登場する新たなAI技術や未知の応用形態にも対応し得る柔軟性を持たせている。このような広範な定義は、本法がAIという急速に進化する分野において長期的な基本法としての役割を果たすことを意図していることの表れであり、後述する人工知能戦略本部や人工知能基本計画が取り組むべき政策課題の範囲の広さを示唆している。
3.2. 基本理念(Kihon Rinen)
本法第3条は、AI関連技術の研究開発及び活用の推進にあたっての基本理念を定めている 1。これらの基本理念は、科学技術・イノベーション基本法やデジタル社会形成基本法の基本理念を基礎としつつ、AI技術の特性と社会への影響を考慮した独自の視点を加えたものであり、本法に基づく全ての施策の指針となる。
主要な基本理念は以下の通りである 1。
- 経済社会及び安全保障上の重要性: AI関連技術が、行政事務や民間事業活動の効率化・高度化、新たな産業の創出、さらには安全保障の観点からも極めて重要な基盤技術であることを認識する。
- 研究開発能力の維持向上と国際競争力の強化: 我が国におけるAI関連技術の研究開発能力を保持し、向上させるとともに、国際的な競争力を強化することを目指す。
- 総合的・計画的な推進: 基礎研究から実用化、そして社会実装に至る各段階において、総合的かつ計画的にAI関連技術の研究開発及び活用を推進する。
- 適正な利用の確保と透明性: AI関連技術の利用に伴う潜在的なリスク、例えば犯罪への悪用、個人情報の漏洩、著作権侵害、差別助長などを念頭に置き、研究開発及び利用の過程における透明性の確保やその他の必要な措置を講じることにより、AI関連技術の適正な利用を確保する。
- 国際的協調と主導的役割: AI関連技術の研究開発及び活用を国際的な協調の下で推進するとともに、関連する国際的な規範形成において日本が主導的な役割を果たすことを目指す。
これらの基本理念は、単なる努力目標ではなく、後述する人工知能基本計画の策定や人工知能戦略本部の活動の根幹をなすものである。特に、イノベーションの推進とリスク管理のバランス 2、そして国際協調を通じたルール形成への積極的な関与という姿勢は、本法全体を貫く重要なテーマとなっている。これらの理念が、今後の具体的な政策やガイドラインにどのように反映されていくかが注目される。
3.3. 関係者の責務:国、地方公共団体、事業者、国民
本法は、AI関連技術の研究開発及び活用の推進において、国、地方公共団体、研究開発機関、活用事業者、そして国民という多様な主体がそれぞれの役割を果たすことの重要性を強調し、各々の責務を明確に規定している。
国の責務(第4条): 国は、基本理念にのっとり、AI関連技術の研究開発及び活用に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する 1。また、国の行政機関におけるAI技術の積極的な活用を進めるものとされる 1。さらに、第10条では、国はこれらの施策を実施するために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとされている 1。
地方公共団体の責務(第5条): 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえつつ、その地域の特性を活かした自主的な施策を策定し、及び実施するよう努めるものとされる 1。
研究開発機関の責務(第6条): 大学や研究開発法人などの研究開発機関は、AI関連技術の研究開発及びその成果の普及、並びに人材の育成に自主的かつ積極的に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるものとされる。また、学際的かつ総合的な研究開発に努める必要がある 1。
活用事業者の責務(第7条): AI関連技術を開発し、提供し、又は活用する事業者(活用事業者)は、その事業活動に関し、AI関連技術の活用による事業活動の効率化及び高度化並びに新たな事業の創出に自主的かつ積極的に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるものとされる 1。この責務は「努力義務」(doryoku gimu)と解されており、直ちに罰則が科されるものではないが 2、後述する国の調査権限や指導・助言の対象となり得る点に留意が必要である。
国民の責務(第8条): 国民は、AI関連技術に対する関心と理解を深め、国又は地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるものとされる 1。
連携の強化(第9条): 国は、国、地方公共団体、研究開発機関、活用事業者等の間の連携の強化のために必要な施策を講ずるものとされる 1。
これらの責務規定は、AIの推進と適正利用が一部の専門家や機関だけでなく、社会全体の取り組みであることを示している。特に、活用事業者に対する努力義務は、イノベーションを阻害しないよう配慮しつつも、社会全体の利益と調和した形でのAI活用を促すための「ソフトロー」的なアプローチと言える。ただし、政府による調査や不適切利用に関する是正指導の可能性 2 は、事業者に事実上の規範遵守を促す「評判リスク」としての機能を持つと考えられる。
以下の表は、本法における各ステークホルダーの主な責務をまとめたものである。
表1:AI活用推進法におけるステークホルダーの責務
| ステークホルダー | 主な責務 | 関連条文 | 義務の性質 |
| 国 | 基本理念に基づく施策の総合的・計画的な策定・実施、行政機関におけるAI活用推進、必要な法制上・財政上の措置 | 第4条、第10条 | 直接的責任 |
| 地方公共団体 | 国との役割分担を踏まえた地域特性を活かした自主的施策の策定・実施 | 第5条 | 努力義務 |
| 研究開発機関 | AI技術の研究開発、成果普及、人材育成への自主的・積極的努力、国・地方公共団体施策への協力、学際的・総合的研究開発 | 第6条 | 努力義務 |
| 活用事業者 | AI活用による事業活動の効率化・高度化、新産業創出への自主的・積極的努力、国・地方公共団体施策への協力 | 第7条 | 努力義務 |
| 国民 | AI技術への関心・理解の深化、国・地方公共団体施策への協力 | 第8条 | 努力義務 |
3.4. 中核となる政策的施策(Kihon Teki Shisaku)
本法第2章(第11条~第17条)は、国が講ずべき基本的な施策を具体的に列挙している。これらの施策は、AIの研究開発から社会実装、人材育成、国際協力、そしてリスク対応に至るまで、AIエコシステム全体を網羅的に支援し、方向づけることを目的としている。
- 研究開発の推進等(第11条): 国は、AI関連技術の基礎研究から実用化のための研究開発に至るまでの一貫した研究開発の推進、研究開発機関における成果の移転のための体制整備、成果に係る情報の提供その他の施策を講ずる 1。これは、イノベーションの源泉となる研究活動を強力に後押しする意志を示すものである。
- 施設及び設備等の整備及び共用の促進(第12条): 大規模な情報処理・通信、電磁的記録の保管等に係る施設・設備(データセンター等)、データセット、その他の知的基盤を研究開発機関及び活用事業者が広く利用できるようにするため、これらの整備及び共用の促進に必要な施策を講ずる 1。AI開発に不可欠な計算資源やデータへのアクセス向上を目指す。
- 適正性の確保(第13条): AI関連技術の研究開発及び活用の適正な実施を図るため、国際的な規範に即した指針(ガイドライン)の整備その他の必要な施策を講ずる 1。ここでは、G7「広島AIプロセス」で合意された国際原則(不適切なAI出力の削減、AIの仕組み・リスク情報の開示、訓練データセットの透明性向上など)が反映される見通しである 2。
- 人材の確保等(第14条): AI関連技術に関する専門的かつ幅広い知識を有する多様な分野の人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずる 1。AI戦略の成否を左右する人的資本の強化が図られる。
- 教育の振興等(第15条): 国民がAI関連技術についての関心と理解を深めることができるよう、学校教育及び社会教育におけるAI関連技術に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実その他の必要な施策を講ずる 1。AIリテラシーの向上は、AIの社会受容性を高める上で不可欠である。
- 調査研究等(第16条): 国内外のAI技術動向や利用実態、不正・不適切なAI利用による国民の権利利益の侵害に係る事案の分析及び対策の検討を行い、その結果に基づいて事業者や国民に対し指導、助言、情報提供その他の必要な措置を講ずる 1。これには、生成AIによるディープフェイク拡散や個人情報漏洩・著作権侵害といった悪質な事例の調査・公表も含まれる 2。
- 国際協力の推進等(第17条): AI関連技術に関する国際的な連携及び協力を推進するとともに、国際的な規範の策定に積極的に参画する 1。
これらの基本的施策は、AI活用推進法が単なる理念法に留まらず、具体的な行動計画を伴うものであることを示している。特に、「適正性の確保」や「調査研究等」の規定は、イノベーション促進と並行してリスク管理にも取り組むという本法の基本姿勢を具体化するものである。
以下の表は、本法の主要な規定の概要をまとめたものである。
表2:AI活用推進法の主要規定の概要
| 章 / 条文番号 | 規定の名称 | 規定の概要(主に に基づく) | 主要な含意・注記 |
| 第1章 / 第1条 | 目的 | AI関連技術の研究開発・活用の総合的・計画的推進による国民生活向上と経済発展への寄与 | 本法の基本目標を確立 |
| 第1章 / 第2条 | 定義 | 「人工知能関連技術」の定義(人間の知的機能代替技術及び関連情報処理システム技術) | 広範な技術を対象とし、将来の発展にも対応 |
| 第1章 / 第3条 | 基本理念 | 経済社会・安全保障上の重要性、研究開発力・国際競争力強化、総合的計画的推進、適正利用・透明性確保、国際協調・主導的役割 | 全ての施策の指針となる核心的価値観 |
| 第2章 / 第11条 | 研究開発の推進等 | 基礎研究から実用化までの一貫した研究開発推進、成果移転体制整備、情報提供 | イノベーションエコシステムの強化 |
| 第2章 / 第12条 | 施設及び設備等の整備及び共用の促進 | データセンター、データセット等知的基盤の整備・共用促進 | AI開発に必要なインフラへのアクセス改善 |
| 第2章 / 第13条 | 適正性の確保 | 国際規範に即した指針整備等による適正な研究開発・活用の確保 | リスク管理と倫理的配慮の枠組み(ソフトロー中心) |
| 第2章 / 第14条 | 人材の確保等 | 多様な専門人材の確保・養成・資質向上 | AI戦略成功の鍵となる人的資本の強化 |
| 第2章 / 第15条 | 教育の振興等 | 学校教育・社会教育におけるAI教育・学習振興、広報活動充実 | 国民全体のAIリテラシー向上と社会受容性の醸成 |
| 第2章 / 第16条 | 調査研究等 | 国内外動向調査、権利利益侵害事案分析・対策検討、指導・助言・情報提供 | リスク監視と実効性確保のための政府の権限 |
| 第2章 / 第17条 | 国際協力の推進等 | 国際連携・協力推進、国際規範策定への積極的参画 | グローバルなAIガバナンスへの貢献と連携 |
| 第3章 / 第18条 | 人工知能基本計画 | 政府によるAI基本計画の策定(基本方針、政府施策等を規定) | 国のAI戦略の具体化と実行計画 |
| 第4章 / 第19-28条 | 人工知能戦略本部 | 内閣への設置、組織、所掌事務(基本計画案作成・実施推進等) | AI政策の司令塔機能、省庁横断的推進体制 |
4. ガバナンスと実施体制
AI活用推進法の効果的な実施と目標達成のためには、強力なガバナンス体制と明確な実施メカニズムが不可欠である。本法は、内閣に「人工知能戦略本部」を新設し、国家戦略として「人工知能基本計画」を策定することを柱として、これらの体制を構築する。
4.1. 人工知能戦略本部(Jinko Chino Senryaku Honbu)
設置と構成:
本法第4章に基づき、AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に人工知能戦略本部(以下「本部」という)が設置される 1。この本部は、日本のAI戦略における最高レベルの司令塔として機能することが期待される。
本部の長は人工知能戦略本部長(以下「本部長」という)とし、内閣総理大臣をもって充てられる 1。副本部長には内閣官房長官及び人工知能戦略担当大臣が就き、本部員は本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てられる 1。この構成は、AI戦略が特定の省庁の管轄に留まらず、全省庁横断的な国家プロジェクトとして位置づけられていることを明確に示している。全閣僚がメンバーとなることで、各省庁の施策の連携・調整を円滑にし、トップダウンでの迅速な意思決定を可能にすることを目指している。本部は、2025年秋までに設置される予定である 5。
権限と所掌事務:
本部の所掌事務は、主に以下の通りである 1。
- 人工知能基本計画の案の作成及びその実施の推進に関すること。
- その他、AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する重要な施策の企画及び立案並びに総合調整に関すること。
さらに、本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、地方公共団体の長、独立行政法人の長、特殊法人の代表者等に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる 1。これにより、本部は広範な情報収集能力と関係機関への影響力を持つことになる。
このような強力な権限と構成を持つ本部の設置は、日本政府がAI戦略の推進に極めて高い政治的優先順位を与えていることの証左であり、省庁間の縦割りを排し、国家として統一されたAI戦略を強力に推進するための体制整備と言える。
4.2. 人工知能基本計画(Jinko Chino Kihon Keikaku)
策定と内容:
本法第3章に基づき、政府は、基本理念及び基本的施策を踏まえ、AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画(人工知能基本計画、以下「AI基本計画」という)を定めなければならない 1。このAI基本計画は、本法の理念を具体的な政策目標や行動計画に落とし込むための最上位の戦略文書となる。
AI基本計画には、以下の事項が盛り込まれる予定である 1。
- AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な方針。
- AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策。
- その他、AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項。
AI基本計画の案は、本部長(内閣総理大臣)が本部の議を経て作成し、閣議の決定を求めて策定される。策定後は、遅滞なく公表される 1。この計画は、2025年冬までに、有識者の意見やパブリックコメントを踏まえて策定される見込みである 5。
特に、AI基本計画には、AIが国民生活、とりわけ地方の暮らしをどのように変革するのかについての分かりやすいビジョンや、日本の競争力が期待されるロボットとAIの融合分野、いわゆる「フィジカルAI」に関する競争力強化策も盛り込まれる予定である 5。これは、計画が抽象的な目標に留まらず、国民生活への具体的な貢献や特定産業分野での国際競争力強化といった実践的な成果を目指すものであることを示している。
AI戦略2022との関係:
AI基本計画は、これまでに政府が策定してきた「AI戦略2022」 8 などの既存のAI戦略を、本法という法的根拠のもとに再構築し、発展させるものと位置づけられる。AI戦略2022が掲げてきた人材育成、研究開発、社会実装といった重点分野は、AI基本計画においても重要な柱として引き継がれ、より具体的かつ体系的な施策として展開されることが予想される 5。
このAI基本計画が、本法に定められた基本理念をいかに具体化し、実効性のある施策へと転換できるかが、日本のAI戦略全体の成否を左右する鍵となる。
4.3. 内閣府の役割と省庁間連携
AI活用推進法に基づくAI戦略の推進において、内閣府は中心的な調整機能を担う。本部に関する事務は、内閣府において処理されると規定されている 1。また、本部に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は内閣総理大臣とされているが 1、実務的な事務局機能は内閣府が担うことになる。
具体的には、内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局が深く関与しており 1、本法の制定に伴い内閣府設置法も一部改正され、内閣府の所掌事務に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の総合的かつ計画的な推進に関する基本的な政策に関する事項」が追加される 1。これにより、内閣府は、AI基本計画の策定支援、AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する重要な施策の企画・立案・総合調整といった役割を法的に担うこととなる。
省庁間連携については、前述の通り、人工知能戦略本部が全閣僚で構成されること自体が、省庁横断的な連携を前提としたものである。AI技術の応用範囲は、経済産業、総務、文部科学、厚生労働、国土交通など多岐にわたるため、各省庁が個別に政策を進めるのではなく、本部の方針のもとで連携し、リソースを効果的に配分することが求められる。内閣府がその調整役として機能することで、政策の一貫性と効率性を高めることが期待される。
4.4. AI戦略会議と専門家の意見聴取
AI活用推進法の制定やAI基本計画の策定プロセスにおいては、専門家の知見を積極的に取り入れる姿勢が示されている。法案審議の段階から「AI戦略会議」が開催され、AI法や関連戦略について議論が行われてきた 5。
さらに、本法成立後の具体的な取り組みとして、2025年秋までに人工知能戦略本部と並行して「有識者会議」を設置し、AI基本計画の策定にあたってその意見を聴取する方針が示されている 5。これは、急速に進化するAI技術の特性や、AIが社会に与える多面的な影響を考慮し、政策決定の質を高めるための重要な仕組みである。
このような専門家や多様なステークホルダー(企業、研究者、クリエイター、利用者など)からの意見聴取は、策定される計画やガイドラインの実効性と受容性を高める上で不可欠である 13。AIという複雑かつ影響の大きい技術領域においては、政府単独の判断ではなく、幅広い知見と社会的なコンセンサス形成を重視するアプローチが求められる。この有識者会議の構成や運営方法、そしてその提言がAI基本計画にどの程度反映されるかが、今後の政策の質を左右する要素となるだろう。
5. 予期される影響と含意
AI活用推進法の施行は、日本の経済社会の様々な側面に広範な影響を及ぼすことが予期される。企業活動の変革、経済構造の変化、国民生活への影響、そして国家としてのAI能力の強化といった多岐にわたる含意を持つ。
5.1. ビジネス(中小企業を含む):機会、責務、支援策
機会:
本法は、AIの研究開発及び活用の推進を国家戦略として掲げており、これはあらゆる規模の企業にとって新たな事業機会の創出や生産性向上に繋がる可能性がある 16。特に、「最もAIを開発・活用しやすい国」を目指すという政府の方針 2 は、イノベーションを志向する企業にとって魅力的な環境が整備されることへの期待を高める。研究開発支援、インフラ整備、人材育成といった本法に盛り込まれた施策は、企業がAI技術を導入・活用する上での基盤強化に寄与するだろう。
責務:
本法第7条は、AI活用事業者に対し、事業活動の効率化・高度化や新産業創出に自主的かつ積極的に努め、国や地方公共団体の施策に協力するよう「努力義務」を課している 1。これは直ちに罰則を伴うものではないが、留意すべき点がある。政府は、AIの不適切利用(ディープフェイク、個人情報漏洩、著作権侵害など)に関して調査を行い、必要に応じて指導・助言を行う権限を持つ 2。悪質な事例については、事業者名が公表される可能性も示唆されており 2、これは「評判リスク」として機能し、企業に自主的な適正利用を促す効果が期待される。今後策定されるAI事業者ガイドラインでは、不適切なAI出力の削減、AIの仕組みやリスクに関する情報開示、訓練データの透明性向上などが求められる可能性があり 2、事業者はこれらに対応するための体制整備が必要となる。
中小企業への影響と支援策:
中小企業にとっては、AI導入は生産性向上や競争力強化の好機となり得る一方で、資金、人材、ノウハウの面で課題を抱えることが多い 18。本法自体は直接的な中小企業支援策を詳細に規定していないが、関連する政府の施策として、IT導入補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金など、AI導入に活用可能な各種補助金制度が存在する 20。本法が推進する研究基盤の整備 1 や人材育成 1 も、間接的に中小企業のAI活用を後押しするだろう。
しかし、中小企業にとっては、進化し続けるガイドラインへの対応コストや、深刻なAI/DX人材不足が引き続き大きな障壁となる可能性がある 18。
この「評判リスク」を主たる初期の執行メカニズムとするアプローチは、イノベーションを萎縮させない配慮から選択されたものと考えられる。大企業や社会的な注目度の高い企業に対しては有効に機能する可能性があるが、それ以外の事業者に対する実効性については、今後の運用を見守る必要がある。
5.2. 経済・社会への影響:生産性、雇用、イノベーション
生産性:
AIの導入は、業務プロセスの自動化、データに基づく意思決定の高度化、新たな製品・サービスの開発を通じて、労働生産性を大幅に向上させることが期待されている。アクセンチュアの分析では、日本では2035年までに労働生産性がベースライン比で34%向上すると予測されている 16。マッキンゼーの分析では、特に旅行、ハイテク、保険、メディア・エンターテイメントといった産業でAIによる売上高上昇のポテンシャルが高いとされている 16。本法によるAI活用の推進は、これらの経済効果を加速させることを目指している。
雇用:
AIが雇用に与える影響は複雑であり、期待と懸念が交錯している。一部の定型的な業務はAIによって代替される可能性があり、経済産業研究所の予測では、一般事務、総務・人事・経理、製造・生産工程といった職種で今後3~5年で雇用が減少する見込みが示されている 17。一方で、AIの開発、運用、管理、倫理的側面に関わる新たな専門職や、AIを活用してより高度な業務を担う人材の需要は増加すると考えられる 17。厚生労働省の報告書によると、多くの企業はAIが既存従業員の業務を完全に代替するのではなく、一部を代替したり支援したりするものと考えており、従業員の再教育の必要性を認識しているものの、具体的な対応を講じている企業はまだ少ない 22。米国労働統計局のデータも、AI関連職種で雇用が増加する傾向を示しているものがある 23。本法が掲げる人材育成の推進 1 や、産業界におけるリスキリングの取り組み 24 は、この雇用構造の変化に対応し、労働者が円滑に移行できるよう支援することを目的としている。
イノベーション:
本法は、基礎研究から応用、実用化に至るまでの一貫した研究開発支援 1 や、スタートアップ支援 9 を通じて、AI分野におけるイノベーション創出を促進することを目指している。AI技術は、新たなビジネスモデルや社会課題解決の手法を生み出す触媒となる可能性を秘めており、そのポテンシャルを最大限に引き出すための環境整備が重要となる。
AI戦略の成功は、単に技術を導入するだけでなく、それを支える人的資本の質と量に大きく依存する。本法や関連戦略が人材育成を重視しているのはこのためであるが、現実には特に中小企業において専門人材の不足が深刻な課題として指摘されており 18、このギャップを埋めるための実効性のある施策が求められる。
5.3. AI関連リスクへの対応:人権、セキュリティ、倫理的考察
AI技術の発展と普及は、多大な便益をもたらす一方で、人権侵害、セキュリティ上の脅威、倫理的な課題といった様々なリスクも顕在化させる。本法は、これらのリスクに正面から向き合い、適切な管理と対応を行うための枠組みを設けている。
基本理念において、犯罪への悪用、個人情報漏洩、著作権侵害などを防ぐための透明性確保と必要な措置を講じることが明記されている 1。また、基本的施策として、政府が国内外のAI技術動向や利用実態を調査・研究し、不正・不適切なAI利用による国民の権利利益の侵害事案について分析・対策検討を行うこと、そしてその結果に基づき事業者や国民に対し指導・助言や情報提供を行う権限を有することが規定されている 1。これは、ディープフェイクによる名誉毀損や偽情報拡散、AIによる差別、プライバシー侵害といった具体的なリスクへの対応を念頭に置いたものである。
さらに、AIの研究開発及び活用の適正な実施を図るため、国際的な規範に即した指針(ガイドライン)を整備することが定められている 1。この指針には、G7広島AIプロセスで合意された国際原則(例:不適切なAI出力の削減、AIの仕組み・リスク情報の開示、訓練データの透明性向上など)が反映される見込みである 2。また、AI事業者ガイドラインは、既存の「人間中心のAI社会原則」 14 を土台とし、国際動向や新技術を考慮して策定される 14。
専門家からは、AIによるパフォーマンス評価における説明責任の欠如や、労働者の権利保護といった懸念も指摘されており 13、これらの倫理的・社会的課題への対応は、今後のガイドライン策定や法運用の重要な焦点となる。AIシステムのブラックボックス性や、それによる説明責任の困難さ 26 は、特に信頼性確保の観点から重要な課題である。
5.4. 国家AI能力の強化と経済安全保障
本法及び関連するAI戦略は、単に経済成長や社会課題解決を目指すだけでなく、国家としてのAI開発・活用能力を強化し、経済安全保障を確保するという側面も強く意識している。
「AI戦略2022」のような既存の国家戦略は、AIを通じて国のレジリエンス(強靭性)を高めることを目指しており 8、本法はこの流れを法的に裏付けるものと言える。特に、基盤モデルと呼ばれる大規模言語モデル(LLM)などの核心的なAI技術について、海外への過度な依存を避け、国内での開発能力を保持・強化することが、国際競争力及び経済安全保障の観点から重要であると認識されている 11。
このため、政府は国産LLMの開発支援や、AI開発に不可欠な計算資源(スーパーコンピュータ、GPUクラスタ等)の国内整備を経済安全保障上の重要施策として位置づけ、財政支援を行っている 31。本法においても、データセンターやデータセットといった知的基盤の整備・共用促進が基本的施策として掲げられている 1。
また、重要インフラ(エネルギー、交通、通信、金融など)におけるAI利用の進展に伴い、サイバーセキュリティリスクや、AIシステム自体の脆弱性、誤作動による社会機能の麻痺といった新たな脅威への対応も、経済安全保障上の喫緊の課題として認識されている 33。
これらの動きは、AI技術が現代における戦略的資源であり、その開発・管理能力が国家の自律性や国際的な影響力を左右するという認識に基づいている。本法は、こうした広範な文脈の中で、日本のAI能力を総合的に高めるための法的基盤を提供するものである。
6. 国際的文脈における日本のAI戦略
日本のAI活用推進法及び関連戦略は、国内のニーズに応えるだけでなく、急速に形成されつつあるAIに関する国際的な規範やガバナンス体制との整合性を強く意識している。日本は、国際協調を基本としつつ、ルール形成において主導的な役割を果たすことを目指している。
6.1. グローバル規範との整合性(G7広島AIプロセス、OECD AI原則)
本法は、AIの研究開発及び活用の適正性を確保するための指針策定にあたり、国際的な規範に即することを明記している 1。これは、日本のAIガバナンスが国際標準から乖離することを避け、グローバルなAIエコシステムとの調和を図るという明確な意志の表れである。
特に重要なのが、2023年に日本が議長国として主導したG7広島サミットで立ち上げられた「広島AIプロセス」である 2。このプロセスは、生成AIをはじめとする高度なAIシステムの開発者や提供者に対する国際的な行動規範や指針の策定を目指すものであり、日本政府は本法に基づく国内指針にこれらの成果を反映させる方針である 2。広島AIプロセスは、安全・安心で信頼できるAIの普及を目的とし、G7を超えた賛同の輪の拡大を目指している 35。日本は、このプロセスを通じて、AIガバナンスに関する国際的な議論をリードしようとしている。
また、経済協力開発機構(OECD)が策定した「AI原則」も、日本のAI政策における重要な参照点となっている。OECD AI原則は、人間中心の価値、包摂的な成長、持続可能な開発、安全・安心、透明性・説明可能性、堅牢性、アカウンタビリティといった項目を掲げ、信頼できるAIの責任ある管理を提唱している 36。米国が2023年10月に発出したAIに関する大統領令も、このOECD原則に言及しており 36、国際的なコンセンサス形成の基盤となりつつある。
日本で策定が進められている「AI事業者ガイドライン」は、これらの国際的な議論や原則を踏まえ、「人間中心のAI社会原則」を土台としつつ、諸外国の動向や新技術の台頭を考慮して作成される 14。これにより、国内事業者が国際的な規範に沿った形でAI開発・活用を進めることを支援し、国際的な信頼性を高めることが期待される。
6.2. 比較の視点:EU AI法、米国AI政策、その他関連法域
日本のAI活用推進法の特徴を理解するためには、他の主要国・地域のAI規制アプローチとの比較が不可欠である。
EU AI法:
EUのAI法は、AIシステムがもたらすリスクに応じて規制の強度を変える「リスクベースアプローチ」を採用している点が最大の特徴である 38。具体的には、「許容できないリスク」(例:サブリミナル操作、社会的スコアリング)を持つAIシステムは原則禁止、「高リスク」(例:重要インフラ、採用、法執行)AIシステムには適合性評価、データガバナンス、透明性、人間による監視などの厳格な義務を課す。一方で、「限定的リスク」(例:チャットボット)AIには透明性義務のみ、「最小リスク」AIには新たな義務は課さない 39。このAI法はEU域外の事業者にも適用される「域外適用」の規定を持つ 43。日本のAI活用推進法は、現時点ではこのような明確なリスク階層に基づく詳細な義務規定は設けておらず、より推進面に重点を置きつつ、リスク対応は主にガイドラインや政府の調査・指導権限に委ねる形をとっている 1。
米国AI政策:
米国は伝統的にイノベーションを重視し、包括的な連邦法ではなく、既存の規制当局が各々の分野でAIを監督するセクター別アプローチや、自主的な基準・フレームワーク(例:NIST AIリスクマネジメントフレームワーク 33)の活用を促す「ソフトロー」的アプローチを主としてきた。しかし、2023年10月に発出されたAIに関する大統領令は、特にAIの安全性、セキュリティ、国民の権利保護に関して、連邦政府としての統一的な原則を示し、特定の高性能AIモデル開発者に対する報告義務を課すなど、より積極的な関与の姿勢を示している 3。それでもなお、EUのような包括的・事前規制型とは異なるアプローチを維持している。
韓国AI基本法:
韓国では「人工知能(AI)の発展と信頼基盤の造成などに関する基本法」が制定された。この法律は、「高影響AI」と「生成型AI」を定義し、科学技術情報通信部長官が主導する国家AI委員会の設置、高影響AIに対する透明性義務や事前告知・審査義務などを定めている 45。韓国国内市場や利用者に影響を及ぼす場合は国外事業者にも適用される点が注目される 45。
中国AI発展計画:
中国は、国家主導でAI産業の発展を強力に推進しており、「次世代AI発展計画」などを通じて、特定分野での世界トップレベルを目指している 48。一方で、アルゴリズム推薦サービスや生成AIサービスに関する個別の規制も導入しており、国家による統制と産業振興を組み合わせたアプローチが特徴である 48。
英国AI政策:
英国は、イノベーション促進を重視し、AIに特化した新たな包括的規制機関を設けず、既存の規制当局がそれぞれの分野でAIを監督するという、分野横断的な原則に基づく柔軟なフレームワークを提唱している 50。ガイダンスや自主的な措置を重視する姿勢は、日本のアプローチと共通する部分もある。
これらの比較から、日本のAI活用推進法は、EUのような厳格な事前規制モデルと、米国の伝統的な市場主導型アプローチの中間に位置し、国際的な原則との整合性を図りつつ、国内のイノベーション促進とリスク管理のバランスを重視する「日本モデル」を模索していると言える。この「中間的」とも言える戦略は、グローバルなAIガバナンスにおいて、EUの包括的規制と米国のイノベーション重視のアプローチの橋渡し役を担う可能性も秘めている。しかし、EU AI法や韓国AI基本法が持つ域外適用の側面は、グローバルに事業展開する日本企業にとって、各国の規制動向を注視し、遵守体制を構築する必要性を高めている。
以下の表は、日本、EU、米国のAI規制アプローチの主要な特徴を比較したものである。
表3:AI規制アプローチの国際比較:日本・EU・米国
| 規制の特徴 | 日本(AI活用推進法に基づく) | 欧州連合(EU AI法) | 米国(大統領令、NIST RMF等) |
| 主要目標 | AIの研究開発・活用の総合的推進、国民生活向上、経済発展 1 | 基本的権利・民主主義・法の支配・環境持続可能性の保護、信頼できるAIの市場確立 39 | イノベーション促進、米国のリーダーシップ維持、安全性・セキュリティ・信頼性確保 36 |
| 全体的アプローチ | 基本法+ガイドライン中心の「アジャイル・ガバナンス」、推進とリスク対応の両立 2 | 包括的・水平的規制、リスクベースアプローチ(禁止、高リスク、限定的リスク、最小リスク)38 | セクター別アプローチ+連邦政府原則、自主的基準・フレームワーク活用、特定分野での規制強化 33 |
| リスク分類 | 明示的なリスク階層なし(ただし政府による調査・指導権限あり)1 | 4段階のリスク分類(許容不可、高、限定的、最小)39 | 特定の高リスクAIシステムや重要分野でのリスク管理を重視 36 |
| 主要ガバナンス機関 | 人工知能戦略本部(内閣総理大臣ヘッド)1 | 欧州AI事務局、各国監督当局 40 | ホワイトハウスAI評議会、NIST、各省庁 33 |
| 執行スタイル | 当面は努力義務と評判リスク、政府による調査・指導・助言 2 | 適合性評価、市場監視、高額な制裁金 40 | 既存法の執行、自主的遵守奨励、特定分野での報告義務や基準設定 36 |
| 生成AIへのスタンス | ガイドラインで対応、広島AIプロセス等国際的枠組みと協調 2 | 原則透明性義務、基盤モデル提供者への追加義務 39 | 安全性評価、ウォーターマーク等の技術開発奨励、政府調達基準設定 36 |
| 域外適用 | 明示的な規定なし | あり(EU市場にAIシステムを提供する事業者等)40 | 限定的(主に国家安全保障関連等) |
6.3. グローバルAIガバナンスフォーラムへの日本の関与(例:GPAI)
日本は、多国間の枠組みにおけるAIガバナンスの議論にも積極的に関与している。その代表例が、「AIに関するグローバル・パートナーシップ(Global Partnership on AI: GPAI)」への参加である。GPAIは、人間中心の考え方に基づき、「責任あるAI」の開発・利用を実現するために2020年に設立された、政府、国際機関、産業界、学識経験者等からなる官民国際連携組織である 53。
日本はGPAIの創設メンバーであり、2022年にはGPAIサミットを東京で開催し、議長国も務めた 53。このサミットでは、GPAIとして初となる閣僚宣言が採択され、人間中心の価値に基づくAI利用の促進、AIの違法かつ無責任な使用への反対、持続可能で強靭かつ平和な社会への貢献などについて各国で合意がなされた 54。
また、日本はGPAIの活動を支援するため、新たにGPAI東京センターを設置し、専門家による技術実証等のプロジェクトを支援している 55。これは、AIに関する国際的な規範形成や技術標準化において、日本が具体的な貢献を通じて影響力を行使しようとする姿勢の表れである。GPAIが掲げる「責任あるAI」「データガバナンス」「仕事の未来」「イノベーションと商業化」といったテーマは、日本のAI活用推進法が目指す方向性とも軌を一にしており、GPAIでの議論や成果は、国内政策にもフィードバックされることが期待される。
このような多国間プラットフォームへの積極的な関与は、本法第3条の基本理念に掲げられた「国際的協調の下での推進と、国際協力における主導的役割」 1 を具体化するものであり、日本のAI戦略が国内に閉じたものではなく、グローバルな視点を持っていることを示している。
7. 分野別考察と応用
AI活用推進法は、特定の産業分野に限定されない包括的な枠組みを提供するものであるが、その理念や施策は、特に社会的ニーズが高く、AIによる変革のポテンシャルが大きい分野において、具体的な形で展開されることが期待される。本節では、ヘルスケア、防災、そして行政・地方自治といった分野におけるAI活用の現状と政府の方針、課題について考察する。
7.1. ヘルスケアにおけるAI:政策の方向性と開発
日本のヘルスケア分野は、高齢化の進展に伴う医療費の増大や医療従事者の負担増といった課題に直面しており、AIの活用による効率化と質の向上が喫緊の課題となっている。政府は、AIを用いて保健医療サービスを高度化し、現場の負担を軽減することを目指している 56。
政策の方向性としては、ゲノム医療や個別化医療の推進に向けたAI活用が重視されている。全ゲノム情報等を活用したがんや難病の原因究明、新たな診断・治療法の開発、個々人に最適化された患者本位の医療の提供などが目標として掲げられている 56。また、診断支援、治療計画策定支援、創薬プロセスの効率化など、医療の様々な場面でのAI応用が期待される。
具体的な取り組みとして、「AIホスピタルシステム」の開発・構築・社会実装が推進されている 56。これは、画像情報、病理組織診断情報、診療・投薬情報などを効率的に収集・解析し、高度で先進的な医療サービスを提供するとともに、医療機関の効率化を図り、医師や看護師などの医療従事者の負担を抜本的に軽減することを目的とするものである 56。
一方で、ヘルスケア分野におけるAI活用には、個人情報保護、データのセキュリティ、診断の精度と責任、倫理的配慮といった特有の課題も存在する。このため、厚生労働省などは、生成AIを医療・ヘルスケア分野で利用する際のガイドラインを策定し、既存の薬事法等の法令遵守、入力データが本人の同意なく再学習に利用されない設定の確認、AIを利用している旨の透明性確保などを求めている 57。AI活用推進法が定める適正性の確保や調査研究の枠組みは、こうした分野特有のガイドライン策定やリスク管理を後押しするものとなる。
このように、ヘルスケア分野におけるAI活用は、国民の健康増進と医療システムの持続可能性確保という国家的課題への対応として、本法の理念を具体化する重要な応用領域と位置づけられている。
7.2. 防災におけるAI(防災DX):国家戦略
日本は地震、台風、豪雨など自然災害が頻発する国であり、防災・減災対策の高度化は常に重要な政策課題である。近年、政府は「防災DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を強力に推進しており、AIはその中核技術として位置づけられている。目標として、災害関連死ゼロの実現などが掲げられている 58。
国家戦略としては、2025年までに各種防災情報を自動で集約・共有できる「防災デジタルプラットフォーム」を構築し、迅速な情報伝達と意思決定支援を実現する計画である 58。このプラットフォームは、気象情報、河川水位、土砂災害危険度、避難所情報、被害状況などを一元的に把握し、関係機関や住民に必要な情報を提供する基盤となる。
AIの具体的な活用例としては、以下のようなものが挙げられる。
- 情報収集・分析: ドローンや衛星画像、SNS情報などをAIが解析し、被害状況を迅速かつ広範囲に把握する 59。気象、地震動、洪水、土砂災害の予測システムの高度化にもAIが活用される 8。
- 情報伝達: AIチャットボットや防災アプリを通じて、住民一人ひとりに合わせた避難情報や安否確認情報をリアルタイムで提供する 59。
- 避難支援: 避難所の開設・運営支援、要配慮者の避難誘導、物資輸送の最適化などにAIを活用する。マイナンバーカードを活用した被災者支援のデジタル化も進められている 58。
これらの取り組みを推進するため、「防災DX官民共創協議会」が設立され、民間事業者や自治体と連携して防災DXサービスの開発・普及が進められている 59。国土交通省も、デジタル技術を活用した流域治水の推進や、都市空間の3Dモデル「PLATEAU」を用いた浸水リスク可視化など、AIを活用した防災対策に取り組んでいる 59。
防災分野におけるAI活用は、AI活用推進法が目指す国民生活の安全・安心への貢献を象徴するものであり、技術の社会実装を通じて具体的な成果が期待される領域である。
7.3. 行政・地方自治におけるAI:導入と課題
AI活用推進法は、国の行政機関におけるAI技術の積極的な活用を促すとともに 1、地方公共団体に対しても地域の特性を活かした自主的な施策の策定・実施を奨励している 1。行政サービスの効率化・高度化、政策立案能力の向上、住民サービスの質の向上などが期待される。
実際に、一部の地方自治体ではAI導入の動きが進んでいる。具体的な活用事例としては、以下のようなものがある 60。
- 業務効率化: 文書作成支援、議事録の自動作成、翻訳、問い合わせ対応(AIチャットボット)、経費精算書類等の文字自動読み取り(OCR)。
- 政策立案支援: 市民の声や市議会議事録の分析、データに基づく政策提言支援。
- 住民サービス向上: 24時間対応のAIチャットボットによる問い合わせ対応(多言語対応も含む)、観光案内AI。 神奈川県横須賀市では全庁的にChatGPTを導入し、職員の8割以上が効率向上を実感したと報告されている 60。宮崎県都城市では自治体AI「zevo」の導入により年間約1,800時間の削減効果が見込まれている 60。
しかし、地方自治体におけるAI導入は、いくつかの課題にも直面している。総務省の調査によると、AI導入済みの団体は都道府県で51.1%、指定都市で40.0%であるのに対し、その他の市区町村では9.4%に留まっている(令和5年12月末時点)62。導入における課題としては、「AI生成物の正確性への懸念」「導入効果が不明」「取り組むための人材がいない又は不足している」といった点が挙げられている 63。また、生成AI利用に関するガイドラインを策定済みの団体は359団体に対し、未策定が1,197団体と多く、特に小規模な自治体での対応の遅れが目立つ 63。
この導入格差は、AI活用推進法が目指す全国的なAI活用の恩恵の公平な享受を妨げる可能性がある。地方自治体、特にリソースの限られる中小規模の自治体に対する、技術導入支援、人材育成プログラムの提供、ベストプラクティスの共有といったきめ細やかなサポートが、今後の重要な課題となる。
これらの分野別考察から、AI活用推進法は、医療や防災といった国家的優先課題への対応を加速させる一方で、地方行政のような現場レベルでのAI導入には、きめ細やかな支援と課題解決が求められることがわかる。また、ヘルスケア分野で見られるように、一般的なAI推進の枠組みに加え、各分野の特性に応じた専門的なガイドラインや規制の整備が、安全かつ効果的なAI活用には不可欠となる。
8. 専門家分析、課題、今後の展望
AI活用推進法は、日本のAI戦略における重要な一歩であるが、その実効性確保や将来的な展開には、克服すべき課題や継続的な検討を要する論点が存在する。専門家からは、法の運用面での懸念や、国際競争力維持のためのさらなる取り組みの必要性などが指摘されている。
8.1. 批判的視点:実施上の障害、規制の機敏性、国際競争力
実施上の障害:
専門家からは、本法の運用段階におけるいくつかの懸念点が指摘されている 13。
第一に、AI技術の進化スピードは極めて速く、数日で画期的な変化が生じる領域であるのに対し、既存の関連業法や規制の改正がそのスピードに対応しきれない可能性が挙げられる。本法は基本法としての性格が強く、個別具体的なリスクへの対応は関連法規の整備に委ねられる部分が大きいため、この速度差は実効性を損なう要因となり得る。
第二に、「安易な規制論」への警鐘が鳴らされている。AIに対する過度な不安から、必要以上の規制が導入されると、特に国際競争が激しいAI分野において国内事業者のコスト増大を招き、海外事業者との競争で不利になる可能性がある 13。
第三に、遵法意識の高い事業者に過度な負担がかかる一方で、ルールを守らない海外事業者などが参入することで公正な競争が歪められるリスクも指摘されている。行政による調査権限や公表措置といったソフトな執行手段の適切な活用が、実効性を高める上で重要となる 13。
第四に、急速に変化するAIの状況を踏まえ、多様なステークホルダー(企業、研究者、クリエイター、利用者など)の声を政策運用にタイムリーに反映できるかという課題がある 13。韓国のAI基本法に関連して、政府の調査権限の広範さや規制の透明性に対する懸念が事業者から出ている点は 47、日本においても参考になる。
規制の機敏性(アジャイル・ガバナンス):
本法及び関連ガイドラインは、技術変化に柔軟に対応できる「アジャイル・ガバナンス」を目指している 11。AI事業者ガイドラインが「生きた文書」として継続的に更新される方針 18 はその表れである。しかし、このアプローチの成否は、人工知能戦略本部が新たなリスクや技術動向を迅速に把握し、ガイドラインを適時適切に改定・運用できるかにかかっている。この「生きた文書」という性質は、事業者、特にリソースの限られる中小企業にとっては、継続的な情報収集と体制変更の負担となり、不確実性を生む可能性も指摘されている 18。
国際競争力:
国際競争力の強化は本法の基本理念の一つであるが 1、国内規制のあり方が競争力に直接影響する。イノベーションを促進しつつ、国際的に信頼されるAI開発・利用環境を整備するというバランスの取れたアプローチが求められる。過度な規制は国内産業の足枷となり得る一方で、信頼性や安全性の確保は国際市場での評価を高める要因ともなり得る。
8.2. ハードロー、ソフトロー、ガイドラインの相互作用
日本のAIガバナンスは、現時点では法律(ハードロー)による直接的かつ詳細な規制よりも、ガイドラインや原則といったソフトローを中心としたアプローチを採っている 2。これは、急速に進化するAI技術の特性を考慮し、イノベーションを阻害しない柔軟な対応を目指すためである。
中心的な役割を果たすのが「AI事業者ガイドライン」であり、これは「人間中心のAI社会原則」を土台としつつ、既存の複数のガイドラインを統合し、国際動向や新技術を考慮して策定される 14。このガイドラインは、AI開発者、提供者、利用者が参照すべき実務上の手引きであり、技術や社会の変化に応じて更新される「生きた文書」と位置づけられている 18。
AI活用推進法自体は、事業者の責務を主に努力義務として規定し、直接的な罰則を設けていない 2。しかし、本法は政府に対してAIの不適切な利用に関する調査権限や指導・助言を行う権限を付与しており 1、これが事実上の執行メカニズムとして機能することが期待される。特に、悪質な事例の公表は「評判リスク」を通じて事業者に自主的なコンプライアンスを促す効果を持つと考えられる 2。
一方で、著作権侵害、ディープフェイクによる名誉毀損、個人情報保護といった特定の分野においては、既存の法律(著作権法、個人情報保護法など)が適用される。しかし、これらの既存法だけではAI特有の問題に十分対応できないとの認識から、将来的には罰則を伴う新たな法規制が必要になるのではないかという議論も存在する 64。政府も、ガイドラインだけでなく法律の整備も視野に入れる方針を示しており 64、今後のAI技術の発展と社会への影響、そして国際的な規制動向を踏まえながら、ハードローとソフトローの最適なバランスを模索していくことになるだろう。
8.3. 現在進行中の議論:高影響AI、データガバナンス、知的財産権、労働者の権利
AI活用推進法が基本的な枠組みを提供する一方で、AIをめぐる具体的な論点は多岐にわたり、活発な議論が続いている。
高影響AI(ハイリスクAI):
EU AI法では、AIシステムをリスクレベルに応じて分類し、「高リスクAI」に対して厳格な義務を課している 41。韓国のAI基本法も「高影響AI」を定義し、特別な規制を設けている 45。日本のAI活用推進法には、現時点でこのような明確なリスク階層に基づく法的定義や義務規定は存在しない。しかし、AI戦略会議では、AGI(汎用人工知能)や生成AIを含む新たな技術進化に伴うリスクへの対応やサイバーセキュリティ強化が議論されており 11、政府がAIによる国民の権利利益侵害事案を調査し、指導・助言を行う権限を持つこと 1 は、事実上、高リスクなAI利用に対応する仕組みと言える。今後、ガイドライン等を通じて、リスクの高いAIシステムに対するより具体的な要件が示される可能性がある。この「高影響AI」の定義や取り扱いに関する議論は、日本のAIガバナンスの今後の方向性を占う上で重要なポイントとなる。
データガバナンス:
AI開発の根幹をなすのはデータであり、その質、量、そして取り扱い方がAIの性能と信頼性を大きく左右する。個人情報保護 17、データの偏り(バイアス)による差別助長、学習データの透明性確保などが重要な課題である。本法は、データセット等の知的基盤の整備・共用促進を掲げているが 1、具体的なデータガバナンスのあり方については、今後のガイドラインや関連法規で詳細化される必要がある。
知的財産権:
特に生成AIの登場により、著作権をめぐる問題がクローズアップされている。AIが学習データとして著作物を利用する際の法的整理や、AIが生成したコンテンツの著作権帰属、AI生成物が既存の著作物を侵害する場合の責任などが主要な論点である 17。本法の基本理念には著作権侵害の防止が含まれており 1、政府もこの問題に強い関心を示している。
労働者の権利と雇用におけるAI:
AIが採用、人事評価、業務指示、そして解雇といった雇用関係の様々な側面に利用されるようになるにつれて、労働者の権利保護が重要な課題となる。AIによる評価の公平性・透明性の確保、AIによる不当な差別やプライバシー侵害の防止、AI導入に伴う職業訓練や再配置のあり方などが議論されている 13。
これらの論点は、AI技術の社会実装が進むにつれてますます重要性を増しており、AI活用推進法の下で策定されるAI基本計画や各種ガイドラインにおいて、具体的な方向性が示されることが期待される。
8.4. 産業界と学術界の役割
日本のAI戦略の推進において、産業界と学術界はそれぞれ不可欠な役割を担っている。
産業界(例:経団連、新経済連盟):
経団連などの経済団体は、政策決定プロセスにおいて産業界の意見を表明し、イノベーションを促進する環境整備を政府に働きかけている 24。具体的には、研究開発支援の強化、明確かつ予見可能性の高いガイドラインの策定、公正な競争環境の確保、AI開発に必要な計算資源へのアクセス改善などを求めている 28。また、企業自身もAIガバナンス体制の構築や、AI倫理原則の導入、人材育成といった自主的な取り組みを進めている。
学術界・研究機関(例:理化学研究所AIPセンター、東京大学次世代知能科学研究センター、人工知能学会、情報処理学会):
大学や公的研究機関は、AIに関する基礎研究から応用研究までを幅広く手掛け、新たな技術シーズを創出している 76。理化学研究所革新知能統合研究センター(AIPセンター)は、深層学習の原理解明や次世代AI基盤技術開発、AI倫理・法制度の研究など、多岐にわたる研究プロジェクトを推進している 76。東京大学次世代知能科学研究センターも、法制度業務におけるAI活用など、学際的な研究に取り組んでいる 77。
人工知能学会や情報処理学会といった学術団体は、研究成果の発表や情報交換の場を提供するとともに、AIの社会実装に関する提言や倫理指針の策定などを通じて、社会への啓発活動や政策形成にも貢献している 13。また、AI人材の育成においても中心的な役割を担っている。
本法が目指す「産学官連携」の強化は、これらの産業界と学術界の活動を効果的に結びつけ、日本のAI能力を総合的に向上させる上で極めて重要である。AI戦略本部や有識者会議における意見聴取などを通じて、両者の知見が政策に適切に反映されることが期待される。
9. 結論:AI時代における日本の針路
「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」は、日本がAI時代において国際的なリーダーシップを発揮し、経済社会の持続的な発展と国民生活の向上を実現するための法的基盤を整備するものである。本法は、イノベーションの促進とリスク管理という二つの要請を両立させることを目指し、具体的な規制よりも基本理念と戦略的枠組みの提示に重点を置いた「アジャイル・ガバナンス」アプローチを採用している。
内閣総理大臣を長とする人工知能戦略本部の設置と、国家戦略としての人工知能基本計画の策定は、国を挙げてAIに取り組むという強い意志の表れである。研究開発支援、インフラ整備、人材育成、国際連携、そして適正利用の確保といった多岐にわたる施策は、日本のAIエコシステム全体の底上げを図ることを意図している。
しかし、本法の成功は、その制定自体によって保証されるものではない。むしろ、これは日本のAI戦略における「マラソン」の号砲であり、ゴールではない。今後の道のりには、いくつかの重要な課題が存在する。
第一に、AI技術の急速な進化に政策が追随し続けるための「規制の機敏性」をいかに維持・向上させるか。人工知能戦略本部が、変化を的確に捉え、ガイドライン等を柔軟かつ迅速に更新していく実務能力が問われる。
第二に、策定された計画や施策の「実効性」の確保である。特に、事業者に対する努力義務を中心としたアプローチが、実際に適正なAI利用をどの程度担保できるか、そして「評判リスク」というソフトな執行メカニズムが広範な事業者に対して有効に機能するかは、今後の運用にかかっている。
第三に、「国民の信頼」の醸成である。AIのリスクに対する懸念は依然として根強く、透明性の確保、説明責任の遂行、そして倫理的配慮を欠いたAI開発・利用は、社会的な受容を妨げる。
第四に、「人的資本」の充実である。AIを開発・活用し、社会に実装していくための高度な専門人材、そしてAIを理解し使いこなす幅広い層の人材の育成は、国家的な最重要課題であり続ける。
第五に、「国際的な複雑性」への対応である。グローバルに展開されるAI技術と、それを取り巻く各国の規制動向は多様であり、日本は国際協調を推進しつつも、自国の国益と産業競争力を守るための巧みな戦略が求められる。
本法は、これらの課題に対応するための出発点となる。その理念が具体的な政策へと効果的に転換され、産業界、学術界、そして国民一人ひとりがAIの可能性を最大限に引き出し、同時にそのリスクを賢明に管理していく努力を継続するならば、日本はAI時代において独自の価値を創造し、世界に貢献する道を切り拓くことができるだろう。本法の運用と、それに基づくAI基本計画の着実な実行、そして社会全体の継続的な学習と適応が、その成否を左右する鍵となる。
引用文献
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- 法を分かりやすく使いやすいものにするAI駆動型リーガルテックの可能性 – Next Generation Artificial Intelligence Research Center – 東京大学 https://www.ai.u-tokyo.ac.jp/ja/activities/act-archive/act-20230313
- AI倫理とは?事実と問題点・企業ガイドライン・解決策 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD https://ideasforgood.jp/issue/ai-ethics/
- 生成AI技術の社会的活用にかかる提言 https://www.jisa.or.jp/Portals/0/pdf/20250415.pdf
- 提言 生成 AI を受容・活用する社会の実現に向けて 令和7年(2025年)〇月〇日 日 本 学 – 日本学術会議 https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf26/siryo381-3-2.pdf



